皇国の魔法と少女たち――或いはとある人殺し   作:蟹ノ鋏

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誠にありがとうございます。
お気に入りにしていただけるとは思ってもいませんでした。うれしい限りです。

思ったより観覧数が多いので試しに投下します。
この物語はフィクションかつ作者の妄想を詰め込んだだけの作品となっております。
具体的には書きたかったけどかけなかった設定やらを詰め込んでいるだけの自己満足の作品です。
基本的にもう一つの作品の息抜きに書いているので投稿速度や質についてはご容赦ください。

ストーリーもヒロインも伏線もあったりなかったりします。
完結するかどうかも未定です。
ボチボチ書いていこうと思います。


登場人物

俺  ・・・・・・・『主人公』
メイド・・・・・・・『主人公のメイド』
少女 ・・・・・・・『被害者』


02 ヒイロドール

 結局のところ仕事が終わり次第そのまま直帰したのだが、伝令役のかの衛兵が再び現れ報告その他諸々の雑事をこなすうちにすっかり日は暮れ、澄んだ夜空を見上げながら帰ることとなった。

 

「ただいま」

 

 家の中に入ったところで直ぐに扉を閉め、かけてもかけなくても大差ない鍵をかける。寒さを防ぐための二重の玄関。この国は冬の寒波や豪雪に慣れている分こうした防寒は整っている。部屋の中はかなり暖かく住みやすくできていた。

 

「おかえりなさいませ、旦那様」

 

 声がかけられた方にはロングスカートにエプロン、白と黒を基調とした機能性を重視し装飾は最低限に抑えながらも華やかさを損なうことなくデザインされている、由緒正しいメイドたるメイド服、我が家の家事全般担当、一人しか居ないけど女中頭、つまり俺のメイドがいた。いいよねメイド。この世の幸せとはメイド共に暮らすことにあると言っても過言ではない。コスプレのちゃちな作りのメイド服とは違い布地からデザイン、装飾に縫い糸までこだわり、月給の半分以上と半年の月日を費やして制作した(作ったのは俺ではないが)。正統派の正統派なメイド服は露出を少なめにし、色合いや飾りを地味なものにして、女主人(つまりはご婦人)と差別化を図るために作られたものだ。まあ露出が多いのはどこぞ国の文化がメイドを魔改造してああなった気はするが。それはともかく、メイド服にはそもそものコンセプトとして派手さや妖艶さはない。だがそれがいい。機能美には芸術にはないある種の美しさが存在するように、正統派なメイド服にはエロさを超えた魅力が介在する。もちろんメイド喫茶のメイドもあれあれで素晴らしいものがあるが、仕事としての――所謂本物のメイドはメイドの極みであり至高の傑作である。

 詰まるところ、俺のメイドは素晴らしい。

 

「失礼ながら旦那様。約五百字にもわたってメイドへの情熱を叙述する前に外套を脱いでお着替えになるべきでは?」

 

「ああ、その通りだな。悪い、ついメイドが素晴らしくて。――ていうか、旦那様とは?俺には嫁もいなければ結婚の予定ないが」

 

「大丈夫です。私が旦那様を婿にもらいますから」

 

「そういう意味じゃない」

 

「それに私旦那様の愛人壱号ですし。きゃっ!」

 

「無表情かつ棒読みで恥ずかしがられてもな……。それに俺もお前も未経験者だし」

 

 童貞と処女が嫁だの愛人だのと語ったても笑い草にしかならない。

 

「メイドの嗜みとして房中術を学んでおりますから、夜のお世話は一通りできます。なんなら今晩試してみますか?」

 

「パス」

 

 怠いから。今日も人仕事してきて割りと疲れている。屋根に登るのは結構辛いし。外で待つのはかなり寒い。

 

「つれない方ですね。あまりゆっくりしていますと大変なことになりますよ?」

 

「何が?」

 

「具体的には私が理性を失って襲いかかります」

 

「辞めてください」

 

「まさかの解雇通知!!」

 

 メイド服は、脱いでいってね。次に雇う人に着せるから。それワンオフだし、複製するにも材料がないから作れないし。作るのは俺じゃないけど。

 

 じゃれつくのもそこそこに。

 

