とある少女の禁書目録   作:神納 一哉

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過去にしたらばに投下したものを加筆・修正しました。


携帯電話

「あれ?なんだろう?」

 

佐天涙子は学生寮へ戻る途中の歩道の上に、緑色の何かが転がっているのを発見した。

 

近づいてよく見てみると、それはラヴリーミトンのキャラクターストラップだった。ストラップには折りたたみ式のシンプルな携帯電話が着いている。

 

「…これって、御坂さんと同じストラップ…だよね?」

 

携帯電話を拾い上げてストラップを見る。常盤台の電撃姫こと御坂美琴が好んでいる、つぶらな瞳のカエルがちょび髭を生やしたキャラクター・ゲコ太だ。御坂美琴いわく、レアなストラップとのことなのだが。

 

(御坂さんと同じ趣味の女の子が落としたのかなあ?)「ちょっと失礼しますよ~」パカ

 

携帯電話を開いて待ち受け画面を確認すると、時刻とカレンダーだけが表示されるシンプルなものだった。

 

(メール、…は見るわけにいかないから、電話帳を見させてもらいますよ、っと)ピッ

 

ショートカットキーを押し、五十音順で電話帳を開いて確認する。

 

(青髪ピアス?なんか危ない名前だなあ…。一方通行?…変なあだ名。インデックス、エリザード、オルソラ…、なんかカタカナが多いなあ。…上条詩菜、上条刀夜…兄妹かな?…神裂、キャーリサ、小萌先生、白井…、って、白井さん?)ピ、ピ

 

知り合いの名前を見つけて番号を確認する。どうやらビンゴのようだ。

 

(んー?白井さんの知り合いってことは、常盤台の人かな?それとも風紀委員?…とりあえず続き、続き。…ステイル、建宮、土御門元春、土御門舞夏。んー、これも兄妹かな?…バードウェイ、浜面、病院、御坂美琴、御坂美鈴…って、御坂さん!?)ピ、ピ

 

再び知り合いの名前を見つけて番号を確認し、友人の名前のグループ欄を見て固まった。

 

(グループ名がペア契約ですか。…御坂さんとペア契約、ねえ…)ニヤリ

 

電話帳を閉じ、写真のアイコンを選択する。

 

(ペア契約は男女でないと契約できなかったはず。それと証明のためのツーショット写真が…)ピ、ピ「っと、ビンゴォ!」

 

本体内部メモリーにあったのは友人が顔を真っ赤にしてツンツン頭の男性に肩を抱かれているツーショット写真だった。

 

(うーん。顔を真っ赤にしちゃってかわいいのう)ピ、ピ

 

メニューを開き、メール転送を選択して自分のアドレスを打ち込んで送信し、ポケットの中で携帯電話が振動するのを確認してから、メールの送信履歴を削除する。

 

それから自分の携帯電話のメール受信ボックスを開き、最新の受信メールの送信者である『上条当麻』の文字と添付写真を確認してからポケットにしまい、再び拾った携帯電話を操作して電話帳を開いた。

 

(さーて、御坂さんに電話しよっと)ピッ

 

ニヤニヤと微笑を浮かべながら、佐天涙子は友人と同じストラップのぶら下がった携帯電話に耳を付けるのであった。

 

----------

 

「不幸だああああああ!!」

 

「…なに叫んでるのよ、アンタ」

 

「み、御坂!?」ビクッ

 

「なんで私を見て驚くのよ?」

 

「べ、べ、別に上条さんは御坂さんを見て驚いてなんていませんですことよ!?」

 

「思いっきり慌ててるようだけど?」

 

「はっはっは。気のせいだ気のせい。じゃあ、特売が待ってるから!」

 

不自然極まりない笑みを浮かべて立ち去ろうとする上条当麻の耳に、カエルの鳴き声のようなものが聞こえてきた。

 

「ん、何よ?こんな時に電話?」

 

「…御坂。誰から?」

 

「アンタから…って、なによ、悪戯?」

 

睨むような視線を向けてくる少女の手から、上条当麻は携帯電話を奪い取った。

 

「悪い御坂!ちょっと借りるな!」

 

「あ、ちょ、ちょっと!?」

 

「もしもし!その携帯の持ち主ですけども、電話帳の有名人に電話をかけてくるのはわかりますけどその子、常盤台の超電磁砲じゃないですから!同姓同名なだけですから!」

 

(えっ?コイツ、私のこと庇ってくれてるの?)

