とある世界の重力掌握   作:烈火信仁

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とある結社の軍事要塞

エバーフレイヤ家当主であるジェラルドは、巨大な施設の一室で長椅子に腰掛けていた。

 

彼の居城はすでに『聖騎士団』により押さえられている為、アイルランドには戻れない。

 

そこで、現在彼は世界で唯一、現実的に中立を守ることが可能な国。スイスにいた。

 

どの陣営にも属さない、アルプスの自然の要害に囲まれた、世界でも例を見ない本当の意味での永世中立国。それがスイスに対して人々が持つ一般的なイメージだろう。

 

だが実際の所、そんな綺麗な中立などありはしない。第2次世界大戦の頃から敗北した国の要人の避難場所。犯罪組織のマネーロータリングの中継地として機能することでスイスは中立という立場を維持できたと言える。

 

ジェラルドも『タラニス』の組織力を生かし、スイス政府と裏での繋がりをもつ事で、その国内にタラニスが所轄するちょっとした軍事要塞を築いていた。

 

「それで、ロンドン塔を襲撃したのは『ウォール』の連中で間違いないんだな 」

 

「はい。イギリスにいる構成員からの報告から考えてもほぼ間違いないでしょう 」

 

「しかし、奴らはなぜわざわざイギリスに喧嘩を売るような真似をしたのだ? 」

 

「それについてですが。一つ気になる情報がございます。塔から脱走した囚人の中に、少女の吸血鬼がいるとの報告がありました。またデータによるとこの吸血鬼はアイルランド出身との事です 」

 

執事長ベネットの言葉に、ジェラルドの顔が驚愕に染まる。

 

「まさか、奴らがロンドン塔か

ら連れ出したのは...... 」

 

「ええ、恐らくですがクリス様の最後の妹であらせられますセルティ様かと思われます 」

 

「随分と行方を探しても見つからなかったのはそういう理由か....となるとすこし計画を変更せねばならんな、クリスの覚醒を急がねばならない 」

 

「しかし、ジェラルド様。クリス様の急激な覚醒の促しは下手をすると....... 」

 

「かまわん。今は多少のリスクは冒しても急がねばならん。ベネット、お前は『神話空間』の準備を急げ 」

 

「は、直ちに 」

 

一例して部屋を出ていくベネットに目もやらずジェラルドは虚空を眺めながら呟いた。

 

「奴らをこれ以上放置するわけにはいかんな......さあ飛び込んでこい愚か者ども。特上の罠を用意して待っておるぞ 」

 

冷たく重い空間に、ジェラルドのくぐもった笑い声が響きわたった。

 

 

「お疲れさま。でも遅かったわね。あなた達最下位よ 」

 

イギリスの騎士派との戦いから戻った護たちにラミアがかけた第一声がこれだった。

 

「最下位って競争とかじゃあるまいし......ていうかなんでラミアさんだけしか修道院にいないんです? 」

 

「タラニスの現在地が掴めたのよ。だから先に戻ったメンバーは騎士団の部下たちと共にもうそこに向かってるのよ 」

 

「タラニスの現在地が掴めた? 今まで尻尾を掴むことも出来なかったのに.....で、どこなんです? 」

 

「またイギリスに逆戻りとかは勘弁だぜ? 」

 

疲労困憊を全身で表している高杉にラミアはゆるりと首を振って否定する。

 

「安心してイギリスではないわ 」

 

「あっそう。なら良かっ...... 」

 

「タラニスのメンバーはスイスにいるわ 」

 

「はあ......ってはあ!? ちょっとまてなんでスイス? 奴らの計画はそんなところじゃ出来ないだろう? 」

 

「ええ確かにそうよ。だからこれは私たちへの挑戦と見るべきね。 ロンドン塔をあなた達が奇襲してセルティが私たちの方で確保されてしまったから無理にでも私たちを潰そうと考えた....こんなところじゃないかな? 」

 

「だとしたら、敵が準備満タンで待ち受けている所に罠と知りながら飛び込んでいくことになるわよね.....まあ、それは今までも同じだったけどね。それにしても、ジェラルドって奴はよほど自信があるのかしら。もう住んでたお城はないのに 」

