とある世界の重力掌握   作:烈火信仁

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とある海峡の騎士戦士

 

 

 

 

 

結果だけいえば、護たちの救出作戦は成功した。

 

倫敦(ロンドン)塔に囚われていたクリスの妹、セルティの救出に成功し無事に脱出。

 

共に脱出した『救民の杖』のメンバーを含めて、死者は無し。イギリス清教の要塞施設を攻めた作戦としては驚きの成功を収めた護たちだったが、一つだけ予想外の事が起きた。

 

哀歌の失踪である。

 

「つまり、哀歌はあそこで残って騎士派の兵士たちや、魔術師たち多数を相手に戦ったと? 」

 

「ああ、俺はその場を見なかったが間違いない。なにしろ、あの惨状だ 」

 

ダビデが指差す先にはテレビに映るロンドン塔がある。

 

その有様は悲惨だった、殆どの建物が原形を留めていない。真ん中からへし折られたかのようになっていたり、真っ黒に焦げて瓦礫になったりしている。

 

さすがに本丸である『白き塔(ホワイト・タワー)』は崩れはしなかったものの、壁に無数の穴が空いている。

 

テレビの特番では、女性アナウンサーが、今回の事件に関してIRAが関係している可能性があるという事を喋っている。

 

騎士派の兵士たちや、イギリス清教の魔術師たちが、あんな事をするわけがない。あの場にいて、これだけの破壊を引き起せる人物は1人しかいない。

 

「哀歌は自分の力を解放したんだと思う。彼女ああ見えて、いつも全力で戦ってるわけじゃないそうだし。彼女は僕らの中で唯一、魔術、超能力、そのどちらにも対応できるエキスパートだ。哀歌ならあれだけの破壊を引き起こせてもおかしくない 」

 

「だがよ.......なら、哀歌はどうして戻らねえんだ? 哀歌の奴の実力なら敵を蹴散らして戻ってくることぐらいできるはずたろ? 」

 

高杉の疑問に護はすこし思考を巡らす。まず考えらるのが、なんらかの理由で哀歌が捕らえられたというものだがその可能性は低い。

 

もしイギリス清教側が哀歌を捕らえたのだとすれば、なんらかの動きが見られるはずだが、そのような動きは見られていない。

 

第2に考えられるのは、哀歌が今だ敵と交戦中という可能性だ。というか現時点ではその可能性が1番高いだろう。なにせ哀歌はステイルと遭遇できてないのだから今だ、敵として追われているはずだからだ。

 

思考の袋小路に入りかけた護をナタリーの声が呼び戻す。

 

「護さん! イギリスにいる在留員のメンバーからの連絡がありました。ドーバー海峡付近において大規模な魔術戦闘を確認したとのことです! 片方はイギリス清教の騎士派。もう片方は詳細は不明ですが1人の少女だと!」この報告における1人の少女とは間違いなく哀歌だろう。やはりあの後も戦闘を続けていたようだ。

 

「現場に近づける? 」

 

「海峡付近を演習の名目でイギリス海軍が遠巻きに海上封鎖しています。陸上も同様に陸軍によって封鎖され近づくのは困難とのことです 」

 

「となると哀歌を助け出すには、敵中を強攻突破するしかないわね。魔術師さんたちと合わせてならなんとかできるんじゃない? 」美希の問いにナタリーは首を横に振る。

 

「美希。ナタリーたちは『魔術結社』だ。その立場上、イギリス軍と当たるのはキツイんだよ。『魔術』は表向きには存在しない事になっているんだから 」

 

護は高杉に視線をやる。

 

「正直、キツイけど哀歌を連れ帰るのは僕達『ウォール』だけで行おう。数では圧倒的に不利だけど、高杉の『無限移動』を使えばイギリス軍とぶち当たらずに戦場にたどりつけるはずだ 」

 

護はナタリーに向かって、両手を合わせる。

 

「 君達『救民の杖』の力をもう少し貸してほしい。アイルランド聖教のラミアという人と連絡をとって会って欲しいんだ。『タラニス』に挑むには僕らだけでは力不足なんだ........君達の力を貸してほしい。頼む! 」

 

頭を下げる護に困惑した表情を浮かべるナタリー。そこへ横から別の声が入った。

 

「そうだな。なんだかんだ言って、貴君たちに協力して貰ったのは事実。そのおかげで私はあそこから解放された。なら、貴君たちにその返礼をしなければならない。 我々として全面的に協力することを約束しよう 」

 

「リ、リーダー! そんな簡単に決めちゃうんですか!? 私達が協力しようとしているのは『十字教』の人間ですよ! 」

 

