「ん.....超ここはどこ..... 」
「僕ん家だけど? 」
「そう言えば......ていうか超訳わからないんですけど!? 」
「君は僕との戦いで重傷を負って意識を失ったんだ。それで僕がここで治療するために運んできたんだけど 」
「因みに治療したのは........私.....だよ 」
やはり面識のない人間に対しては途切れ途切れになる哀歌である。
「外傷を回復させる能力でも超持ってるんですか? 」
「まあ......そんなもの.....かな 」
「とにかく君を治療したけど、別に恩を着せようとしてるわけじゃない。拷問をかけようとか尋問しようとしてるわけじゃない。ただ1つだけ教えて欲しいことがあるんだ 」
「なんだってんですか? 」
「君達は.....いや、麦野沈利はいったいどこを守ってるんだ? 」
「うちのリーダーの名まで知ってるとか、あなたもしかして超こっち側の人間ですか? 」
「さあね......それじゃあ質問を変えようか.......君が施設にいたのは『御坂美琴が襲撃する可能性が高い施設の護衛』のためかい? 」
顔色を変える絹旗に護はやはりと心の中で頷いた。
「やっぱりそうか.......哀歌、ちょっとこの番号に連絡して 」
「これは? 」
「美琴の携帯の番号だよ 」
「ごめん、私の携帯の充電切らしてて.....ちょっと充電してくる 」
護が止める間もなく哀歌は(なぜか)部屋の外に飛び出していった。
「なんなんだ一体...... 」
困惑する護を見て絹旗はこっそりため息をつき呟いた。
「あの反応見て分からないなんて....第4位は超鈍すぎじゃないですか..... 」
「ん? なにか言った? 」
「別に超何も言ってませんよ? 」
「なら良いけどさ.....じゃあ治療も終わったことだし戻れば? 仲間がまってるはずだよね 」
「なぜ解放するんですか? あなたたちに利益があるとは超思えないんですけど。 私がまたあなたの前に立ち塞がって戦いを挑むかもしれないんですよ? 」
「その時はその時だよ......また同じように戦うだけだよ。ただしそちらがアイテム総出で来るのならこちらも総出で戦うよ......ウォールの全員でね 」
「やっぱりあなたも超暗部の人間でしたか 」
「そういう事、僕は全力で第3位に協力する。それがこの計画の核である第1位と戦うことに繋がったとしても 」
「あなたの決意は超結構ですけど、その前に私たちに潰されるかもしれないですよ? 」
「大丈夫 」
護は右手でグーサインをした。
「僕の仲間たちはそんなヤワじゃないよ 」
絹旗は護の眼を見つめた。濁りのない澄んだ眼をしている。 この最下層の闇にいながらどうしてそんな眼をしていられるのだろう。
「まあ、その余裕がどこから出て来るのか超理解できませんが、そういうことにしときましょう 」
絹旗は部屋の扉に手をかけつつこう呟いた。
「なんで、闇の中にいて、そんな眼をしてられるんですか....超不思議でなりません...... 」
小声だったので護は気づかず、絹旗はそのまま部屋を出ていった。
「ごめん美琴。今すぐ会えない? 」
「悪いけど、今からちょっと用事なんで無理よ 」
「用事って研究施設を襲撃することだろ? ならすぐには攻めないほうが良い。 第5位のレベル5が率いる奴らが守っているはずだ 」
「は!? なんでアンタがそんな事知ってるのよ? 」
