最強のキャスター呼んだら最強の人形師がやって来た 作:雪希絵
申し訳ありません!
なんか常習犯になってますね……本当にすみません……
もう更新日変えようかな……
その男は、明らかに普通の人間ではなかった。
2mを超えていそうな身長と、広い肩幅。
服の上からでも分かる、極度に発達した筋肉。
そして、マスターである俺には読めるステータス。
それこそが、あの巨大な男が、サーヴァントであることを示している。
「───
魔術回路を起動。
キャスターもすでに臨戦体勢。
セイバーも不可視であることを利用し、剣だけは具現化させている。
「セイバー、前衛を頼む」
「任せてくれ」
「わ、私のことは気にしないでください。私も魔術師の端くれ。自分の身くらいは守って見せます」
「……わかった」
いつの間にか、店内にも外にも人はいない。
(人払いの結界か……)
「キャスター、結界に人払い以外の効果は?」
「ない……でしょうね。私の感覚が正しければ、だけれど」
「充分だ。信じる」
人がいないのでセイバーも鎧を身につけ、全員の準備が終わる。
目配せし、慎重に店を出る。
その場にいたのは、男だけだった。
マスターらしき人物は、どこにも見当たらない。
「……お前は何者だ。いや、何が目的だ」
目の前まで来たところで、尋ねる。
人払いの結界があるとはいえ、日中に堂々と現れるなど、正気の沙汰じゃない。
何か目的があるのか、それとも単なるアホか。
すると突然、男が腕を動かした。
(!?)
どんな自体にも対処できるように、構えをとる。
しかし、予想に反して、男は両腕をこちらに向けず、まるでバンザイのように頭上に振り上げた。
「我が名は征服王『イスカンダル』。此度の聖杯戦争においてはライダーのクラスを得て現界した」
そして、大きな声でいきなり名乗り出した。
男……サーヴァントライダーは、さらに続ける。
「うぬらとは聖杯を求めて相争う巡り合わせだが……矛を交えるより先に、まずは問うておくことがある。うぬら各々が聖杯に何を期するのかは知らぬ。だが今一度考えてみよ。その願望、天地を喰らう大望に比してもなお、まだ重いものであるのかどうか」
「は、はい?」
「頭大丈夫か、こいつ?」
意味のわからないことを言うライダーに、困惑する。
「マスター、それから薫。要約するとだね」
「『自分の配下になれ』って言いたいのよ」
そんな俺と佐伯さんに、セイバーとキャスターが解説してくれた。
「うむ、そういうことだ。いやぁ、理解の早い者は助かる」
呆れる俺たちを他所に、ライダーはうんうんと頷いている。
何一人でやってんだ、こいつ。
普通じゃ有り得ないことを堂々とやった上に、勝手に満足そうにしてるぞ。
だが、ライダーの提案自体は有り得なくはない。
現に、今こうして俺と佐伯さんは組んでる訳だし。
そうなると、ここは一つ話をするべきか。
「……それはつまり、手を組みたいということか?」
「認識として近いだろうが、違うな。我が軍門に下る気はないか?と問うている」
「配下としてしか認めないってことか」
「そうだ。我こそ王の中の王。異論はあるまい?」
ああ、なるほど。
「もちろん、サーヴァント二騎が余の配下となるのであれば、そのマスターも我のものだ。それなりの待遇を約束しよう」
同盟自体は悪くないが、聖杯を獲得しても取られそうだな。
とりあえず考える時間をくれ、と言おうと口を開いた瞬間。
「いやよ」
突然、キャスターがそう言った。
「き、キャスター?」
「……断るか。して、その心は?」
「マスターは私のものだからよ」
「なぁ!?」
「おお」
「キャスター……大胆ですね……!」
なな 、なななな、何言ってんだいきなり!?
「私はマスターのサーヴァント。だから、互いが互いの所有物なのよ。あなたに渡す通りはないわ」
ああ、はい、そういう意味ね……。
いや、本当に心臓に悪いな、このサーヴァント!
