とある世界の重力掌握   作:烈火信仁

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とある事件と遅れた英雄(ヒーロー)

 

 

 

 

 

「終わり....か 」木山は自らがおこした爆炎を苦々しげに見つめた。

 

「成さねばならぬことがあるためとはいえ......子供を殺すのは気分の良いものではないな....... 」

 

わずかに後悔の色を滲ませながらも自ら選んだ道を進もうとする木山。

 

(「たとえ極悪人と呼ばれようとかまわない......これが終わったならどんな罪でも償う。どんな罰でも受ける。それでも今は悪の権化となろうとも成さねならぬことがある!」)

 

だがその耳に聞こえるはずのない声が飛び込んできた。

 

「現出せよ!破壊大剣(ディストラクション・ブレード)!」

 

哀歌の叫びとともに先ほどまで彼女をのみこんでいた爆炎が一気に吹きとばされる。

 

「なに!? 」木山の驚きは単に彼女が生きていたからだけが原因ではない。それより信じられないのが目の前の少女が片手に全長が3メートルは越そうかという大剣を構えていることだ。

 

 

「(いったいどうやってあんなものを保持している?......いやそれ以前にあんなものをどこに隠し持っていた?)」

 

あまりにも理解不能な状況に混乱する木山を哀歌は上空から睨みつける。その眼に宿るのは『殺意』。

 

「さすがに......今のは効きました.......でもあれだけじゃ私は倒せない......私の能力は分類上は学園都市の中でもかなり希少な能力とされている『肉体変化(メタモルフォーゼ)』です。そして私の能力に付けられた名は『人外変化』.......その理由(わけ)を見せましょうか?」

 

哀歌は薄く笑うと自らの『翼』を大きく広げる。

 

「馬鹿な.....これはいったい...... 」

 

目の前に広がるありえない事象に木山は困惑していた。最初は肉体強化系の能力者だと思った。

 

そして発火能力(パイロキネシス)を見せたことによって多重能力者(デュアルスキル)の可能性も考えた。

 

だが目の前の少女(バケモノ)には、そんな理屈や理論がまるで通じない。

 

だれが合理的に説明できるだろう。爬虫類じみた『翼』をふるって空中にとどまり、3メートルを超す大剣を片手で構えることが可能な理由を。

 

「驚いてます?.....当然ですよね......こんな姿を見せちゃ......どんな人でも『バケモノ』と思いますよね......」

 

右手に構える大剣を高々と振り上げる哀歌。

 

「ほんとならこの姿で戦いたくはなかった......嫌な過去ばかり思い出すし......この力を振るえば.....護との約束を果たせなくなるから...... 」

 

護との約束とは『足止めすること』それが守れないというのが指すものは明白だ。

 

「それでももう止められない......傷つけられた私の血が.....本能が騒いでる......目の前の敵を『殺せ』と....... 」

 

哀歌の顔に苦悶が浮かぶ、木山を殺すことを後悔しているのではない、護との約束を守れないことを後悔しているのだ。

 

「さっき、舞台(ステージ)に立つには早すぎた.....そう言いましたよね? 」

 

木山をまっすぐ見つめつつ哀歌は告げる。

 

「そうでもないですよ......私も何度か踊ったことがあるんです......血まみれの舞台(ステージ)で 」

 

一機に振り下ろされた大剣は大気を切り裂き、同時にすさまじい衝撃波を放つ。そう、道路にたたずむ木山のもとに。

 

「く! 」慌てて空間移動(テレポート)し後方に下がる木山。先ほどまで自分がいた場所には月面に見られるようなクレ―ターができていた。

 

もし自分の反応が遅れていたらと戦慄する木山。しかもあれはただ剣を振っただけの余波にすぎない。

 

一方の哀歌は舌打ちしていた。

 

「やはり空間移動が厄介ですね......でも何度か見ているうちに対策を思いつきいました......」

 

再び衝撃波を飛ばす哀歌。当然木山は空間移動で避ける。

 

「同じ攻撃を繰り返しても無駄.....なに!?」

 

木山の驚愕も無理はない。いつの間に木山の前に哀歌が廻りこんでいたからだ。

 

「あなたの扱う空間移動(テレポート)は確かに厄介ですが.......『特徴』さえつかんでしまえば、

対処方が見えてきます。あなたはものを飛ばすことは自由自在のようですが........自らの移動に関しては縦か横にしか移動していませんよね?......そして私の一撃を避けたあなたは200メートルほど後方に下がった......表情から見てあれが全力のようなので......予想出現地点を予想して先回りさせてもらいました 」

 

とっさにふたたび空間移動を行おうとする木山の腕を哀歌はがっちりとつかんだ。

 

「逃がしませんよ?.......」

 

そのまま恐ろしい腕力で木山を投げ飛ばす哀歌。猛烈な勢いで宙を舞いながらも木山は再び空間移動を使う。だがそれは哀歌に先読みされている。

 

「同じ手は2度は通じないというのは.....常識ですよ? 」

 

哀歌の右手が大剣を振るい、そのすさまじい斬撃が道路の一部を崩落させる。

 

「くそ! 」

 

なにやら風をまとわせ、直接地面にたたきつけられるのを避けた木山だったが危機はまだ続く。

 

「古来の力よ現出せよ!『破壊炎撃(ファイラズ・デストロイヤー)』!」

 

声ともに振るわれた大剣から巨大な炎の斬撃が放たれる。

 

こんなものをまともに喰らえば木山は一撃で灰塵と化してしまう。

 

だが空間移動を行うには時間が足りない。木山は自らの運命を悟った。

 

「(もはや.....これまで.....か )」

 

覚悟を決め、目を閉じる木山。そこに容赦なく炎の斬撃が遅いかかる。

 

 

 

「?.......」

 

木山は首をかしげた。来るはずの衝撃がいつまでたっても来ない。まるで火炎が消えてしまったかのように先ほどまで感じていた熱波まで消えている。

 

「いったい、なにが....... 」

 

目を開けた木山はそこに信じられないものを見た。

 

炎の斬撃が止まっている。いや正確にはもはや斬撃ではなくただの炎の塊だ。何らかの力が360度すべての角度からかかり炎を押しとどめている。

 

「この力.....たしかデータにあった.....学園都市レベル5の第4位。『あの子たち』の協力者。『重力掌握(グラビティマスター)』! 」

 

驚愕の表情を浮かべ木山は前方、茫然と立ちつくす哀歌の肩に手を置く少年、古門 護に視線を向ける。

 

 

「哀歌。もう十分だ。後は僕に任せて 」

 

「私.....どうしても.....逆らえなくて.....護との約束まもれなくて.....バケモノになって......」

 

「分かってる!分かってるよ。でも哀歌忘れちゃいけない。君は『怪物(モンスター)』じゃない。僕たち『ウォール』の仲間で、僕の友人。そして優しい女の子だ。これ以上君に化け物になんてなってほしくない。」

 

護は一歩前に出る。

 

「だから.....決着は僕がつける。哀歌のためにも、佐天さんのためにも、そして...... 」

 

護は近くにある階段に視線を向ける。そこから上がってくるのは......

 

「美琴のためにも 」

 

「あんたに.....呼び捨てされるのも癪だけど。いまはそれどころじゃないわ。協力してもらうわよ『重力掌握』?」

 

「言われなくてもわかってる。元凶倒してすべてを終わらせよう 」

 

学園都市の頂点にたつレベル5。そのうちの2人による猛攻が始まった。

 

 

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