とある世界の重力掌握   作:烈火信仁

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とある刺客の銀製義手(シルバーハンド)

 

「クリスが死ぬって......どういうことですか?....... 」

 

哀歌の問いかけに対するラミアの答えは簡潔だった。

 

「能力者には魔術は使えない。それは知ってるかしら? 」

 

「それは......知ってます.......けど。それがどうしてクリスが死ぬことにつながるんです? 」

 

「あの子は学園都市の学生として『科学サイド』で暮らしているけども......それは彼女が望み、私が『逃がした』から。本来彼女は『女神の素質』という特性をもつ『魔術サイド』の人間なの 」

 

ラミアの言葉は護にとって衝撃的だった。ラミアの言葉が意味するのは........

 

「そうよ......あの人は、クリスの父親はクリスの3人の妹たちがもつ『運命の3女神』の特性。そしてクリスが生まれながらに持つ『主導神ダヌ』の特性を使って『禁書目録』の中に眠る『侵略の書』を手に入れようとしているの 」

 

その言葉は護を驚愕させたが同時に疑問も与えた。それは『禁書目録』からそう簡単に知識を奪えるだろうか?という疑問である。

 

確かに『禁書目録(インデックス)』の知識を守る『自動書記 ヨハネのペン』は上条の『幻想殺し(イマジンブレイカ―)』により破壊されている。

 

だが、これはこの世界における『未来』について知っている護だから分かることだが、禁書目録の知識を閲覧できたのは、日本神道系の魔術師である闇咲とインデックスの『遠隔制御霊装』を手にしたフィアンマだけである。

 

闇咲の場合は特殊だとして、インデックスの知識を閲覧するためにはイギリスにおける『清教派』と『王室派』がそれぞれ管理している『遠隔制御霊装』を使う必要があるはず.......そこまで考えて護は、はたと気づいた。

 

「まさか......クリスの父親はクリスの力を使ってイギリスを? 」

 

「ええ、『主導神ダヌ』の素質を持つクリスを『覚醒』させて、その強大な力で一気にイギリスの『王室派』の象徴『バッキンガム宮殿』を襲い、内部にある『禁書目録(インデックス)』の『遠隔制御霊装』を奪い取る。そしてクリスは『能力者』。あの子に『女神の素質』があるといっても、神話級の魔術を行えば、多少回復魔術で生きながらえさせられたとしても、確実に死んでしまう。万が一死の危機を免れても、一生廃人となってしまうの 」

 

「しかし、いきなりせめても、そう簡単に奪えないと思うけどな? 」上条の疑問にラミアは当然のように即答した。

 

「まず、リアルIRAとしての表の戦力がテロ活動を行うと同時にバッキンガム宮殿に攻撃を仕掛け、王室派の人間が避難するように仕向けるのよ。そしてわずかな使用人や魔術師しかいないバッキンガム宮殿に『人払い』をすませたうえで、裏の戦力が一斉攻撃をかけ、一気に『遠隔制御霊装』を奪う......それがあの人の考える計画よ 」

 

ラミアの言葉に護たち4人は沈黙した。

 

護は、選ばなければならなかった。ラミアの言葉を信じ協力するか。それとも彼女の言葉を嘘と決めつけ中立の立場をとるか。

 

少なくともラミアの言葉からラミアが『魔術サイド』の人間であることは間違いない。

 

だが、ラミアの話すことにはまったく確証がない。

 

「(せめて、彼女の言葉を証明する『何か』があれば.......) 」

 

そう思った矢先、思わぬ形でその願いはかなえられた。

 

突如、応接間が真っ二つに切り裂かれた。

 

比喩でもなんでもなく純粋に床がぱっくりと口を開け護たちをのみこもうとする。

 

「ウソだろぉぉぉぉ!! 」まっさかさまに下の階に向けて落ちていく護はパニックになりながらもなんとか重力を制御してゆっくりと着地する。

 

上では、哀歌が上条を、ラミアがインデックスをそれぞれ抱えて着地する。護のように『能力』を使うまでもなく平然と着地できるところはさすが『魔術サイド』の人間だけあると感心するところだが、いまはそれどころではない。

 

たった今、護たちがいた応接間。そこの床の裂け目を通って、護たちの前に一人の男が着地する。

 

肩にかかる程度の銀の長髪で顔には大きな十字の傷跡。なにより特徴的なのがその右手に握られるひと振りの剣。

 