 

『おーっと、まさか御坂さんの携帯で男の人が出るとは思わなかったなあ。上条さん?ですか?すみません、あたし、御坂さんの友人の佐天涙子と言います。ってなわけで、下手な言い訳しても無駄ですから』

 

「…御坂の友人…だと!?」

 

『はい。上条さんが御坂さんの携帯に出るってことは、御坂さんの近くにいるんですか?』

 

「ま、まあそうだけど…」

 

『代わってください』

 

「いや、あの…」

 

『代わってくれないと御坂さんとのツーショット写真を、この電話に登録されている人全員にばら撒いちゃいますよ?』

 

「わ、わかった、代わる、代わるからそれだけは…」

 

がっくりと肩を落とし、上条は美琴に携帯電話を差し出した。

 

「…えっと、佐天さんから。代わってくれって」

 

「アンタ、佐天さんと知り合いだったの!?」

 

「今さっき名前聞いたんだよ!俺の携帯拾ってくれたみたい」

 

「ふーん。もしもし、佐天さん?」

 

『…ペア契約』ボソッ

 

「にゃあああっ!?」///

 

『いやー。あたし、御坂さんが高校生とペア契約しているなんて知らなかったなあ』

 

「な、な、な、な、な、なんで佐天さんがそれを!?」

 

『この携帯に御坂さんとお揃いのゲコ太ストラップが着いてるし、ツーショット写真もあるし。ってか、御坂さんの登録グループがペア契約ですし』

 

「…佐天さん。その、黒子には言わないでくれる?」(コイツ、写真消さないでいてくれたんだ)

 

『何をですか?上条さんとお付き合いしていることですか?』

 

「つ、つ、つ、つ、付き合ってにゃいっ!」///

 

『え?だってペア契約って恋人同士がする契約ですよね?』

 

「そ、そ、そ、そ、そう!ゲコ太!ゲコ太のためにペア契約してもらったの!それだけなんだから!ホントよ?」

 

『この携帯にも着いているのはなんでかなあ?』

 

「ア、ア、ア、アイツもゲコ太好きなのっ!」

 

『へえ?じゃあ確認しますんで上条さんと代わってください』

 

「そ、それは駄目!」

 

『どうしてですか?』

 

「だってこれ、私の携帯だし、それ言ったら佐天さんはアイツの携帯だし!?あれ?どうしたらいいの?これ」

 

『あー御坂さん、今どこですか?』(慌ててる御坂さんも新鮮だなあ)

 

「な、なんで?」

 

『この携帯、持ち主に返したいんで。そばに居るんですよね?上条さん』

 

「う、…あ…ジジッ…う…」バチバチバチ

 

(あれ?なんかノイズが…)

 

「御坂、漏れてる、漏れてる」パキーン

 

「うにゅっ!?いきなり頭撫でないでよっ」///

 

「漏電してたんだからしかたねーだろ!それとも携帯ぶっ壊したかったのか?」

 

「え?わたし、漏電してた?」

 

「自覚なしかよ。しばらくこうしてた方がいいな」ナデナデ

 

「な、撫でるなっ!」///

 

『あのー、ラブラブなところ申し訳ないんですけど、どこにいるんですか?御坂さん』

 

「うにゃあああああっ!?えっと、えっと、ここってどこ?」(ここはわからないふりをして…)

 

「落ち着け御坂。ここは○○通りのスーパーの近くだ」

 

「ちょっ!?アンタ!」

 

『なーんだ、すぐそばじゃないですか。じゃ、すぐ行きますね。では』

 

