とある世界の重力掌握   作:烈火信仁

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とある一位と最終決戦

「!? 」

 

さすがに驚き、慌てて後方に2メートルほど飛びのいたアクセラレータは目の前で燃え昇る火柱を信じられないといった表情で見つめた。

 

「(液化爆薬でも仕込んでやがったのか?だがそれにしては爆発の規模がデカすぎンぞォ?) 」

 

頭の上に疑問符を浮かべるアクセラレータにお構いなしに火柱の演出は直ぐに終わった。

 

その火柱が消えた場所、そこに立っている人物を見てアクセラレータの表情が驚きに染められた。

 

 

「誰だ、てめェは? 」

 

愚問とも言える質問だったが、それでもアクセラレータは問わずにはいられなかった。

 

なぜなら、どう見ても2メートル先に立つ人物は先程まで満身創痍でなんとか立っていた第4位と同じ人物とは思えなかったからである。

 

「そんな分かり切ったことを聞く必要があるのかねアクセラレータ。君の頭脳ならすでに分かっていると思うがね 」

 

口調がかなり変わっている護だがアクセラレータはそれに気づいている余裕はなかった。

 

護は自分の姿を確認して満足げに頷いた。

 

「成る程、確かにこれなら対抗できるかもしれんな 」

 

彼の手には既に緋炎之護は無かった。その代わりに全身を緋色の炎が包み込み、さながら炎の衣を纏っているかのようになっており、彼自身が神々しい光を発しており、瞳、髪、皮膚さえも緋炎色に染まっている。

 

まさしく神話の光景。ユダヤ教の預言者であるエリヤ、ギリシャ神話の英雄であるヘラクレス、そして十字教の教祖である神の子、これらの人物の共通点、『人の身から神の身に上がった存在』、それを体現する姿へと護は変貌していた。

 

「さて.....それでは始めさせてもらおうかアクセラレータ 」

 

その言葉にアクセラレータは何らかのアクションを予測し、先制攻撃を浴びせかけようとした。だが次の瞬間、衝撃と共にアクセラレータの視界から唐突に護が消えた。

 

「(なぜやつが......いや、奴が消えたンじゃねえ.....俺が吹き飛ばされて.......! ) 」

 

その事実に気付いた時には彼の体は、既に操車場までの数キロを吹き飛ばされていた。

 

彼の無敵を誇るベクトル反射の防御を完全に素通りし正面からの打撃攻撃で容赦なく吹き飛ばされたアクセラレータは無様に地面を転がった。

 

落下直前に運動量のベクトルを操作し、その衝撃によるダメージを最小限に抑えたアクセラレータだったが、それ以前に護からのどういった攻撃かも見えなかった程の高速打撃によるダメージが彼の体を痛めつけ、全身の筋肉と内臓、骨と血管に苦痛を訴えさせている。

 

「(あの攻撃は.....何だ?その瞬間すら見えなかった......しかも膜を....素通りして........) 」

 

アクセラレータが事態を把握するのを待たず、どうやったか数キロを一瞬で移動してきた護の蹴りがアクセラレータに向けて放たれた。

 

むりやり足を蹴り出し、強引に体を起こして回避するアクセラレータだったが背中を押すような衝撃波に吹き飛ばされた。

 

直撃で無くてもそれだけの威力......だがアクセラレータはそれに対してではなく別の事実に驚愕していた。

 

「(さっぱり理屈は分かンねェが、あの正体不明の攻撃が防御を素通りするのは理解してた........だが、地面との高速での接触で発生した衝撃波にまで防御をすり抜ける効果があンのはおかしいだろうがァ!) 」

 

膜をすり抜けてくる直接打撃に関してはまだ『何らかの法則でベクトル反射膜を素通りする能力』を使っているからだとなかば強引ながらも納得させることができる。

 

だが本来、能力(チカラ)と無縁の筈のただの地面がいくら能力攻撃との接触により衝撃波を発したところで、それに能力の効能が添付されることは基本ない。

 

そんな事実を踏まえた上で、それを覆す事象に混乱するアクセラレータにお構いなしに神化した護の追撃が襲いかかる。

 

「逃がさない!御坂の為にも! 」

 

護の速さに避けきれないと判断したアクセラレータはあえて正面から相対することを選んだ。敵の能力(チカラ)が自分の能力に対抗しうることを認めた上で、それを自分の力で打ち破るために。

 

「(ナメてンじゃねえぞォォォォォォ!!) 」

 

急激に運動量のベクトルを操作したアクセラレータの右拳の一撃は正面から突っ込んできた護の顔を捉えた。

 

接触は文字通り一瞬、軽い感触があった次の瞬間には護の姿は今度こそ本当にアクセラレータの前からかき消えた。

 

刹那、遠方に積み上げられていたコンテナの集団がバラバラに崩れていき、派手に地面に激突し中身をぶちまけていく。

 

「(攻撃は.......通じた......となると奴の攻撃は俺の防御を素通りしてダメージを与えるが逆にこちらからの攻撃も一応ダメージを与えられるってわけかァ?.