「さあて.......『聖騎士団』に邪魔されちゃ厄介だから早めに潰しにやって来てやった。おとなしく死んでくれ? それとそこのお前たち......『禁書目録(インデックス)』の護衛者だったか? お前たちもついでに潰してやるよ 」

 

男の剣を見たインデックスの顔色が変わる。

 

「どうしたんだ?インデックス 」「当麻。あの剣はアイルランド神話に出てくる神の武器をモデルにした霊装なんだよ! 名は........ 」

 

「『ヌアダの剣 (クラウ・ソラス)』だ。さあ、味わってもらおうか。この力を! 」

 

男の叫びとともに、剣からすさまじい光が放たれ、一瞬にして護達を光の渦が包み込む。

 

「当麻! お前の右手でこの渦に触れるんだ! このままじゃ飲み込まれる! 」護の叫びにわずかに困惑した上条だったが、即座に自分たちを囲む渦に右手でつくった握りこぶしをぶち当てる。

 

はじけるような音とともに光の渦は消し飛ばされる、だが消えると同時に無数の光弾が護達に向かってくる。

 

「下がって!護! 」哀歌が護を横に突き飛ばし、護の前に出る。

 

「現出せよ、『破壊大剣(ディストラクション・ブレード)』! 」哀歌の叫びとともにすさまじい閃光が彼女から発せられ、向かってきた光弾をすべて打ち消す。

 

その光が収まった後、そこに立っていたのは『変化』をとげた哀歌だった。

 

「あれって、哀歌だよな?翼が生えたりしてるけど、あれは哀歌なんだよな? 」

 

上条が戸惑うのも当然で、彼は哀歌の『変化』した姿を見たことがない。

 

「ああ、そうさ。僕の仲間にして親友。そして対魔術戦闘のエキスパートだよ 」

 

哀歌はその両手で構える『破壊大剣』を真上に振り上げながら一瞬で男の前に移動する。

 

その全長3・5メートルの大剣が男に向けて振り下ろされる........が男はその攻撃を『右手』一本で構えた剣で防いだ。

 

「おまえも魔術師のようだが......知ってるか? 『ヌアダの剣』の持ち主である神『ヌアダ』は戦いにより両手を失い.......医学の神が作った特製の『銀の腕』を取り付けることによって力を取り戻した........それが表向きの伝説だ。だがもう一つあまり知られていない伝説がある。医学の神が作った『銀の腕』には『神器を扱えるだけの怪力』をもたらす力がこめられていたという伝説だ.....つまり『銀の腕』と『ヌアダの剣』はセットじゃなきゃ力を発揮できないのさ.......ただ、さすがに両手を切り離してまで力を手に入れようとは思えんのでな.......俺の場合は、『右腕』を『銀の腕』にしてそこに『銀の両腕』の特性を集約しているというわけさ 」

 

驚愕し、男の右腕を見つめる哀歌。確かにその右腕は銀製の義手になっている。

 

「さて、それじゃあ吹き飛んでもらおうか。いくら巨大な武器をぶつけても俺には意味はない。この『右腕』がある限りな! 」

 

哀歌が身構えるのと同時に、男の剣が勢いよく振られ、哀歌の体を大剣ごと吹きとばす。

 

「哀歌!くそ!『重力鉄槌(グラビティック・ハンマー)』! 」護が作り出す重力の鉄槌を、しかし男は『右手』で受け止める。

 

「.....超能力.....科学サイドの象徴......なるほど確かに強力だ。だが、その程度で、このグラン・ストリスを倒せると思うな! 」

 

どういう力を使ってか重力を『弾き飛ばした』グランはその剣に巨大な光の波をまとわせる。

 

「滅びろ超能力者! これで『あの方』の計画は成就する! 」

 

グランがいっきに振りぬいた剣から巨大な光の波が放たれる。護は周辺の重力を操作し、その攻撃を抑えようとするが、多少スピードが遅くはなるものの、まっすぐこちらに向かってくる。

 

「(この攻撃、科学の法則を完全に無視してるせいで、能力が効かない!?) 」

 

自分の無力さを呪いつつ護が観念して目を閉じようとした時、その前に人影が立った。

 

「こんなに早く.....あきらめてんじゃねえぞ! 」

 

次の瞬間、前に立つ人影.......上条当麻の『右腕』がまっすぐ伸ばされ、その手が波を粉々に打ち砕く。

 

「なあ!? 」驚愕するグランに向けて上条の言葉が放たれる。

 

「てめえが、その『右手』を使って、まだ俺の『仲間たち』を傷つけようって言うんなら......まずは、その幻想をぶち殺す! 」

 

 

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