小町ポイント クリスマスキャンペーン   作:さすらいガードマン

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 ** 最新話リンクから来た方への前書き **

 今年もクリスマスシーズンがやってまいりました。2017年にちなんで17本目のくじを追加です。ついでにシャッフル。


 
 



 **********

 

 ポワポワポワンと、どう考えても非現実的な効果音を立ててピンクの煙が広がり俺の視界を埋め尽くす。自分の指先も見えないほどの濃い煙だが、不思議と息苦しさは感じない。

 しかし周りが見えない以上動くわけにもいかずただ立ち尽くす俺……………………。

 

 

 

 

 

 ……………………。

 ………………。

 …………気が付くと、すぐ目の前には英文法の問題集とノート。それを押しつぶすようにして机に突っ伏してしまっていたようだ。……どうやら問題集を解いている途中で寝落ちしてしまったらしい。

 俺は自室の勉強机からのっそりと身を起こし、唇の端を手で拭って涎を垂らしていないことを確認する。ん? なぜかこの時期にTシャツとスウェットの短パンだけしか着てねえ……。よっぼど寝ぼけてたのか俺、風邪引いちまったらどうすんだよ…………。

 

 ……それにしても変な夢を見てしまった。

 

 小町ポイントで恋人が貰える、とか……アホか。あんなくじ引いたぐらいで彼女が出来たら苦労はないっつーの。よっぽど溜まってるのかね俺。

 まあかねがね、日々獲得している小町ポイントの使い道については疑問に思っていたのだが、もしほんとに何かに交換してもらえるものならぜひお願いしたいものだ。

 

 恋人……は、欲しいか欲しくないかで言ったら勿論欲しいとは思う。だが実際恋人が出来たら面倒くさいことも多そうな気がするし、なにより対人スキルゼロに近い俺には宝の持ち腐れになること請け合い。なんならせっかく貰った恋人にその日のうちに振られて小町に罵倒されちゃうまである。小町の罵倒とかそれなんてご褒美? いや、俺にそんな性癖は無い……無いよね?

 うん、賞品を選べるものならやはり違うものがいい。具体的に言えば現金とか現金とか現金とか。将来働かずに暮らすにあたって貯蓄は多いに越したことはないからな。

 

 ところで今何時だ? 俺はどれ位居眠りしてしまっていたのだろう。振り向いて部屋の掛け時計で確認しようと振り返り……、

 

 

 

「や……やっはろ~……」

 

「その……こんばんは、でいいのかしら? 比企谷くん」

 

 

 

 目の前の光景が理解できずに一度目を閉じ、軽く目頭を擦ってからもう一度目を開く。

 

 俺のベッドの上に、布面積の少ないサンタ服――ほとんどセパレートの水着のようにも見える――を身に着けた、雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣が複雑な表情を浮かべて腰掛けていた。

 

 

 二人は目のやり場に困るような……ぶっちゃけ非常にエロいおそろいのサンタ服でそのベッドに並んで足を投げ出すようにしており、俺はその目の前一メートル程の所にある勉強机の椅子に座っているという状況なわけだ。

 まあ彼女たちにしてみれば、(さっきのコマチエルのくじ引きが単なる夢じゃ無いのなら)俺がピンクの煙を纏って目の前に現れたように見える状況なのかもしれないが。

 

 目の前の現実感が希薄になる位に刺激的な光景を眼福と言って堂々と見つめ続ける勇気も無く、かと言って全く見ないというのももったいないと思ってしまい、つい横目でチラチラ見ずにはいられない。

 

「二人共……何で……?」

 

 俺が思わず漏らした質問とも独り言とも取れるような言葉に、雪ノ下と由比ヶ浜は、はっとしたようにお互い目を合わせ口を開きかけるものの……また何も言わずに俯いてしまった。……おい、頼むからこの状況を説明してくれ。

 

 

 しかし……目の前の美少女二人の衣装――あえて言わせてもらえばエロサンタ服――の破壊力がヤバい。

 

 二人共着ている物はおそらく同じもの。上衣は赤い柔らかそうな生地のチューブトップ状の服で、上下の部分に白いもこもこの縁取り。躰の正面にあたる部分に三つ、ボタンを模したような白いフェルトが縫い付けられている。

 下は上と同じ生地の、今にも下着が見えそうな超ミニスカート。こちらは太もも側にだけもこもこが付いていて、おへそのやや下にあるウエスト部分はベルトを模したやはり白のフェルトで飾られている。

 

 二人が着ているのが同じ服であることで、タイプの違う二人の美しい少女の……()としてのそれぞれの魅力を強烈に引き出している。

 