「ちょっと、佐天さん!!…切れた」

 

携帯をポケットにしまいながら、美琴はばつが悪そうに上条を見る。

 

「あの、さ。佐天さんが来る前にさ、これ、やめておいたほうがいいと思うんだけど」///

 

「んー。まだ顔赤いし、もう少しこうしていないとヤバイだろ?」ナデナデ

 

「だから、撫でるなあ!」カァッ

 

「いやー、なんていうの?なんか落ち着くみたいな?」ナデナデ

 

「な、なによそれ?」///

 

「上条さん的には、こうしていれば電撃が飛んでこないし、漏電も防げるしで一石二鳥なんですよ」ナデナテ

 

「ほうほう、そういう理由をつけて可愛い御坂さんを堪能しているんですね」

 

「まあ、御坂の上目遣いなんてレアだしなー」ナデナデ

 

「えっ!?」///

 

「はい、確信犯発言いただきました!」ニヤァ

 

「んな!?」///

 

「さ、さ、さ、さ、さ、さ、佐天さん!?」

 

「こんにちは、御坂さん。はじめまして、上条さん。あたし、御坂さんの友人の佐天涙子でーす」ニヤァ

 

「あ、ああ。どうも」ナデナデ

 

「な、なんで撫でるのよ!?」///

 

「落ち着くため。てか、この子ヤバくないか?すげー笑顔だったぞ」ヒソヒソ

 

「確かにね。佐天さん、こういうの好きなのよ」ヒソヒソ

 

「こういうのって?」ヒソヒソ

 

「こ、恋バナって言うのかしら」ヒソヒソ

 

「こっ!?」///

 

上条が驚きで固まったところに、佐天が追撃をかける。

 

「お二人で内緒話ですか?熱い、熱いなあ」ニヤニヤ

 

「ふにゃあああああっっ!!」///

 

「おーっと、携帯を拾ってくれてありがとう佐天さん!届けにきてくれたんだよな?」

 

「まあ、そうなんですけど」ニヤァ

 

「その笑い方はやめた方がいいと思うぞ?せっかくの可愛い顔が台無しだ。なあ、御坂」

 

「へ?」

 

「…アンタね、いきなり誤解させるようなこと言うんじゃないわよ。まあでも、ゴメン佐天さん。わたしもその笑い方はやめた方がいいと思う」

 

「やめた方がいい笑顔って、あたし、どんな顔してました?」

 

「なんつーの、時代劇の悪代官的な笑い方?」

 

「ぷっ。でも確かにそんな感じね」

 

「上条屋、そちも悪よのう…。あたし、悪代官なんで、御坂さんにツーショット写真のこと言っちゃいました。御坂さんなんか嬉しそうでしたよ」コソコソ

 

「え?マジで?…これは期待してもいいのか。…お代官様には敵いませんな」コソコソ

 

「ってか、上条さんって御坂さんの能力止めてます?それと、御坂さん。頭撫でられるの嫌がってませんよね?」

 

「にゃああああっ!?」///

 

「俺の右手は幻想殺しって言って、触れた物が異能の力であれば、それがたとえなんであろうと打ち消しちまうんだ。だから御坂の電撃もこうやって抑えられるってわけ。いいから落ち着け、御坂」ナデナデ

 

「な、撫でるなあ」///

 

「御坂さん、かわいいのう」ニヤニヤ

 

「佐天さん、あんまりからかわないでやってくれ」

 

「撫でられて嫌がってないし、あたしは十分脈アリだと思いますけど、どうします上条さん?」コソコソ

 

「ぶふぅ!?いきなり何をおっしゃいます!?」

 

「…アンタ、佐天さんと二人で楽しそうね」

 

「そんなことないぞ御坂。上条さんは今、佐天さんに携帯を返してもらうために必死なんですよ!?」

 

「ふーん。そう」プイッ

 

「やきもち入りましたよ上条さん!」コソコソ

 

「いやいやいや!違うだろ!?」

 