リーダーと呼ばれた外見16歳前後の少女は、ナタリーをキッと睨んだ。

 

「過去のしがらみと、恩人たちの頼み。そのどちらを優先させるかは言うまでもあるまい? それとも、リーダーの決定に逆らう気か? 」

 

慌てて首を振るナタリーにリーダーの少女は満足そうに頷き護に向き直る。

 

「というわけで、我々『救民の杖』は今回全面的に協力することをリーダーである私。サラの名にかけて誓おう。貴君たちは全力で仲間を救いに行くがよい 」

 

サラの言葉に大きく頷き、護は高杉を見る。

 

「じゃあ、頼むぞ高杉。俺と美希を飛ばしてくれ! 」

 

「分かったよ、リーダー。行くぜ! 」

 

高杉の両手が2人に触れ、護と美希はドーバーに飛んだ。

 

 

「報告! 標的(ターゲット)の奇襲により、第1小隊壊滅。追撃中の第2、第3小隊が現在戦闘中です! 」

 

イギリス三大派閥の1つ、騎士派のリーダーである『騎士団長(ナイトリーダー)』はその静かな瞳を部下に向けた。

 

彼の元には、かれこれ数時間前にロンドン塔を襲撃したという犯人についての情報が入ってきている。しかし、自らの部下に絶大な信頼を寄せている騎士団長でさえ、その情報の精度を疑ったものだ。

 

「一個小隊30人を相手に、この暴れっぷりとは只者ではないな。 本来なら私自身が出るべきなのだろうが........ 」

 

騎士団長は、手元に置いてある資料に目をやる。

 

「私にはすべきことがある。まだ為すべきことがな 」

 

騎士団長は、部下に向けて指示を出す。

 

「清教派の『最大主教』に連絡を取れ。 あの女に頼るのは不本意だが、我々独力での対処には時間が掛かってしまう 」

 

「はっ、直ちに! 」命令を伝えに走っていく部下を騎士団長は何処か遠い瞳で見つめていた。

 

 

「しつこい! いいかげん諦めろ! 」

 

哀歌の持つ『破壊大剣(ディストラクション・ブレード)』から放たれる衝撃波が追っ手の騎士たちをまとめて吹き飛ばす。

 

「この異能の怪物が...... そんな姿を取らず本性を表せ! 」

 

若い騎士の1人がロングソードで斬りかかるが哀歌の剣に防がれる。

 

「私は私.....本性などない......今の私が、私なんだ! 」

 

反撃(カウンター)で放たれた哀歌の拳が若い騎士の鎧を砕き、彼の胸を貫く。

 

「!! 」驚愕に目を見開き、次の瞬間絶命する彼を哀歌は軽く振るように手を動かし、周りに展開する騎士たちの方へ投げ飛ばす。

 

「まだ、やるのかしら? 」

 

破壊大剣を軽く降りつつ、告げる哀歌に、長くいくつもの戦場を駆け抜け、修羅場を経験しているはずの騎士たちの心が揺れる。

 

これほどまでに、理不尽な力をもって戦う者を騎士たちは1人しか知らない。かつてイギリスで王女を救ったとある傭兵。そして今は、ローマ正教に仕える男。

 

「く......退くな!イギリス王家に牙を向いた異能の怪物をなんとしても仕留めるのだ! 」

 

隊長らしき騎士の叫びと共に残っている者たちが剣を哀歌に一斉に向ける。

 

「そっか、来るんだ..... 」

 

哀歌は、その口元を少し歪める。

 

「ならば見せて。騎士の真髄 」

 

哀歌の全身から、溢れ出る不可視の力が騎士たちにぶつかる。

 

「かかれ! 」隊長の掛け声と共に騎士たちが一斉に哀歌に剣を上げたその時だった。

 

「あ〜あ、戦場に展開する騎士派の戦士のみなさん?まもなくそこは砲撃に晒されるのにつき、早くそこから離れるのを進めるのよ 」

 

なんだか場違いな少女の声が響いた。

 

「この声は最大主教、ローラ・シュチュアート..... 」

 

「やっぱり、わらわの事を知りたりけるようね。とにかく、竜崎哀歌。そなたには死んでもらうにつき、承知しておいて? 」

 

騎士たちが慌てて、離れていくのを横目に哀歌はどこかから来るであろう攻撃に備える。

 

そして気づいた、ドーバー海峡の向こうから巨大な光の塊が近づいて来ることに。

 

「これは.....海上からの遠距離砲撃術式? 」

 

「そう。ガウン・コンパスからの遠距離砲撃術式につきよ 」

 

もはや、光線は後数秒もしない内に到達する。

 

そう判断した哀歌は破壊大剣を改めて握り締める。

 

