とある世界の重力掌握   作:烈火信仁

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とある部屋の魔法少女

「ふわぁぁぁぁ.........よく寝たな...... 」護は伸びをして、ベットのそばに置いてある携帯電話に手を伸ばす。

 

「7月20日.......夏休み初日か......もう『この日』が来たのか.......ていうかついこの間も騒動があったばかりなのに、イベントが立て続けに起こりすぎだと思うんだけどな...... 」

 

そう、ほんの数週間まえ、護は木山春生を止め、幻想御手(レベルアッパー)事件を止めるために彼女と戦い、結果的に木山を止めることに成功した。

 

だが、その代償はあまりにも大きかった。自分ではよくおばえていない『暴走』によって『警備員(アンチスキル)』部隊を壊滅させてしまった護はなんだかんだでいろいろと警備員に敵視されることになった。暴走だったのだから仕方ないのだが仲間を殺された側としては、だまっていられるわけがない。

 

その自分が何事もなくいつも通りの日常を過ごしていられるのは、やはり裏で上層部が根回ししたからだろう。とくに統括理事会の1人、剣崎達也は護に何らかの関係がある人物の可能性がある。おそらく彼が根回しした張本人だろう。

 

「根回しのおかげで、罪に問われてないけど......実際のところ人殺しなんだよな、今の僕は 」

 

ズーンと落ち込む護に優しい声がかけられる。

 

「また、落ち込まないで護........あれは護にどうにかできたわけじゃない........それにたとえ『警備員』に目をつけられても、裏の私たちに表の人間が手を出せるはずがないよ? 」

 

「そのことは分かってるよ......それより僕が心配なのは美琴のことさ 」美琴とはあの時共闘して木山に立ち向かった。そして護の暴走に巻き込まれた美琴も重傷を負ったが一命はとりとめた。

 

だが、その後からどうも美琴が自分に向ける視線に違和感を感じていたのだ。まるで猛獣に怯える小動物のような......怯えと困惑が入り混じった視線。

 

「美琴は、なにか知ったんじゃないかな......僕に関することを 」「そうじゃないと思う。たぶん護が警備員を惨殺したことがショックだったんじゃない? 暴走のせいだと分かっていてもショックは計り知れないと思うよ? 」最近護と話すときはだんだんと、とぎれとぎれの話し方を無くしていけるようになった哀歌。

 

「そんなものなのかな.......あの強気な美琴が....... 」美琴のことは気になるが、それよりも今は気にしなけらばならないことがある。

 

「なぁ......哀歌。『禁書目録(インデックス)』って知ってる? 」

 

「ええ......魔術に関わるものなら誰もが知る名よ? 世界中で封印されている魔道書を一字一句精密に記憶し頭の中に保管している魔道書図書館みたいな少女のことでしょう? 」

 

「今日、7月20日はうちの学校にとっての夏休み初日だ。そして俺のいた世界で書かれていたことがこの世界にも当てはまるなら、その『禁書目録』は本日中に学園都市に現れる 」

 

「は!? いくらなんでもそれは........大体たしか『禁書目録』はイギリス清教が管理してるはず.....それがいきなり学園都市になんて..... 」

 

「それが来るんだ。禁書目録は一年ごとに記憶を消されている。そして今回目覚めたとき彼女は味方の魔術師を魔術結社の人間だと勘違いして、なんらかの手段でこの学園都市まで逃げてきたんだよ。そしてこの街の学生。上条 当麻に出会う 」

 

「前に話は聞いたけど、本当に彼は『右手で触れた異能を打ち消す』なんてばかげた力を持っているの? 」護の語ることが真実だと認め始めている哀歌にしても当麻が持つ力というのはそうそう信じられるものではないらしい。

 

「ああ、それは間違いないよ。少なくとも美琴や美希の電撃程度なら軽く打ち消せられるはずだ 」

 

実際に目の前で見た護としてはそれは分かりきっているが、やはり哀歌は半信半疑のようだ。

 

「まあ、それはともかく.....僕がしなきゃならないことは幾つかある。まずは上条さんの部屋に赴いて禁書目録(インデックス)さんがベランダに干されてないか確認しないと...... 」

 

ベランダ?と首をかしげる哀歌を連れて護は当麻の部屋に向かう。

 

「なんか、まだ寝てるっぽいな...... 」「そうみたいだね....... 」部屋の前まできた哀歌と護だったが。どうやら早く来すぎたらしくインターホンを押しても反応がない。

 

「とりあえず出直す? 」「いや、たぶんしばらく待てば…….」そう護が言った刹那、「うぎゃあああああああ!! 」というすさまじい悲鳴が。

 

「な、言っただろう?」「ええ…… 」相変わらず正確な護の予言に唖然としながら哀歌はドアノブに手をかける。

 

「哀歌? 鍵がかかってるからまだ開かない…….. 」「私には開けられる。だって魔術を使えるんだもん 」哀歌がドアノブに触れながらなにやら呟くと一瞬で鍵が外れる音がした。

 

「すご........どうやったの? 」「企業秘密 」そんなことを言い合いながら2人は部屋に入っていく。だが入る寸前護は急に思い出したかのように後ろを振り返った。

 

「どうしたの? 」「いや、そういや、あの『腹ペコシスター』である『禁書目録(インデックス)』から素直に話を聞くには食べ物が不可欠だなと思いだしたから、いそいで昨日哀歌が作ってくれた残りを持ってくる。ついでに冷凍食品も 」