「では、荷物をお預かり致しますね」

 

 メイドは業務を始める。

 

「処理は任せる、好きなようにしろ」

 

 そう言って俺は子供一人くらいなら入ってしまうだろう大きさの麻袋をメイドに手渡した。

 

「ふむ、軽いですね。少女ですか?」

 

「十そこらの箱入り娘だ。品はそこそこだが胆力は大したもんだよ。選択突きつけたら目を見て頷いたよ」

 

「少女拉致して監禁凌辱調教のフルコース。流石鬼畜な旦那様ね」

 

「誰が鬼畜か」

 

 いや。

 やってることは似たようなもんだが。少なくとも字面だけ見たら半分あってる。

 それに俺は鬼畜ではないが、人殺しだしな。

 

「随分と優しいのですね。生かしておくなんて」

 

「死ぬか生き地獄か。それだけの違いだよ」

 

 他人の人生を滅茶苦茶にし、歩むはずの道を閉ざして、選びたくもない選択を突きつける。そう考えると鬼畜か。天魔外道と呼ばれてもおかしくないぐらいに。

 

 つらつらと客観的に自己評価していると、メイドは麻袋を床におろし開封し始めた。

 別に縛っているわけではないが、意外と開くに力がいる。少なくとも中から開けるのは不可能だった。

 

「御開帳〜」

 

 鼻歌でも歌いそうなほどにうちのメイドは機嫌がいい。何か理由があるのか聞くのは億劫なためやめておく。

 

 麻袋から出てきたのは栗色の髪をした少女。

 特に手足を縛ってはいないが、舌を噛み切られると厄介なので猿轡の要領で口に布を巻きつけておいてある。騒がれるのも面倒なので。ただまあ麻袋に入れて運んでいる途中は眠っていたのかほとんど動かず、全く騒がなかった。

 雪国特有の防寒対策が行き届いている家屋は寒さを防ぐために壁を厚くし、窓を二重にしていたりなどしているため、副次的な効果としてかなり防音もできている。内からの音は外にもれず、外からの音は聞こえづらい。

 特に冬の間は人々が家の中に篭りきりなのでいくら屋内で騒ごうと気付かれることはなかったりする。

 

 そんな状況においてだ。

 少女はただ只管に髪の色と同じ栗色の純粋な瞳で俺のことを見続けていた。

 

 純粋とは表現したもののこの場合の純粋とは一体何だ。

 無垢な目で人を見続けることか?

 俺は人殺しである。

 目の前にいる少女の両親を殺し、その現場を見られ、少女自身も轡をして麻袋に詰めて拉致して来たことになる。

 では、この少女どうしてここまで混じりけのない目を向けるのだろうか?

 俺が見る限りでは、人殺しに対しての怯えや、肉親を殺したことへの憎しみなどの感情は伺えない。

 唐突に事が起こりすぎて少女が状況を呑み込めず困惑しているということが最もあり得るかもしれないが、それにしたって放心していたりおどおどしている様子がなく、妙に冷静な様子である。

 一体何を考えていたらこの少女にとっては絶望的としか言えない状況でここまで純粋な目をしていられるのか。

 

 この状況に慣れているとか。

 

 ……あり得ないな。もしそうだとしたら面白くはあるが、面倒だ。

 

「おお~綺麗な栗色の髪!!手入れも行き届いている。お肌もつるつるだしいい匂いもする。お高い石鹸を使ってますね、これは。しかも……かわいい~!美少女ですね美少女!!おっと、私としたことが興奮して忘れてました。いま解いてあげますからね~――よし、うん!!口元もかわいい!!」

 

 メイドが口枷を外して完全に少女が自由の身となる。

 それにしてもこのメイド、テンション高いな。

 少女も少女でこれだけテンションが高いメイドがそばにいても表情が変わらずにこちらを見続けている。

 

 動じていないというよりは眼中にないという感じだ。

 

 余計にこの少女が何を考えているのかがわからない。

 ただの興味関心ではないだろうし。

 物怖じないというよりは寧ろ気にしていない。

 何かありそうな、或いはこちらを観察しているのか。

 

「お兄ちゃんは私とおんなじ?」

 

