ジョジョの奇妙な冒険 第5部外伝〜真実への探求〜 作:京都府南部民
ホル・ホースって一体どこ出身なんでしょうね?
一応、アメリカ人だと思ってるんですけど……
「腕がぁ~」
「ガンバレー、島まで500mぐらいだぞ」
「……ちんきしょー!」
ボニートは半ば…いや、ほぼやけくそになっていた
テンガロハットの相棒は棒読みの応援しかせず、おまけに向い風
それでも漕ごうとしているんだから見事なものだ
「えっさ、ほいさ!おーえす、おーえす!」
「おぉ、速い速―い。岸が見えてきたぞ、ほれもうひと踏ん張り」
「手で踏ん張るって、どういう意味だぁ!?」
オールを激しく回転させ、泡柱が立つ
島の岸にやっと辿り着き、ブチャラティチームからは少し離れた所にボートを止めた
「上腕二頭筋が…ぜぇ……俺のチャームポイントが……………はぁ、ぜぇ…ぱんぱんになっちまったじゃ、ねぇか」
すると、ブチャラティチームの方からおもちゃの戦闘機が、疲労困憊のボニートへ飛んできた
それはナランチャのスタンド『エアロスミス』だ
エアロスミスにはレシートが引っかかっていて、何かを伝えに来たようだ
広げると「ブチャラティ先に行った。けど少し遅い。船上で待機」と書いてある
「ありがとよー!待機だな?了解!」
ボニートの大声に、ブチャラティ側から手が振られた
それを確認し、ボートに深く座り込む
そういえば、この2人は昨日から寝ずじまいだ
いつの間にかホル・ホースから寝息が聞こえる
「ふわぁ~あ、人に漕がせておいて先におねんねかよ…」
瞼がだんだんと重くなる
視界も霞んできて、眼が…だんだんと……
「(あぁ……そういや…徹夜か……グロッキー…)」
うつらうつら……うつらうつr………………
~~~~~~~~~~~~~~
「、ニート!……ボ…きろ!」
「ん?なんでぇ?」
ホル・ホースに激しく揺さぶられ、寝ぼけ眼を維持しつつ、一欠伸
気付けに頭をしばかれ、返す手で頬をぶたれ、もう一発頭をしばかれる
「おい、アレを見ろ!」
「ん~う?あーれー?」
ボニートは寝起きに弱いわけではないが、睡眠時間たったの20分では足りない
列車での戦闘・徹夜の運転・オール漕ぎの疲労が溜まっているのだ
せめて、後40分は寝かせなければ満足できない
ホル・ホースの言う『アレ』とはブチャラティ達の事だった
ついさっきまで、帰りに何を食べるかを議論していたような感じは無い
何より驚愕なのが、全員上陸していることだ
ボスの指令に真っ向から逆らっている
「お前達とはここで別れるッ!オレと一緒に行動すれば、オレと同じく『裏切り者』になってしまうからだッ!」
「「!?」」
眠気が一気に吹っ飛んだ
ギャングの世界で最も犯してはならない行為
「裏切り」の言葉
「何故だ…なぜッ!?」
「詳しい説明を……聞かせてくれブチャラティ!」
数々の暗殺チームとの死闘により、ブチャラティチームの結束力は以前よりも固くなっていた。ジョルノという新入りも活躍し、結果は上々
それが今、大きく揺さぶられている
「ボスは娘を…血の繋がったトリッシュを自ら始末するために、オレ達に護衛の任務を与えた。オレはそれを……見逃すことはできなかった…だから『裏切っ』た!」
ブチャラティの裏切る理由は、ギャングという業界では認められるようなものではない
自分の父親が殺されようと、部下・上司を葬られようと『裏切り』という行為そのものは、やってはいけないのだ
アル・カポネであれラッキー・ルチアーノであれ、裏切りに寛大な態度を持った者はいない
「そんな無茶な……」
「正気かよ…ブチャラティ」
「裏切り者が、どんな目に遭うか知らないじゃないだろうに…」