.......) 」

 

そう考え視線を変えたアクセラレータは思わず全身を硬直させた。

 

なぜなら、先程自分が確かに吹き飛ばしたはずの人物。古門護が目の前にいたからだ。

 

「残念だなアクセラレータ。あの程度では、まだ私は殺せない 」

 

あまりの事実に絶句するアクセラレータに護は瞳を向ける。

 

「神化、レベル1 」

 

そう呟きながら護が繰り出した拳はアクセラレータの胸に直撃した。だが先程までのような威力ではない。

 

その威力はあくまで人に殴られたのと同じ。違う所があるとすれば、その攻撃がアクセラレータの防御を無効にしていることである。

 

だがそれでも、先程の高速打撃によるダメージが蓄積しているアクセラレータの身体は悲鳴を上げた。

 

「(なぜだ?確かに俺の拳は奴を吹き飛ばしたはず......) 」

 

そんなアクセラレータの内心を表情から読んだのか護は彼に答えを提示する。

 

「不思議そうな顔をしているなアクセラレータ。単純なことだよ、君は私を殴ったと錯覚しただけだ。君は実際は私を殴れていない。君が正面から来た私に攻撃を当てようとした時、実際は私は高速で君を飛び越えることで君の攻撃を回避していた。君が攻撃を当てる直前に視界に捉えていたのはいわば私の分身.......残像だったのだよ 」

 

「馬鹿な!? ならあのコンテナはなンで......... 」

 

「私がやったのよアクセラレータ 」

 

思わぬ人物からの言葉にアクセラレータの視線がそちらに向く。

 

そこに立つのは学園都市レベル5の第3位、発電系能力者の頂点に立つ少女、御坂美琴である。そのそばには肩を上下させて呼吸を整えている上条当麻とアクセラレータに油断ない視線を向ける高杉がいる。

 

「私は彼女に向けての言伝を高杉に頼んだ。私がアクセラレータに向けて御坂の名を叫んだ数秒後に遠い位置にあるコンテナを崩してほしいとな 」

 

「アンタは、その自作自演にまんまと引っ掛かったというわけよ 」

 

御坂と護の言葉にアクセラレータの表情が屈辱と憎悪に歪む。

 

「ふざけンじゃねェェぞォォォ! 」

 

足元の運動量のベクトルを操作し、一度圧倒したことのある美琴に攻撃を仕掛けようとしたアクセラレータだったが、彼女の前に移動した直後に美琴の前に立ち塞がったツンツン頭の少年......上条の右拳を顔面にぶち当てられ吹き飛ばされる。

 

再び倒れそうになる身体をなんとか制御しフラつきながらも体勢を立て直すアクセラレータだが、その内心はすでに崩壊寸前だった。

 

「(ぐ......なンだってンだァ!?あのツンツン頭の攻撃まで俺の防御を無効化しやがる.......これは奴の手にもそういった力があンからか、それとも第4位の力のせいか?) 」

 

どれが正確なのか判断できず、混乱の極みにあるアクセラレータに護は静かに言葉を放つ。

 

「アクセラレータ。君が決めた信念の為に、二度と悲劇を繰り返さない為に、この計画に参加したこと自体を私は否定しない。そのような権利を私はもたない。だが、妹達(シスターズ)たちは人形じゃない、彼女たちも人間.........君が幼き日に何らかの形で傷つけてしまった誰かと同じ存在だ 」

 

護はアクセラレータに緋色の瞳を明確に向ける。

 

「彼女たち一人一人にかけがえのない一生があり、それぞれが精一杯人生を生きているのだ。君はかつての悲劇を繰り返さない為に最強を求めたはずだ。だが君が求めた最強とは精一杯生きている罪なき少女たちの命を圧倒的な力で弄び踏みにじるものだったのか? 」

 

護の言葉にアクセラレータの表情が停止する。

 

それまで、ただ最強を求めて来た、最強になれば自らの力から他人を守ることができるから。争いが起きない為の方法として考えたのが、戦おうという意志さえ奪うほどの絶対的な力を手にすること。 

 

だが、幼き日に自分以外の人間を巻きこまないため、守るために目指し、そして既に殆ど手に入れているも当然の最強のタイトル。その最強が人を守れていないとしたら?