その剣にはめ込まれている4つの宝石が哀歌の意思に反応するかのように光を放つ。

 

「世界に宿る竜の意思よ。その力を、その意思を、その意義を、その存在を、我が手の剣に込めたまえ、『万竜の意思』! 」

 

大きく振りかぶった刀を一気に振り下ろす哀歌。その刀から放たれた4つの光が混じりあい一つの巨大な光線となり、迫り来る光とぶつかる。

 

そのまま、空中で大爆発を起こす光線を眺めている哀歌に向けて、退避していた騎士たちが再び襲い掛かる。

 

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サラの言葉に大きく頷き、護は高杉を見る。

 

「じゃあ、頼むぞ高杉。俺と美希を飛ばしてくれ! 」

 

「分かったよ、リーダー。行くぜ! 」

 

高杉の両手が2人に触れ、護と美希はドーバーに飛んだ。

 

 

「報告! 標的(ターゲット)の奇襲により、第1小隊壊滅。追撃中の第2、第3小隊が現在戦闘中です! 」

 

イギリス三大派閥の1つ、騎士派のリーダーである『騎士団長(ナイトリーダー)』はその静かな瞳を部下に向けた。

 

彼の元には、かれこれ数時間前にロンドン塔を襲撃したという犯人についての情報が入ってきている。しかし、自らの部下に絶大な信頼を寄せている騎士団長でさえ、その情報の精度を疑ったものだ。

 

「一個小隊30人を相手に、この暴れっぷりとは只者ではないな。 本来なら私自身が出るべきなのだろうが........ 」

 

騎士団長は、手元に置いてある資料に目をやる。

 

「私にはすべきことがある。まだ為すべきことがな 」

 

騎士団長は、部下に向けて指示を出す。

 

「清教派の『最大主教』に連絡を取れ。 あの女に頼るのは不本意だが、我々独力での対処には時間が掛かってしまう 」

 

「はっ、直ちに! 」命令を伝えに走っていく部下を騎士団長は何処か遠い瞳で見つめていた。

 

 

「しつこい! いいかげん諦めろ! 」

 

哀歌の持つ『破壊大剣(ディストラクション・ブレード)』から放たれる衝撃波が追っ手の騎士たちをまとめて吹き飛ばす。

 

「この異能の怪物が...... そんな姿を取らず本性を表せ! 」

 

若い騎士の1人がロングソードで斬りかかるが哀歌の剣に防がれる。

 

「私は私.....本性などない......今の私が、私なんだ! 」

 

反撃(カウンター)で放たれた哀歌の拳が若い騎士の鎧を砕き、彼の胸を貫く。

 

「!! 」驚愕に目を見開き、次の瞬間絶命する彼を哀歌は軽く振るように手を動かし、周りに展開する騎士たちの方へ投げ飛ばす。

 

「まだ、やるのかしら? 」

 

破壊大剣を軽く降りつつ、告げる哀歌に、長くいくつもの戦場を駆け抜け、修羅場を経験しているはずの騎士たちの心が揺れる。

 

これほどまでに、理不尽な力をもって戦う者を騎士たちは1人しか知らない。かつてイギリスで王女を救ったとある傭兵。そして今は、ローマ正教に仕える男。

 

「く......退くな!イギリス王家に牙を向いた異能の怪物をなんとしても仕留めるのだ! 」

 

隊長らしき騎士の叫びと共に残っている者たちが剣を哀歌に一斉に向ける。

 

「そっか、来るんだ..... 」

 

哀歌は、その口元を少し歪める。

 

「ならば見せて。騎士の真髄 」

 

哀歌の全身から、溢れ出る不可視の力が騎士たちにぶつかる。

 

「かかれ! 」隊長の掛け声と共に騎士たちが一斉に哀歌に剣を上げたその時だった。

 

「あ?あ、戦場に広がる騎士派の戦士のみなさん?。まもなくそこは砲撃に晒されるのにつき、早くそこから離れるのを進めるのよ 」

 

なんだか場違いな少女の声が響いた。

 

「この声は最大主教、ローラ・シュチュアート..... 」

 

「やっぱり、わらわの事を知りたりけるようね。とにかく、竜崎哀歌。そなたには死んでもらうにつき、承知しておいて? 」

 

騎士たちが慌てて、離れていくのを横目に哀歌はどこかから来るであろう攻撃に備える。

 

そして気づいた、ドーバー海峡の向こうから巨大な光の塊が近づいて来ることに。

 

「これは.....海上からの遠距離砲撃術式? 」

 

「そう。ガウン・コンパスからの遠距離砲撃術式につきよ 」

 

もはや、光線は後数秒もしない内に到達する。

 