 

首を傾げる美希にラミアは一枚の用紙を差し出す。

 

「そこに書いてあることを読めばジェラルドの自信の理由がわかるわよ 」

 

「え?と何々....ふんふん....は?....ええ!? 軍事要塞!? 」

 

「そう、タラニスはスイス国内に第2次大戦時に築かれていた要塞を改築して拠点の1つにしているようなの。あいつらスイス政府とも裏のコネクションを築いていたようね 」

 

ラミアはため息をつきつつ用紙を美希から受け取る。

 

「仮にも永世中立国が、一陣営と手を組むなんてあってはならないんだけど.....綺麗な中立なんてありはしないってことね。まあ、というわけであなた達には『騎士団』が用意した特別機でスイスまで行ってもらうわ。準備が出来たら伝えて」

 

そう言って修道院の院長室に入っていこうとするラミアを護は慌てて呼び止める。大事な事を忘れていたのだ。

 

「な、なに? 」

 

「実は特別機の機内に眠れるスペースを作っておいて欲しいんです。 仲間の1人が疲労でぶったおれそうなんで 」

 

「無茶いうわね.....でも分かったわ。必ず用意させるから待っていて 」

 

安堵のため息をつく護の背中を高杉がなにかを敬うような目で見ていた。

 

「リーダー。あんたを初めて神だと思ったぜ..... 」

 

 

というわけで一行は特別機でスイスへと飛び、スイス国内にいる『騎士団』の協力者たちが経営する旅館に辿り着いたのである。

 

 

「私、スイスって始めてだけど本当綺麗なもんね。こんな風景某アニメでしか見た事ないわ 」

 

「なにのん気なこと言ってんだよ。 これから俺たちはあのアルプスの山ん中の要塞に突っ込むんだぜ? 少しは緊張感もてよ 」

 

「まあ、確かに景色は綺麗だけどね 」

 

「リーダー! 」

 

てなことを話している護たちは、旅館の3階の窓から外の景色を眺めていた。

 

この旅館。なぜか会員制であり、護たち以外の客がいない。旅館の経営者曰く、『騎士団』の方から資金が送られて来るから大丈夫なそうなのだが、それならわざわざ旅館にしなくても......と思う護だった。

 

「さて、景色も満喫したようだし。突入作戦の計画を立てるわよ! 」

 

旅館のロビーに置かれた長机に地図を広げたラミアが意気ようようと告げる。

 

「私たち聖騎士団は、正面から強行突破をはかり、一気に要塞に突撃すべしと考える。敵の居場所が分かっている躊躇う必要はないわ 」

 

「貴女は、本当に騎士団の長か? そんなリスクを冒さずとも、我々のメンバーのゴーレム使いたちに地下道を作りださせて向かったほうが早いと思うんだが? 」

 

「それには僕も賛成です。ただ魔術の使用をタラニスの奴らに気づかれるのはマズイですよね。だから僕達『ウォール』は少数精鋭のチームによる潜入を提案します。潜入チームを除く全員が要塞に突入をかけ、気を引きつける内に、潜入チームが地下道を使って要塞内部に侵入するというのはどうでしょう? 」

 

護の提案にラミアとサラはすこし考え込む。

 

「確かにそれが確実かも知れんが、陽動側にかなりの被害がでるぞ? 」

 

「ですが、闇雲に突入するよりは少なく済むはずです。それにここで躊躇っても事態は好転はしないと思います。死ぬ気で戦わないとタラニスは倒せない..... 」

 

「確かにそうね。私はあなたの案に賛成するわ 」

 

「私も貴君のアイディアに賛成しよう 」

 

両組織のリーダーが賛成に回ったため、突入計画は決まった。かくして、ついに『タラニス』と護たちの最終決戦の火蓋が切っておとされることになったのだ。

 

 

数時間後、アルプス山中に鎮座するタラニス所有の軍事要塞『ダグサ』では軍服を着た兵士たちが警戒態勢に入っていた。彼らはスイス軍ではなく海外から集められた傭兵、あるいはリアルIRAのメンバーで構成されていた。

