とある世界の重力掌握   作:烈火信仁

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とある三位の意外要請

吸血鬼。 その存在は空想上の存在とされていたが現在魔術サイドでは実在するものとして認識されている。ある特異能力『吸血殺し(ディープブラッド)』の存在が確認された事により。

 

「で、それで......その能力をもつ人がなんでこの街にいるっていうんですか? 」

 

「これは僕の予言として聞いて欲しいだけど、ある男がある少女を救う為に吸血鬼を欲した。だが、吸血鬼などそう簡単に見つかるはずがない。そこで男はその立場を利用して知った『吸血殺し(ディープブラッド)』の少女を確保した。 だけどその男は自分の所属していた組織を裏切って行動していた為に魔術サイドが介入しづらい科学の街である学園都市(ここ)に拠点を持ったんだ。その男の名は、錬金術師アウレオルス・イザート。 」

 

「だとしたら、私もそこに引き寄せられるってことよね? でも今は別段なにもないけど? 」

 

「そこばっかりは僕にもよく分からないんだけどね.......ただこれは推測だけど吸血殺しの効果が及ぶのは一定の範囲だと思うんだ。現に彼女が消してしまったのは吸血鬼化した村の人であって遠くから引き寄せた訳ではないという事だし 」

 

護たちがいるのは、学園都市特有のサービス職の一つである個室サロンの中である。護たちのような暗部組織の人間は仮の拠点をいくつも用意する。護たちのような学園都市全域においての活動が想定されるような組織は必然的に各学区内に最低1つの拠点を持つのは珍しくない。

 

「それで護さんは、その少女を救おうとしているんですか? 」

 

「まあ、それもあるけど......上条さんに万が一がないようにするという目的もあるんだ 」

 

護が警戒しているのは、作品の流れとの違いの発生だ。その例がグラビトン事件の時の一件である。

 

「(いったいなにが原因で流れが変化するのかがいまいち分からないけど......もしかしたら上条さんがアウレオルスに破れるという展開だってありえるんだ)」

 

護からすれば上条が死ぬということは、佐天さんが死ぬことにも繋がるので嫌でも避けなければならない。

 

その為に自分の作品知識を使って最悪の事態を避けるべく、先手を打つことで展開を変えようとしているがはたしてそれが可能かどうかについては護にも分からない。

 

護という異物をかかえたこの世界がどんな変化をするかについて護が知れるわけがない。

 

「それで具体的にはどうする気なの? 」

 

机におかれているポテトフライの山に手を伸ばしながら哀歌が言う。因みに彼女はこれで3皿めである。

 

「とりあえずアウレオルスが潜伏している場所は分かっているから内部に入って調査するしかない。 だだその為には僕らが生徒になるしかない 」

 

 

 

護からすれば上条が死ぬということは、佐天さんが死ぬことにも繋がるので嫌でも避けなければならない。

 

その為に自分の作品知識を使って最悪の事態を避けるべく、先手を打つことで展開を変えようとしているがはたしてそれが可能かどうかについては護にも分からない。

 

護という異物をかかえたこの世界がどんな変化をするかについて護が知れるわけがない。

 

「それで具体的にはどうする気なの? 」

 

机におかれているポテトフライの山に手を伸ばしながら哀歌が言う。因みに彼女はこれで3皿めである。

 

「とりあえずアウレオルスが潜伏している場所は分かっているから内部に入って調査するしかない。 だだその為には僕らが生徒になるしかない 」

 

「生徒って.....とうしてなんですか? 」

 

「アウレオルスが潜伏しているのは三沢塾という進学塾なんだ 」

 

「進学塾? なんでそんな所を拠点にするんですか? あからさまに目立つと思うんですけど 」

 

「人が多くいるあの場所だからこそアウレオルスはあそこを選んだんだ 」

 

アウレオルスが三沢塾に潜伏した訳は実現不可能と呼ばれた錬金術『黄金錬成(アルス・マグナ)』を執り行う為だったのだが護はあえてそこに触れようとは思っていない。

本当の理由は、後で分かることだし今はそれより優先する事があるからである。

 

「民間人が多くいる場所なら、自分を狙う組織から攻撃されにくいからだと僕は思うんだけどね 」

 

とりあえずもっともな理由でごまかし護は本題に入る。

 

「僕の調べでは、あの三沢塾っていう塾は科学崇拝を行うオカルト結社みたいになっているらしいんだ。 それで本来ならアレイスターが処理を命令して終わりの筈なんだけど、そこでアウレオルスが乗っ取ってしまったもんで面倒なことになっているらしいんだ 」

