ポケットモンスターoriginal   作:Mr,J

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番外編
アローラ地方の乙女


複数の島々がある温暖な地域アローラ地方。

 

一年のほとんどが温暖な気候に恵まれた常夏の島々、そこでは他の地方では見られない固有のポケモン達が数多く生息していた。

 

ポケモン達は人間社会の中に溶け込み、生活基盤の一環を担う役割を果たすレイドポケモンと呼ばれる物達がいた。

 

ポケモンと言う生態系を詳しく知り、より良い社会人になる為にアローラ地方では子供達にトレーナーズスクールに通わせる設備を整えていた。

 

アローラ地方は、お世辞でも豊かな地域とは言い難い場所でもあり、スクールは強制では無く「通えれば通って良い」と、言ったシステムだった。

 

その為、全校の児童の数は数十人程度しか無く、そのうち毎日通う児童は、その半分程度だった。

アローラ地方、その中でも首都として中心的な役割を果たしているメレメレ島、そのスクールに少し前にカントーと呼ばれる、島の住人達には馴染みの無い地域から来た少年がいた…。彼はスクールに来るなり周囲の子供達と仲良くなり、いつの間にかスクールの人気者となった。

 

しかし…ある日突然故郷に帰るように身内からの連絡が来て、止む得ず島を離れる事となった。

それまで賑わっていたクラスの仲間達も、何か大切な物を失ったかの様に沈黙した日々が訪れていた。

 

 

メレメレ島の繁華街の外れにある白く大きな屋敷、その屋敷にりーリエは住んでいた。

 

「お嬢様、お食事ですよ」

召使いがリーリエの部屋のドアをノックしながら声を掛ける。

 

「いらないわ…」

 

「ダメです。昨日から何も食べていませんよ」

 

「うるさいわね!いらないったら、いらないの!私に構わないでちょうだい!」

 

ドンッと部屋の向こうからドアに何かが投げ付けられドアに当たる音が響いた。

「お願いだから…、今は1人にしておいて…」

 

涙を堪えながらリーリエは呟く。

その声を聞いた召使いは溜息を吐き部屋の前から離れて行く。

 

 

誰も居なくなった事を悟ったリーリエは、散らかった室内の真ん中で横たわる。

 

「サトシ…」

 

長くストレートに伸びた金色の美しい髪をなびかせ、両サイドに三つ編みを垂らし、雪原のように白くキメ細かい肌、細く華奢な身体に、エメラルドグリーンの大きな瞳、花柄のチェックのスカートをした白のワンピースに身を包んだ美しい少女…。

 

容姿端麗とか妖精みたい…と周囲から様々な褒め言葉をもらう少女だったが…彼女の今の姿は、それとは違っていた…。少女の円らな瞳には涙が溢れていた。

 

 

ある日突然トレーナーズスクールに現れた少年、ヘラクロスと言うポケモンに轢かれながらも元気に振舞っていた彼にリーリエは密かに好意を抱いていた。

 

逞しそうで頼りがいがあり、常に前向きの少年にリーリエは、友達以上の思いが込み上げられて彼に夢中になり始め、リーリエにとって初めての恋が芽生え始めたのであった。

 

告白しようと常に思っていたが、中々2人になれる時間が作れず、リーリエは自分の思いを上手く伝えれず、胸の奥でモヤモヤとした気持ちだけが渦巻き、スクールでは何時も気難しそうな表情を浮かべていた。

 

数日前、リーリエは少年と2人だけになる事が出来て、自分の胸の内を相手に告げようとした時、少年からいきなり意外な言葉が発せられた。

 

「オレ、しばらく島を離れる事にした」

 

「はい?」

 

リーリエは目が点になり、少年の言葉に理解するのに少し時間が掛かった。

 

「どうしても行かなければならない用事が出来ちゃってね」

 

「そ…そう、じゃあ仕方ないよね…ちなみに帰るのは家の事?」

 

「え…と、まあ…そんな感じかな…」

サトシは苦笑いしながら答える。

 

「そうなんだ…」

 

少し残念そうにリーリエは答える。本心は彼の母親から彼を奪い取ってしまおうとも考えた程であった。

 

 

入学の時、盛大に歓迎会を開いたにも関わらず、あっさりと別れの時が訪れた少年、リーリエはずっと自分の側にいて欲しいと願っていた。

 

それ以上に彼に付いて、ある噂が彼女に衝撃を与えた…。

少年の帰国は親の事では無く、彼の恋人が絡んでいるのでは…?との噂だった。

 

リーリエは、少年に恋人がいるのか?訪ねた時、彼は居ないと言っていたが…彼がモニターで相手と連絡しているのを見た人物が、相手の顔を見た時、子供の女の子が映っているのを確認した…との事だった。

 

