とある世界の重力掌握   作:烈火信仁

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とある成果と強襲作戦

 

護は精神世界でルーの名槍。ブリューナクを持ち戦っていた。

 

本来、護は格闘技術に精通しているわけではない。その護が今までいくつもの戦いで生き残れたのはひとえに自らがもつ能力があったからだ。能力によって身体能力を強化したりする事によって超人的な力を発揮することが出来ていた。だがこの精神世界では自らの能力は使えない。

 

武器になるのは自分の体とその手に持つブリューナクだけである。

 

「ぐわあぁぁぁ!? 」救民の杖のゴーレム使いダビデが操るゴーレムの拳をもろに受けて護の体が宙を舞う。本来ならこの一撃を喰らっただけで護は絶命するはずだが精神世界であるせいか傷を負っても直ぐに再生してしまう。もっとも痛みや潰される感触は伝わってくるが。

 

「(くそ、洒落にならない。 いくら死ぬ事がないといっても毎回こんな痛み味わうなんて嫌だよ....いかに僕が能力頼みだったか思い知らされるな) 」

 

護は右手でつかみ続けていたブリューナクに目をやる。真紅の名槍は傷一つなくそこにある。だが護にはルーが使っているようにこの槍を使えない。

 

「(槍術はおろか、武器術や格闘技もろくに習ったことない僕に槍を使った戦いなんて.....) 」

 

そう思った直後、今度は高杉が能力を利用した瞬間移動で護の後頭部に蹴りを入れる。

 

同じ瞬間移動系の能力者である白井黒子の得意技でもある。

 

「ごばぁぁ!? 」

 

奇妙な声を上げながら吹き飛び廃ビルの壁にめり込む護。

 

「(今まで特に意識もしなかったが、こんなにも高杉の蹴りには威力があったのか?) 」

 

普通なら今ので内臓の1つか2つは潰れたところだ。肋骨も肺に突き刺さるはずだ。だが痛みは感じ、感触もするものの重傷には居たらない。再生してしまうからだ。

 

「(くそ......この際使えないとか言えないか。 やるしかない!) 」

 

護は槍を強く握り締める。

 

「(ルーは僕がブリューナクが『使う』と言った。なら、僕にはこの槍を使って戦う力があるということになる )」

 

正面から迫るセルティを見つめながら護は立ち上がる。

 

「やり方や流派なんて関係ない。 これが僕のやり方だ! 」

 

護は両手で保持する槍を無造作に横に薙ぎ払う。

 

通常、槍に横に薙ぎ払う機能はない。 槍の本質はあくまで突き刺さすことにあるからだ。それはブリューナクとて例外ではなく通常なら刺すことしか出来ない。そう、通常なら。

 

「!? 」

 

ブリューナクがセルティに触れるか触れないかの所で槍の先から光が左右に伸びた。まるで戦国の武士が使った十文字槍のように。

 

「うおぉぉぉ!! 」護が振り抜くブリューナクの刃がセルティを横薙ぎに吹き飛ばす。

 

「おめでとう。 それで正真正銘その槍は君の槍となった 」

 

「槍の側面を見るが良い 」

 

言われるままに槍の柄の側面に目をやる護。そこには無かったはずの槍の銘が刻まれている。

 

『緋炎之護 』それが槍に刻まれた銘。護の物となったこの槍の名だった。

 

「本来、我々が使う武具に特定の名などない。なぜならその武具は自らの体と特性によって形作られるからだ。 私が扱う槍が『ブリューナク』だったのには対して意味を持たない。私が君の体に入ったことで君は潜在的に私たちと同じとなった。よって君がその槍を振るうことを決めた事により、その槍は姿を変える。西洋式の投げ槍から東洋式の十文字槍に 」

 

良く良く見れば槍の色彩自体が微妙に変わっている。真紅の槍は今では緋色(スカーレット)の槍となりその外観も戦国武将が持ちそうな和式へと変わっている。

 

「さて、槍は君のものとなった。 だがそれだけでは足りない。 君が私から受け継いだ特性を君なりに使いこなせなければその槍はただの武具でしかない 」

 

ルーの言葉と共に、今まで護に向かってきていた『仲間』を始めとする敵たちが消える。

 

「最後の訓練だ少年。その槍で、私を倒してみろ 」

 