 

「そのアウレオルっていう奴はどんな戦い方をするんですか? 」

 

「戦い方というか.....彼は錬金術師だから当然錬金術を使う訳なんだけど、その中でも実現不可能と呼ばれ、錬金術の到達点である黄金錬成(アルス・マグナ)という錬金術を使うんだ。その効果は『考えたことをそのまま現実にする』というもので事実上無敵かつ反則な力なんだよね 」

 

「それって......反則っていうかチートだね......そんなの相手にして勝てるの? 」

 

哀歌の言葉に護は即答できない。正直な所、護は上条さんがいない限りアウレオルスに勝つのは無理ではないかと思っている。

 

なにしろ作品中ではステイルと上条さんが協力して、重傷を負いながら『黄金錬成(アルス・マグナ)』の欠点を突いてようやく勝てた相手なのだ。

 

自分がどこまで戦えるかと問われると護は正直自信がないのである。

 

「僕もなんとも言えないけど『無敵』な人間なんて存在しないんだからなんとかなると信じたいね 」

 

「時に、先程護は生徒となって潜入すると言ったけどウォール全員で忍び込むわけ? 」

 

「いや、アウレオルスに魔力を探知されるとまずいから今回は潜入組は僕と高杉と美希とクリス。哀歌とセルティは万が一に備えて外で待機していて欲しい。特にセルティは今回は吸血殺しが関わっている以上気を付けなきゃならない 」

 

護の言葉に微妙に頬を膨らませるセルティ。彼女としてはせっかく姉と同じ組織の一員となったのだからもっとチームの一員として働きたかったのだ。

 

 

とはいえ、今回はそう簡単に現場に連れていける訳ではない。

 

「セルティにも哀歌と一緒に万が一の時のバックアップという大事な役目がある。 しっかり頼むよ? 」

 

「分かりました...... 」

 

渋々ながらセルティが了解した時、護の携帯電話からレクイエムの着信音が流れ出した。

 

メールの差出人は『御坂美琴』。

 

護は一瞬、心臓が飛び出るかと思った。

 

美琴とは木山をめぐる一件以来、まったく会っていない。

 

アイルランド旅行などに出かけていたせいもあるが、美琴自身が遭遇するのを避けているようなのだ。

 

その美琴からのメールの内容は至って簡潔だった。

 

『アンタのアパートの前に行くから待っていて 』

 

それがメールの内容だった。

 

 

それから数10分後、護は哀歌たちを個室サロンに残し、1人アパートの前に立っていた。

 

メールには時間が指定されていなかったためになるべく早く着こうと急いで来たのだが、まだまったく姿は見えない。

 

「面と向かって、どう話せば良いんだろう...... 」

 

あの一件の後、偶然顔を合わせてしまったりした時の美琴の表情には怯えが感じられた。

 

正直、前のように話せる自信が護には持てないでいるのだ。

 

「は?......ん? あ、来た 」

 

前方から走ってくる常盤台の制服を着た美琴。外見は別段焦りや恐怖を感じられるわけではないがだから護が安心できるわけがない。

 

走ってきた美琴は、護の前に来るないなや開口一番こう言った。

 

「お願い。 協力して 」

 

「.......はい? 」

 

「だから協力して! 」

 

てっきり、なんか問い詰められるのかと思っていた護は予想外の言葉に拍子抜けした。

 

「あのさ.....一体なにを協力しろっていうの? 」

 

「ここじゃ話せないから、ついて来て 」

 

有無を言わせずにすたすたと歩いていってしまう美琴の後を慌てて護は追った。

 

美琴の後に歩きながら、護は今の状況を訝しんでいた。プライドの高い美琴がわざわざ他人に頼むのは珍しい。

 

だが護には今の時期に美琴が自分に頼みごとをする理由が検討つかないのだ。

 

 護の知識の中では、美琴が関係する一大イベントといえば、姫神をめぐる一件の後に起こる一方通行(アクセラレータ)が関係する一件しか思い当たらない。そして、それはもっと先に起こるはずの出来事のはずなのだ。

 

ポケットに入れた携帯を取り出し日時を確認する護。

 

携帯の示す日時は、8月15日。

 

「(8月15日に、なにかあったっけ?) 」

 

疑問に思いながら護は第1話で上条が美琴と出会う某ファミレスで美琴と向かいあうことになった。

 

 

「それで....... 僕に協力してほしいことって何? 」

 

ファミレスでバニラアイスにコーラを注文した護の質問に美琴はしばし黙った末にポツリと呟いた。

 

