ニビシティにある老人施設に白ヒゲを生やした年老いたサトシが居た。
ぽけぇ…と空を眺めているサトシ爺さん
「オレの夢は、世界1のポケモンマスターになることじゃぁ…」
と、毎日口癖の様に呟いて居た。
「お爺ちゃんー!」
黄色のピカチュウをイメージしたフードを被った女の子がサトシに会いに来た。
「おおッピカチュウ…戻って来てくれたか、会いたかったぞー!」
ギュッと抱きしめられて、女の子は苦しそうにもがく。
「お爺ちゃん、私はピカチュウじゃ無いよ」
「え?ああ…本当だ、どちら様でしたか?」
「もう…お爺ちゃんは、私は曽孫のリンよ忘れちゃったの?」
「すまん、すまん…」
「フフ…お爺ちゃん、最近物忘れが酷いわね」
リンの側に若い女性が現れて、サトシは思わず抱きしめる。
「おおッセレナー、会いたかったぞー」
「ちょっと、私はセレナじゃないわよ、それにお爺ちゃんの嫁さんは、セレナじゃ無いでしょう?」
「え…そうだっけ?」
「ほら…お爺ちゃんにとって1番大事な人がいるでしょう?」
「誰だったかな?カスミ、ハルカ、ヒカリ、リーリエ、マオ、スイレン…」
「お爺ちゃんったら、1番大切な人忘れちゃっているわよ。ア…」
「ヘックッション!」
サトシは突然クシャミをした。
「最近、鼻炎のせいかクシャミが多くて、すまないね。で…何の話だっけ?」
「そう言えば…お爺ちゃんのピカチュウは何処に行っちゃたの?」
「その…旅をしている時に、あんまりにも腹が減ったので、その…つい…」
「食べちゃったの⁈」
女性とリンは驚いた表情でサトシを見る。
「イヤァ…」
サトシは恥ずかしながら頭を掻く。
「だが…オレはあの時に誓ったんだ。ピカチュウの分も強く生きようと…そしてポケモンマスターに成ろうと決めたんだ」
「お爺ちゃんたら、ポケモンマスターになったのは、シンジ君とショータ君でしょ?」
「シンジ…ショータ?」
ブツブツと言いながら考える。
「どっかで聞いた事がある名前だが…イマイチ覚えが無いな、誰だったかな?」
「ハッハッ…最近物忘れが酷くなったのでは無いのかなサトシよ」
そう言って現れたのはスキンヘッドの年老いた男性だった。
「ハテ…どちら様でしたかな?」
「貴様ー!」
そう言って男性は片方の腕で首を巻き付けて、空いている手でサトシの頭をグリグリと擦る。
「カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ等…旅している時に毎日食事させてやった、タケシを忘れたのか」
「イタタ…思い出した」
そう聞いてタケシは、サトシから離れる。
「タケシさん、サトシより年上なのに、しっかりしてますね」
「フ…常に健康管理をしてますので、見た目よりも若く見られるのです」
「何だか賑やかですね」
穏やか雰囲気でピンク色の衣服を着た女性が現れた。
「あ…ジョーイさん、こんにちは」
「こんにちは、タケシさん」
「あら…どうしてポケモンセンターのジョーイさんが、老人施設にいるのですか?」
「私は、ポケモンセンターのジョーイを引退して、今はこちらの老人施設で働いてるのです」
「そうでしたか」
「ちなみに、こちらのジョーイさんは、サトシが旅だった頃からニビシティのポケモンセンターに勤めていた方なんだ」
「え…?それって…随分昔の事でしょう?」
「ジョーイさん、年は幾つなの?」
「お嬢ちゃん、女性に年を聞くのは失礼よ。フ…フフ…」
ジョーイさんが笑みを浮かべながら言うが、その笑みの奥には憎悪が増していた。
「そうだよリンちゃん、ジョーイさんの年齢を聞くのは失礼だぞ、決して彼女の前でババァとか百さ…グホッ!」
タケシが言葉を続けようとした瞬間、ジョーイの肘がタケシのミゾオチに当たり、すかさずウラ拳でタケシの頭部を当てた。
そのままタケシは意識を失った。
「アラ…タケシさんったら、突然眠っちゃたの。風邪ひくとイケないから、お部屋に戻りましょうね〜」
そう言ってジョーイさんはタケシを連れて行く。
2人の母娘は、突然の出来事に言葉を失って見ていた。
サトシはお茶を啜りながら外を眺めていた。
「ズズ…」と、渋い茶を飲みながらボォ〜っと空を眺めていた。
「今日も良え日じゃな…」