セレナはカツヤに頼んでPCを持って来て貰った、WEB回線を通して貰いIDを入力するとセレナはバッグの中からメモ帳を取り出して番号を入力し始める。相手先との通信が始まると、モニターには1人の年配の女性の顔が映し出された。
灰色の髪をしていて、穏やかではあるが鋭さを秘めた瞳、それでいて優雅さと気品を漂わせる1人の女性は、セレナからの通信を受け取り笑顔で対応した。
「こんにちは、ヤシオさん」
「あら…しばらくぶりね、こんにちは」
「今日は、ちょっと相談したい事があって連絡しました」
「何かあったの?」
ヤシオの表情が真顔へと変わる。
「実は…その…私、ホウエン地方に来て、ちょっと怪我をしちゃったのです」
「まあ…大変、体の方は大丈夫なの?
」
「はい、私も今日、目が覚めたらしくて…」
「それって貴女、昏睡状態だったと言う事ね…、近くにお医者さんはいるの?詳しく説明を聞きたいのだけど」
「はい、隣にいます」
セレナはカツヤにモニターを見せる。モニターを見てカツヤは笑顔で話し掛けた。
「やあ、こんにちはヤシオさん。お久しぶりです」
「あら…こんにちは、お久しぶり。貴方が彼女の担当医だったの?」
「はい、そうです」
「彼女の容態はどうなのですか?」
「正直に申し上げて、しばらく休養は必要と申し上げます。体の方は順調に回復してますが…無理をすると怪我を長引かせる事になります。それよりも完全に回復するまで安静にしてた方が良いと話してますが…少々、聞き分けの出来ない方でして」
「失礼ね」
セレナが横から口出しをする。
「まあ…それは私も良く知ってます。本当に危なっかしい子ですから…」
「そうですよね、直ぐに旅に出たいとか申して困ってます」
カツヤは笑いながら答える。
「セレナちゃん、貴女はこれからどうするつもりなの?」
「こちらで怪我の治療をしてから、旅に出ようと考えています」
「それは止めなさい。ホウエン地方を誘ったのは私ですが…今は怪我の治療に専念する事だけを考えなさい」
「ですが…それでは、ヤシオさんとの約束を果たす事が出来なくなります」
「私との約束よりも、今…目の前の事を見つめなさい。怪我の治療もトレーナーとしての大切な役割1つ、このまま貴女が動けなくなったら誰が貴女のポケモン達の世話をするの?」
それを聞いて、セレナは大切な事を見失っていた事に気付かせられた。自分が動けなくなったら、自分のポケモン達の世話が出来なくなる。それは…同時にポケモン達を失う事にもなりかねない。
「そうでした、1番大切な事を忘れていました…」
「良いのよ…誰でも失敗する事はあるから、私も昔は無茶ばかりして失敗を繰り返してたわ」
「ありがとうございます。お話が出来て良かったです」
「あと…私から1つ相談だけど」
「はい…なんでしょう?」
「貴女の監督責任者の権を私の方に移動させてもらえない?」
「え…何故ですか?」
「貴女を見ていると危なっかしいからよ。これからは私が定期的に貴女を見る事にするわ、そうしないと、何時何処でまた怪我をするか分からないから…せっかくエルの様な存在を見つけたのに、それを失うのは勿体無いからよ」
それを聞いて嬉しさのあまりセレナは頰を赤く染めた。
「分かりました」
「貴女のトレーナー登録先をメールで送ってね」
「はい」
セレナが返事をするとヤシオとの通信が終了する。
通信が終わってセレナはカツヤを見た。
「先生がヤシオさんと知り合いだったんですね」
「いや…たまたま知り合っただけなんだ。それよりもセレナちゃんの方こそ、ヤシオさんに期待されている方が凄いよ、あの人に目を掛けられなんて相当凄いと思うよ」
「ヤシオさんに甘えたくなくてホウエン地方に来たの…でも、1人じゃまだまだ見たい…」
「まあ…失敗したら、またやり直せば良いよ」
「はい」
ふとセレナは、ある事を思い出してカツヤに言う。
「もう一件連絡したい所があるのですけど…良いですか?」
「構わないよ。僕はちょっと他の所も見て来るから失礼するね」
カツヤが部屋を出て行き、セレナはメモ帳に書かれている番号を再び入力した。
セレナが嬉しそうに相手先の人が出るのを待っていると、画面眩しい光が差す室内が現れて、モニターに見知らぬ男性が現れた。
「アローラ!」
地黒でゴーグルの様なサングラスを掛けて、キャップ帽子を被った細身の男性が出てセレナは少し戸惑った。
「え…あの…?」
「おや…?どちら様かな?」
「セレナと言います。あの…サトシ様はいますか?」
緊張しながらセレナは答える。
「ああ…ちょっと待っててね。おーいサトシ君、連絡が来てるぞー!」
画面の向こうで男性が大声でサトシを呼ぶ声が聞こえる。
ドスンッと画面の向こうで何か落ちる音が響いた。ドタバタと走って来る音が響いて来る。
「モクロー、ダメだよ。あ、ピカチュウ気を付けて!」
「オイ、危ないぞ!」
そう言っている間に画面の通信が途切れた。
呆気に取られたセレナは少し放心の状態で真っ黒になった画面を見ていた。
少し間を置いてから、もう一度番号を入力すると再びさっきと同じ室内が映し出された。そこには少年の姿があった。
「アローラ」
と手を振りながらサトシの姿が現れた。その隣には黄色の電気ネズミポケモンのピカチュウの姿もあった。
「ピカチュー」
と陽気に手を振っていた。