「 しっかりしろ! 禁書目録(インデックス)! 」部屋の前で血まみれで倒れている少女を上条は必死に揺すっていた。
「どうしたんだよ!? いったい、どこのどいつにやられたんだ?! 」
「ん?? 僕たち、魔術師だけど? 」背後から聞こえてきた声にバッと反射的に後ろをふりかえる上条。その目に映るのは、赤髪の神父。
「こりゃまた、ずいぶん派手にやっちゃって 」
「なんで...... 」
「この子が部屋に戻った理由? さあね、忘れ物でもしたんじゃないかな? 昨日はフードを被ってたんだけど......,あれ、どこに落としたんだろうね? 」
上条は気づいた、少女(こいつ)は自分を戦いに巻き込まないためにわざわざフードを取りに戻ってきたことを。
「バッカやろうが! 」 「フンフンフンフン.....やだな、そんな顔されても困るんだけどね。それをやったのは僕じゃないし.....神裂だって、なにも血まみれにするつもりはなかったんじゃないかな。その修道服、『歩く教会』は絶対防御なんだけど.....はあ、なんの因果で壊れたのか 」
上条の胸の中にどす黒い感情が湧き上がる。
「何でだよ......俺には哀歌から聞いたりしても、魔術とか魔術師ってのを言葉としては理解してても、いまだに信じられないよ......でもな、お前達にも正義と悪ってもんぐらいあるだろう?こんな小さな女の子をよってたかって追い回して、血まみれにして、これだけの現実(リアル)を前にまだ自分の正義を語ることができんのかよ! 」
始めて、赤髪の魔術師、ステイル=マグヌスの眉がピクリと動く。
「まて、君は魔術や魔術師についてその哀歌という子から聞いているのか? 」
「ああ、お前らが禁書目録(インデックス)を狙っていることとかも全てな。正直、俺は信じれてなかったけど、これで本当だと分かったよ! 」
馬鹿な.....とステイルは歯噛みした。この街に自分たち以外の魔術サイドの人間が入ってくるとは考えにくい。
自分たち、それなりの経験をもつ魔術師でも入るのは容易ではないのだ。しかも、禁書目録を回収するための2人の行動を知り得るのは、『必要悪の教会(ネセサリウス)』のメンバーか『最大主教(アークビショップ)』だけのはずなのだ。
「大体、お前は何様だ! 」「君に話す必要など.......」
「イギリス清教、第零聖堂区、『必要悪の教会(ネセサリウス)』所属の魔術師にして、ルーン24文字を完全に解析し、新たに文字を生み出した天才.......ですよね? ステイル=マグヌスさん? 」
思わぬところからかけられた言葉にステイルの視線がうごく。
その先、階段の側に、哀歌はたっていた。
「哀歌? お前、どうして...... 」
「伏せて...... 」
「え? 」
「早く伏せて! 」
戸惑いながらも、声に押されるように伏せる上条を確認し、哀歌は両の手を組み、ステイルを睨む。
「『火龍の怒りは大地を滅する! 』」哀歌の叫びと共に彼女の前に現れた真紅の魔法陣から猛烈な火炎が放射される。
「なに!? 我が手に炎、その形は剣、その役は断罪! 」驚愕しつつ、とっさにステイルは炎剣を放つ。
2つの火炎がぶつかり合い、空中で相殺される。
その衝撃波と熱風に押され、後ろに吹き飛ばされた上条は、自分の体を誰かが支えていることに気づいた。
「? ! ビリビリ? 」「なに? 私のこと知ってんの? 」 「いや、お前、御坂じゃないのか? 」
一瞬、首をかしげる美希だったが、すぐに勘違いに気づいた。
「私は、従姉妹の御坂美希よ。あいつが世話になってるってね。これからもよろしく。そして始めまして! 」
「あいつに従姉妹なんていたのか.....いや、そんなこと考えてる場合じゃない! 早くここから逃げるんだ! このままだとお前まで巻き込まれ...... 」
「それを承知でここにきたの。あの子を、禁書目録(インデックス)ちゃんを助けるために 」
「なんでお前がそんなこと.....」
「僕が頼んだからだよ当麻。美希は僕の仲間なんだ 」
上条は思わぬ人物の登場に目を見開いた。
「護?! お前、いったい? 」
「話は後だ。今は、目の前の事態をどうにかしなきゃならない。そのためには当麻、君の力が必要なんだ 」
「は? どういう.... 」「君の右手 」護の言葉にハッとなる上条。そう彼の手には全ての異能を打ち消す力、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が宿っている。
「この右手が通じるのか? 」
「ああ、君の右手なら魔術でも打ち消せるはずだ。僕らが総出であの魔術師を抑える、その隙にあの子を、禁書目録(インデックス)を救い出してくれないか? 無論、強制はしない。逃げてくれても構わない。それでも、強力してくれるなら、頼む 」
「そんなの.....決まってんじゃねえか.....赤の他人を戦いに巻き込まないために戻ってきた禁書目録(インデックス)を見捨てて逃げるなんて.....そんなこと、できるわけがねえ。俺の右手が通用するなら、協力するぜ護! 」
「それでこそ、当麻だよ! さあ、行こう、あの子を助けに! 」上条、護、美希の3人は輪のように、ステイルと睨みあう哀歌を囲む。
「ステイルさん。今回は引き上げてくれませんか? これ以上、血を流したくはないんですが 」
「なにを、言っている? 」
「血を流したくはないといってるんです、あなたの仲間の女の人はさっき私達が倒しました。後はあなただけなんです 。とにかく今回は一回手を引いたほうが得策だと思いますよ? 」
驚き、明らかに動揺をかくせない様子のステイルだが、すぐざま様子を見ようとはしない。そんなことをすれば、敵に弱点を自ら示すようなものだと知っているからだ。
「その言葉を、信じるとでも? 」
「さあ? 信じるかはあなたしだいです。ですが、あなた1人で学園都市の能力者である僕達を相手に回収を成功させることができますかね? 」
ステイルは、言葉に詰まる。確かにこのままの状況でたたかうのはリスクが高すぎる。
「(どうする......だが、ここで引き上げればあの子を戻すのは難しくなる ) 」
葛藤するステイルだがそう時間はない。
「(僕がすべきことは、いつでも一緒だ。あのとき誓った約束のために、僕は.......戦う! ) 」
ステイルの目に力強い意思が宿る。
「断るよ。君たちにこの子の回収を邪魔はさせない。それでも立ち塞がるというのなら、いくらでも殺す、いくらでも壊す、生きたままでも燃やし尽くす。自分の誓いを果たすために 」
ステイルの右手が高く上げられる。
「世界を構築する5大元素の1つ、偉大なる始まりの炎........ 」ステイルがやろうとしとしていることかないち早く哀歌が気付いた。
「あの詠唱を止めなきゃ! 」哀歌の言わんとすることを理解できたのは哀歌ぐらいだったろう。だが、彼女の叫びに焦りを感じたのは全員だった。
「美姫! 『超電磁砲(レールガン) 』を! 哀歌! 君の魔術であれを止めてくれ! 」
「分かってる! 」「任せて..... 」
それぞれに動こうとする2人だったがステイルの詠唱の方が若干早かった。
「その名は炎、その役は剣、顕現せよ、わが身を喰らいて力と為せ! 」
ヴォォォォ!という雄叫びと共に、猛烈な火炎が人の形になって現出した。