とある少女の禁書目録   作:神納 一哉

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過去にしたらばに投下したものに加筆・修正しました。


赤いコスモス

秋の訪れを感じ始めた頃、珍しくアイツからメールが来た。

 

―――――――――

From:上条当麻

 

Subject:今日の放課後

 

本文:PM5:30くらいにとある公園の自動販売機前へ来てくれないか。

 

―――――――――

 

From:御坂美琴

 

Subject:Re:今日の放課後

 

本文:りょーかい。

 

―――――――――

 

ただ一言のメールを返信し、携帯をポケットにしまう。

 

アイツがわたしを呼び出した。

 

一体何の用だろうか?

 

勉強を見てくれ?

 

特売に付き合ってくれ?

 

それとも…。

 

窓の外に視線を向け、わたしは小さくため息をつく。

 

…そんなわけないわね。

 

アイツが今日のことを知っているはずないし。

 

―――

 

指定された時間の10分前には公園で待っていたアイツに近寄り、声をかける。

 

「よ。御坂」

 

いつもと変わらない様子でアイツは返事をして、それから学生服のポケットから包装紙に包まれた小さな箱を取り出してわたしの前に差し出した。

 

「あのさ、これ、お前に。この前、買い物行ったとき見かけて、御坂に似合うかなって思って」

 

「え?」

 

「なんつーか、バレンタインのお返しとかできなかったし、遅くなっちまったけど、ホワイトデーってことで」

 

言われてみて気が付いた。そういえば3月14日にはアンタ、メキシコに行っていたものね。

 

「それはいいんだけどさ、半年もほっとくってどうなのよ?」

 

「悪い」

 

いや、謝られても困るんだけど。

 

「…ありがと。開けてみて、いい?」

 

小箱を受け取り、包装紙を剥がす。

 

中に入っていたのは、コスモスの花がデザインされた銀色のヘアピンだった。花弁の部分が赤い。

 

「…嘘」

 

―――ドクン。

 

鼓動が高鳴る。いや、落ち着けわたし。

 

コイツが知っているはずない。

 

「嘘じゃねえよ。御坂にはいつも世話になってるからな。…その、お礼だ」

 

そう言って視線を逸らしたアイツの頬が少し赤く見えるのは気のせい?

 

でも、気のせいじゃないとしたら…。

 

アイツは知っているのかもしれない。今日のこと。

 

「…どうして?」

 

「ん?なんかさ、それ見たら御坂に似合いそうだなーって思って。あ、もしかして嫌いだったか?コスモス」

 

「嫌いじゃないけど…、その、ね」

 

そう、問題はそこじゃない。

 

「なんだよ…って、御坂、お前…」ハッ

 

アイツの表情が険しくなる。え?なんで?

 

「な、なに?」ビクッ

 

「熱あるのか!?顔真っ赤だぞ!?それになんか震えてるし…」

 

いきなり両肩を掴まれ顔を覗き込まれる。いや、その、ちょっと待って。

 

「え?いや、その、これは…えっと…」///

 

「悪い!具合悪いのに呼び出しちまって!」

 

「べ、別に具合が悪いとかじゃないから!!」ブンブン

 

勝手に勘違いして勝手に謝ってくる。…顔が近すぎるのよバカ。

 

「だってお前…」

 

「なんでもないっ!なんでもないから!」

 

「そ、そうか…」

 

アイツの手が肩から離れるのと同時に、わたしは一歩後ろに下がる。

 

……あれ?

 

わたしが後ろに下がったら、アイツ、悲しそうな顔になった。

 

「…あの、さ」

 

後ろ手で鞄の持ち手を弄りながら、わたしはアイツを上目づかいで見る。

 

女の武器ってやつ?わたしが使ったところでコイツに効くか判らないけど。

 

「な、なんだ?御坂」カァッ

 

…あれ!?効いた。

 

アイツがわたしを見て赤くなってる。何か嬉しい。…じゃなくって。

 

「えっと…その、アンタ、今日、何の日か…知ってる?」

 

上目づかいのまま、わたしは真っ直ぐにアイツの目を見つめる。

 

「ええと…9月14日ですよね?」

 

「うん」

 

日付を言ってアイツは沈黙する。

 

やっぱり、わたしの気のせい、か。

 

「………コスモスの日」ボソッ

 

「えっ!?」

 

今、コイツなんて言った?今日のこと、知ってたの?