フーゴ・ミスタ・アバッキオも懸念を抱いた
ナランチャに至っては、どうしていいかわからず言葉を発することもできない
あまりにも、無謀だ
部下が100人いるわけでもないし、他の組織から保護されるわけでもない
正真正銘、孤立することになるのだ
「ともに来るというのなら、階段を降りボートに乗ってほしい」
そう簡単に同意できるわけがない
金でも誇りでもなく、命を懸けなければならないのだから
「ついて来いとは言わない……オレの勝手な判断だ、義理を感じる必要はない。だが、一つ偉そうなことは言わせてもらおう」
覚悟を決めた顔は、どっちつかずの状態にいる部下たちに一つの確信をもたせた
『後戻りをするつもりはない』
この確信が、彼らの不安に拍車をかける
「オレは『正しい』と思ったからやったんだ。ボスは必ず倒す。後悔は無い……こんな世界とはいえ、オレは自分の『信じられる道』を歩いていたい!弱点さえ見つければ…今は逃げるだけだが、『弱点』は必ず見つける!」
その言葉にメンバーはそれぞれの動きを見せたが、心情は一致している筈だ
ジョルノは既にブチャラティと共に行くことを決意しており、迷いはない
だが、他のメンバーは違う
信念に従っても、組織に従っても嫌な結末ばかりが見えてしまう
「言いたいことは分かったよ…それに、それが正しいというのも頷ける。だけど、理想だけじゃ生き抜けるものはいないんだ。現実が…この組織があっての僕らなんだから」
階段をから一歩離れ、「拒否」の意を示した
フーゴは現実に従い、組織に従う
ただ、それだけの事。賛否を設けるのはナンセンスかもしれない
「そうだ、フーゴの言うとおりだ。ブチャラティ、もうあんたに場所は無い。それに俺が忠誠を誓うのは組織。あんたじゃない」
アバッキオも拒否。だが、おかしなことに足は階段へと向かっていく
「しかしだ…よく考えてみれば、俺も行く場所の無い男。おまけに落ち着けんのはよぉ~、あんたと一緒の時だけだ」
「ア、 アバッキオ!?」
普段のアバッキオなら、難なく組織に従うハズだ
フーゴはそれを計算に入れていた
アバッキオの判断はそれを裏切る形になった
しかし、その予想を一番裏切ったと感じているのは、アバッキオ本人であろう
この判断はいつもの合理的な彼の思考ではない
「ボスを倒すってんなら……次の幹部は、このオレだろうな。ほれ、亀を忘れてるぜ」
ミスタもそれに続く
途中ジョルノに「ボスは隠し財産は~」と呟いているが、彼がこの決起に参加することは変わらない
「おまえら、どうかしてるッ!分かってんのか?死にに行くことになるんだぞ!いや、このヴェネツィアから出ることも…………」
フーゴは、いつもの紳士然とした態度を崩し、非難の言葉を投げかけた
彼なりにチームを心配しての発言だ
とはいえ、ボートに乗ったメンバーは皆覚悟を決めた顔で、瞬時にその制止が無駄であることに気づく
「ナランチャは?」
最後のメンバー、ナランチャ・ギルガ
最年少という訳ではないが、彼は物事を決める事に関しては、周りに比べて幼かった
ブチャラティからの恩も、組織の恐ろしさも、どっちも感じすぎている
「ブチャラティ……お、おれ…」
「道は自分で決めるしかないんだ…ナランチャ。オレは何も言わん、だが忠告はしておこう」
「えっ?」
「お前には向いていない」
「っ!…うぅ~うぅうう~」
その宣告は、ナランチャの悩みの解決にはならなかった
生半可な覚悟で来られては、ブチャラティ達もナランチャ自身もいらぬ危険を招く可能性がある
「ボートを出せッ!俺たちは『裏切り者』になる!」
「いや、待てよ」
ぴしゅん!
