ソードアート・オンライン ある少年の歩んだ軌跡 作:アゲハ蝶
感想もよろしくです。
74層の《迷宮区》に棲息する強敵リザードマンロードとの戦闘を終え、帰り道を辿りながら10分ほども歩いたオレ達は、前方に出口を見出して同時にほっと息を吐いた。
今のオレ達のホームタウンは、50層にあるアインクラッドで最大級の都市《アルケード》だ。
規模の面から言えばはじまりの街が大きいが、あそこは今や《軍》の巣窟となってしまっているので立ち入りにくい。
手持ちの瞬間転移アイテムを使用すればどこからでも即座にアルケードへ帰還できるが、少し値が張る代物なので緊急時以外はあまり使いたくない。
まだ日没までは猶予があるし、一刻も早くねぐらに転がり込みたいという誘惑を振り払って、オレ達は目の前に広がる森へと足を踏み込んだ。
他愛のない会話をしながら歩いていたオレ達の耳に、不意に聞き覚えのない獣の鳴き声が聞こえた。
高く澄んだ、草笛のような一瞬の響き。
キリトはぴたりと足を止め、慎重に音がした方向を探った。
基本的にオレとキリトの二人で行動するオレ達は《索敵スキル》を鍛えている。
もちろん、不意打ちを防ぐために鍛えているのだが、スキル熟練度が高いと隠蔽状態のモンスターやプレイヤーを発見出来る。
そうこうする内に、どうやらキリトが先に見つけたらしい。
「ナオト、見つけた。2時の方角、10m先だ」
そう小声で囁いてくる。
見つけた。
確かに大きな木の枝かげに隠れている。
それほど大きくはない。
木の葉に紛れる灰緑色の毛皮と、体長以上に長く伸びた耳。
視線をよーく凝らしてみると、モンスターの名前が表示された。
その名前を見た瞬間、オレとキリトは息を呑んだ。
《ラグー・ラビット》、超のつくレアモンスターだ。
このウサギ、とりたてて強い訳でも経験値が高い訳でもないのだが―――。
オレはステータス場面から弓を取り出し、背中に掛けた筒から矢を取り出し、狙いを定める。
静かに引き絞り……一気に放つ!
放った矢は狙い違わずラビットにヒットし………
一際甲高い悲鳴が届き、HPバーがぐい、と動いてゼロになった。
ポリゴンが破砕する聞きなれた硬質な効果音。
思わずガッツポーズ。
即座に右手を振り、メニュー画面を呼び出し、アイテム欄を開く。
一番上にお目当ての品はあった。
《ラグー・ラビットの肉》、プレイヤーの間での取引では10万コルは下らないという代物だ。
そんな高値がつく理由はいたって単純。
旨いからだ。
こんな食材をこの先入手できる可能性は限りなく低いだろう。
なので、キリトと相談する事にした。
「なあキリト、この肉どうする?オレ自身としては凄く食べたいんだが」
「でもなあ……、調理は誰がするんだよ」
「そうだなあ……。アイツに頼むとか」
「アイツって、まさか……」
「ああそうだ、アスナに頼もうぜ」
「そうするか…。オレも食べてみたいし」
そうと決まれば早く呼び出さねば。
ステータスからフレンドリストを開き、アスナを呼び出す。
…………
コールして数秒、お目当てのヤツが出てきた。
「何?ナオト君」
「オマエさあ、今ヒマ?」
「そりゃあヒマだけど、どうかしたの?」
「いや、実はさ、今キリトと一緒にラザー・ラビットの肉手に入れたんだけどさ、それでオマ
エに調理を頼みたいなあと」
「ホント!?私も食べていい?」
「調理してくれるならオマエとキリトで半分こしてもらって構わない」
「ホント!?やった!でもさ、調理どこでするの?」
「あ、忘れてた」
「どうせそうだと思った。だから今回は食材に免じてわたしの部屋を提供してあげなくもない
けど」
「オレは別にいいけど、キリトを呼んで大丈夫なのか?」
「あんたがいる限り変な事はしないでしょ」
「りょーかい。キリトもそれでいいか?」
「ああ、というか正直早く休みたい」
「という訳だ。どこで待ち合わせだ?」
「61層のセルムブルグの転移門で待ち合わせよ」
「なら今から行くよ」
「待ってるわよ」
そうして通信を切る。
「という訳だ、こっから直接で転移するぞ」
「おう」
アイテム欄から瞬間転移アイテムを取り出してこう言う。
「「転移!セルムブルグ!」」