小町ポイント クリスマスキャンペーン   作:さすらいガードマン

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……短かすぎ? そうでもないよ。 ヒントは()()()()()()



 **********

 

 ポワポワポワンと、どう考えても非現実的な効果音を立ててピンクの煙が広がり俺の視界を埋め尽くす。自分の指先も見えないほどの濃い煙だが、不思議と息苦しさは感じない。

 立ち尽くすこと数秒。ゆっくりと霧が晴れていくと、そこには……

 

 

 海老名さんが、制服姿で待って……げ、……その隣で、()()()ミニスカサンタ姿で待っていた。って、何やってんのこいつら。

 

 さらに霧が晴れ、周りが完全に見えるようになる。ここは2年F組 俺たち三人の教室だ。

 

「腐っふっふ~。ヒキタニくん、はろはろ~。キミの恋人の戸部っち連れてきたよ~」

 

 海老名さんが眼鏡をきらーんと光らせて言う。

 

「いや海老名さんおかしいから」

 

 俺が呆れてそう言うと、戸部も、

 

「あー、やっぱないわー。ヒキタニ君と俺が恋人とかないわー」

 

 そうブツブツ言ってる。

 

「当たり前だろうが! なのになんでわざわざそんな格好してんだよ」

 

「いやでもー、海老名さんすごく喜んでくれるっつーし? したら、やるしかないでしょぉー」

 

 戸部……お前馬鹿なの? 死ぬの? そりゃ海老名さんは喜ぶだろうけど、そのために俺と、とか……。 

 

「違うな……間違っている。間違っているぞ戸部よ!」

 

「まあまあ~。間違っているとかいないとか決めつけるんじゃなくてー、時には()()()()()()()()()()()()()ってのもいいと思うんだよ~? ね、ヒキタニくん」

 

 くっ、やはり一般人には○ルーシュの言葉は通じないか……俺にギアスがあれば……。

 

「ね、やっぱり隼人くんじゃないとダメ?」

 

 俺が頭を抱えてるのを見て、海老名さんが申し訳無さそうな顔で聞いてくる。

 

「そういう問題じゃなくてだな……」

 

「そんなヒキタニくんには大サービス! 今からやるゲームをクリアすれば、戸部っちに代えて隼人くんをプレゼント!!」

 

 だからどっちもいらねーっつうの!! しかし、

 

「……ゲームって?」

 

「今から一時間、戸部っちから逃げ切れればキミの勝ち。……ただし、学校の敷地から出ちゃダメ。ヒキタニくんがスタートしてから5分後に戸部っちが探し始めるよ」

 

 逃○中かよ……だが、ハンターが一人なら、上手く隠れてしまえば楽勝か……?

 

「ただし!」

 

 と、海老名さんが続ける。

 

「五分おきに戸部っちが一人づつ追加されるよっ」

 

 その声にタイミングを合わせたように、教室の扉が開く。

 

「「「「つーことらしいんでー、オレらのことも、オナシャス!」」」」

 

 十人のミニスカサンタ戸部が入ってきた。……もうヤダ。何このカオス……。

 

「じゃあゲーム開始だよ、ヒキタニくんが1時間戸部っちから逃げ切れたら約束通り隼人くんをプレゼント!!」

 

 だからいらんて。

 

「に、逃げ切れなかったら……?」

 

「ぐふ腐っ♪ それはそうなってからのお楽しみ~」

 

 絶対に楽しくないやつだな……。

 

 

 

「じゃあ、スタートっ」

 

 彼女の声に、俺は仕方なく教室を飛び出した…………。

 

 

 

 **********

 

 

 

 その後逃げ回ること40分、俺は今絶体絶命の場面を迎えていた。

 

 特別教室棟三階の廊下、階段付近。正面には二人の戸部(ミニスカサンタ)、後方には一人の戸部(ミニスカ略)……階段の下からは戸部(ミニ略)が二人。屋上へのドアは鍵がかかっている……逃げ場は無い。もはやこれまでか。

 

 

 ゆっくり、ゆっくりと戸部(略)の魔の手が迫ってきている……。

 

 俺は……、

 

 

こんな世界線は間違いだっ。リーディングシュタイナーを発動する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれれ、よくここを見つけたね~」

 

「おかげさまでな……」

 

 

 

 **********

 

 

 

 ボフッ、と音を立て、視界が真っ白に染まる。……そう簡単に終わってたまるかよ。

 