海面に小さくも鋭い水柱が立つ
それはボニートの放った弾によるものだ
オートマグⅢカスタム
.30カービン弾を撃てるオートマチックはこれぐらいなものだ
「他の幹部が目の前にいるってのに堂々と裏切り宣言か。いい度胸してんな、ん?」
「…………ボニート」
いつものおちゃらけた顔ではない
射抜くような目に、眉間に寄せられた皺
本気の顔だ
「どうしても、止めるか?」
「止める?生易しいこと抜かすんじゃねぇ。仕留めるんだよ」
「ブチャラティ!」
「おぉっと、動くなよ。『皇帝』の弾で要らぬ穴は開けたくねぇだろ?」
状況、ボニートが完全に主導権を握っていた
ボートの上なので、常に揺れておりオートマグの照準は定まらないが、ボニートが外したとしてもホル・ホースの『皇帝』が彼らを襲う
弾丸もスタンドなのだ
止めることも、そのまま無くす事も可能
ミスタも似たようなスタンド『セックスピストルズ』を持っているが、この場合は先に撃ったモン勝ち
ボニートチームの優勢に変わりは無かった
「部下どもは見逃してやる。唆されたって形で上役とはうまく話をつけておこう。せめてものお情けだ。だが、ブチャラティ、お前はダメだ。ボスに深い忠誠があるワケじゃねーが、ギャングにもルールってもんがある」
「……………」
ブチャラティが無抵抗の証として、両手をゆっくりと上げる
「ミスタ、お前愛用のS&Wもそうしてもらおうか。海に捨てろとは言わん、ボートの上にぽんと落とすだけで良い」
「…ちっ、結局かよ」
武装解除をさせたことにより、依然ボニートの有利が確立された
キャプテンビヨンドの能力を活かし、ブチャラティのボートに近づく
「『失望した』なんていい子ちゃん気取るつもりは毛ほどもねぇ。それに裏切りはこの業界じゃ、良くも悪くも華だ。……尤も、咲かせ方を間違えたみたいだがな」
「悪い冗談だな、オレが求めているのは華じゃない…これだよ」
「?」
ブチャラティは握っていた拳を開け、その中を見せた
しかし、そこには何もない
ただの手のひらがボニートの目に映るだけだ
一体何だ?何を意味している?
「グァッ!水が入って…っ!?」
振り向くと手漕ぎボートが真っ二つに分かれ、タイタニックよろしく沈んでいた
ホル・ホースは間一髪岸に逃れることができている
つまり……
「ブチャラティ!」
そう全てブチャラティの罠だった
こちらが『皇帝』の弾丸を設置していたように、向こうもスタンド『スティッキー・フィンガーズ』でボートにジッパーを取り付けていたのだ
してやられた
だが、これで諦めるようなボニートではない
「逃がすかぁ!キャプテンビヨンドの『掴み』に制限は無ぇ!」
海水を豪快に持ち上げ、モーターボートを横なぎにする形でぶつける
常人であることの是非を問わず、これを喰らえば死にはせずとも致命傷を負っても不思議ではない
波が収まり、海に安定がもたらされる
そこに……ブチャラティ達の船は無い
「沈んだか……あるいは」
「クソッ、逃げられた」
ボニートははっきりと見ていたし、見られていた
波がぶつかる前に、あの新入りが
ジョルノ・ジョバァーナと視線が合ったのだ
彼の手に持っていた亀が、彼の仲間の無事を示していることにも気づいている
「ホル・ホース、適当な足を探しといてくれ。…ボスの所に行ってくる」
「帰ってきたころには首だけだったり」
「心配しろよ、雇い主が死ぬかもしれねぇんだぞ?」
「ヒヒヒヒッ、その為の前金だろ?」
そうホル・ホースに情はあれど、忠は無い
その情も大体が女性に向けられるもので、今までの任務で無理して男を助けたことはない
伊達に暗黒街女性基金の副理事を務めているワケではないのだ
「嫌なヤツだ。さて……行ってみますか」
大鐘楼の頂部を望む
イタリアの闇を全身で感じなければならない
覚悟はしている。だが、いざ直面した場合、それは機能するのだろうか?
ボスを相手に………
かつての父はそれを探ったがために母と共に処分されたと聞く
カエルになるか鷹になるかはボニート次第
~~~~~~~~~~~~~~
過去
私はそれをすべて消してきた
時間
私はそれをすべて消すことができる
未来
私はそれを知ることができる
この絶頂を脅かされないために
だが、たった一人の男にそれが狂わされている
何故、一時の情に任せ、女と体を重ねてしまったんだろう
娘さえ生まれなければ……いや、それは違う
本当に忌むべきは自分だ
過去を消し絶頂に立つ、それが私だ
その過去を消しきれなかったのは自分だ
だから、始末しなければならない
その昔にも、自分を探っている者がいた
今このエレベーターに乗っている者の父親だと聞く
「ボニート・E・ゼルビーニ……父親と同じ轍を踏むか、それとも…」
帝王は、このわたしだ
依然変わりなく
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