そう判断した哀歌は破壊大剣を改めて握り締める。

 

その剣にはめ込まれている4つの宝石が哀歌の意思に反応するかのように光を放つ。

 

「世界に宿る竜の意思よ。その力を、その意思を、その意義を、その存在を、我が手の剣に込めたまえ、『万竜の意思』! 」

 

大きく振りかぶった刀を一気に振り下ろす哀歌。その刀から放たれた4つの光が混じりあい一つの巨大な光線となり、迫り来る光とぶつかる。

 

そのまま、空中で大爆発を起こす光線を眺めている哀歌に向けて、退避していた騎士たちが再び襲い掛かる。

 

「く! 」騎士たちの剣を間一髪で避ける哀歌。彼女は確かに人外の怪物と呼べるかもしれないが、哀歌である限り、その力は無限ではない。

 

あれだけの大技を使った後に、ふたたび柔軟な動きを取る事は難しい。

 

「そこだ! 」避けた哀歌ね先にも別の騎士がいる。彼が突き出した剣が哀歌の左腕を貫く。

 

「舐めるな! 」左腕に走る激痛に顔を歪めながらも、全力で繰り出す蹴りで刺した騎士を吹き飛ばす哀歌だが、おそらく今のままでは、致命傷は避けられないだろう。

 

「さすがに、力を使いすぎた.....このままじゃ、持たない.... 」

 

肩を大きく上下させ呼吸を整える哀歌を見て騎士たちの間に安堵の空気が広がる。

 

敵は無敵ではない。その事実が騎士たちに余裕を感じさせていた。

 

「そろそろ終わりにしようじゃないか。怪物少女(モンスターガール)! 」

 

隊長の繰り出した剣が哀歌の体を貫こうとした、その瞬間だった。

 

「哀歌! 助けにきてやったぜ! 」

 

突然聞こえてきた声に騎士たちの動きが止まった隙に高杉が哀歌に触れる。

 

「高杉? 」

 

「先にアイルランドへ行け哀歌! 今のお前をこれ以上戦わせるわけにはいかない。これはリーダーからの命令だ! 」

 

哀歌がなにか返す前に、『無限移動』で彼女を飛ばした高杉は懐にある機能性炸裂弾射出機を取り出し騎士たちに浴びせかける。

 

「ごしゃくなまねを! 」並の人間なら肉片になるであろう炸裂を受けてもどういう術式を使ってか死にはしない騎士たち。これには高杉も首を振ってため息をついた。

 

「新手が1人増えただけのこと。覚悟しろ! 」

 

襲い掛かろうとする隊長だったが直後、彼の体を電流が駆け抜けた。

 

一瞬で意識を失い地に倒れ伏す隊長を見て騎士たちに動揺が走る。

 

「こんな戦場に1人きりで来るわけないでしょ? 」

 

電撃を隊長に直撃させた美希は、ポケットから無数の小さな鉄球を鷲掴みにして取り出し空中に放り投げる。

 

「喰らいなさい、『超電速射(レールバルカン)』!」

 

美希の叫びと共に、空中に放り投げれた鉄球が一気に加速し光と化して騎士たちを吹き飛ばす。

 

「このくらいで良い?護! 」

 

「ああ、最後にもう一撃だけお見舞いして引き上げよう 」

 

護は両手で空気を掴む動作を取る。

 

その手に掌握された重力が護のイメージ通りの形になっていく。

 

「その力......まさかお前たち学園都市の..... 」

 

「そうさ。僕達は学園都市の組織『ウォール』だ。地獄に落ちても忘れるな! 」

 

この言葉はとある無能力者の名セリフだから本人に失礼だな?と思いながら護は掌握した重力を一気に騎士たちにぶつける。

 

「喰らえ!『重力鉄槌(グラビティックハンマー)』!」

 

放たれた重力は騎士たちをまとめてクレーターの底に押し込める。護は、敵にも味方にもこれ以上死者を出したくなかった。戦おうとすれば恐らく相手を殺せてしまう。だが蛮勇はいらないのである。

 

「あの騎士たちは、あれでしばらくは意識は戻らないはずだ。今の内に、高杉の無限移動で戻ろう 」

 

「本当、人使い荒すぎだぜ。俺たちのリーダーは。帰ったら取りあえず寝させてくれよ? 」

 

高杉の手が2人に触れる。

 

「とりあえず作戦は成功ってことで良いんだな? てことはようやく..... 」

 

「ああ、今度こそクリスを取り戻す。クリスをあのふざけた親から取り戻すんだ! 」

 

決意を胸に護たちは飛ぶ、クリスの母ラミアがまつアイルランドの修道院へ。

 

 

 

 

 

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