 由比ヶ浜の方は……このエロい躰にチューブトップのサンタ服とか……これはもう危険物だろ! 筒状の柔らかそうな上衣は窮屈そうに膨らんで、それでも若干サイズが合っていないのか、上から収まりきれないメロンちゃんがくっきりと谷間を見せている。

 それでいてウエストはちゃんと細いものだから、押し上げられた服の裾は隙間が空いていて……、可愛らしくチラチラ見えているおへその方から滑らせれば腕とか何かとかスポッと間に入ってしまいそうだ。

 さらにスカートから覗く脚は、決して太くは無いものの女の子らしくむっちりと肉がつき、触り心地も実に良さそうに見える。

 

 そしてもう一人――雪ノ下雪乃。胸は……流石に隣に鎮座ましますパイヶ浜大権現――もとい由比ヶ浜と比べればだいぶ慎ましいサイズではあるが、別に飛び抜けて小さいというわけでもない。彼女のレモンちゃんもサンタ服の下でしっかりと自己主張をしていて、細いながらもちゃんと女の子らしい……というかモデルのような躰のラインを見せている。

 真紅の衣装からスラリと伸びる雪ノ下の手足は驚くほど細く……その肌は自らの名を具現する如く透き通るように白い。それをほんの僅かピンク色に染め、艶やかな長い黒髪や澄んだ黒い瞳とくっきりとしたコントラストを示している。陳腐な例えかもしれないが、童話の白雪姫が現代に現れたならきっとこんな感じなんじゃないか。

 

 

 

 そして……彼女のほのかにピンクに色付いた小さい唇がゆっくりと動く。

 

 

 

「いつまで私たちを舐め回すように見ているのかしら? エロ企谷くん」

 

 おい……せっかく童話のお姫様に例えてやってるんだからもう少し夢のある発言をしようよ雪乃姫。

 まあ確かにガン見してしまっていた事に弁明の余地は無い訳だが……だってハチマン、男の子だモン。

 

「あ……悪い。 …………その、つい、な。 見惚れちまった」

 

「!! 見惚れ……貴方は何を言って……いえ、別に……いいのよね」

 

 俺の素直な答えに、何故か雪ノ下は動揺して頬を赤らめ、いつものように罵倒しかけて……急にしおらしくなる。

 

「いいって……」

 

「その、貴方に見てもらうつもりで着たわけだし……由比ヶ浜さんには『これはやり過ぎじゃないかしら』って言ったのだけど……」

 

「え~、最後はゆきのんも自分で着るって決めたじゃん。それにコマチエルちゃん?も、インパクト有った方が印象に残るとかゆってたし」

 

「コマチ……」

 

 無責任に煽りやがって。いや、結果を見ればここは感謝すべきところか?

 

 

 

「で、さ……ヒッキー、どう、かな?」

 

「どうって……」

 

「そのね、嬉しい……とか、さ」

 

 はいもちろん嬉しいです。けどこれ素直に「嬉しいよワンワン!!」って答えて良いの? 

 

「それは……俺だって男だし、『嬉しくないことも無いような気もしないでもない?』」

 

 うむ、このくらいにしておこう。

 情けない答えではあるが、由比ヶ浜は俺の照れまくっているであろう顔を見てなんとなく納得してくれたようだ。

 

 そして……ゆっくりと話し始める。

 

「あたし、さ……もう気づいてると思うけどヒッキーが……好きなの。 ……でも、でもゆきのんの事もすっごく好きで、ヒッキーとゆきのんが仲良く口喧嘩してる奉仕部が好きで……だから…………」

 

 視線を左右にフラフラさせながら、一生懸命言葉を探すようにとつとつと話す由比ヶ浜。俺と雪ノ下はそのもがくような真摯さに気圧されるように静かに見守るだけ。

 

「だから……だから三人がいいの! ……三人の…ままが……。ヒッキーのこと独り占め出来なくたって、ゆきのんなら……その、三人で恋人ってゆーか……」

 

 そこまで言って彼女はようやく俺と目を合わせる。

 

「だめ……かなぁ……」

 

 くっ、そんな何かに縋るような顔で上目遣いとか反則だろ……。そんな風に言われたら絶対に駄目なことでもおーけーと言ってしまいそうになる。

 三人で恋人――それって二股とか言われるやつじゃないのか。雪ノ下と由比ヶ浜。こんなとびっきりの女の子二人相手の二股とか何処のアルトくんだよ。

 

『お前たちが……俺の翼だッ!』

 

 とかやっちゃって良いの? いや俺バルキリーとか乗らないけどね。

 バルキリーといえばガウォーク形態って超格好いいよな。ホバリングで高速移動しながらの銃撃戦とか男のロマン。前にメサイアバルキリーのプラモ作って得意げに小町に見せたら、