「何かサトシの彼女は相当の美人らしいって…ククイ先生が言ってたよ」

 

マーマネがカキに向かって小声で話す。

「あり得ません!」

 

ビクッとしたマーマネとカキは、冷や汗を掻いた。

 

教室の反対側にいながらも地獄耳の様に2人の会話を盗み聞きしたリーリエが、2人の側まで行き話す。

 

「私の様に美人で可愛い女の子がいるのに、他の…何処の馬の骨とも知らない、女の所にサトシは行ったと言うのですか⁈」

 

側で聞いてたマオは少し呆れた表情でいた。

「ありゃりゃ…自分で可愛いとか美人って言っちゃてるよ…」

「重症ね…」

 

スイレンが穏やかな口調で言う。

 

「私は決してサトシが居なくなったから寂しいとか思っていません。ただ…突然の休学がどうしても納得いかないだけです」

 

「寂びしいから、納得したく無いだけじゃないのかな?」

「そうよね…」

 

笑い会うマオとスイレン、2人の話にリーリエが首を突っ込む。

「だから違います!」

 

その後、リーリエはククイ先生やオーキド校長に休学の許可を貰おうと話を持ち掛けるが却下された。

 

「何故、ダメなんですか⁈」

 

「君の場合は私事なんだろう?多分…サトシ君を追いかけて行きたいだけだと思う。彼の場合はちゃんとした理由があって…こちらの休学を申請したんだ、その辺の違いだよ」

 

結局、納得出来ないままリーリエは、そのまま部屋に閉じこもってしまった。

 

 

「サトシ…」

リーリエはバックの中に大切に保管して置いたタオルを取り出す。以前、サトシが汗を掻いた時に貸して、それを大事に持っていたのだった。

 

タオルに染み付いたサトシの匂いをリーリエは思いっきり吸い込む。

 

(あなたが欲しい、あなたのすべてが…戻って来たら迷わない、私…あなたのお嫁さんになるから…)

 

手元に置いてあったスマホが彼女を現実世界に引き戻した。

 

動画チャットからの呼び出しで、リーリエはうっかり左手で呼び出しに応じてしまった。

 

「アローラ、お久しぶり」

 

少し陽気な声で現れたのはマオと言う名の少女だった。彼女はリーリエの姿を見て少々驚きの表情をして

「あら…もしかして、お取込み中だった?」

 

少しからかいながら言う。それに気付いたリーリエは、急いで右手を隠し

「違うわよ!」

赤面しながら答える。

 

「ところで、何の様ですの?」

 

「いや…最近スクールに来ないから、どうしているのかな?…と思って連絡してみたの」

 

「ごめんなさい、私にもそれなりの用があるので」

 

「フフ…そうみたいね…」

少し疑ったような表情で目付きでマオはニヤリとリーリエを見る。

 

「言っとくけど、マオが思う様な事はして無いからね!」

 

焦りながらリーリエは声を上げて言う。

 

「ハイハイ、分かったから。ところでアナタにちょっとした情報を教えてあげようと思って連絡したの」

 

「何ですの?」

 

「今日、学校の校長とククイ先生が話しているのを盗み聞きしたんだけど…何でも今度ウチのクラスに新しい転入生が来るらしくて、その子がカントー地方のマサラタウンの子らしいのよ」

 

「え…本当⁉」

驚いてリーリエはおもわず起き上がる。

 

「まだ…詳しい情報は分からないけど、どうもウチの校長のコネで、向こうの従兄弟の博士に話を持ち掛けたらしいのよ。多分早ければ明日にも学校に来るかもしれないよ」

 

「そうなんだ、ありがとう教えてくれて」

 

「じゃあね」

マオは通信を切った、リーリエは好きだった少年に再開出来ると思い、胸の奥が熱く高鳴るのを感じた。

 

 

数日振りにスクールに戻ったリーリエは、しばらく休んでいた事に対して、皆に頭を下げてから自分の席に座る。

 

しばらくしてククイ先生が教室に現れた。教室に入ってリーリエが居る事に気付く。

 

「お、リーリエ今日は真面目に登校したんだね」

「はい」

 

「さて…授業を始める前にちょっと、皆に伝えたい事があるんだ。実は…うちのオーキド校長が皆の為にカントーにいる従兄弟を通して、新しい君達の友達を学校に招待してくれたんだ。紹介しよう、マサラタウンから来たサトル君だ」

 

そう言って教室に現れたのは、青い服を着て、キャップ帽を被った少し小太りの少年だった。どう見てもサトシとは程遠い感じの雰囲気がした。

 

リーリエは、ポケモンに触られた時の様なショックが起こり全身真っ白になる。

 

(先生…コレじゃないよ、ちゃんとサトシを連れて来てよ…)

 

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