「そのメンバーの1人とお前が指定した研究施設で交戦した。 敵はお前が襲撃する可能性の高い施設を守備している可能性が高い。無闇に突っ込めば怪我するぞ! 」
「そんな事.....ごめん。少し遅かったみたい。 アンタの言う通りそれらしき奴が見えてきたから 」
護が問い返す前に無数の爆発音が巻き起こり通話が唐突に切られる。
「くっそ! 」
舌打ちしつつ護は部屋にある金庫から、外部銃器であるFNファイブセブン拳銃を取り出し弾倉を装填する。
5.7ミリの特殊弾を使うこの拳銃は護が比較的良く使う銃器であった。ただ大概使用するのは訓練用のプラスチック製衝撃弾だった。
「拳銃程度であの第4位......いや、今は5位か.....に敵うとは思えないけど他のメンバーにはある程度効くはずだ 」
拳銃を腰のホルスターに差し、ドアを開けた護の眼に映ったのは.......部屋の前で座り込んでいる哀歌だった。
「.......... 」
「........... 」
なんだか妙な空気が2人の間に流れ、一体を沈黙が包んだ。
「なあ、なんか悪い事したのなら教えてくれよ 」
「別になんでもない.....護は気にしなくても良い 」
なんだか不機嫌な哀歌を連れて、護は美琴の携帯を逆探知して割り出した研究施設に急いでいた。恐らくすでに美琴は麦野たち『アイテム』と交戦している。作品の流れ上、ここで美琴が死ぬというのは考えられないが万が一に備えて駆けつける必要がある。
護はすでにウォールのメンバー全員に連絡をとっており拠点の1つである高級マンションの最上階の一室を集合場所にしていた。
目標の高級マンションに行くためにはとある橋を渡る必要がある。
「この橋だよな......美琴と上条さんが戦ったりした場所は 」
なんだか感慨深い思いを抱きながら橋を渡ろうとした護は直後微妙に違和感を覚えた。
周りに人がいない。自分たち以外の人間の姿が。
「まさか、人払い.....! 」
「違う、護。魔術が使われた感触はない。これは人為的に作られた無人空間..... 」
哀歌の言葉に考えを巡らす護は次の瞬間、最悪な風景を見た。
美琴が一方通行と戦っていた。
「美琴! 」
橋の上で叫ぶ護に目線を向ける美琴。 その額には暗視ゴーグルが.......そこまで見て護は気づいた。
「お前、妹達(シスターズ)か! 」
護の叫びにミサカはなんの反応も示さない。代わりに反応したのは一方通行(アクセラレータ)だった。
「なんだァ、こんな場所に用でもあるってかァ? 」
護の思考は一瞬停止しそうになった。なぜここにあの第1位がいるのか?
「私たちは通りかかっただけ......あなたになにかしようとは.....思っていないわ........ 」
哀歌の言葉に対して、アクセラレータは冷笑を浮かべて答えた。
「たとえそうだとしてもよォ。 実験を見られた以上そのままにする訳にはいかねえよなァ。 大体それ以前に怪しすぎるンだよ.....お前らァ、どうやって封鎖線を通り抜けてきたンだよ? 」
そう言えば.....と護はここにくるまでに見かけた警備員(アンチスキル)らしき集団を思い出した。特殊部隊風の服装をしていたが特に気にしないで通り過ぎた。だが良く考えれば警備員(アンチスキル)の一般部隊は共通の装備をしている。特殊部隊風の装備をしている一般部隊など存在しない。となるとあの特殊部隊風の集団は暗部組織ではなかっただろうか?ではなぜ自分達は当たり前のように通ることができたのだろう?
