「う.......朝か…... 」護はまだだるい体を無理やり起こす。
「やっぱり戻れない……か 」
ココロのどこかで甘い希望を抱いていた自分がいた。
だが、どうやら、これは夢で目醒めれば戻れましたみたいな甘いオチは起きそうにもない。
「僕は……この現実を受け入れるしかないんだろうか 」
そんな思いに囚われ、なんだか落ち込んでしまった護だったが、落ち込んでばかりもいられない、なにしろ今日はしなければならないことが沢山あるのだ。
幸い冷蔵庫の中には、(なぜか)大量の冷凍食品が入っており、護は適当にそれらをレンジで温め、食べた。
(学園都市って冷凍食品の分野でも進んでんのかな?かなり旨かったけど )
そんな事を考えつつ、護はまずご近所さんへのあいさつから始める事にする。
まず1部屋目、左となりの部屋、表札は『土御門』?
「ま…まさか… 」ごクリとつばを飲み込み、インターホンを押す護。
「はいはい、誰なのだ?」
「ん?」
予想していたのと違う声に一瞬戸惑った護だったが、すぐに思い出した。
(そういや、土御門には義理の妹の舞夏がいるんだっけ )
「すいません。僕はとなりに引っ越してきた古門っていうんだけど、挨拶にきたんだ 」
「そりゃあ、悪いな?。でもいまは家事で忙しくて手がはなせなくてな?、悪いけどドアの前に置いといてほしい。あとでばか兄貴に取らせるから堪忍な 」
「因みに、お兄さんの名前は? 」妙な質問だと思われたのか、しばしインターホンは静かになったが、しばらくして……
「元春というんだぞ?これから、よろしくな? 」
となると、どうやらここは土御門兄妹が住むアパートと見て間違いなさそうだ。
「うん。有難う。こちらこそよろしく。」
とりあえず、左となりへの挨拶を完了したところで護はふと重大な事を思い出した。
「たしか........土御門兄弟の隣が上条さんの部屋だったよな......なんか、都合が良すぎな気がするぞ 」
昨日の手紙の主は、護が別の世界からきた事を知っていた。
その誰かさんがなんの理由もなくと禁シリーズの主人公格の人間達が暮らすアパートに護を住まわせるだろうか?
「悩んでいても仕方ない.........か。まずは上条さんに挨拶しなきゃな。ついでに高校の場所も聞かなきゃならないし 」
いよいよ作品の主人公と会う事になる。護は異様に胸が高鳴る感覚を覚えていた。
だが、2度、インターホンを押したのだが、反応がない。おかしいなと思いながら押し続けていると....
..
ドンガラガッシャーン!と景気よく何かが崩れる音と、外にまで聞こえる大声で、主人公の定番口癖である「不幸だあぁぁぁ!!」というセリフが。
「やっぱり、不幸体質なんだ......」
思わず呟いてしまった護だったが、上条さんと話すには今がチャンスである。
もう一度インターホンをおすとようやく上条さんがでた。
「はあ..........この上条さんになんの用でございますでそうか?.......」
なんか、凄まじく暗?い声に若干下がりながらもなんとかわけをはなす護。
「そうか.......んじゃあその高校の名前を教えてくんないなかな?」
そういわれ、紙に書いてあった名前を告げると、意外な言葉が返ってきた。
「これ、俺と同じ学校だぜ。」
ここもそう、もはや仕組まれているとしか考えられないような、都合のよさ。
「なんか、あさいちばんに寝起きの邪魔しちゃって悪かった。ごめん 」
「いや、気にすんな。あんな事しょっちゅうだから.......もはや自分で認めてるって.......不幸だ........ 」
なんだか、またブルーモードに突入してしまった上条さん。
「なんか、悪い事したよな 」
と後ろめたさをおぼえながらも護はその後、ご近所さんへの挨拶を一通りすませた。
「さ?て。一仕事終わったしこれから街に散策にでも乗り出そうかな?」そんな事を呟きつつ部屋の前まで戻ってきた護だったが…..