 少女の第一声はそれだった。

 声は少しかすれているが高く、幼い子供のそれだ。

 ただ、やはりというか、連れてくるときも思ったが、想像よりも言葉遣いが砕けている。

 華族の娘であることを鑑みると違和感がある。

 

「同じ?……あっ、あー!!この娘、シャニ様と同じで『プレーン』ですよ!!珍しい」

 

 さて、一体どうしたものか。

 テンションが高すぎて喧しい領域にまで達している俺のメイドは、特に隠す気はなかったが俺の名前と俺の適性を一発でバラしている。

 どこから咎めていくか非常に迷うことだが、まあ今はメイドのことはどうでもいい。

 

「――スレイ、少し黙れ」

 

「――申し訳ありません、我が主」

 

 一言で直ぐに下がってくれる俺のメイドはやはり素晴らしい。

 雇っている甲斐があるというものだ。

 

 相も変わらず一連の流れに反応すら見せず俺のことを少女はじっと見ている。

 凄いなこいつ。

 もはや尊敬を覚えるよ。

 

 それにしても『プレーン』か、確かに珍しい。

 人間には生まれながらにして持ちうる適性があり、それによって魔術師、魔法使い、魔導士の三つに区分される。

 最も数が多いのは多種多様なことができる魔術師。

 偏りが激しいが独特で特殊な才覚を持つ魔法使い。

 圧倒的かつ大規模な能力を持つ魔導士。

 細かい分け方はいくつもあるが大きくこの三つに分かれ、誰もがこのどれかの適性を持つのが普通だが、極稀にこの三つの適性を持たないどころか全く魔に関しての適性を持たない人間がいる。

 それを『プレーン』と呼ぶ。

 レアリティを言えば一万人に一人しかいないと言われている魔導士よりも少ない。

 俺も自分以外の『プレーン』に出会うのは初めてなぐらいだ。

 

 付け加えておくが『プレーン』は確かに珍しいが魔に関して何もできないだけでそれ以上特に何もない。

 むしろどんな人間でも使えるような魔術などが使えない分不便だし欠陥ともよべるだろう。

 つまるところ落ちこぼれで出来損ないである。

 しかしながら、魔術なんて使わなくても生活はできるし、平民は魔術なんて扱えないし、魔法や魔導は尚更いらないし、女子ならば嫁いでしまえればいいのだからあまり重要なことでもないのは確かだ。

 

「さて、おんなじ、とそう言ったな。『プレーン』という意味か?」

 

 俺は見つめ返すように、少女へと問いかける。

 栗色の目には俺の黒色の目が映る。

 深淵ならば見つめ返されるだけで済むが、この少女は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――私とおんなじ、日本人、でしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ほぉ」

 

 

 成程。

 ああ、そういうこと。

 これはこれは、なんとまあ、面白くなってきやがった。

 だからか、だから俺を見つめていたわけか。

 純粋な期待だったのか。

 強ち興味関心というのは間違っていなかったわけだ。

 口元が緩むのが自分でもわかる。

 

 

「よし、良くわかった。その答えは君の期待通り“YES”だ。そうかそうか、それは成程だ!うん、ならば些事はさっさと済ませてしまうか。スレイ、直ぐに彼女に枷を付けろ。できるだけ丁寧に、手早くだ。終わるまでに俺は食事でも作っておこう。なに、大丈夫だ。こう見えて一人暮らしていた分まともな食事は作れる。ああ、そういえばまだ君の名前を聞いていなかったな、俺はシャイニード・レイン――向こうでは鬼怒 陽真(きぬ ようま)と呼ばれていた」

 

「レミヴァ・フォン・クローラー――元、只見ほつれ」

 

 当たり前だが聞いたことのない名前だ。しかし耳慣れている名前だった。

 

「スレイ、さっそく始めてくれ」

 

「了解しました、我が主」

 

 俺のメイドは頷くとすっとレミヴァの首元へ近寄った。

 レミヴァの低い身長に合わせて腰を落とし首筋に顔を近づける。

 メイドの口が小さく開く。

 鋭い犬歯がちらりと見え、そのまま躊躇なくレミヴァに突き刺さる。

 

「っ!!」

 