「答えねえつもりかァ? まあ、そういうことならとりあえず.....スクラップ決定だ! クソ野郎! 」
いきなり叫びを上げた アクセラレータに対して護は行動を取れなかった。
それでも護は死なずに済んだ。間一髪の所で哀歌が護を弾き飛ばしアクセラレータの攻撃から避けたのだ。
「現出せよ! 破壊大剣(ディストラクション・ブレード)! 」
叫びと共に全方向に光を放ち数刻後には人外の姿になる哀歌。その姿にアクセラレータも興味深げな視線を送る。
「そいつは、肉体変化(メタモルフォーゼ)かァ? 見るのは初めてだが、少しは楽しませてくれんだろォな! 」
嬉しそうな叫びをあげながらベクトル操作によって空中に飛び上がりつつ拳を放つアクセラレータ。
その拳の勢いに押されて地面に激突する哀歌。
「アクセラレータ! 」
両手から重力波を.....つまりは両手版の『超重力砲(グラビティブラスト)』を放つ護だが即座に反射されてしまいこちらが自分の放った技を止めるハメになる。
「なんだァ? この能力......噂の第4位のじゃねえか! はっ、たまんねえなァおい! 」
歓喜の声を上げるアクセラレータに護は背筋が凍るような錯覚を覚えた。
作品知識をもって分かっていたことではあったがアクセラレータの存在や力は間違いなくチート級だ。
「やはり僕の能力では通用しないか 」
「そんな分かり切ったこと聞いてんじゃねェよ。分かりきったことだろォが 」
嘲笑うアクセラレータに向けて護は明確にその目線を向ける。
「確かに第1位と第4位......位でも能力でも僕が不利だ。でも、僕にはあんたにはないものがある! 」
その言葉にアクセラレータが首をかしげる前に、護はその名を呟く。自らに宿る超能力以外のその力を護は出す。
「緋炎之護 !」護の叫びと共に、その手に槍が握られる。緋色に輝く十文字槍が。
「(多重能力者(デュアルスキル)だとォ?) 」
心中で首を傾げるアクセラレータに向けて護はその槍先を向けた。
「第弌の技、緋炎斬波! 」
勢いよく横薙ぎに振るわれる緋炎之護から、緋色の波が勢いよく放たれる。
「! 」さすがに驚き、身を固くするアクセラレータだが、一応反射は効いているらしく、アクセラレータの周囲を覆っているだろう能力による保護膜に接触した緋炎は、斜め後方に逸れ、巨大な光球となったかと思うと強烈な光を発っし、刹那に消滅した。
「(作品知識通り、アクセラレータの反射は一応、魔術にも効くってことか) 」
舌打ちしつつ、攻撃を警戒して後ろに下がる護。
一方のアクセラレータは自分の反射が正確に適応しなかったことが腑に落ちないらしく、苛立った様子で護を睨みつける。
「お前......なんなンだ、その能力 」
「わざわざ言う必要がありますかね? 第1位さん? 」
「そりゃあそうだよなァ........ならちょいと変更だ.......言いたくなるまでシメテやる 」
その言葉に身構える護。次の瞬間、アクセラレータの周囲がかき乱され、すさまじい台風級の暴風が渦となって護に襲い掛かる。
「つっ! 第参の技、緋球爆散! 」
言葉と同時に槍の穂先に現出した巨大な光球は瞬時に爆発し、発生した凄まじい衝撃波が迫る暴風とぶつかってその攻撃を相殺する。
だが、その隙をついて近づいてきていたアクセラレータの運動力を操作した蹴りを護はもろに受けてしまった。
そのまま凄まじい勢いで川に向けて吹き飛ばされる護。そんなち水深が深いわけでもない川に頭から落ちて行ったら護には命はない。
だが、そうはならなかった。
なぜなら川に落ちる直前に、かけつけてきた高杉が瞬間移動を使って護を抱きかかえて難を逃れたからだ。
「ああ? なンなんですか、奇跡の救出劇ってかァ? だが、あいにくそりゃあ無理だな 」
嘲笑いながら、なんらかの攻撃を加えようとしたアクセラレータだったが、それは叶わなかった。
なぜなら、アクセラレータの周囲、360度全方向を砂鉄の壁が囲んだからである。
「別にアンタがお姉さまの無知のせいで生まれた、そこの妹たちを殺すのはかってなんだけどさ。 私を私にしてくれた護に手を出すのは許せないんだよね 」
砂鉄を展開させたのは美希。学園都市レベル5第3位と同じ力をもつ少女。
「アンタが第4位じゃ満足しないってのなら 」
美希はその手にパチンコ球を握りしめる。
「第3位と同一の私が相手をしてやるわ! 」