 

9時30分。1人の兵士が雲間に光る光点を視認した。それは次の瞬間、いくつも増え確実に近づいて来る。

 

「ミサイルだ! 迎撃しろ! 」

 

兵士に言われるまでもなくミサイル防衛システムにより対空ミサイルが発射させるが、よりにもよって迫る光点はミサイルを避けた。

 

「バカな!? 」驚愕する兵士たちの頭上に容赦なく光が降り注ぐ。

 

 

「敵襲だ! 」そう無線機に怒鳴る兵士の首に短弓の矢が突き刺さる。

 

「!? 」兵士たちが見る先には、鎧騎士の集団とローブを被った異様な集団。

 

先程、自分たちに降りそそいだ光線はなんの被害も与えていない。その事実に彼らが気づくよりも早く魔術で作られた無数の矢が兵士たちに放たれる。

 

絶叫が響き、次々と仲間が倒れている中で、動ける兵士の何人かが要塞各所に設置されている機関銃座にとりつき射撃を浴びせかける。

 

だが、まっすぐ突き進む弾は地面から湧き出すように現れた土づくりの人形に防がれる。そう、巨大な複数のゴーレムに。

 

「律法学者(ラビ)たちは全員ゴーレムを突っこませるのだ! それを合図に一斉攻撃を開始する! 」

 

サラの指示に答える、複数の

ラビたちに操られたゴーレムが一気に要塞に向かっていく。

 

恐慌に陥りながらも兵士たちが放つ機関銃及び機関砲の弾がいくつかのゴーレムを砕くがすべては無理だ。

 

突撃したゴーレムの一体がその巨大な腕で機関銃座の1つを叩き潰すのを合図に『聖騎士団』と『救民の杖』の2台魔術組織が軍事要塞『ダグサ』に襲い掛かる。

 

 

真上で響く破壊音に気をかけながら護たち潜入班はダビデの作る地下道を進んでいた。

 

予定てしては、要塞内の一室に真下から侵入する予定であり、今現在も進みつづけているのだがなぜか部屋の真下に出られないでいた。

 

「おかしい。ここまで来てもまだ部屋の下にこないなんて 」

 

「もしかして、これはダミーだったとか? 」

 

それはないだろと護が首を振った時先頭を進みダビデが急に動きを止めた。

 

「どうしたんだよ? 」ダビデの後ろを進み不審そうに聞く上条にダビデは右手で前方を指すことで答える。

 

「これは、エレベータ!? 」

 

ダビデがいる位置より先は空洞でエレベータが設置されている。どうやらタラニスの拠点は地下らしい。

 

「本当に地下が好きな連中ね..... 」

 

呆れる美希をよそに、護は真上にあるだろう床にかかる重力を極端に軽くし、軽く押すだけで要塞内の通路。エレベータの前に出る。

 

「ここまで警戒がザルだと明らかに僕達を誘ってると思うが......ここは行くしかないな 」

 

「まあ、私たちは今までそうやって来たんだから今回も同じよね 」

 

「リーダーは毎回人使いが荒いが今回は仕方ない。なんとしてもクリスの奴を取り戻さなきゃならないからな 」

 

「俺は、あの哀歌っていうお前達の仲間に借りがあるんだ。早く返さないと気が済まないんだよ 」

 

「ここでタラニスを倒せば、インデックスの危機も終わる。絶対にこの戦いに勝ってやる 」

 

「私たち姉妹を苦しめる元凶を倒して絶対クリス姉さんを助ける! 」

 

6人はそれぞれの決意を胸に秘め、地下の戦場に向かっていく。すべての決着をつけるために。

 

 

エレベータがついた先は小さな小部屋の中だった。殺風景な部屋の中にいくつかの調度品や家具が置かれている。

 

その内の一つ。安楽椅子に1人の執事が腰掛けていた。エバーフレイヤ家執事長のベネットである。

 

「おやおや、皆様。ここまで来ておしまいになられてしまったのですか。正直驚嘆いたしました 」

 