 

「飛行機に手とか足出てて変」

 

 と言われてしまった……。くそう、女子供にはこの良さが分からんらしい…………。

 

 

 

「ヒッキー……?」

 

 はっ! あまりにも自分のキャパをオーバーした状況に意識が銀河の果てまで飛んでしまっていたぜ。

 

 

 

 まあ……ここで正直に言えば、俺は雪ノ下と由比ヶ浜の両方に好意を持ってしまっている。勿論恋愛的な意味で、だ。だからこそ、彼女らからの好意を薄っすらと感じつつもそれ以上の関係に進めず……答えを出せずに逃げていたのだ。

 それが……二人を同時に恋人に出来るとか…………。俺は良いけど――いや良くないけど! ただ「男」の本音で言えば、女子二人が納得ずくだというならこんなに都合のいいことは無い。

 

 そう――納得。恋愛脳の由比ヶ浜ならともかく、あの雪ノ下がこんなのを納得するはずがない。

 俺はようやくそう考えるに至り、彼女に問うように視線を向ける。だが、

 

「私も、それでいいと……いえ、貴方が良いなら由比ヶ浜さんが言ったように……三人で居られたら……と思っているの」

 

 彼女――雪ノ下雪乃は意外な答えを返してきた。

 

「だから……」

 

 雪ノ下はそこまで言うと、彼女たち二人はお互いに少しずつ身を引いて間を空け、目配せするようにして俺にそこに座れと促す。

 

「それで……良いのかよ……その……」

 

「……確かに色々間違っているのかもしれないわね。けれど私は……私も、その……貴方に好意を持っていて、比企谷くんを求める気持ちが確かにあるの。でも、同じ私は絶対に由比ヶ浜さんとの関係を失いたくないとも願ってもいる」

 

 ……あの雪ノ下からはっきりと「好意を持っている」と言われた。今まで、もしかして……、と思うことは過去に何度もあったけれどその度に「そんなことある筈が無い」と否定してきた――逃げていた。

 

「もちろん、これはあなたの望む『本物』とは違う……」

 

 雪ノ下は俺の目をまっすぐに見て続ける。

 

「けれど、これは夢……なのでしょう? 私たち3人が、私たちに都合のいい夢をたまたま同時に見てしまったからと言って……誰かがそれを咎める、というようなものではないでしょう? 『ただの夢』だもの」

 

 そうだ、ただの『夢』だ。

 

 まあ、俺のエロい妄想やら夢やらに、雪ノ下や由比ヶ浜にご出演頂いたことは過去に幾度となくある。 ……いやしょうがないだろ! これだけきれいで可愛い女の子たちが身近にいたらさあ。……俺だって色々盛んなお年頃の高校生男子なわけだし。

 だとするならば、過去にみたそんな夢と今回の夢に如何程の違いがあるというのか。

 

 ふ。こんなのはただの言い訳だ。雪ノ下が「ただの夢」と言ってくれたのだって、煮え切らない俺のために逃げ道を用意してくれているだけなのだろう。

 ただの夢? そんなわけある筈がない。今目の前にいる彼女ら二人は俺のエロい妄想が作り出した偽物じゃない――そう、どうしようもないぐらい判ってしまうのだ。

 

 でも……。言い訳できるなら、ただの夢だという自分を騙せる逃げ道があるなら……。

 

 俺は彼女らに誘われるまま、二人の間に腰を下ろす。ベッドのスプリングがたわみ、同時に右から由比ヶ浜が、左から雪ノ下が俺の腕を取り、指先を絡めるようにして手を繋いできた。

 両手に花、ではあるのだが……なんだか両腕を拘束された感じ……。二人との距離が近い。位置的に丁度奉仕部で由比ヶ浜と雪ノ下がゆるゆりしてる席の間にぎゅっと割って入った様な体勢。

 繋いでいる掌が、寄りかかってくる腕や肩がとても柔らかくて、ふわりといい匂いが漂ってきて……。

 

 いつも自分の寝ているベッド。ホーム・アウェイで言えば間違いなく超ホームなポジションであるはずなのにひどく落ち着かない……。

 

 自分の心臓の音がうるさいぐらいに聞こえてくる。俺が何も出来ずに固まっていると、彼女たちは更に身を寄せてくると、躰をひねるようにして左右から俺の顔を覗き込んだ。

 雪ノ下と由比ヶ浜の二人が僅かの間視線を交わし合う…………と、由比ヶ浜はその場を譲るように少しだけ身を引いた。

 