 俺は逃走中に手に入れたアイテム、「煙玉」を使って戸(略)たちを足止めすると、立ち入り禁止の鎖をくぐって屋上への階段を駆け上がった。

 そして俺は、屋上への扉の角を少し強く押してこじ開け、どうにか屋上に這い出す。あとはその扉をすぐ閉じ、その端に、目の前にあったコンクリートブロックの破片を食い込ませて固定した。これでもう下からは開けられない。

 

 よし、これで(略)の追撃は封じた……あとは時間が過ぎるのを待てば、見事葉山をゲットだぜ! ……だからいらんて。

 

 

 

 一息ついてふと屋上を見渡せば、フェンスにもたれるようにして海老名さんが立っていた。

 俺がここに登ってきたことに少しの驚きも見せない。……予想していた? あるいは待っていたのか?

 

 

 

 **********

 

 

 

「で、こんなとこで何やってんの」

 

「おやおや~、私に文句とか言わないんだ」

 

 文句はある。山ほどな……でも、

 

「いやまあ、所詮夢だしな」

 

 その答えに、彼女は何か満足したような笑みを浮かべる。

 

「へぇー、やっぱり()()()()()て、他の男の子達とはどこか違うよねー」

 

 いや、どこかどころか何から何まで違いますがなにか? ……特に目とかね。

 

 

 

 海老名さんは、空を見上げて少し何かを考えるような表情をした後、ゆっくりとこっちを向いた。

 

「ねえ、これって夢なんでしょ。今キミもそう言ったもんね」

 

「そりゃ、現実にあんな戸部が何人もいたらウザくてたまらんだろ……」

 

「まずそっちなんだ……」

 

 彼女は少し呆れたように笑い、

 

「じゃあさ、ちょっと話、聞いてくれる?」

 

 そう言って、すっと笑みを消した。

 

 

 

 

「わたし、さ、昔……中学生の時、男に襲われて、酷い事されかけて、さ、」

 

「ちょ……おい、いいのかよ、俺にそんな話……」

 

「だって、ヒキタニくん、いつも言ってるんでしょ、『ぼっちにはそもそも話を広める相手がいねえ』とか」

 

 あー、確かに言ったような記憶があるな。……由比ヶ浜め、いらんことを話しやがって。

 

「ま、それにその時も、最後の一線だけは守れたんだよね、たまたま人が通りかかって。でも……」

 

 空を見上げるようにして彼女は続ける。

 

「でも、それ以来、私は『男』を同じ『人間』として見れないの。どんなに良い人、優しい人でも、私と同じ生き物だと思えない。……理解不能の、気味の悪い何かに見えるの」

 

「いや……でも、それで何でBLとか……それこそ平気なのかよ」

 

「うーん、やっぱり『最後までされてない』のが大きいのかな、極端な男性恐怖症って感じにはならなかったんだよね。だけど『私』に女性の部分を求めてくる『男』はやっぱり気持ち悪い。吐き気がする……だからなのかな?」

 

「だからって……何が?」

 

「ふふ、今ヒキタニくんの言ったBLだよ。……だって、ホモなら、私に『女』を求めないでしょう」

 

 ……海老名さんが、ただ腐女子ってだけじゃない闇みたいなもんを抱えてんのはなんとなく感じてたけど、まさかこんな……。そんな事を聞かされてしまった俺はどうすればいい?

 

「それに、隼人くんたちと一緒にいるのもそう。……意味わかる?」

 

「男避け……か」

 

 確かに、葉山たちとつるんでる女子に声をかけられるのは、よほど自分に自身があるやつか、あるいはただの勘違い野郎だけだろう。戸部だって、黙ってればツラは悪くないしな。

 クラスで時々腐女子がバレるような行動してるのも、もしかしたら()()()なのかもな。

 

「でも私、キミには興味あるな……()()以来、男子にそんな事思うの初めてかも」

 

 表情を動かすこと無く、海老名さんは一歩、二歩と俺に近づいてくる……。背筋にぞわりとしたものを感じて、俺は無意識に後ずさった。

 

「ねぇ……私のリハビリに協力してよ……。ここ、現実じゃないんだし、さ」

 

 どこか焦点の合っていないような目で俺を見ながら淡々と語り続ける目の前の少女に薄ら寒い恐怖を覚える。

 

「い、いや、そういうの俺は……」

 