けど、
「……ま、そういうことだ、ライダー。その提案は受け入れられない」
そういうことなら、仕方ないな。
俺がそう言うと、セイバーと佐伯さんも顔を見合わせて笑い、
「もちろん、私も断らせてもらおうか。そもそも私はブリテン国王アーサー・ペンドラゴンだ。人の上に立つ王として、他者の元へ下る気微塵もない」
「私も嫌です。そもそも、聖杯を手に入れても取られそうですし!」
キッパリと断った。
っていうか、佐伯さん俺と同じこと考えてたんだな。
すると、ライダーは頭を掻き、
「……給料は弾むぞ?」
「「「いらない」」」
指を金型にしてそう言うが、それも断る。
「こりゃー交渉決裂かぁ。勿体ないなぁ。残念だなぁ」
ため息をつき、本当に残念そうにするライダー。
本気で言ってたんだな……おい……。
「仕方あるまい。我がマスターの提案通り、ここは一旦去るとしよう」
「……行かせると思うか?こっちはサーヴァント二騎だぞ?」
「わかっているとも。キャスターのマスター、お前が戦えることも」
「…………」
バレてるな。
ってことは、昨日の戦いをどこかで見てたわけだ。
「そんなに警戒せずともよい。余は戦うつもりなどないし、そもそもそこのセイバーは不調であろう。剣を交えるならば、全力の相手の方がよい」
「───っ!」
図星なのか、セイバーが息を呑む。
たしかに、昨日の戦闘ではバーサーカーの攻撃をまともに受けていた。
いくらサーヴァントとはいえ、回復力が無限なわけではないので、まだ傷は癒えてないだろう。
この場は撤退してくれた方が有難い。
「では、また会おう。気が変われば、いつ如何なる時も、余はお前たちを歓迎するぞ」
そんな言葉を残して、ライダーは霊体化して去っていった。
「……ふぅ。き、緊張しました……」
「考え方はともかく、迫力はすごかったな」
「征服王イスカンダルともなれば、それも当然だろうね」
「だよな……」
征服王イスカンダル。
またの名をアレキサンダー。
マケドニアの覇王にして、数ある王の中でも指折りの逸話を持つ。
征服者として最大規模の国を築き上げ、なおも領土を拡大しようと大地を走り続けた。
そのカリスマ性は、それ自身が宝具になるほどのものらしい。
圧倒されるのも当然だ。
「しかし、アーサー王の次はイスカンダルか……。おまけにキャスターは近代最高峰の魔術師とか。大盤振る舞いだな」
「もし一斉に争ったら、街一つくらい消えちゃいそうですね……」
「それは勘弁してほしいな」
どうやらこの聖杯戦争は、一筋縄ではいかないようだ。
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結界が解け、周囲に人が集まり出したので、店に戻る。
「紅茶冷めちゃったな」
「コーヒーなんか酸化してきてます……」
「サンドイッチは無事で良かったよ」
「レタスでパンがシャビシャビになってるけどな」
「あれ、本当だ」
だが、セイバーはそんなこと気にせず、黙々と食べ進める。
まあ、もったいないしな。
俺も飲むか。
「……ぬるっ」
「仕方ないわ」
そういうキャスターも、心なしか不満そうな表情に見える。
(……それにしても、さっきは本当に驚いたな)
『マスターは私のものだから』って……。
今まで俺の言う事に従ってくれていたのも、ようはそういう考え方が根底にあったからだろう。
マスターは自分のものであり、同時に自分はマスターのものである。
だからこそ、わざわざ逆らう必要はない。
きっとそういうことだ。
そんなことを考えている間に、紅茶を飲み干す。
ついでにケーキも食べ終わった。
紅茶は微妙だが、ケーキは本当に美味しかった。
「さて、この後どうする?」
「そうですね……。街を少し案内しましょうか?」
「うーん、自分たちでも一応回ったけど……念のためお願いしようかな」
「道中に見つかるサーヴァントもいるかもしれないしね」
「見えない範囲でも問題ないわ。使い魔がいるから」
「そうだな。じゃあ、行くか」
俺と佐伯さんの二人で割り勘して払い(セイバーの食べたサンドイッチが主だったので佐伯さんが払おうとしたが、無理やり割り勘した)、店を出る。
さっきの人のいなさはどこへやら。
多くはないが、人が行き交って賑やかだった。
「とりあえず、中心部を目指しましょう」
そう言って歩き出す佐伯さんに、俺たちはついて行った。
お読みいただきありがとうございました
もうこれからは夜に書くのやめます……