 雪ノ下が俺の顔を見上げる……俺と目が合うと、その少し潤んだ双眸をそっと閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 最初は、雪ノ下との唇をそっと触れ合うだけのキス。ほんの僅かな、唇をついばむような動きだけで俺の心臓はドクンと脈打つ。

 

 ゆっくりと触れていた唇が離れ……。俺は右に振り向き、由比ヶ浜とも同じようにキスを……

 

「んあっ?」

 

 変な声が出てしまった。由比ヶ浜がいきなり舌を入れてきたのだ。びっくりして顔を引くと、彼女はイタズラが成功した子供のようにえへへと笑い、それから目を閉じてもう一度顔を寄せてくる。なんとなくだが……最初のキスを雪ノ下に譲った事に……由比ヶ浜なりに何か思うところがあっての今の不意打ちなのかもしれない。

 再び唇を合わせる。また由比ヶ浜の舌が侵入してきて……今度は俺も応じて舌を絡めに行く。

 

「ふ……う、んん……」

 

 薄目を開いて見れば、由比ヶ浜は上気したような表情、全身をほんのりとピンクに染めて艶めかしい息を漏らしてる……。うわこれなんかすげえエロい……。

 

 ふと、反対側……雪ノ下に握られている左手にぎゅうっと力がこもった。

 

 そうかこれ今、すぐ横で雪ノ下に見られてるんだよな……。気になってつい、薄目のままそちらに視線を向ける。

 雪ノ下は……今正に舌を絡めあっている俺と由比ヶ浜を、切ない……羨ましそうな――なんだか拗ねたような表情で見ていた……。

 これはもしかして……嫉妬……してるのか? あの雪ノ下が? 

 そう思うと雪ノ下がものすごく可愛く思えてくる。…………あ。

 

 目が合ってしまった。

 

 今自分がしていた顔を俺に見られていた事に気付いた雪ノ下は、一瞬真っ赤になって顔を伏せ……それから俺の左手を握る手にこっちが痛いぐらいの力を込め、由比ヶ浜から引き剥がそうとでもするかのように俺の腕を引いた。

 ぽうっとしている由比ヶ浜からゆっくりと離れ、雪ノ下の方へと振り向く。

 引き寄せられた左手はそのまま雪ノ下の太ももの上に乗せられるような体勢になってしまい、掌に触れる滑らかな肌の感触に俺は一瞬怯む。けれど彼女はそんなことを気にしている場合では無いといった様子で……待ちきれなかったかのように空いていた左手を俺の右耳の下辺りに這わせ、挑むような表情で唇を重ねてくる。吐息が熱い。 ……そしてそのまま深く舌を絡めてきた。

 ほのかに甘い彼女の唾液が俺の口腔内で融けていく……。見れば、俺を可愛く睨んで「どうだ」とでも言わんばかりの顔。ふっ、こいつ、こんな事でもやっぱり負けず嫌いなんだな……。

 ならば負けるわけにはいかない。俺は雪ノ下の舌を押し返し、そのまま彼女の口内に俺の舌を侵入させていく。

 かすかな抵抗……そのまま押し破って雪ノ下の口腔内で彼女の舌を嬲る。

 

「ん…………あん……んんっ、ぁ……」

 

 いまだ俺の掌が手が触れたままの、彼女の素足の膝がぴくんと震える。

 

 …………やられた……。これは予想してなかった――雪ノ下、こんなにかわいい声出すのかよ……。

 背筋にぞわぞわっとした感覚が走り、俺の舌先によりいっそうの熱が篭っていく……。

 

 そんな風につい雪ノ下とのキスに夢中になってしまっていると、今度は由比ヶ浜に右腕をぐいぐいっと引っ張られる。いやそんなことしたら大事なメロンちゃんが俺の腕に当たっちゃうでしょ? 

 彼女の方を振り向くと、ほっぺをぷく~と膨らませた彼女がこちらも拗ねたような……ってゆーかこっちは思いっきり拗ねてる。ヤキモチ焼いてるの全く隠す気ないな……。こいつ……わかり易すぎて可愛いじゃねーか!

