とある世界の重力掌握   作:烈火信仁

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とある倉庫の人造少女

 

 

 

 

 

「とりあえずは人造神計画について調べる必要があるな...... 」

 

そんな事を呟きつつ教室に戻ってきた護は机でブルーモードになって突っ伏している上条を見つけた。

 

「どうしたんだよ上条? 」

 

「いや、それがな...... 」

 

上条の話によると、青髪、土御門と弁当の取り合いをしていたところ小萌先生に職員室に呼ばれ、さっさとこの街から出てけ的な事を言われたらしい。

 

「なんか、ほとぼりが冷めるまで外に行っていろって事だったんだけどよ。あれか、この上条さんが第1位を倒してしまったせいなのかこれ? 」

 

「多分......ていうか間違いなくそれだね 」

 

「行き先まで指定されて、海辺の観光地への旅行って風になっているけど、また不幸な結果になりそうで正直行きたくねえんだよな......ていうかなんで護は行かなくて良いんだよ? 」

 

「僕は表向き無介入ということにされてるみたいだからね 」

 

ずるいぞという目で見る上条に護は肩を竦めて言った。

 

「そんな目で見るなって。詫びにこんど美味い飯を奢るからさ 」

 

「本当か? 約束だぞ! 」

 

急に笑顔になった上条を見て、インデックスの食欲はいったいどこまで上条の暮らしを圧迫しているのだろうと真剣に考えたりする護だった。

 

その後、きっちり補習を終えた護は上条とは途中で別れ、ある場所に向かっていた。言うまでもなくSASの事務所である。

 

「ようやく戻ってきたか少年 」

 

優雅に紅茶を飲みながら護を迎えたのはSASの一人であるアウレオルスである。

 

「これでも急いだんだけどね。それよりアウレオルス。咲耶と見張りを交代してくれないかな?彼女に話があるんだ 」

 

「了解、ならばすぐに変わってこよう 」

 

そう言って上がっていったアウレオルスと入れ替わりのような形で2階から降りてきたのは、咲耶ではなく哀歌だった。

 

「哀歌!体は大丈夫なの? 」

 

「もう平気、人外の私の回復力は人とは違うから 」

 

「自分も重傷だったのに無理して僕を治療してくれたって聞いたよ。本当にありがとう 」

 

「別に気にしないでほしいな。護は私たちのリーダー。私はメンバーとして当然の事をしただけなんだから 」

 

護の感謝が照れくさいのか、少し顔を赤らめながら哀歌は言った。

 

「とにかくありがとう。ところで哀歌。人造神という言葉を聞いたことはある? 」

 

「火野咲耶って子がそれだとは知っているけど、それ以外は特には........人の手により作られた異形というのなら心当たりはあるのだけど神となるとさっぱり分からないわ 」

 

魔術関係に造詣が深い哀歌ですらその存在を知らないということは、人造神計画というのは比較的新しい計画、あるいはその存在が絶大な力により隠されている計画、あるいは2つともの特徴を持つ計画ということになるのだろう。

 

「護さん........なんの用事ですか? 」

 

丁度そのタイミングで、咲耶が2階から降りてきた。現在の彼女は秘める3つの人格の内のもっとも普通な第1人格の状態である。

 

その判別は簡単で、黒のショートヘアに黒い瞳の控えめな喋り方の時が第1人格。それ以外の時は第2、第3人格である。

 

「うん。君にちょっと聞きたいことがあったんだ。前に君は僕の仲間との交戦の時に人造神について言及していたよね。その人造神とはなにか、そして人造神計画とはなにかについて教えて欲しいんだ 」

 

「それは多分、2人目が話したことだと思いますけど.......分かりました......私で良ければお話しします 」

 

そう言って護の前の椅子に座った咲耶は唐突に護の方に向かって右手を出した。

 

首を傾げる護に咲耶は言った。

 

「私の手を触ってみてください 」

 

そう言われて、すこし顔を赤くしながら (護とて思春期を生きる少年である) 彼女の手を握った護はある違和感を感じた。

 

「冷たい.....?まるで..... ! 」

 

 「今、護さんが思ったことそのままですよ。私の身体は既に死んだ身体なんです 」

 

少し寂しげな笑みを浮かべながら咲耶は話を続けた。

 

「人造神と言うのは、死した人間の身体のどこかに核となる御神体を埋めこみ、身体の機能を支え向上させる機械で活動能力を確保した蘇生体のことを言うんです。ただし使い物になる成功体が作られる可能性はとても低いです 」

 

「なんで、人造神は作られたの? 」

 

「計画の発案者がなにを考えていたのかは分かりません。ただ考えられるとしたら既存の神への恨みかと思います 」

 

「既存の神への.....恨み? 」

 

「この世界を支配しているであろう神は必ず人間の都合の良いようには動いてくれない。時には人間を傷つけ殺そうとさえする。しかしその姿は見えないから反逆もできない。なら、自分たちの願いを完全に叶えてくれる人間側にたつ神を作れば良い.......そんな考えがあったのではと思います 」

 