 

「違う! 」

 

否定しても、その事実はアクセラレータの心を侵食していく。彼には否定できない、実際に本来罪がないはずの妹達(シスターズ)を、本来守られるべき他人を彼は最強の為に殺してきたのだから。

 

「否定をするな、アクセラレータ 」

 

「そうだ、否定をしても過去は変わらねえ 」

 

護と上条が交互に言葉を放つ。

 

2人の右手は既に硬く握りこまれていた。

 

「お前にどんな過去があったとしても、それを解決するための手段がこれしかなかったとしても、それが罪もない人間を嬲り殺して良い理由にはなりはしない! 」

 

「今の君は物理的な最強でもなければ心理的な最強でもない。今の君では誰一人として守られない! 」

 

2人は言葉と共に同時に駆けた。いままで考えてもこなかった事実に動きを停止させているアクセラレータに向けて特異な力の2つの権化が向かっていく。

 

「お前が『守る手段』がそれしかないという幻想に囚われてるってんなら.......... 」

 

「君が最強という言葉に躍らされ、進むべき道を誤っているというのなら........ 」

 

アクセラレータの防御を無効化する一撃が2人から同時に放たれる。

 

「「まずは、その幻想をぶち殺す! 」」

 

ズゴン!という鈍い音と共に正面から2人の拳による攻撃を喰らったアクセラレータの身体は宙を飛び、意識の制御を解かれた身体は地面に無様に転がった。

 

「神化、解除 」

 

アクセラレータに勝った。その事実を確認し、息を吐いた護は神化を解いた。

 

あっという間に元の姿に戻った護の近くに美琴、上条、高杉、そしてミサカ10032号が集まる。

 

「本当に.......ありがとう。アンタの事を誤解してた。怪物みたいだって...... 」

 

「やっぱりそう思われてたんだ......仕方ないよ、僕が警備員(アンチスキル)を大量殺戮してしまったのは事実なんだから。そんな僕の言伝を実行してくれてありがとう。あれのおかげでアクセラレータに勝つことができた 」

 

護の言葉に美琴は気恥ずかしいそうに目線を泳がせた。

 

「しかし本当に最後しか助けに入られなくて悪いな護。もう少し早くビリビリを説得できていれば........ 」

 

「気にするなよ。やり方はどうであれ最終的に君が右手で倒すことに意味があったんだ。君は十二分にそれを果たしてるんだから 」

 

首を傾げる上条を放って護は考えを巡らしていた。

 

原作において今回の実験が凍結、廃止されるのは『レベル5であるアクセラレータが一般人である上条に負ける』というアクシデントがあったからだ。

 

だが今回は護との戦闘を経たあとでアクセラレータは上条に倒されている。

 

そのことに不安なものを感じつつも護は自分が救った一人分の世界を感じ、安堵のため息をもらしていた。

 

同時刻、学園都市中央部に立つ窓のないビルの内部でアレイスターは彼の居室といえる空間に無数に浮かぶスクリーンに映し出される1つの事案に関する映像を眺めていた。

 

「手綱をつけていないとはいえ少し動きすぎだな重力掌握 」

 

まったく感情を感じさせない声色で呟いたアレイスターはスクリーンの一つに目をやる。

 

「価値がある限り温存するが、その分利用はさせてもらう。今回はペナルティを与えることは避けよう 」

 

スクリーンには、アクセラレータを巡る戦いの一部始終が映し出されているが、その映像には一瞬たりとも護たちイレギュラー的な介入者の姿はなかった。

 

「今回の貸しは、いずれ返してもらうこととしよう 」

 

結論づけたアレイスターは次いで別のスクリーンに目をやる。

 

そこには、2つの文字が記されていた。

 

『オペレーション・トニトゥールス・レーギーナ 』

 

『オペレーション・ハエレティクエ・ゼウス 』

 

2つの文字を眺めつつアレイスターは僅かに口元を吊り上げ笑みを浮かべた。

 

「これからを楽しみにしようか、重力掌握 」

 

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