「その『右手』...... お前いったいなにもんだ? 」
「なに者でもない。ただの高校生さ。ちょっとばかし変わった右手をもつ、ただの高校生......だよ 」
「ただの高校生が、俺の攻撃を打ち消せるはずが無い! いったい...... 」
「幻想殺し(イマジンブレイカー)さ。こいつの右手には、あらゆる異能の力を打ち消す力が宿ってるんだ。こいつの前ではお前のどんな攻撃も無駄ですよ?」
護の言葉に、グランの口元が歪む。
「ふざけるなよ.......そんな戯けた力があってたまるか! 」
再び光の波を放とうとするグランだったが.......
「私のことを忘れてるわよ? 」
いつのまにか、グランのやや後ろに来ていたラミアがその手に槍を構えて立っている。
ラミアのもつ槍を見たグランの表情が変わる。
「きさま......そうか、お前も『一族』の血を.....『女神の素質』が成せる力か! まさか、『死の女王スカアハ』の特性とはな。となると......その槍は! 」
「魔槍『ゲイ・ボルグ』。勇者クー・フリンの武器として有名だけど、本来は死の国の女王である『スカアハ』のもの....... あなたも『これ』の威力は知ってるわよね? 」
瞬間、ラミアのもつ槍が凄まじい速度でグランに向けて投げられる。そこは別に普通だ。だが違うところが1つ。彼女は『足で投げた』のだ。
「その投擲法.....まさか! 」
「そうよ...... 」
ラミアはグランにむけて薄く笑う。
「こいつは、あんたのもつような『量産型(コピー)』じゃない......『本物(オリジナル)』よ 」
グランは慌てたように構えるがすでに遅い。
投擲された『ゲイ・ボルグ』は空中で突如30の鏃に分裂し、闇色の鏃に変化しグランに遅いかかる。
グランが光の波を放とうとするが間に合わない。突き進む30の鏃はその全てが容赦なくグランの全身に突き刺さった。
「ぐわああああ!? 」
激痛に全身を蝕まれ絶叫するグランは、自分の体の変化に気づいた。鏃が刺さった部位が徐々に『老化』を始めている。
「ラミア! きさま、なにを! 」
「あなた、自分で言っといて忘れてるの?私は『死の女神スカアハ』の特性をもっているのよ?『死』を司るスカアハに『老化』が関係ないわけないでしょう? 」
唇をかむグランにラミアは静かに告げる。
「安心して。手心を加えて置いたから、あくまで『刺さった部位』が老化するだけ。『葬式』で親族が見るあなたの顔は今のままよ? だけど、あなたを『助けはしない』わ。体の30箇所を鏃で貫かれた以上、なにか措置をしないかぎり、あなたは助からないわ 」
「く.....そ.....が..! 」体の30箇所から真っ赤な血を流し、口から血の塊を吐き出しながらも、グランはおのれの右手に握られる抵抗の象徴である剣を持ち上げようとする。だが、その手はもう1つの『右手』に押さえられる。
「てめえの幻想はここで終わりなんだよ。グラン! 」
彼の右手が触れたとたん『グラン』の力を支える『銀の腕』はバラバラに砕け散る。
「きさま......これで......勝ったと思うな.......俺は始まりにすぎん....『タラニス』という『組織』を相手に貴様になにができ..... 」
「関係ねえよ 」上条は力強くグランの言葉を否定する。
「んなこと関係ねえよ。相手がどんなものでも俺は逃げない。自分が『助けたい』と決めた奴の為なら、俺は地獄の底でも突き進む。それが俺の.....『上条当麻』の信念だから! 」
上条の言葉に目をみはるグラン。グランは悟る、こいつは予想もしなかった強敵だったと。
「あなたの敗因は、武器の力に頼った上に、その武器が完全でなかったことよ。しかも一点の攻防に特化しているあなたは面の攻撃には不利だった。つまり、私相手には相性が悪かったってことね 」
「だまれ.....この化物......が.....どこまで行っても......貴様らの『一族』の定めは変わらん.......ぞ 」
「それが最後の言葉? 意外に小物だったのね。一族の定め? そんなもの私が知ったことじゃないわ。とっくに『一族』から追放されてる私にとっては 」
護は、目の前で繰り広げられるやりとりにただ唖然としていた。
分かってはいたことだが、この作品世界のキャラたちは『凄い』。
そんなことを改めて自覚させられた護だったが、同時に戸惑いも感じていた。本来なら『ラミア』も『グラン』も.....そしてクリスを始めとする「ウォール』のメンバーも、作品には登場しないはずの人物である。それが出た理由は1つしか考えられない。すなわち護が異世界からこの世界に『介入』したから......である。
すなわち、もしも『仲間』や敵が死んでしまうとすれば、それは自分のせい........
