最強のキャスター呼んだら最強の人形師がやって来た   作:雪希絵

41 / 49
リアルで色々あって、ちょっと落ち込み気味です

なんとか立ち直りかけてはいるので、投稿頑張ります

それでは、ごゆっくりどうぞ


脱落者

「ランサーが……死んだ……!?」

 

キャスターから告げられた衝撃の事実に、俺は手にしていた紅茶を落としてしまった。

 

幸いカップは割れなかったが、紅茶が床にぶちまけられた。

 

「……本当のことよ。今回収した使い魔から聞いたことだもの」

「そうっスよ!自分が嘘つくわけないじゃないっスか!旦那!」

 

そう騒がしく言うのは、一匹のでっぷりと太った青色の駒鳥。

 

プロイキッシャー、『ロスト・ロビン・ロンド』。

 

古参のプロイらしく、相当前から久遠寺の家に仕えているそうだ。

 

「この駄鳥のことはさておき、」

「ちょ、酷いっす、マイ天使アリス様!」

「他の偵察用プロイが見たようね。ついでにそこの駄鳥も」

「じ、自分はついでっスか……」

 

相変わらず無表情に、キャスターは続ける。

 

ちなみに、ロビンのことは完全に無視らしい。

 

「昨日の夜、ランサーが戦闘をしていたらしいは。場所は都市部側の港。その戦闘の結果……ランサーは敗北したらしいわ」

「嘘だろ……?あのランサーが……カルナが……?」

 

思い出すのは、廃工場での戦闘。

 

すまない、と言って望まぬ宝具を使ったランサー。

 

あの時の表情が、何故か頭に浮かんだ。

 

「……マスター?」

「ああ、いや、大丈夫だ……」

 

頭を振って考えるのを止める。

 

ランサーはたしかに伝承通りの、いや伝承以上の素晴らしい人格者だった。

 

けれど、そのランサーはもういない。

 

今あるのは、そのランサーを超える桁違いの英雄がいるということだ。

 

「……キャスター。ランサーと戦っていたサーヴァントについて、何か分かってることはあるか?」

「それなら自分が覚えてるっスよ!旦那!」

「駄鳥のあなたにしては珍しいわね」

「き、キャスター……そう言ってやるなって。というかロビン、その『旦那』ってのやめないか?」

「マイ天使アリス嬢のマスターなら、自分にとってもマスター!なら旦那で間違ってないっス!」

「あ、そう……」

 

どうやら変える気はないらしい。

 

微妙に恥ずかしいというかこそばゆいんだがな……。

 

「で、どんなサーヴァントだったんだ?」

「あー、ハイハイ。その事っスね。えーっとっスねぇ……」

 

そう言い、ロビンは深く考え込む。

 

いつの間にか青子さんも隣にやって来て、話を待っている。

 

母さんと香は零れた紅茶を片付けてくれた。

 

任せてしまって申し訳ない……。

 

しばらくして、ロビンはハッとしたような顔をして、

 

「……デカかったっス!!!」

 

と大声で叫んだ。

 

「……そりゃ、お前から見たらだいたいのサーヴァントはでかいだろうな」

「……相変わらず鳥頭は変わんないわね、あんた」

 

俺と青子さんはため息をつき、キャスターは絶対零度の瞳でロビンを睨んでいる。

 

「ま、ま、待って欲しいっス!えーっと、えーっと、あとはぁ……!」

 

少し考え込み、ロビンが再び叫ぶ。

 

「あ!弓持ってたっす!!!」

「それを先に言えよ!」

 

そっちの方が明らかに大事だろうが!

 

「弓……ってことはアーチャーか」

「剣ならまだしも、アーチャー以外が弓を持っているとは思えませんからね」

 

腕を組む青子さんに、俺は頷く。

 

「けど、アーチャーってだけじゃな……」

「少なくとも、とっくにサーヴァントは揃ったというのは間違いないわね」

「キャスター呼んでから、もう五日は経ってるからな……」

 

ランサーが脱落したということは、残るは六騎のサーヴァント。

 

セイバーは協力関係なわけだから、とりあえず戦うべきは四騎か……。

 

「ライダーはイスカンダル、バーサーカーはあの黒いモヤ、分かってないのはアーチャーとアサシンか……」

「ロビン、なんか他に覚えてないの?戦闘中の様子とかさ」

 

大して期待してもいないかのように、青子さんがそう言う。

 

ロビンの記憶力の無さは良くわかっている、という様子だ。

 

「そうっスね………あとは、戦闘中に傷が治ってたってことっすかね……」

「傷が……治った?」

「そうっス」

 

頷くロビン。

 

「けど、サーヴァントの傷なんて、魔術で治せるんじゃない?なんなら令呪とかも使えそうだけど」

「令呪はともかく、魔術で治すのは可能よ。マスターも私の傷を治してたもの」

 

……あれは、佐伯さんと母さんのおかげだね。

 

俺は何もしてないね。

 

「けど、一応、サーヴァントの宝具って可能性もあるんだよな……」

「そうね。傷を癒す宝具は多いもの」

「程度に差はあるけどね」

 

残念ながら、傷を治すという現象だけでは、サーヴァントの特定はできない。

 

「とりあえず、探れるだけ探るしかないか……」

「ええ。偵察に行きましょう」

「面白そうじゃない。私も着いてこ」

 

ちょうど朝食も終わった時なので、俺たちは装備を整える。

 

「およ?お兄ちゃん達、もう出かけるの?」

 

洗い物を終えた香がそう言う。

 

「ああ。少し事態が動いたから」

「そっか。気をつけてねー」

「怪我しないでよー」

「おうよ」

 

香と母さんに見送られ、俺達三人は家を出た。

 

「おはようございます、薫さん」

「おはよう、薫」

「ああ、おはよう」

 

門の前のセイバーと佐伯さんとも合流し、街へと向かう。

 

そしてこれが、長い長い一日の始まりでもあった。




お読み頂きありがとうございました

それでは、また来週お会いしましょう

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。