咲耶の話を聞いた護は内心で思った。確かにそんな考えが浮かんでもおかしくは無いなと。この世の事象を神がすべて司っているのだとしたら、確かに神を恨みたくなることはある。護は現在、もといた世界から異世界に飛ばされているが、これにしても神の理不尽を感じざるをえない。

 

だが、だから神を作ろうとするかと問われれば護は否と答えるだろう。

 

それは人間本意の考え方であるし、その為にすでに安息を与えられた死者を利用すると言うのは神への冒涜以前に生命への冒涜と言えるだろう。

 

「成る程ね......それならその歪んだ計画を止めなきゃいけないね 」

 

「だけど、その計画の発案者は誰だか分からないのですよね? 」

 

「それなんだけど、ある一筋で計画の発案者である可能性がある人物の名が知らされたんだ 」

 

「それは.....? 」

 

「統括理事の1人、禍島冷持 」

 

その言葉を聞いたとたん咲耶の顔色がさっと変わった。

 

「マズイです護さん! それは午前中にウォールに接触してきた人の名前と同じです 」

 

「え!? 」

 

「護さんが不在だったので高杉さんが代理として対応して、一言二言会話したと思ったらすぐに電話を切って地図を確かめたら瞬間移動してしまったんですが..........」

 

高杉が何を言われたのかは分からないが、それでも彼が電話後直ぐに瞬間移動を行ったことから、かなり彼にとって衝撃的な事を言われたのだろう。

 

「咲耶さん!佐天さんと初春さんに適当に説明しといて!哀歌、いっしょに.......! 」

 

「いや、あんたが動くこともないだろウォールリーダー。ここは俺が動こう。どの道俺たちも人造神計画を追っていたんだからな 」

 

そう言ったのは何時の間にやら現れていた救民の杖のダヒデである。

 

「あのテレポーターが罠にかかっているのだとしたら、地下から向かえる俺の方が良いだろう。大体組織のリーダーが毎回出れば目をつけられるぞ 」

 

「でも! 」

 

それでは、また僕のせいで仲間が傷つく。

 

そう言いかけた護だが、護の肩を抑えながら首を振る哀歌の姿にその言葉を呑み込んだ。

 

「分かった......高杉を頼む 」

 

「任せてくれ。しっかり借りは返させてもらう 」

 

そういって悠々と事務所のドアから出て行くダビデを見送りながら護は切に祈った。どうか、これ以上仲間を傷つけることがありませんようにと。

 

丁度、同時刻、高杉は学園都市外部に許可証を入手した上で出てきていた。

 

彼が向かったのは、その外部にある巨大な倉庫である。恐らく元は食料庫だったのだろう。米袋の残骸があちらこちらに散らばっている。そんな中を歩いていく高杉はやがて倉庫の中間あたりで足を止めた。

 

ぐるりと首をまわして周りを確認した高杉は虚空に呟いた。

 

「隠れてないで出てこいよ。禍島冷持の部下さんよ 」

 

その言葉に応えるように、倉庫の上の梁から人影が舞い降りた。

 

軽やかに高杉の前方に着地したのは顔を奇妙な面で覆い女性用のチャイナ服に身を包んだ人物だった。

 

面は半分がキツネで、半分がオオカミのものだった。

 

髪の毛は後ろで一つに結い上げられている。体つきは少女のようだが面を付けているために判別が出来ない。

 

「良くきたアルね。高杉宗兵 」

 

「ああ、約束とおり来てやったぞ。お前がアレプーリコス.......か? 」

 

「それで、どうするカ? 」

 

「まず聞きたい。クリスはどうしてる? 」

 

「彼女なら現在改造中アルよ 」

 

その言葉に高杉の拳が硬く握りしめられる。

 

「意外に彼女は粘っているアルが........科学には逆らえないデスだよ 」

 

「そうかい.......ならクリスがまだ持ちこたえて頑張ってるんなら........ 」

 

次の瞬間、高杉の手に機能性拡散弾射出機が握られた。

 

「俺も全力で救いださなきゃな! 」

 

声と共に引き金が引かれ轟音と共に放たれた弾は空中で無数の子弾に分裂しアレプーリコスに向かう。

 

だが、その弾が当たることはなかった。弾がアレプーリコスに当たる直前に、彼女の前に現出した炎の壁によって全て溶かされたからだ。

 

「リコスの名は『狐』を表す。そして妖狐が操るのは鬼火アル」

 

炎の壁の向こうから少女の声が朗々と響く。

 

「分かっていたアルよね?私が人造神ということは 」

 

その炎の壁が消えた時、アレプーリコスの姿は変わっていた。頭部にキツネ耳が現れ、お尻の辺りに人間では絶対にあるはずがない尻尾が生えている。面は消えておりその下にあった中華系の目が覚めるような美人顔が露わになる。

 

人造神と、ウォール構成員のセカンドコンタクトはこの時始まった。そして直前に発生する未曾有の大事件も合いまって事態は予想もしない方向に転がっていくことになる。その事を高杉も、敵であるアレプーリコスも知るすべがなかった。

 

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