 さらに下がろうとした俺の手首ががっしりと捉えられた。

 

「おい、……痛っ」

 

 反射的に振りほどこうとした手に鋭い痛みが走る。……どうやら爪を立てられたらしい。

 

「ここまで聞いて……逃げるなんて許さない」

 

 躰がこわばって動かない。まるで蛇に睨まれた蛙になった気分だ。……そしてそのまま俺の、それこそ蛇が獲物を締め付けるかのように、彼女の腕がゆっくりと俺の背に廻り――そのまま唇を奪われ、いきなり舌が入ってくる。

 

「むッ……がっ」

 

 押し返そうとして……手の甲に新たな痛み。 喰い込んだ爪で皮膚が切れる感覚に抗おうという気力が削がれる……。

 

 

 

 魅力的な女の子にキスされている、という状況に、しかし感じるのはただ恐怖。

 それでも、口腔内を蹂躙されるうちにゾワゾワと肌が粟立つような……脳が麻痺していくような快感が拡がって行く。

 

 

「はうッ」

 

 いきなり股間を鷲掴みにされた。……我ながら情けないが、この状況でもしっかり反応して元気になってしまったらしい。

 

「ふふ……、この程度で起っちゃうんだ……。結局男なんてみんな……」

 

 ようやく俺から口を話した彼女は、顔を歪めてぼやくように言った。

 

 

 

「ああそうだよ。 ……悪いか? 可愛い女子にキスされて何にも思わなかったら、そいつは男として終わってんだろ。――男子高校生なんていつだってエロいことばっかり考えてんだよ」

 

 俺がいきなり反論したことに、彼女は一瞬怯んだが、

 

「だから、何? キミなんて怖くないんんだから……」

 

そう言って彼女はキッとこっちを睨み、指先にさらに力を込める……ったくマジ痛いっつーの。

 

「だったら何で手が震えてんだよ。……何で目に涙溜めてんだよ」

 

「…………っく」

 

 海老名さんの手から力が抜けていく。俺の手を開放して、彼女の腕はだらんと垂れ下がった。

 強がっていても、怖かったんだろう……『男』が。無理をしてたんだろう、と思う。

 

「俺は何もしねーよ。……つーか出来ねーよ。ヘタレだからな。まあ、リハビリぐらい手伝ってやるから、その、もっと……ゆっくりっつうか、自分のペースでいいんじゃないか?」

 

 

 

「……友達、だったの」

 

 俯いたままで彼女が口を開く。

 

「私のこと、乱暴しようとしたの……それまで優しかったのに、急に、さ。……クラスメイトで、その時、私が一番気になってる男の子だった。初恋……だったかもしれない」

 

 それは……キツイ、な。

 

「その……何ていうか……」

 

 海老名さんは顔を上げる。涙のあとはあっても表情はどこか晴れやかだ。

 

「ほんと、ここまで話したんだから、ちゃんと責任取ってよね~ ヒキタニくん」

 

「せ、責任って……」

 

「何だと思った? ただ、最後までリハビリ付き合ってって事だよ~」

 

 そう言って彼女は正面から俺に抱きついてきた。一瞬ドキリとしたが、彼女は全身カチコチ、体は小刻みに震え、額には脂汗が浮かんでくる。まあ、色気のある雰囲気じゃないな。

 

「おい、ゆっくりでいいって」

 

「大丈夫。私頑張ってみるから。……そしたら比企谷くん、ご褒美くれないかな?」

 

「……ま、俺にできる範囲ならな。……なんかあんの?」

 

「あのさ、比企谷くん、」

 

 お、もしかしてこれって俺に告白の流れ……?

 彼女は飛び切りの笑顔で言う。

 

 

 

 

 

「せっかくだから、戸部っちと()()()とこ、見せてくんない? で、できればヒキタニくんのヘタレ受けでっ!」

 

 

 

 こいつ……腐ってやがる。遅すぎたんだ……。

 

 

 

 

 




 
 ちょっといい話で終わるかと思えば……。 さて、この後半部分、どれくらいの人が見つけてくれたんですかね? 自分で変な仕掛けしといてなんですが、誰にも読んでもらえなかったらそれはそれでショックかも。


薙ぎ払えっ! すべて(戸部とか)を燃やしてやり直すのだ!

腐海の毒に冒されても、なお腐海と共に眠るというのか。


5月20日 誤字修正 報告感謝です。


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