とある世界の重力掌握   作:烈火信仁

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とある学区の都市伝説

「鈴の尼さん? 」

 

「はい。最近噂になってる都市伝説で第22学区のどこかを歩いているとどこからか鈴の音が聞こえることがある。それを聞いてしまった人は刀をもった尼さんに追いかけられ刀で斬り殺されてしまう.......という話なんですけど 」

 

「それって根も葉もない都市伝説ではないの? 」

 

咲耶の言葉に佐天は首を横にふった。

 

「話だけが広がってるならただの都市伝説なんだけど.......実際にあの学区で先週刀による殺傷事件があったのよ。なんか珍しく警察が出て事故処理したみたいだけど 」

 

「少女、その情報はどこから? 」

 

「友達のジャッジメントからです 」

 

「そうか.......ならば正確な情報であろうな 」

 

アウレオルスは優雅に紅茶の入ったコップを口に運びながら目の前のイスに座る今回の依頼者を見た。

 

その依頼者は白衣を着た若い女......いや少女だった。

 

年齢は17歳程で、白衣を着ている。ウェーブがかかった髪をしておりギョロ目が印象的な少女である。

 

「indeed......噂通り情報収集能力は高い......と。ここなら頼めそうね 」

 

「布束砥信(ぬのたばしのぶ)さん......でしたよね。それで依頼というのは..... 」

 

「依頼は単純よ......その噂の切り裂き魔が実在するか調査してほしいということよ 」

 

砥信以外の3人は顔を見合わせた。

 

そんな依頼をされてもまずどうやって噂の人物と接触すれば良いか分からない。

 

3人の表情から心を読みとったのか砥信はふと口元を緩めた。

 

「実在を確認する方法なら私が教える 」

 

思わぬ言葉に3人の視線が砥信に注がれた。

 

「表向きには1人だけがその噂の人物の被害にあったことになってる。しかし、実際には他にも何人もの被害者がいる。表沙汰にならないだけ。そして被害に遭った者たちに共通していることが一つある。それは...... 」

 

砥信は自分が羽織っている白衣をバサッと宙に広げた。

 

「白衣を着ていたのだ 」

 

「つまりその切り裂き魔が狙うのは白衣を着た人物だったってことなをですか? 」

 

「exactly.......正確に言うと白衣を着た研究者だがね 」

 

「君は、研究者なのか? 」

 

アウレオルスの問いを砥信は軽く頷いて肯定する。

 

「その歳で研究者とは.......驚きだな少女 」

 

「そんなことはどうでも良い。それより依頼を受けるか拒否するかどちらか決めてくれ 」

 

「そうだね.....どうする咲耶? 」

 

「どうするって........アウレオルスはどう思う? 」

 

「そうだな......依頼が依頼だけに即答は難しいだろうな。という訳で2日間だけ待ってくれないだろうか少女。必ず結論は出す 」

 

「get it.....ただし2日間だけだ。それ以上は待てない。それまでに頼む。 それでは失礼するよ 」

 

ドアから砥信が出て行ったのを確認して佐天がため息をついた。

 

「歳は対して変わらないはずなのにすごく大人っぽいなあの子 」

 

「それはともかくとして.......この問題は護さんたちウォールの皆さんと決めなきゃいけないわ 」

 

「うむ.....それは確かだな。早急に連絡を取る必要があるな 」

 

そう言ってアウレオルスは受話器をとった。

 

 

30分後、彼らSASの事務所、第7学区の元喫茶店の建物の中にウォールメンバー6人が到着した。

 

「それで......本当にその女の子は布束砥信と名乗ったんだね? 」

 

「はい、そうですけど....... なにか護さんは知ってるんですか? 」

 

「うん...... その少女は僕らが次に介入を予定している計画の参加者の一人なんだ 」

 

「計画? 」

 

首を傾げる佐天に高杉が解説をする。

 

「絶対能力進化計画っていう名の計画なんだが.......これはいわゆる裏側の者による計画であって表の力で止めることは難しんだよ。だから俺たち暗部組織しか計画を止めることができねえんだ 」

 

「その計画とはなんなのですかウォールリーダー? 」

 

咲耶の問いに護は頷き口を開いた。

 

「ずばり学園都市第1位の一方通行を絶対能力者(レベル6)にしようとする計画なんだ 」

 