 流石に噛まれたことには驚いたのか、或いは単純に痛がったのか、レミヴァの目が見開く。

 

 俺のメイドの目が赤く光る。

 朝焼けのような爽やかな緋色の瞳。

 

 この国では碧眼が多く次いで茶色や栗色、僅かに黒目。しかし、緋色に限ず赤色系や金・銀、中には紫とかもいる。それは人間が持ちうる瞳の色ではない。そんな人間は生まれてこない。ならば何故緋色の目のメイドがいるのか。

 答えは簡単、彼女は純粋な人間ではないからだ。

 この世には因子と呼ばれる生まれつきに持ちうる性質がある。

 分かりやすく言えば遺伝子みたいなもんだけど、しかし遺伝子とはだいぶ違う。

 ていうか遺伝しない。

 因子とは人が持って生まれることがある一種の才能である日突然覚醒し、その因子特有の性質を得ることができるというものだ。

 親が因子を持とうが子に継がれることはなく、移植なんてこともできない。しかし、人間の生来の性質として生まれ持っているものである。

 その因子は獣系統、幻想系統、特殊系統、無系統の四つに分かれるのだが詳しいことは割愛。

 メイドのことを説明するとメイドには幻想系統の因子があり、その性質として彼女は目が赤い。

 

 透き通るような白い肌で緋色の目をしたスレイが年若い少女の首筋に噛みついている。

 

 その様子を見れば誰でも否が応にもかの化け物を思い浮かべずにはいられない。

 

 怪異の王、吸血鬼。

 

 スレイの持つ因子はまさに吸血鬼のそれである。

 彼女は吸血鬼の性質を持ち合わせている。

 

 しかしながら吸血鬼のすべての能力を持っているわけではない。

 彼女が持つのは再生能力と吸血能力のみ。

 

 だが、この吸血能力には副次的な効果が二つある。 

 

 一つはエナジードレイン。簡単に言えば栄養吸収である。まあ食事だ。

 

 もう一つは眷属化或いは隷属化。これは読んで字の如くの効果で血を吸ったものを服従させるというもの。

 

 そう、スレイが血を飲めばその者は逆らえなくなる。

 これ以上ないほど便利な枷。

 

 楽なもんだなと常々思う。

 信頼とか契約とかそんなことしなくていい。

 

 ゆっくりと血を吸われているレミヴァの目の色が変わっていく。

 栗色の瞳は少し暗めの赤へ。

 

 悪魔と踊れば悪魔になる。

 吸血鬼に血を吸われれば吸血鬼なるわけだ。

 もっともスレイは吸血鬼の因子を持っているだけの人間である。

 血を吸ったところで本物の吸血鬼のようにはならない。

 ただ眷属化の効果は発動する。

 無力化できるうえに信用に足る仲間も得ることができる。

 一石二鳥というわけだ。

 

 

 レミヴァの目の色が完全に緋色へと変わりきったあたりで、スレイは血を吸うのやめて離れる。

 

 ふらりと貧血からか足元の覚束ないレミヴァを一瞥して俺はキッチンへと向かう。

 タンパク質と鉄分を多めにしておこう。

 レバーでも買っておけばよかったかもしれない。

 

「――旦那様、忠誠と服従、どちらを誓わせますか?」

 

 後ろからメイドの声が聞こえてきた。

 

「どちらでも同じだろ?」

 

「いえ、愛人と性奴隷ぐらい違います」

 

「他に喩え方はなかったのか……。だが似たようなものだろ」

 

「遣うと使うの違いはありますね」

 

「ふうん。どっちでもいいや。特に必要性もないし。最初に言った通り全て任せる、好きなようにやってくれ」

 

「かしこまりました」

 

 さてと、今日はとっときの葡萄酒でも開けるか。

 

 明日はどうせ有給とるし、少しばかり羽目を外そう。

 

 

 窓の外には澄んだ夜空に輝く星々がみえる。

 今夜は新月、星を肴に一杯やるのが良さそうだ。




コンセプトは書けなかったことを書くです。
自由好き勝手に書いていきます。

あと、ご意見感想は随時お待ちしております。
基本反応次第ですが、多分五話ぐらいまでは投稿します。
そのあとは続くかどうか。

お粗末様です。
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