鉄血のオルフェンズ 真月-singetu- 作:villain
私の名前は望月・カナン。『ヒューマンデブリ』。
いろんな所を巡り巡って最近コロニー群の中でも最辺境のコランドコロニー群の第4コロニーに連れられてきた。
最初に私を買ったのは私と同じくらいの少女だった。後から知った事だが、自分はクセ毛と肌荒れで悩んでる所に髪も肌も綺麗な気にくわない奴が居たから買ったらしい。
親は土木屋を仕切る会社の社長をしていて、最初は力の無い女を買ってくるなんてと怒られたらしいが、その両親も娘の気迫に押され、「まあ、無理矢理使うか機械を使わせればいいか」ぐらいに思っていたらしい。
そこの機械は大半が阿頼耶識システムを積んでいたらしい。多くの人はモビルワーカーと言われて軍用の物を思い浮かべるだろうが、ここでは土木用のモビルワーカーも使われていた。
ここまで言えば察しのいい人はすぐ気付くだろう。
私は阿頼耶識の手術を受けされられた。3回手術を受けて正式に土木作業に参加させられた。
最初から手荒な歓迎だった。
端折って言ってしまえば、3人ほど『事故』で亡くなった。
まだ機械に慣れてなくてと嘘をついたものの。
私は仕事を辞めされられた。
次に売られた所は女性が働く事務職だった。私を買った人も女性だった。
しばらく、普通に仕事していたらその人に呼び出された。
どうやら同性愛者だったらしい。
仕事環境は良かったし、まだマシかと思いしばらく我慢したが、今度は男も連れてきたから次の日トラブルを起こして辞めた。
次は宇宙港などを担当する警備会社だった。
阿頼耶識を受けているという事で選ばれたらしい。
初めてモビルスーツと繋がった時の衝撃は今でも忘れられない。
鼻血を出したのは初めてではなかったけれど、殴られてもいないのに出てきたのは初めてだった。
その職場の人達は珍しく優しかった。
宇宙での作業は事故率も死亡率も高いからだろうと言われた。
初めて仲間ができた。優しい隊長の紹介で友達もできた。
時は過ぎて私が『鉄の女』だとか『ヴァルキリー』だとか言われて、会社の中で五本指に入る実力を手に入れた辺りだった。ドルトコロニー群の噂が入ってきて、私たちの会社にもクーデターの話が流れてきたのは。
近年富裕層と貧困層の格差が増えてきたからか、下級階級にストレスが溜まっていたらしい。
しかし、ドルトでも『鉄華団』とかいう団体が後ろについていたって話だったし、火星のクリュセから来た『革命の乙女』も一緒にいたという話だ。
私たちには後ろ盾やら後援者なんて物は無い。
そう思っていた。
意外とこの話に感化される人々はいるらしい。
テイワズの独立組織を名乗る『ティアーズ』が物資を含め支援してくれる事になった。
そして、クーデターは決行された。
私たちはいつも使っているスピナ・ロディでコロニー内と宇宙港を守る部隊に分かれた。
私たちC(チャーリー)は宇宙港を守る部隊になった。
しかし問題はそこからだった。
私達が乗り込んだスピナ・ロディは普通じゃなかった。
重鈍なMSで銃が撃てずにどう戦えというのだろう。
ギャラルホルンの増援に私達は蹂躙された。
危険を感じた私は咄嗟に機体から脱出したが、他のみんなを気にするほどの余裕は私には残ってなかった。
必死になって逃げた私はティアーズのコンテナの中に逃げ込んだ。
普段なら正しい判断とは言えないだろう。
しかし結果的に私は助かったのだ。
そのコンテナの中に一機のMSが隠されていた。
誰かが乗る予定だったのだろうか。ティアーズの船は真っ先にギャラルホルンに潰された。もし港内に居たとしても総攻撃を受けてる状態でパイロットが無事だとは思えない。そんな状況だった。
私はそのMSのコクピットに入った。
何故か阿頼耶識システムが載っていた。ティアーズに阿頼耶識を受けた人は居なかったはずと疑問に思ったが考えない事にした。
今思えば笑ってしまうが、私はそのMSに運命的な感情を抱いていたのかもしれない。まるで、盗んでくださいとでも言っているように思えたのだった。
私はそのMSと阿頼耶識を繋いだ。瞬間、スピナ・ロディとは比べ物にならない情報量が頭の中に流れ込んでくる。一瞬意識が飛びかけた。
「カハッ…ッ…ッハァ…ハァ…」
止まりかけた呼吸を整えて、改めてMSに意識を傾ける。
「ガンダム…アンドロマリウス…貴方の名前?…長いのね。後であだ名でもつけてあげる」
とりあえず今は…私に力を貸して。
そのグレイズは宇宙港内の進入に成功して完全に気を抜いていた。
「…?なんだ?エイハブリアクターの反応?どこに…」
次の瞬間そのグレイズの頭部を刀が貫いた。
後ろのコンテナを破って一機のMSが飛び出し、背負っていた刀を投げたのだ。
そしてそのMSはもう一本の刀をグレイズのコクピットに突き刺した。
「これで一機…奇襲は一機で限界よね…」
他のグレイズがこちらに気づいてもう包囲網を築こうとしていた。
「囲まれた…こうも狭くちゃ刀が振るえない。コロニー内か外か…中だと停電の可能性も…外か」
言って間も置かずバーニアが火を吹いた。宇宙港出口の方向にいたグレイズに一撃入れて外に出た。
「外にもいっぱいいるなぁ」
視界に入るだけでも母艦3隻とMS20機近くが居た。
「母艦を叩けば統率力が無くなってやりやすいかも…途中の敵は無視で良いかな」
薄く灰色がかかったガンダムのバックパックが火を噴き宇宙空間を飛ぶ。
「ぐぅ…やっぱり機動性が違う…スピナ・ロディなんかの比じゃない!」
でも…動いてくれる!
その感覚が自信へと変わり、その機体はすれ違ったグレイズの腕を、脚を、頭を切り裂きながら進む。
目の前にギャラルホルンの戦艦が近づく。
「狙うは艦橋…収納される前に叩く!」
無数の弾幕をかい潜り、弾が掠る事も厭わず進む。
「今更気づいたってェ!」
艦橋に向かって減速せずに突撃する。
その突きは、いとも簡単に戦艦の装甲を貫き、その日二つ目の白星をあげた。
「あと二隻…けど、もう艦橋は狙えないか…」
残りの二隻の母艦は艦橋を仕舞い始めていた。
「もう無理かな…後悔はしてないさ」
半ば諦めかけていたが、ふと思い出した。
「あ、この子のあだ名付けてなかった」
そんな事を思っている時にも目の前にグレイズが迫る。
「くっ…まだ!」
グレイズはアックスを振り下ろすが、直前でアンドロマリウスはグレイズの拳を掴み、腕を止めた。
そしてグレイズのコックピットに剣を突き刺した。
「まだ!諦めてなんてたまるかぁ!」
その声に呼応するようにガンダムアンドロマリウスが動いてくれる。
私は諦めるのをやめた。
続くかどうかは謎です←