「え? つまりは能力開発ってことじゃないですか? それなら別に....... 」

 

「それがこの街のカリキュラムに沿ったものならなんの問題もないよ.......ただこの計画は少々そのカリキュラムから外れすぎているんだ 」

 

「外れすぎている? 」

 

「一方通行が女の子20000人を20000人通りの状況で殺戮することで絶対能力者(レベル6)の実現を目指すという計画なのよ 」

 

話を繋いだ美希の言葉に佐天を始めSASの面々の表情が曇る。

 

 「この学園都市で2万人もの犠牲者をどうやって用意したというのか?少年 」

 

「犠牲者を用意することは確かに難しい。民間人から攫うのはリスクが高いし置き去り(チャイルドエラー)を使った計画は御坂により一度潰された為に今や暗部ではご法度になってる。だけど手がないわけじゃないんだ。民間人から用意するのが難しいなら人権が存在しない人間を利用するんだ 」

 

「人権が......存在しない? 」

 

「そういう少女たちがこの街にはいるんだ。その名は...... 」

 

「妹達(シスターズ)。学園都市レベル5第3位の御坂美琴のDNAを利用して作られたクローン達よ 」

 

「なんかさっきから美希さんが話を繋いでばかりいますけどどうしたんですか? 」

 

 

美希が話を継いだのを見て咲耶が言った。

 

「それは........ 」

 

言い淀む美希の代わりにクリスが答えた。

 

「美希はね......妹達(シスターズ)の内の1人なの。正確には20000体の妹達の前に作られた試作体なの 」

 

その言葉に佐天と咲耶は息を呑み、アウレオルスは深いため息をついた。

 

「つまり......美希さんは......御坂さんの従姉妹なんかじゃなくてクローンだったんですか........ 」

 

「ええ.... でも気にしないで。今の私はお姉様(オリジナル)のクローンとして生きてはいないから。一人の女の子美希として生きてるから。だから別に気兼ねしないでほしいな 」

 

「はい..... 」

 

頷きつつもやはり気兼ねしてしまっている佐天だった。

 

「ところで話を戻すけど、その計画に参加している研究者がここを訪ねてきたんだね? それでいて研究者を襲う謎の人物の実在を確認してほしいと言ったんだよね? 」

 

「はい、そうです 」

 

「恐らくその謎の人物のせいで計画に支障が出ているんだろうね。だけどその行方を一向に掴めないからSASに頼んだのだろうな 」

 

「それで具体的にはこれに対してどう対応するんだ?リーダー 」

 

「そうだな高杉.....とにかくその研究者を襲う切り裂き魔が誰か分からなければ方策の立てようがない。ここは万が一を考えて魔術側にたつメンバーに動いてもらうことにしたいと思う 」

 

「つまり.......私とセルティに動けということなの? 」

 

哀歌の問いに護は頷く。

 

「SASのメンバーは総出で情報収集を頼みたいんだ。 少しでも情報は必要だからね 」

 

「分かりました。護さん気をつけてくださいね 」

 

「うむ、できるだけ情報は集めておこう少年 」

 

「できるだけやってみるわウォールリーダー 」

 

3人が了解したのを確認して護はその場の全員を見渡した。

 

「それじゃあ任務(ミッション)スタート! 」

 

護の宣言と共にその場の全員が任務の為に動きだした。

 

 

 

第22学区の第4階層、そこを件の鈴の尼さんこと袈裟を纏った少女が歩いていた。

 

彼女はこれまでにここで合計20人近い研究者を斬っている。

 

ここまでは対して問題なくこれた。

 

警備員は動かないし風紀委員(ジャッジメント)も対応が遅い為目標を簡単に突き止め斬ることができた。

 

だがこれまでがうまくいったからこれからもうまくいくとは限らない。

 

今まで通りの慎重な足取りで裏道を進む少女の耳にとある会話が飛び込んできた。

 

「しかし妹達だったけ? あれ、感情ってものがないのかしら? 」

 

「ないんじゃない?むしろあったら不都合よ。計画が立ち行かなくなるんだから 」

 

その不穏な会話に少女はその声のした方向に目線を向けた。

 

その目に映るのは、白衣を纏ったとし若い研究者。

 

歩いているのは路地裏、周りに人影はない。

 