「アンタは、学園都市の上との繋がりを持っている.....違う? 」

 

「........ だとして一体なんなのさ? 」

 

「もしアンタが上の事情を知っているなら教えて欲しい事があるのよ 」

 

ひと呼吸おいて美琴は思い切ったように言った。

 

「絶対能力進化計画(レベル6シフト) って知ってる? 」

 

もちろんその言葉を知っている護は思わず表情を強張らせてしまう。

 

「やっぱり知ってるのね 」

 

「ねえ、1つ聞いていいかな? 」

 

ここまで来て護は決断した。遅かれ早かれ美琴が闇を知るのなら今自分がおかれている闇について話そうと。

 

「どうして、僕が上と関係を持っていることに気づいたの? 」

 

「アンタが警備員(アンチスキル)を相手に大暴れした後の出来事からよ。あれだけの被害を与えたアンタがお咎めなしなんて不自然だわ。それにアンタが入院したとき、学園都市統括理事会の1人が会いに来ていた。後で知ったことだけど名は剣崎達也。統括理事としてはもっとも新参で、如何なる理由で理事になったかも不明な人物。そんなのと関わっている以上、アンタが上と繋がってないと思う方が不自然じゃない 」

 

「良く知ってるね......さすがは第3位の『超電磁砲(レールガン)。 クラッキングでも仕掛けたの? 」

 

「うるさい! 今は関係ないでしょ。 それより質問に答えなさいよ 」

 

「ふ?......分かったよ。 確かに僕はその計画を知ってる。 学園都市第1位のレベル5、アクセラレータをレベル6にする計画で、その内容は君のクローンを20000体殺すというもの......だろ? 」

 

「知っているなら話は早いわ。 わたしはその馬鹿げた計画を止めたいの。 だから一緒に手伝ってくれない? 」

 

話の時期が早まったのか、はたまた自分の知識にないようなイベントなのか。 悩む護だったがそこで一つ気づいた。とあるシリーズにはと禁の他にもう1つ外伝がある。その名は『とある科学の超電磁砲(レールガン) 』。

 

「(そうか....そういえば外伝もあったんだっけ。 でもアニメでは今の様な状況は描かれなかったような?......そうか! コミックの方に書かれている出来事なのかもしれない。 だったら僕の知識の中にないのも頷ける) 」

 

「ねえ、アンタ聞いてるの? 」

 

「......ん? あ、ああ! 聞いてるよ! 頼みは分かった。 でもそれをするという事は学園都市第1位と戦う可能性があることを意味するんだよ? 美琴は第3位。 僕は第4位。 2人がかりで戦っても勝てるかどうかは...... 」

 

「ツッ.....!分かってるわよ、そんな......こと! 」

 

予想をしていなかった美琴のリアクションに護は思わず唾を飲んだ。叫んだ瞬間の美琴の顔は悲痛なほど複雑な感情に彩られているようだったからだ。悲しみ、後悔、絶望、嫌悪、そういった感情を一度に彼女に湧き上がらせるような事象。それは作品世界には一つしかない。

 

「(美琴は......もうアクセラレータとぶつかったのか) 」

 

「御坂...... 」

 

「今は言葉はいらない。ただ力を貸して欲しいだけよ 」

 

そう言う御坂の瞳にはすでに先程まで浮かんでいた複雑な感情に揺れる弱さは無く、意思を達成しようとする強い意思が燃えて居た。

 

 

 

 

 

「......なら、一つ聞かせてくれないかな? どうやって計画を潰す気なんだ? 計画には学園都市内部のかなりの研究機関が関わっているはずだよ。 それを片っ端から潰そうとすればアンチスキルに感づかれると思うけど? 」

 

「要は、研究所の建物とかを壊さなければ良いんでしょう? だったら私の能力でハッキングをかけて研究所の機能を再起不能なほど破壊してやれば良いのよ 」

 

「ハッキングって..... やっぱりしてたんだ.....怖るべし第3位.....もはやサイバーテロじゃん..... 」

 

「能力でアンチスキルをほぼ壊滅させた人間に言われたくないわよ! 」

 

「そこを突かれると痛いんだけどな.......時に、その研究機関所属の研究所の場所については把握しているわけ? 」

 

「ええ、ある筋からの情報もあってね。まあ、全てではないけど 」

 

「なら、それをすれば良いじゃないか? 別段僕を必要としなくても...... 」

 

「私がハッキングをかけたとして、いくらなんでも全てを機能不全にできるとは思えない。だから上と通じてるアンタに私が機能不全に出来なかった施設を破壊してほしいのよ 」

 