今まで実体を現さなかったルーがここに来て姿を現した。 その手に握られるのはつい先程まで護が握っていた槍。即ちルーを象徴する武具『ブリューナク』。

 

「さあ、見せてみろ少年。君の槍 『緋炎之護』の力を 」

 

 

言葉と同時にルーのブリューナクが真紅の稲妻となって宙を飛ぶ。

 

「(あんなの受けたら怪我どころじゃないぞ!) 」

 

護はブリューナクを構えたまま全力で横に転がる。

 

「そこか 」

 

ルーの言葉に護が身構えた直後、地面に突き刺さったブリューナクが5つの稲妻を護に向けて放つ。

 

とっさに緋炎之護を前に構える護だがそれだけでは稲妻を防げない。5つの稲妻は防御をすり抜け全てが護の体を駆け抜ける。

 

 

「ぐわあぁぁぁぁ!? 」

 

苦痛と熱さと痺れが一度に襲い掛かる異質の痛みにのたうつ護。

 

「少年。 槍をそのまま使うことは誰にもできる。だがそれでは強敵相手には通じない。 槍の概念に囚われず、自分の思うことを槍を通して現せばよい。槍が姿としてくれるはずだ 」

 

護はのたうちながら、なんとか槍の柄を掴み直す。

 

自分の思うことを槍を通して現せ。いまだ実感は湧かないが、そういうのならばやるしかない。

 

護は己の槍の銘を頭に浮かべる。『緋炎之護』自らの名が入った銘が意味するのは『炎の護り 』。

 

「(なら.......!) 」

 

無言で再びルーがブリューナクを放つ、空中で5つに分かれた真紅の稲妻に向けて護はこんどこそ明確に緋炎之護を向ける。

 

「第壱の技、緋炎剛壁! 」心に浮かぶままに、正確には槍が示すままに護は技の名を叫ぶ。

 

そのとたん、迫り来るブリューナクに対して護の緋炎之護の槍先から放たれる緋炎が炎の壁を作り上げる。その壁が迫る5つの稲妻を5つとも防ぐ。

 

「第弐の技、緋炎斬波! 」護の叫びと共に槍の穂先が緋炎を纏い、その緋炎之護を護が全力で横に振るう。

 

槍から放たれる緋炎が鋭さという本来炎が持ちえない特性を宿しと波となる。

 

新たにブリューナクを構えなおすルーを緋炎の斬撃が切り裂く。それと同時にルーの体も切り裂かれる。

 

「見事だ少年。これで正真正銘、その槍は君のものだ。緋炎之護は君の強い力となるだろう 」

 

ルーの体が透けて行く。

 

「槍は君の中にある。君が呼べば君の力となる。 緋炎之護を君が信じるものの為に使うがよい。 訓練は終わりだ少年。現実世界に戻すぞ 」

 

護がなにか言う前に彼の意識は問答無用で途絶えさせられた。

 

「..........部屋.....か 」

 

護は唐突に意識を取り戻した。とっさに部屋の時計に目をやれば訓練を初めてから30分もたっていない。

 

「あんだけ訓練して現実は、30分もたってなかったのか 」

 

護は自分の両手に目をやる。

 

「(ルーは銘を呼べば、槍が力となると言っていたけど本当にできるのかな? ) 」

 

護は右手で宙を掴みながら、その銘を呼んだ。

 

「緋炎之護 」

 

そう呟くのと同時に護の右手は槍の柄を握っていた。

 

「.....どうやら、本気でこの槍は僕のものになったらしいな 」

 

護が戻れと念じると、緋炎之護は光となって消えて行く。

 

 

「さて、なんだかんだで新たな力を手にいれられた訳だけど......なんか怖いな。僕はいったいなんなんだ? 」

 

超能力と魔術は本来相入れないはずの存在である。

 

超能力者には魔術は使えず、魔術師には超能力は扱えない。それが原則だ。では超能力と魔術を扱えることになった護はなんだというのだろうか。

 

「なんだかおかしいぞ。僕はあくまでも元の世界では一般人だったはずなのに 」

 

考えて見ればおかしな事はいくつもあった。こちらに来た直後に発現したレベル5級の能力。自分をなぜか支援する統括理事の1人。自分が異世界から来た事を知っていたアレイスター。

 

「うう.......考えれば考えるほどますます混乱してきた......まあ、今はそれは後回しにして......そうだ! 哀歌たちの事すっかり忘れてた! 」

 