少女はため息をつくと、腰につけている袋から鈴を取り出した。

 

チリン! という澄んだ鈴の音に研究者たちの動きが止まる。

 

次の瞬間、少女は一気に駆け出し研究者たちに迫った。

 

驚き、動きがとれない様子の2人の研究者を見て少女は心の中で同情しつつそれでも刀の柄を握りしめた。

 

「邪を払え、数珠丸! 」

 

その言葉と共に数珠が弾け飛び刀を封じるものがなくなる。

 

必殺の斬撃が哀れな研究者2人を切り裂く......はずだった。

 

ガギン!という金属と金属がぶつかり合う音が路地裏に響き渡った。少女の日本刀による斬撃は哀歌の腕に止められた。

 

「な!? 」

 

驚き後ろに下がる少女は哀歌の腕を注視する。いつの間にかその腕を爬虫類じみた鱗が覆い異質な姿へと変化している。

 

「引っかかったね......噂の切り裂き魔さん? 」

 

その言葉に周りに警戒の目線を配る少女。

 

いつの間にか少女を囲むように特殊部隊風の装備をした者たちが展開していた。ウォールの下部組織のメンバーたちである。

 

「はやく降伏しなさい。あなたには聞きたいことが山ほどあるの 」

 

セルティの言葉に少女は口元を緩めた。その余裕ともとれる仕草にその場の全員が眉を潜めたが躊躇う道理はない。

 

「一斉射撃! 」

 

哀歌の叫びと共に下部組織構成員たちが構えるサブマシンガンが一斉に火を噴いた。

 

弾種はプラスチック製の衝撃弾。

 

この状況で少女にできることはない。その場の誰もが事件の収束を予想した。

 

だがそうはならなかった。

 

サブマシンガンから弾が飛びたした直後、少女は少し腰を落とした.......ように見えた。

 

その瞬間をその場の誰も捉えられなかった。

 

目の前に広がる事後後の風景から予測される事象は、目の前の少女がその手にもつ日本刀の斬撃で迫る衝撃弾を全ての切り捨てたということだった。

 

「全て.....切り捨てた? 」

 

哀歌の戸惑う声に少女は薄く笑った。

 

刹那、同じく周りに展開していた構成員たちがバタバタと倒れた。

 

慌てて周りを見渡すセルティと哀歌だが先程までいた場所に少女はいない。

 

「早すぎる。こんなに早く構成員を殺るなんて 」

 

動揺するセルティ。その時彼女の耳元で声が囁かれた。

 

「安心して。あの人たちは峰打ちで気を失っただけ。私の敵は彼らじゃないから 」

 

思わず身構えたセルティの体を予想外の衝撃が襲った。

 

少女が振り抜いた数珠丸の鞘で強打されたセルティの体は一気に壁に叩きつけられた。

 

左手に鞘を右手に数珠丸を構える少女は哀歌を見つめる。

 

「あなたは龍人ね? 」

 

「読まれてたのね......となるとあなたも魔術側の人間.......ということ? 」

 

「そうなると思うわ 」

 

「そしてあの人離れした身体能力に、その両手に残る痕........聖人.......ってことね 」

 

聖人とは神の子と身体的特徴が一致する人間を指す。

 

有名なところではイギリス清教の神裂がいる。

 

だが神裂は十字教徒であるが少女は格好から判断して仏教徒である。下手をしたら異端者と見られかねない特徴をもつ少女はなぜ仏教徒でいられるのか?

 

「聖人? すこし違います。間違ってはいないですけど 」

 

「? 」

 

「私は仏教徒......これが意味することが分からない? 」

 

「なに?」

 

「私が仏教徒としていられる訳、それは私が仏教徒の象徴する力を持っているからよ 」

 

その言葉が放たれた直後、地面に弾け飛び散らばっていた数珠が空中に飛び上がった。

 

「!? 」

 

突然の事態に戸惑う哀歌を囲むように数珠が展開する。

 

「人外の邪よ、闇に沈め! 」

 

次の瞬間、展開する数珠から光が放たれ全方向から哀歌の体を貫いた。

 

ごぼっという音と共に哀歌の口から血の塊が吐き出される。

 

「終わりね......私を嵌めようとしたのが運のつきよ龍人娘 」

 

 

 

 

 

 

 

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