にこりと微笑むてベネットは壁に設置されているボタンを押す。

 

「ですが今は、あなたたちと戦っている暇はございません 」

 

護たちの足元がぽっかり開き、彼らを飲み込む。

 

自動でしまっていく穴の駆動音を聞きながら背を向けるベネットに少年の声がかかった。

 

「毎回、その手は喰わないよ。特に僕はね 」

 

後ろを振り向いたベネットの目に映るのは落ちるずだった護の姿だった。

 

「?......ああ、なるほど『重力掌握』であなたの周辺だけを無重力にしたのですか。いつのまにかそんな力の使い方を覚えたのですね 」

 

関心するように、顎に手をやるベネットに向けて護は腰にさす鞘から剣を抜く。

 

その右手に装着しているのは『銀の腕』。アイルランド神話の神『ヌアダ』がもっていたという『神話級の武具を使いこなせるだけの怪力を与える腕 』。

 

その手に握られるのは『ヌアダの剣』。エバーフレイヤ城で見つかった本物に限りなく近い複製品(コピー)。

 

護の出で立ちを見て、ベネットは目を細める。

 

「あなたは、前回その装備で敗れているのですよ? それでもやるというのですか? 」

 

「確かに僕はあなたに負けた。一度は完敗といってもよい負け方をした。だけど、だからといって戦わないわけにはいかない。仲間を助けた出す為に 」

 

次の瞬間、一気に加速した護がその刀身を振り下ろす。

 

キン! という甲高い音と共に、ベネットの報復者(フラガラッハ)がヌアダの剣の一撃を防ぐ。

 

「仕方がないでございますね 」ベネットは報復者を軽く振り護を少し遠くに飛ばす。

 

着地した護とベネットの視線がぶつかり合う。

 

「今度こそ、死んでもらうといたしましょう 」

 

 

同じ頃、落とし穴に落ちた護以外の5人はさっきとはうってかわって巨大なドームの中にいた。

 

「良くきたな。我が娘。そしていまいましい組織のものたち 」

 

5人の前にたつのは、エバーフレイヤ家当主であるジェラール。

 

「ようこそ儂の『神話世界』へ 」

 

ジェラルドが指を鳴らすと、地面が開き中から十字架に吊るされたクリスが現れる。

 

「クリス! 」慌てて駆け寄ろうとせる高杉だったが直後に思い止まった。これは罠だと悟ったからである。

 

「そうだ。それ以上近づくな。それ以上私に近づけば十字架上のクリスは自動的に処刑される 」

 

動きを止めざるをえない5人を見て、ジェラルドはクククと声を潜めて笑う。

 

「さあ味わえ! この『神話空間』の力を! 」

 

ジェラルドの叫びと共にドームの中に異常な力が溢れていく。

 

突然空中に現れた巨大な棍棒が振り下ろされるが間一髪で避ける5人。だがセルティの叫びが残りの4人を驚愕させる。

 

「なぜ、『ダグサの棍棒』をこんな所で使えるのよ? あんな神話級の武具のオリジナルをスイスで自在に操るなんて不可能なはずよ! 」

 

「それができるのが、この『神話空間』なのだ。さてタップリとこの威力味ってもらおうか! 」

 

地下の巨大な空間で最終決戦が始まった。

 

動きを止めざるをえない5人を見て、ジェラルドはクククと声を潜めて笑う。

 

「さあ味わえ! この『神話空間』の力を! 」

 

ジェラルドの叫びと共にドームの中に異常な力が溢れていく。

 

突然空中に現れた巨大な棍棒が振り下ろされるが間一髪で避ける5人。だがセルティの叫びが残りの4人を驚愕させる。

 

「なぜ、『ダグサの棍棒』をこんな所で使えるのよ? あんな神話級の武具のオリジナルをスイスで自在に操るなんて不可能なはずよ! 」

 

「それができるのが、この『神話空間』なのだ。さてタップリとこの威力味ってもらおうか! 」

 

地下の巨大な空間で最終決戦が始まった。

 

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