 

「分かった、じゃあ、先にまって話を聞いておく。急いで 」「分かってる 」

 

護は駆け足で自室に向かう。とにかく時間との勝負だ。『禁書目録』は朝の内に自分から上条の部屋を出てしまう。その前になんとか話しを聞いて引きとめなければならない。それが無理でも最低、護衛の承諾ぐらい取っておかなければならない。そうしないと……神裂が禁書目録を切ってしまう。それは避けられれば避けるべき出来事だと護は考えていた。

 

 

「うん。モグモグ…….私の名前は『禁書目録(インデックス)』で間違いはないんだよ。正式名は『index-librorum-prohibitorum』 だけど、みんなはそう呼んでるんだよ 」

 

数分前、護が持ってきた昨日の晩飯の残り(哀歌作)と大量の冷凍食品を護からみてもどういう胃袋してるんだという疑問を持つ勢いで平らげた禁書目録(インデックス)は腹を満たして満足したのか、ようやく自分のことを語りだした。

 

「それ、本当に名前か? あきらかに偽名じゃねえか 」

 

不審そうに聞く上条に、まあ普通はそうだろーなとしみじみ思う護。

 

護にしても、哀歌に出会うまでは魔術を見ることはなかったので半信半疑であった時期もあった。

 

「インデックスの意味は、禁書目録よね。それでなんで逃げていたの? 」

 

「魔術結社に追われてたからだよ 」

 

「その追っていた魔術結社の人たちは、どんな感じの人たちだったの? 」

インデックスは意外そうに哀歌の顔を見つめた。

 

「魔術結社の所、なんの疑問も感じないの? 」

 

「感じないわ。だって私も魔術師だもの。ただしフリーだけど 」

 

「証拠はあるの?……あなたが魔術結社の仲間じゃないっていう証拠と魔術師の証拠を見せてほしいかも 」一気に警戒レベルマックス状態になったインデックスに哀歌はすこしため息をついた。

 

「やっぱり疑われるか…….じゃあまず魔法名からいうね。私の魔法名は『debita935』 。所属はさっき言った通りなし。仕える術式は世界各地の神話や伝説における竜や龍に関する伝承をモチーフにしたもので、具体的にはこんな感じ 」

 

哀歌が右の掌を広げ、なにやら唱えると、その手に小さな炎が現れる。

 

「ここまでやれば信じてもらえる? それに私が魔術結社の人間ならとっくに捕まえてるよ? 」

 

「うん……言われてみれば確かにそうかも……でも、どこにも所属してないのなら、なんで私に関わるの? 」

 

「それは、俺が哀歌に頼んだからなんですよ『禁書目録』さん 」

 

「あなたは誰なの? そういえば名前も聞いてなかったかも 」

 

「俺の名前は、古門 護。この街の学生さ。と同時にレベル5という肩書も持ってるけどさ 」

 

首をかしげる禁書目録。どうやら部外者の彼女にレベル5がどうだとかは難しかったようだ。

 

「まあ、レベル5についてはあとで話すとしてこっからが本題だ。禁書目録さんは飯食ったあと、ここを出ていくつもりじゃないか? 」

 

「なんで、分かるの!? 確かにそう思ってたんだよ 」

 

「この護は、人の心を読んだりするのが上手いの…….それはそうとして、あなた、自分1人でこの先、慣れない学園都市の中で逃げ続けるつもりなの? 」

 

「仕方ないんだよ、追われてるんだから……. 」

 

「そこで、相談なんだけど……この哀歌をお前の護衛としてつけちゃいけないかな? 」

 

思わず護の顔を見つめるインデックス。

 

「なんで、あなた達がそこまでするの? 」

 

「なんでって言われてもな……話聞いてて女の子がピンチなのを助けない手はないってとこかな。哀歌には哀歌で理由があるらしいけど…… 」

 

「私は自分の魔法名に込めた理由のためにも……いまここであなたを助けなきゃいけないんだ…….わが身の全ては贖うために…….それが私が魔法名にこめた思いなの……だから私はあなたを助ける 」

 

護は、上条の方も向く。「上条はどうする。まだ全ては信じられないだろうから、協力しろとは言わないけどさ 」

 

「確かに俺にはまだ良く分からねえ……正直あまりにも色々ありすぎて頭が追いついていかねえ……でも、護が守ろうとする奴が悪人じゃないことはたしかだろ。だったら俺も協力するよ。なんでもできることがあったら言ってくれ 」

 

「ああ、頼む 」護は心中でだけ呟いた。(やっぱり上条さんは主人公だよ!)

 

「さて、そうは言ったものの、実際今じゃすることが…….そうだ! インデックスだったけ? とりあえずその服、この街じゃ絶対目立つから着替えたらどうだ? 」

 

「え? 別にいいんだよ。これはね、『歩く教会』っていう強力な…….. 」「いいから、いいからとりあえず着換えろって、そう思うだろ護? 」

 

まて!触れるのは…..と声を上げる前に上条の右手がインデックスの修道服にふれ…….『歩く教会』は数秒後、びりびりにちぎれ飛んだ。

 

「ここは……原作通りなのかよ? 」修道服の切れはしが舞う部屋の中で護と哀歌の溜息と少女の悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

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