「そうですって!その証拠に顔は逸らしてるけど、上条さんの手は振り払わないじゃないですか」コソコソ

 

「佐天さん、上条さんを期待させるようなこと言わないでください」ハァ

 

「き、期待させるようなことって何!?」

 

逸らしていた顔を上条の方へと戻し、美琴が尋ねる。

 

「御坂さんがあたしに嫉妬してるって上条さんに言っただけですけど」

 

「へ?」

 

「まあ、あたしがわざと上条さんにしか聞こえないように話していたんですけど、あんなにわかりやすいのにまったく気付かないんですね上条さん」

 

「わかりやすいって、何が?」

 

「なにがって、やだなあ、御坂さんの態度に決まってるじゃないですか」

 

「さ、さ、さ、佐天さん!?何言っちゃってんの!?」///

 

「真っ赤になっていかにも『好き』ってオーラ出しまくってるじゃないですか。なんで気付かないんですか上条さん」

 

「な、な、な、な…」///

 

「あ、ちなみにさっきの感じですと、上条さんは御坂さんが自分のことを『好き』だったらいいなあって考えてますよ」

 

「いやああああああああっっ!!上条さんの青春がああああ!!」

 

真っ赤になって固まっている美琴の前で、同じくらいに顔を赤くした上条が叫びながら天を仰ぐ。

 

「はいはい、叫んでないで想いを伝えるチャンスですよ上条さん」(とりあえず上条さんの携帯で録画スタート)ピッ

 

「ああ畜生!何でこんなことになってるんだよ!ってか御坂、お前、大丈夫か?」

 

「今、手を離されたら壮大に漏電する自信ならあるわ。ってか、アンタ、その、ホント、なの?」

 

「……御坂さんの今までの態度は、照れ隠しだったってことでよろしいのでしょうか?」ナデナデ

 

「……うん」///

 

「そっか。その、なんだ。こんな俺だけど、御坂さえ良ければ、彼女になって欲しい」///

 

「……ちゃんと、言って」

 

「御坂、好きだ。付き合ってくれ」

 

「わたしも、アンタが好き。よろしくお願いします」///

 

「……御坂、一瞬だけ手を離してもいいか?」

 

「……ダメ」

 

「……じゃ、このまま」ギュッ

 

「……」ギュッ

 

上条は右手を美琴の後頭部に滑らせ、左手を背中に回して自分の方へと引き寄せた。美琴もそれに応えるような形で上条の背中に両腕を回す。

 

「カップル成立おめでとうございます!」

 

「うわっ!」ビクッ

 

「うにゃあっ!」ビクッ

 

「はーい、記念撮影です♪こっち向いてくださーい。あ、これ上条さんの携帯なんで、お二人の記念にってことで。はい、チーズ」パシャッ

 

寄り添って硬直する二人の写真を撮った後、佐天は上条の携帯を少し操作してから閉じ、上条に差し出した。

 

「記念写真、御坂さんの携帯に送っておきました。ということでコレ、お返しします」

 

「あ、ああ。どうも」

 

「ではあたしはこれで。御坂さん、上条さん、おめでとうございます」

 

「さ、佐天さん…その、ありがとう」

 

「あたしは上条さんの携帯を拾ってお二人と話したら、お二人の気持ちがわかっちゃったんで、ちょろっとお二人に発破をかけただけですよ」

 

そう言って笑うと、佐天は新しい恋人達に背を向け、自分の寮に向かって歩き始めた。

 

(動画もあるから送るのに時間がかかると思うけど、届く前に御坂さんたちの前から離れないとね)ニヤリ

 

佐天が上条の携帯で撮影した動画と真っ赤な顔の二人のツーショット写真の送り先は上条の携帯に登録された『御坂さん』宛て。そして上条の携帯に登録された『御坂さん』は『御坂美琴』と『御坂美鈴』である。

 

「さーて、初春に電話しよーっと」

 

学園都市に新たに生まれた恋人達の受難は、始まったばかりだ。

 

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