 

「コスモスの日だよ。ちくしょう、お前知ってたのかよ」カァッ

 

「うん、知ってた」

 

「だーっ!!マジか!?じゃ、その、つまりアレか?」///

 

「えっと、その、赤いコスモスの花言葉なら、知ってる」///

 

「OK御坂、上条さんに少しだけ時間をくれ」

 

「うん」///

 

アイツが額に手を当てて考え込んでいるうちに、わたしは鞄から紙袋とコンパクトを取り出した。

 

今留めているヘアピンを取り、アイツがくれたコスモスのヘアピンを留める。

 

鏡を見てちゃんと留まっているのを確認し、ヘアピンと箱、コンパクトを鞄の中へ仕舞ってから、鞄を足元に置いてアイツへと近づいた。

 

一度大きく深呼吸をして、制服の胸ポケットを確かめた。――大丈夫。ちゃんとある。

 

「ね。…似合う、かな?」

 

「ああ…。似合うぞ」

 

「ありがと」

 

もう一度深呼吸をして、わたしはアイツを真っ直ぐに見た。

 

「わたしたちって、案外、似たもの同士かもね」

 

「御坂?」

 

「ホントのこと言うと今日、わたしもアンタを呼びだそうと思っていたの」

 

ぽかんとした表情のアイツ。わたしは乾いた唇を小さく舐めてから続ける。

 

「…だから、これ。あげる」

 

目を瞑って両手で紙袋をアイツへと突き出した。うう。凄く恥ずかしい。

 

「開けて、いいか?」

 

「うん」

 

アイツ、どんな顔しているんだろう?気になるけど、見れない。

 

「これ、…イチゴ味?」

 

「うん。イチゴジャム」

 

「…コスモス、だよな?」

 

「そうよ」

 

「それで、御坂さんは赤いコスモスの花言葉を知っていると?」

 

「…うん」///

 

両手を下ろして軽く握り、自分の胸の前に持ってきてから目を開ける。

 

息が苦しい。鼓動がうるさい。

 

なのにアイツは、いつもと変わらなく見えた。

 

…なんかムカつく。

 

「あー、その、なんつーかさ、本当は半年前に言うつもりだったんだけど」

 

…え?

 

「チョコレートサンキューな。すげえ美味かった」

 

…なんだ。

 

「三月とか学園都市の外でもお前に助けられたし、勉強も教えてもらってすげえ助かった。まあ中三に高二が教わるのも情けねえんだけどさ」

 

「…」

 

「まあ、そんな感じで飯作ってもらったり、買い物つき合わされたりしてるうちにさ、俺、気付いたんだ」

 

「…何に?」

 

アイツに顔を向けると、アイツは、真っ直ぐにわたしの目を見つめてきた。

 

―――ドクン。

 

「………お前のことが好きだって気付いたんだ」

 

「…嘘」

 

「嘘じゃない。…御坂。俺、お前が好きだ」

 

言葉が、わたしの時間を止める。

 

「本当は、クリスマスまで隠しておこうと思ったけど、お前が今日のこと知ってたし、それに、お前も同じ気持ちだって教えてくれたから…」///

 

息が苦しい。なんか視界がぼやけてきた。

 

「…バカ。バカバカバカ、バカァッ!!」

 

「御坂…」

 

「わたしだって…グスッ、わたしだってアンタのこと、ずっと好きだったんだからあああっ!!」

 

気が付くと、わたしはアイツの胸に飛び込んでいた。

 

もう、難しいことは考えられない。

 

「好き…。好き。アンタが好き」

 

「…俺も、御坂のことが好きだ」ギュッ

 

ちょ、耳元で囁きながら抱きしめるなんて反則。

 

でも、まあ、いいか。

 

「御坂。俺と付き合ってくれ」ギュッ

 

「うん。わたしを、アンタの彼女にして」ギュッ

 

アイツを抱きしめ返しながら、わたしはアイツの耳元でそう囁いた。

 

胸ポケット中にあるタグリング、いつ渡そうかな?




9月14日 コスモスの日 バレンタインデーから半年目、プレゼントにコスモスを添えて交換し、お互いの愛を確認しあう日

赤いコスモスの花言葉「愛情」
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