なんて、身勝手な......と思う護だったが、ここで計画を止めることはゆくゆくは上条さんの危険を少なくする事に繋がるのも事実なので口には出さない事にした。

 

 

「分かった。 だけど僕にも都合があるから、そう長い事それに関わってられないよ? 」

 

「無理を言ってるのはこっちなんだから分かってる。 また連絡するからその時はよろしくね? 」

 

そう言うだけいって美琴は、席を立ってレジで2人分払って出ていってしまった。

 

「(当たり前のように2人分払って出て行くとか意外にブルジュア? いや、考えてみればレベル5といえば金持ちで当然か )」

 

そんな事を考える護に『中』から声がかけられた。

 

『戦うことを決したようだが、話にあったアクセラレータという男に勝てるのか少年? 』

 

「(ルーか......分からない。 僕の能力である『重力掌握』で扱う力も所詮はベクトルの範疇にあるものだからアクセラレータの能力『一方通行(アクセラレータ)』の前には歯が立たないかもしれない。 あいつの能力はベクトル操作......あらゆる物の向きを操れる。それを利用した反射を使われれば僕には勝ち目はないかもしれない) 」

 

『少年。 君の能力でかなわないというなら私が力を貸そう。私の力を扱えば良い 』

 

「(そんな事を言ったって、能力者には魔術は.......) 」

 

『君のその力は『超能力』ではない 』

 

「(は!?) 」

 

『いや、正確には学園都市で開発された超能力ではないというべきだな。 君の力は開発されたものではなく、元から備わっているものだ。 それも、この世界ではなくべつの世界で 』

 

「(なんであなたがそれを!? )」

 

『魂が発する力で大体わかる。 だからこそ私は君がこの世界で生き抜けるよう力を貸すことにしたのだぞ? よって君には私の力を使えるはずだ。まあ、訓練を経ないと制御は難しいだろうが 』

 

「(訓練って? )」

 

『少年の精神世界で君を鍛える。 その為にはここでは不味いのだが 』

 

「(分かった。 アクセラレータに立ち向かう為には確かにあなたの力が必要になる。よろしくお願いします ) 」

 

という訳で護は、ルーの言葉に従い自分のアパートの部屋に (個室サロンに哀歌とセルティを置き去りにしたまま)向かったのだった。

 

 

『さて始めるぞ。少年 』

 

「(分かりました...... ) 」

 

ベットに横たわる護は内心ビクビクしながらその時を待っていた。正直怖い。いや怖いわけがない。なにしろ精神世界で訓練なんていう事態はマンガやアニメではよくある展開だとしても自身で経験することなどまず無いからである。

 

護がなにか考える前に唐突に視界か真っ暗になり護の意識は途絶えた。

 

 

「ここは? 」

 

護が立つのは奇妙な空間だった。 自分が住んでいた元の世界。現実世界が荒れはてた姿。いや風化したと言うべきだろう。

 

「ここは君の精神世界。 そして君を鍛える場所だ 」

 

姿は見えず声だけが空間に響く。

 

「視線の先を見るが良い 」

 

促されて向ける視線の先にあるのは。

 

「ブリューナク? 」

 

「そうだ。私の槍だが、今は君が使うのだ。 早く槍を抜け少年。時間はない 」

 

ルーの言葉が終わるより早く曇り空より、なにかが一気に落ちて来る。

 

慌てて護が槍を引き抜いた直後無数に落ちたなにかがその姿を現す。

 

「な? 哀歌? 」

 

目の前にたつのは自分の仲間。哀歌だったのだ。護の言葉に哀歌はなんの反応も見せず、いきなり破壊大剣を現出させた。

 

「!? 」とっさにブリューナクを構えた護だったが容赦なく振るわれる破壊大剣に吹き飛ばされる。

 

「ここは僕の精神世界.....だから哀歌が......となると、あの時落ちてきたのは 」

 

護が言葉を紡ぎ終わる前に、別の場所に落ちたものたちが次々とその姿を現す。

 

「やっぱりか 」

 

護の前に立ち塞がるのは、自分の仲間である『ウォール』の面々。さらに『タラニス』のベネットやジェラルド。『救民の杖』のメンバーたち。

 

「僕と関係した人たちが勢ぞろいってことか 」

 

「この状況を君のもつブリューナクのみで切り抜けてみよ。この世界では君の力は使えない 」

 

「なる程ね......そういうことならやるしかないか。 仲間と戦うのは嫌だけど、全力でやってやる! 」

 

真紅の槍をその手に握り、護は目の前の強敵たちに向かっていった。

 

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