「うん?手紙?」
郵便口にまた無印の手紙がさしてある。それはつまり、手紙の主からの連絡がある事を意味している。
「ええっと......学校で身体測定(システムスキャン)を受けろ? 」
その手紙には、システムスキャンを受けに学校に行くようにという手紙と、GPS機能付きのハイテク携帯と解説書が入っていた。
護はしばし考え込んだ後、ポツリと呟いた。
「今日の散策は後回しだな...... 」
その1時間後、部屋にあった制服に着替えた護は同じ学区内にある某高校へと着いた。
そこでここの名物教師である、小萌先生とあって感動したりしながら、様々なテストを受けることとなった。
正直なところ作品の大まかな流れや用語は知っていても、詳しい内容までは知らない護としてはただ、言われたとおりの事をやるしか無かった。
そうして、約30分でテストは終了し、廊下で待つ事になった護だったが、内心不安で仕方無かった。
普通に考えて、自分に超能力などあるはずがないのだ。
「またせたね。結果がでたよ。一緒に着いてきてくれ 」
なんだか汗をかきつつ上擦った声で話す教師にもしかして、無能力者とばれたんじゃないかしらとビクビクしながらついて行くと.....
「へ?運動場?なにするんです?」
護が連れてこられたのは高校のグラウンドの中だった。
「ここで、君の能力のレベルチェックを行なう…....あそこが見えるかい?」
男性教師に指差され見た先にはなんだが超凶暴そうなゴリラ顔の教師が、なぜかヤリを構えてたっていた。
おもわず凍り付いた護などお構いなしに、教師は説明を続ける。
「あの先生が投擲用のやりを君に向かって投げるから、君はそのやりに上からの力をかけるようイメージをしてください 」
いや、普通に考えて無理でしょうと言う暇もなく問答無用とばかりににヤリが30メートルさきからすっ飛んできた。
「死ぬ!!」
もうこうなったらやけくそだ!と観念し、ヤリに上からの力をかけるイメージを全力でした瞬間だった。
ズズン!!と明らかにヤリが刺さるのとはまったく違う音が響いた。
「え?........ 」
護は目の前の光景が信じらなかった。
先ほどまで真っ直ぐに自分に向かってとんできていたヤリが、1メートルほど先で地面に横向きで埋もれているのだから。
「これは…いったい? 」
「それが君の力だよ。詳しい事はこの資料に書いてあるけど、かいつまんでいえば君の能力は重力を操る力。いまなら、上からのG.......重力を通常の倍近くかけてヤリを地面に埋めた訳だ 」
「重力を.....操る? 」
そう言われても、中学で勉強した程度の知識しかない護からすれば、どう答えれば良いか迷ってしまう。
そんな護の心情を汲み取ったのか、男性教師は付け加えた。
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「そう難しく考えなくていい。要は、重力をかけるイメージをすれば使えるんだ。ただし、使い過ぎは危険だがね。なにしろ扱う力が力だ 」
教師は、次にグラウンドの端に置かれた廃車の前に連れてきた。
「この廃車に真上からさっきより強い力をかけるイメージをしてみろ 」
言われるままにさっきよりも強い力をかけるイメージをする護。
次の瞬間、ズグワァァン!という凄まじい音と共に、目の前の廃車は真上からかかった異常な重力によってただのスクラップと化していた。
「ふう........ここまでとはね、正直驚いたよ。測定結果レベル5で決定だな。君がこの高校で初のレベル5になる訳だ 」
護は教師の話を半分も聞いてなかった、レベル5といえば1人で国の軍隊に対向できる能力者を指すはず、この学園都市にも7人しかいない、最強の称号。
それに、自分がなると言われても実感がない。
なにより自分は『よそ者』。
いきなりレベル5級のちからがあると言われてもそう簡単には信じられない。
「序列とかは、後で統括理事会とかで出されて連絡とか行くと思うからまってるといい。いやあ、しかしウチに超能力者が誕生するとはな。先生は嬉しいぞ。ん?おいおいそんな不安相な顔をすんな 」
男性教師は護の不安げな表情を、能力に対する自信のなさだと受け取ったらしい。
「君の能力の使い方は、それだけじゃない。その力はまだいくつも応用が聞くだろうし........なにより、それは君の全力じゃないはずだ。気後れしなくても大丈夫だよ 」
確かに護は気後れしていた。それはレベル5という称号に対してだけではない。
新たな『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』自体に対しても気後れしていたのだ。
もし、この力を完全に受け入れてしまえば、この世界を、現実を『自分』の現実としてしまうこととなる。
あくまで、外から来たよそ者として、元の世界を『自分だけの現実』とするか、それともこの世界をそれと認めてしまうか。
それは、そう簡単に答えが出せる問題では無かった。