最強のキャスター呼んだら最強の人形師がやって来た   作:雪希絵

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全身が……筋肉痛で……バキバキです……

ヨガって、あんなに筋肉使うんですね……


アサシンVS薫

「すぅーーー……!」

 

細く息を吐き、腰を落として左脚を曲げて構えを取る。

 

相変わらず気配はない。

 

それどころか、姿すら認識できない。

 

まるで透明人間だ。

 

(この能力……いや、スキルか?どっかで聞いたことあるような……)

 

俺の使っている格闘技は親父の我流だが、いくつか元にした流派はある。

 

恐らく、その中に含まれているのだろう。

 

そんなことを考えていると、

 

「………っ!ぐっ……!」

 

一瞬聞こえた風切りの音から判断し、俺は全力で背を反らした。

 

直後、身体の上を何が通り抜ける感覚がする。

 

「ちっ……!」

 

舌打ちしながらバックステップすると、今度は顔に向かって何かが飛んでくる感覚。

 

「うおぉっ………!?」

 

どうにか無理やり首を捻り、すんでのところで回避。

 

何かを投げられたのか、それとも近接攻撃なのかは分からないが、とにかくスピードが凄まじい。

 

そうなれば必然、威力も高くなるわけで……。

 

(強化状態でも俺の首をへし折るやつだ……。ひたすら回避して、時間を稼ぐしかない……!)

 

時間さえ稼げれば、勝算はある。

 

相手の攻撃は続く。

 

視覚も、親父に鍛えられた気配を察知する技術も使えない。

 

ひたすら、音と勘だけを頼りに、攻撃を回避し続ける。

 

再び顔に攻撃が飛んでくる。

 

それはギリギリ俺の頬をかすめ、通り過ぎていく。

 

今わかった。

 

恐らく、通り過ぎていったのは腕だ。

 

なら今、胴体は比較的空いているはず。

 

「せやぁぁっ!」

 

当たることを祈って全力の回し蹴りを打ち込むが、轟音を鳴らしてそれは空を切る。

 

「……やっぱ無理か、くそっ!」

 

だいたい予想はしていたが、見えないんじゃまともに攻撃なんて出来ない。

 

すぐに体勢を整え、留まるのは危険だと判断して飛び下がる。

 

だが、

 

「カッカッ、ちと判断が甘かったのう。小僧」

 

すぐ後ろから、そんな声が聞こえた。

 

(……読まれた!?)

 

先読みし、飛んだ先に回り込まれた。

 

そのまま、アサシンは俺の首を締め上げる。

 

「先程のように復活されても困るからのう。こいつで完全にトドメをさしてやろう」

 

(いや、今ならさっきの首折りだけでもやばいってか……くそっ……息が……!)

 

「がはっ…ひゅっ………!」

 

強引に腕を剥がそうとするが、全く歯が立たない。

 

アサシンと言えば、筋力はそう高くないはずだが、どうやらこいつは例外らしい。

 

ギリギリと首を締め付けられる度に、視界がどんどんと霞んでいく。

 

身体の力が抜けていく。

 

(………あきらめて……たまるか……!)

 

それでも、俺は力を緩めない。

 

持てる限りの力で、アサシンに抗う。

 

それの効果かは知らないが、それ以上力が強くなることはなかった。

 

それでも、徐々に酸素は切れていく。

 

手指の感覚はどんどんとなくなっていく。

 

「ぐっ………っ……ぅ……!」

「……さらばだ、小僧。その心意気だけは、覚えておいてやろう」

 

その言葉を最後に、俺の意識は闇に飲まれる。

 

直後、

 

「……させるか、ドアホ!!!」

 

そんな声と共に、俺は唐突に振り落とされた。

 

「ゲホッ……ゴフッ……ゲホッゲホッ!」

 

大量の酸素が入り込み、思わずむせ返る。

 

「い、一体何が……!」

「……ふぅー。間に合ったわ」

 

見上げると、青子さんがポキポキと手を鳴らしながら、こちらに向かって歩いて来ていた。

 

「立てる?薫」

「……なんとか」

 

どうにか立ち上がり、二人並び立つ。

 

「援護はしてあげる。あいつの鼻、あかしてやるわよ」

「ええ、了解です!」




お読み頂きありがとうございました!

それでは、また来週お会いしましょう!

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