あまりの悲しさに男性が室内に入って来た事に気付かなかったセレナは、自分の取り乱しに慌てて衣類の袖で涙を拭いた。
「取り乱していてゴメンなさい」
「いや…別に良いよ。ただ…あまりに悲しそうに泣いてたから、何かあったのかと思ってね」
「私のポケモン達が居なくなってたの。多分…崖から転落した時に皆と離れてしまったのかもしれくて…」
「それなら心配はいらないよ。これから話そうと思っていたけど…君のポケモンは皆元気だよ」
「え…どう言う事ですか?」
「君が川辺に倒れていた事を前に話したけど、あの時…君の側にはモンスターボールが3つあたんだ。つまり…ポケモン達が君を守ろうとしてモンスターボールから出て、君を川から救ったのだと思うよ。私も君のモンスターボールに入った君のポケモンを近くのポケモンセンターに預けておいたんだ。看護師達が、時間のある時に訪ねて見ると、ジョーイさんが君のポケモン達が届けられた時は、かなり疲労していた…と言ってたよ、今はポケモンセンターで元気にしていると聞いてる」
話を聞いてセレナは自分の中から不安が取り除かれて安心して笑みを浮かべる。
「そうでしたか…」
(あの子達が私を救ってくれたんだ。テールナー、ヤンチャム、ニンフィア…後でお礼を言わなければ…)
「まあ…何よりだが、それ以上にもし…1ヵ月もモンスターボールにポケモンを入れてたら、ポケモン達はどうなるか知らない君ではないだろう?」
それを聞いてセレナは過去、トレーナーの講習を受けに行った時に講師から話を聞いたのを思い出した。
『ポケモン達も生き物である、いくらモンスターボールの中が居心地が良くても、週に2回以上はモンスターボールから出してあげる事、もし…それが出来なく、長期的にモンスターボールの中に入れて置く事になる場合は、ポケモンセンターか、トレーナー登録したポケモン研究所等に預けて置く事。個人でモンスターボールに入れた状態でポケモン達を長期間放置するのは、ポケモン達にとってはとても危険な行為であって、決して行なってはいけない』
セレナはそれを思い出してホッとした。皆も助けられていたんだ…と。
「さて…と、セレナちゃん、ちょっと大事な話があるけど良いかな?」
「はい、何でしょうか?」
「その前に自己紹介がまだだったね。僕はカツヤと言うんだ宜しくね」
「ハイ、宜しく。私はセレナと言います」
セレナは改めて軽く礼をした。
「さて…セレナちゃん。今の君の現状を、君の保護者や監督責任者のポケモン研究所の所へ連絡する予定だけど…」
それを聞いて、セレナは表情が強張った。
それはつまり、セレナが最悪…母の元に戻されるか、ミアレシティのポケモン研究所のプラターヌ博士の所に戻される可能性があると言う事だった。
トレーナーの勉強している時に、セレナは本で読んだ記憶がある。トレーナーが他の地域を旅した時に事故や怪我で旅が続けられない状態になった時、もしくはその様な状況に陥った場合は、登録してある自宅かポケモン研究所等に戻って、旅が再開出来るまでの間はトレーナーとしての資格を一旦停止して状況が回復するまで行動を控える事と…書かれていた。
つまり…今のセレナはカロス地方に戻ることが第一条件であった。
皆と別れて1ヵ月、ホウエン地方に来て2日目でいきなり事故に遭って、何もしないまま、カロスに戻されるのはセレナ自身ちょっと辛かった。
「今の現状の報告は待ってもらえますか?」
「残念だけど、それは出来ない。君の家族や監督責任者である、プラターヌ博士と言う方達に連絡して、君の事を伝えなければならない義務が私達にはある。まさか彼等に嘘を付けと君は言うのかね?」
「近日中に私が旅に出れば大丈夫でしょう?」
それを聞いた医師は溜め息を吐いた。
「つい先ほど、君はベッドから降りたらしいではなかったか、その時自分がまともに歩けたりしたのかね?」
そう言われてセレナは口ごもる。
「命に関わる状況だったんだ、まあ…少なくとも脳や脊髄や臓器に損傷は無いので、無事回復すると思うけど…それでも昏睡状態があったから、これからの君は実家かポケモン研究所に戻って、せめて1年の間は怪我の回復に努めるべきだと私は思う」
「直ぐに旅に出る事はダメですか?」
「言いたくは無いけど…今の君の現状で旅をさせるのは、私は薦めない…後遺症の恐れだって有るんだ。何よりもこれからの君の事を考えると、この先定期的な診断を続ける必要がある。しばらくの間は自宅での生活が望ましいと私は思う」
「それは、旅を続ける事は難しいと…言う事ですか?」
「今後の君の1人旅は私は薦めない。リハビリで歩く事が出来たとしても、君の身体はガタガタの状態なんだ。投薬と休養の繰り返しで、今まで以上に大変な旅のになると思うよ、下手したらそれが原因で病を引き起こす可能性だって考えられる。それよりも身体を労って状態を整え直してから旅に出る事を私は薦める」
セレナは、悲しそうな表情で俯いた。もはや言い逃れは通じないと悟った。何よりも身体が動かない今の状態では、これ以上の言い訳は出来ない。
「分かりました」
相手がようやく折れて、カツヤは少しホッとする。
「ただ…1つお願い出来ますか?」
「何かな?」
「ママには内緒にしてもらえますか?」
それを聞いたカツヤは溜め息を吐きながら答える。
「君はさっきからおかしな事ばかり言うね。ポケモン研究所や家に連絡しないでとか…。本来、君くらいの年齢なら…親が1番頼りの筈だけど…。君は母親と仲違いでもしてるのかね?」
そうでは無かった…。セレナは母サキとは良く映画やショッピングする程仲は良かった。ただ…サイホンレーサーに成はりたく無かった…と言う理由で家を飛び出して来たのだった。今、家に帰ると多分…母の事だから、そう簡単に旅に出させてもらえないとセレナは思った。
トライポカロンのプロデューサーを務めるヤシオさんにホウエン地方を薦められて来たのだが…。このままカロスに戻ったらヤシオさんにも申し訳立たないと…思った。
ふと…その時、セレナの脳裏をある事が横切った。
「室内でビデオチャットって出来ますか?」
「出来るけど…どうしたの?」
カツヤは不思議そうな表情で答える。