そうである。護は個室サロンに仲間2人を置き去りにしたままなのをすっかり忘れていたのだ。

 

その後、2人にたっぷりと絞られた護は何度も謝り、なんとか解放されたのは1時間後だった。

 

「うう......疲れた、もう動けない..... 」

 

「私たちを置き去りにしたまま、忘れた護が悪いんだよ?罰なんだから、最後までやってもうからね 」

 

護は2人のお叱りを受けた後、セルティの荷物を学生寮に運ぶ仕事をさせられていた。学園都市に移る事になったセルティは霧ヶ丘女学院に通うことになった。

 

セルティはてっきり姉であるクリスと共に住むと思っていた護だったが彼女的には色々な意味で姉には迷惑をかけたくなかったらしい。

 

だが、それは別に結構なのだが部屋に入れる荷物を入れたダンボールの数がとにかく多い。

 

生活用品や下着などはまあ普通だがその後に続くなにか良く分からない縦に長いダンボールや微妙にオカルト的な物品が飛び出しているダンボールまでかなりの数なのだ。

 

凄く気にはなるのだが触らぬ神に祟りなしのことわざにのっとり護は深く触れず作業を進めた。

 

こうして引越し作業を終えた護は爆睡していた高杉をむりやりたたき起こして自分のアパートに瞬間移動させ、気絶するように眠りについた。

 

その後2日間はいつも通りすぎていった。

 

どこからか侵入してきたロシアの工作員の捕獲やら、なぜ侵入できたと首を傾げたくなるぬいぐるみを抱いた少女の保護などという護たちからすれば比較的平凡な日々が過ぎていった。

 

そんな2日間が過ぎさり3日めとなった時だった。

 

朝からまるで予告のよう一面の曇り空にカミナリが鳴り響くなか護の携帯にメールが来ていた。送り主は美琴。

 

「なになに.......まじか、本気で8割がたの施設を再起不能にしたのかよ。つまり残りの2割の破壊に協力してほしいってことか 」

 

メールには施設の場所も記されていた。

 

「ならさっそく行くとするか 」

 

今回はウォールの仲間たちは連れていかない、これはあくまで個人的な用事だからだ。

 

稲光が走る曇り空の下を護は目的地へと走っていた。

 

 

 

「ふわぁ......超暇ですね 」

 

とある研究施設の内部を1人の少女が歩いていた。

 

外見はへたすると小学校高学年にみえる少女だが彼女も普通の人間ではない。彼女も暗部の人間なのだ。

 

「第3位の襲撃の可能性を考慮して防衛しろっていう命令でしたけど超だれもこないじゃないですか 」

 

彼女の名は絹旗最愛。能力者であり名は『窒素装甲(オフェンスアーマー) 』。

 

「まあ、この脳神経応用分析所に襲撃が来ないのは平和ってことで超ありがたいんですけど 」

 

そう絹旗が呟いた直後、すこし遠くでなにかが吹き飛ぶ音が響き、同時に建物の全域で警報がなり出した。

 

「残念ながら平和は超簡単に崩れましたね......とりあえず空気の読めない超不届き者を成敗しにいきますか 」

 

掌から数cmの窒素を凶器に変え、絹旗は敵の侵入箇所、分析所正門へと歩みを進めた。

 

 

「この単調な動きから見て短期警戒用の無人装甲車か...... 向こうにあるのは駆動鎧(パワードスーツ).......たった一施設になんて過剰な警備態勢だよ?........だが僕の攻撃は防げない! 」

 

護は目標である研究施設に正面から強襲をかけていた。要は正門を重力操作によって盛大に吹き飛ばし堂々と内部に侵入したのだ。

 

迫ってくる無人装甲車及び駆動鎧達に対して護は超重力砲を放ちまとめて吹き飛ばす。

 

「さっさとこいつらを退けて施設の中心を破壊しなきゃならないんだけどな...... 」

 

護がため息をついた時、唐突に周りに展開していた装甲車や駆動鎧達が一斉に動きを止めた。いや、停止したのだ。

 

「? 」

 

「退屈してるなら超相手しますよ侵入者。いや、第4位の重力掌握(グラビティマスター)。いったい何のつもりかは超分かりませんが、ここで止めますからね」

 

「絹旗......最愛? なんで.....そうか.....『アイテム』も計画に関わってたんだ! くそ、迂闊だった! 」

 