そんな護の心中などつゆ知らず、ラミアは護に向き直る。
「早めに加勢できなくてごめんなさい。この『ゲイ・ボルグ』はいつも手元に置いとくわけじゃないから 」
「それは仕方ないです。でも、そいつは『グラン』はどうするんです? 」
「うちの部下たちで、こいつの実家に届けるわ。こいつの親はIRAとリアルIRAの区別はつかないだろうし、IRAの一員として国に貢献したと伝えさせる。こいつは『敵』だったが、その親は違うからな 」
既にものいわぬ死体となっているグランを聖騎士団のメンバーが運んでいる間に、護たちはラミアからクリスの父親がリーダーを務めているという組織『タラニス』について概要を聞かされた。
『タラニス』とは、かつてアイルランドがイギリスと争っていた時代に、アイルランド聖教会直属の魔術勢力である『聖騎士団』とは別に民衆の手で作られた魔術結社のことをさすのだという。
「IRAが長きにわたるイギリスとの戦いをえて、最終的に独立を勝ちとれたのも魔術勢力である『聖騎士団』や『タラニス』の暗躍があったからなの 」
「じゃあ......なぜ、『タラニス』は今も戦う.......の? 」
哀歌の質問は当たり前のことで、戦いが終わった以上『タラニス』の役目も終わるはずである。
「アイルランドは確かに独立を果たしたのだけど、そのさい、北アイルランド6州はイギリスのものとなったの。その時にこれ以上の闘争を避けたい『聖騎士団』とアイルランド全土を取り戻すまで戦う意思をもつ『タラニス』が対立したの。結果としてタラニスはわれらとは袂を分かち、表向きはリアル IRAとして、未だイギリスに対して戦いを続けているの 」
「なるほどな.....まあ、それはそれとして.....どうやってクリスを助け出すんだ? 」
上条は、いますぐにでも動きだしたい表情をしていたがラミアを首を横に振った。
「今すぐには、動けないわ。まず『聖騎士団』のメンバーを集めなきゃいけないし......... 」
「僕らは先に行きます! 」護はラミアの声に被せるように叫んだ。
「早くしないと手遅れになるかもしれない。それはそうですよね? 」
「確かにそうだけど......あなたたちだけで行かせるわけには....... 」
「心配になる気持ちも分かります!だけど、今はクリスが......僕の『仲間』が危ないんだ! 早く助けたいのは当然です! 」
ラミアはしばし考える素振りをしたのち、ポケットから何やら丸めた紙を取り出さし、それを護に向けて投げた。
「それは地図よ。アイルランド語で書いてあるから哀歌って子ぐらいしか読めないだろうけど、クリスの家の場所が書いてある。いいかい? 絶対に死なずにまってて。できるだけ早く私達も駆けつけるから」
ラミアの誠意に感謝し、護は深く頭をさげた。
「じゃあ、いこうかみんな。前回はクリス命名による『迷子のインデックス捜索大作戦』だったけど、今回は『囚われのクリス救出大作戦』だ! 僕らの『仲間』を救い出しにいくぞ!」
応!という掛け声が古城に響いた。