 

 そして俺は再び由比ヶ浜と唇を重ね……彼女も雪ノ下に負けまいとするかのように、より激しく舌を絡めてくる…………。

 

 

 

 

 

 

 …………いつの間にか俺たち3人は躰を投げ出すように俺のベッドに倒れ込み……俺が仰向けになり、左右に寄り添うように寝そべる、肌も露な雪ノ下と由比ヶ浜と交互に抱き合うようにしてキスする、というのを何度も繰り返している。

 

 時にはまるで俺を奪い合うかのように……そして時には俺とのキスを相手に見せつけるかのように…………俺の唇を貪るようにして唾液を交換していく……。

 二人とも上気して薄っすらと汗ばみ、ほんのりと赤みを帯びてきた肌からはなんともいい匂いがしてくる。由比ヶ浜からは柑橘系の……果物のような甘い匂いが、雪ノ下からは花の――バラか何かの香りが……シャンプーだか香水の香りだかは分からないが、それが二人の汗の香りと渾然一体になって、甘い毒のように俺の精神を麻痺させていく。

 

 肌を触れ合い、互いの口腔内を刺激し合うという物理的な快感……そして、自分を好きだと言ってくれた女の子に、違う女の子とのキスを――舌を絡めあっているのを見せつけて……それをすぐ間近から嫉妬の色を帯びた目でネットリと見つめられるという背徳的な快感……。しかもそれが二重に重なり合って…………。

 

 ……これは……ヤバい。

 

 脳の奥のほうが甘く痺れたようになってクラクラしてくる…………。「脳が……震える」ってこういう感覚か……。

 

 ヤバい。ヤバすぎて魔女に呪われて首が九十度ぐらい曲がって死んじゃってもまた死に戻って来ちゃいたいまである。

 

 あまりといえばあまりの状況に、いい加減俺もだいぶおかしくなってきたらしい。けれどおかしくなっているのは俺だけでは無い。

 

 俺に覆いかぶさるようにしていた雪ノ下に、由比ヶ浜が絡みつくように手を伸ばして躰を寄せていく。

 

「ゆき……のん……」

 

「由比ヶ……ま……さん……近……い…………、ぁむ……んんっ」

 

 雪ノ下は少しだけいやいやするような素振りを見せたが、最後は逆らいきれずに由比ヶ浜に唇を奪われた。……瞬間、俺に寄り添って脚をゆるく挟むように伸ばしていた彼女の白い太腿がきゅうっと俺の膝辺りを締め付ける。

 

 俺の目の前わずか三十センチ。由比ヶ浜と雪ノ下が熱に侵されたような表情で舌を絡め合っている。由比ヶ浜のほうが積極的で、雪ノ下はされるがままに受けている……という感じ…か。

 以前から、この二人がゆりゆりしたらどっちがタチでどっちがネコなのかにはちょっと興味があったのだが……どうやら雪ノ下のほうがネコらしい。猫大好きフリスキーの雪ノ下さんのことだ、自分がネコでさぞ本望であろう。 

 

 俺がそんな馬鹿なことを考えている間にも二人の行為は更に熱を帯びてきて……。

 

 由比ヶ浜と雪ノ下はお互いの唇を甘噛するように……ついばむように求め合う。俺にとってよく見慣れた天井を背景に、彼女たち二人の舌がお互いの口内をチロチロと行き交っている……。

 

「ゆきのん……好き……んむ……っはう……ん」

 

「んっ……はぁー……む……んぁん……んぐ……」

 

 由比ヶ浜がぬるりと舌を押し込むようにして絡まった唾液を送り込み……雪ノ下が観念したようにこくんと喉を鳴らす…………。

 

 目の前わずか十数センチのところで展開されるあまりにも艶めかしい光景に、また……ざわざわと脳が、心が締め付けられるように震える……。

 

 思わず二人を抱きしめ、未だについばみ合いを続けている彼女らの唇の間に舌で割って入り、二人の混じり合った唾液を絡め取る。

 

「あ……もう……ヒッキーはぁ……」

 

「んっ……は……貴方ね……こんな……」

 

 二人は少しだけ俺に抗議するような顔を見せた後、二人で目を見合わせて微笑み、二人同時に俺に口づけしてくる。

 

 三人でするキス。窮屈で、三人の唇と舌先だけが同時に触れ合う……見方によっては滑稽かもしれない体勢。

 

 でも、俺はその滑稽ささえもひどく愛おしくて……二人を抱きしめる腕にもう一度強く力を込める。

 

 三人でいられるなら……間違っていても――堕ちて行っても良いと……そう、思った。

 

 

 

 

こんなのは欺瞞だッ! 違う道を探そう(もったいないけど)

 

呪いに囚われ、ゆっくりと堕ちていく……

 

 

 

 




 いまさらの追加ですが……まあ今回はボーナストラックみたいなものなので桃色成分マシマシでお送りしました。当初から構想だけは有ったお話です。
 メインヒロインズのお話が、一話ずつ追加したお話に比べて短いので救済措置?みたいな。

ご意見・ご感想お待ちしています。


12月19日 誤字修正。 いつもご報告ありがとうございます。


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