「なんでその名を知ってるか超疑問なんですけど。 まあ、それは置いといて.....行きますよ第4位 」

 

護がなにか言う前に絹旗は近くにあった輸送用の大型トラックを軽々と片手で持ち上げ護に向けて投げつけて来た。

 

「避けられない.....! 」重力を操作し、とっさにトラックを真上からかけた重力により地面にめり込まさせる護だったが次の瞬間には距離を詰めた絹旗の右拳が腹にめり込む。

 

「!? 」

 

「これでうちのリーダより上とは超片腹痛いですね 」

 

「いや......まだ全力なんて一言も言っていないよ......」

 

護は右手を重力によって加速させ、弾丸のようなスピードの一撃を絹旗に向けて繰り出す。

 

自動防衛機能により、護の拳は装甲に防がれるが勢いは殺せず、絹旗は一気に後方に5メートルほど飛ばされ施設の壁をぶち抜いて吹き飛んだ。

 

「君の能力は防御に特化しているはず.....この程度じゃ死なないだろうけど、衝撃までは防げないはずだよね? 」

 

大穴が開いた壁の向こう側から出てきた絹旗に目立った外傷はない。

 

「なるほど、伊達にレベル5を名乗ってるわけじゃないのは超理解しました.......ですがこの程度じゃわたしは超倒せないですよ? 」

 

「分かってる.......いや、殺すことはできてしまうかもしれないけど僕はしたくない。特に君のような大切な人を殺すことは 」

 

「な.......! なにを超クサイ台詞言ってるんですか!? 」

 

「そのままで受け取ってもらえば良いよ。言ったとおり、僕は君を殺したくない。だから、すこし大人しくしてもらうよ 」

 

護の言葉になんらかのアクションを予想し身構える絹旗。だか次に護がとった行動は絹旗の予測を大きく裏切った。

 

「緋炎之護 」

 

護が呟くと同時にその右手に緋色の十文字槍をが握られる。

 

「な! そんなの超ありなんですか!? 複数の能力を...... 」

 

「第弐の技、緋炎斬波! 」掛け声と共に振るわれる護の槍から緋色の炎が波になって放たれる。絹旗の足元へ。

 

絹旗のわずか前方の地面を緋炎が地層ごと切り裂き彼女の足場を不安定にさせる。

 

ふらつく絹旗は次の瞬間、眼を見開いた。目の前に護がいたからだ。

 

「第参の技、緋球爆散! 」

 

その言葉と共に、至近距離で突如現出した緋色の球体が炸裂し凄まじい衝撃波に絹旗の体は宙高く舞い上がった。

 

「超どうなって.......! 」

 

なかば混乱ぎみの絹旗は直後に、わき腹に痛みを感じた、首を下げて見てみると槍の下にある石突が衝かれている。

 

「言ったろ、殺したくはないって。だから今は眠ってくれ。僕の大事なレベル4 」

 

窒素装甲の防備でも防ぎきれなかった一撃は容赦なく絹旗の意識を奪った。力を失う絹旗の体を抱え、護は重力操作により地面に降り立つ。

 

「ふ?......我ながらクサイ台詞吐いちゃったな.....どうやらこの槍を使うと言動にも影響がでるっぽいぞ 」

 

ため息をついた護は自分の腕に抱かれる絹旗を見る。こうして見ると絹旗はただのか弱い女の子にしか見えない。

 

だがわき腹に突き刺さった石突がそんな思いを吹き飛ばす。

 

「この傷を治療させるには、とにかく一度アパートにもどって哀歌に見せないと......って結局仲間を巻き込んでるじゃないか.....とっさだったとはいえ、もっと力の制御をするべきだったな..... 」

 

嘆く護だったが後悔してももう遅い。

 

「仕方ない。とにかく一度戻るしかないな。破壊は後回しだ 」

 

絹旗を抱えたまま、護は腰にさしてある携帯で高杉を呼んだ。

 

 

 

そのころ脳神経応用分析所の一室では1人の少女があることを成し遂げようとしていた。

 

「これから、なにをするのですか? とミサカ19090号は問いかけます 」

 

「good question......あなたはこれから真の感情をもつのよ 」

 

少女の指先が目の前の機械に触れられ、巨大な集合体の1つでしたかなかった少女に向けて変革の波が放たれた。

 

 

 

 

 

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