「ふわぁぁぁぁ......眠い..... 」
護はかすむ目をこすりつつ、ベットから体を起こし時計を見る。
「まだ、5時か......どうせなら2度寝しちゃおうかな..... 」そう言ってベットに戻ろうとしたが、直前で思いなおして起きることにした。
(元の世界でも、そうやって起きる時間を延ばしたあげく遅刻してたからな.......さすがにこっちで同じことをするわけにはいかんよな)
「さて、朝飯何にするかなーってうん? 」護は郵便受けに白い封筒があるのに気づいた。
「そういえば、昨日帰った時には来てたっけ。異様に頭が重くて、読む気にもなれずに、そのあとベットにバタンキューだったから。さっぱり忘れてたけど。 」
封筒をとり、確かめる護。封筒の差し出し人は『学園都市統括理事会』。
「あそこから、来たってことは順位付けと名前が決まったってことか 」
手で、封筒を破り、なかから小さなコピー用紙を出す。そこには......
「本日付で、第7学区在住生、古門護を学園都市レベル5、第4位とする。なお能力名は『重力掌握(グラビティマスター)とする 」と書かれていた。
「『重力掌握(グラビティマスター)』か.......なかなかカッコいいじゃん。にしてもレベル5の第4位か.....まあ一方通行(アクセラレータ)や垣根帝督の末元物質(ダークマタ―)にはさすがに及ばないと思っていたけど、美琴より下だったか........ 」しばし落ち込む護だったが、逆に利点もあると思いなおすことにした。
「もし第3位とかなってたら、プライドをズッタズタにされた電撃姫(みさかみこと)が雷の槍とかぶつけてきそうだし......そういう点ではラッキーだったと思うべきかな?」
だが考えてみれば、そもそも新参者で、記憶喪失としている護が同列に並ぶことは、どの道、彼女のプライドを傷つけることになるかもしれないことに気づき、なんだか暗い気持ちになってしまった護だった。
「まあ、気を取り直して。朝食食って準備して散歩でもして学校に行こう。今日が初の登校日だし。」
その後、朝食を食い、散歩に出かけ、(なぜか)アパートの近くにいた美琴に追いまわされ、何とかまいて上条といろいろと雑談しながら登校し、教室で紹介され(また偶然に上条たちと同じクラス)、土
御門と青髪ピアスを始め、クラスの生徒に質問攻めにされ、なんだかんだいって学校生活初日を楽しんだ護だった。
「ふう.....昨日とは対照的に今日はなかなか有意義な一日が過ごせたな。上条や土御門もいい奴だし....まあ青髪ピアスも悪い奴ではないしな........ 」初日ということで居残りなどもなく護は帰り道を急いでいた。
「えっと......話の通りにストーリーが進んでいくとすると、次に起こるのは『連続虚空爆破事件』のはず......あれは最終的に上条さんがその右手の幻想殺し(イマジンブレイカ―)で打ち消して防いだおかげで事なきを得たけど......僕が原作に介入した以上、なにか原作どおりにいかない事情が生まれてもおかしくはないはず.....だったら自分からも何か動くべきだよな 」
とはいっても護に、犯人を捕まえるあてがあるわけではない。そもそも『連続虚空爆破事件』の犯人の名を護は知らないのだ。『メガネをかけたウラナリ』とは覚えているものの名前は覚えていなかった。
「それでも、分かっていることは幾つかある。まず、やつは風紀委員(ジャッジメント)を標的(ターゲット)にしてるってこと。そして幻想御手(レベルアッパー)を使っているということ...... 」
レベルアッパーを使っている彼は、外に出歩いているときは、うつむいて歩きながらヘッドホンを常に耳にかけて歩いていたはず、人相はアニメでしっかり覚えているのでこの特徴をもつもので、風紀委員に敵意をむき出しにするやつを探せばいいのだ。
「と盛り上がってみたものの.......そんだけじゃ当てはまる人が多すぎて絞り込めないよな.....」
一機にテンションが落ちる護。
「となるとやっぱり、作品の流れが正しいことを信じるしかないか.......でも、それまでに大勢の風紀委員が傷つくのを防ぐぐらいなら、完全じゃないけどできるはず......それでいくしかないな。」
「あの....... 」突然背後から聞こえた声にびくっとなる護。
だが直後に聞き覚えのある声だと思いだす。
「第4位の古門 護さんですよね?昨日はありがとうございました 」
後ろにいたのは、昨日自分が助けた少女、佐天涙子だった。
「びっくりした.....佐天さんだったんだ.....いいよお礼は。僕が自分でやったことだし。」
「でも、あの時護さんが助けてくれてなければ私怪我してたかもしれません。それにあの時言ってくれたこと嬉しかったです 」
護としては、あんなこ恥ずかしいセリフ早く忘れてほしいところなのだが、それを自分の口から言い出せるわけがない。
「ところで、護さん。何をうんうん唸りながら歩いてたんですか?」
「え?見てたの? 」
「はい、護さんを見つけて話しかけようとしたんですけど、なんかそんな雰囲気じゃなかったんで、すこし距離を離しながら話しかけるころあいを図ってたんですけど...... 」
(まさか、連続虚空爆破事件とかの話しも全部聞こえたりしてないだろうな.......)と心配になる護だったが、佐天はそんなこと知る由もない。
「ところで、時間あいてますか?護さん 」
「うん?まあ、後は家帰るだけだから暇といえば暇だけど...... 」
そういった瞬間、護は佐天の眼がきらりと光った....気がした。
「だったら一緒についてきてくれませんか、今日『セブンスミスト』って店で初春や御坂さんたちと会う約束してるんですけど、御坂さんたちに護さんのことを紹介したいんですよ 」
護としては今朝、美琴に追いまわされたばかりであり、あえて蛇のいる穴な飛び込むような真似は避けたいところなのだが........
「そういえば、御坂さん知りたがってましたよ。護さんが去り際に何を言ったか。どうしようかな、思い切って話しちゃおうかな 」
ぞざぁぁぁと背中を冷や汗が流れていく感触を覚える護。明らかに佐天は脅迫している。
要するに、『ついてきてくれれば、あの話は言いませんけどついてこなければ..... 』という脅迫なのだ。
「分かった、行くよ。でそのなんとかっていう店はどっちにあるの? 」
ここで断って御坂の耳にあの話が入ったらと思うと寒気がする護。ここは素直に従うしかなさそうだと観念したのだ。
「ええと、私が案内しますよ。こっちです 」
なんだかにこやかな笑顔の佐天に護は(女の子ってみんなこんな風に黒いところあんのかな?)などと全世界の少女をてきに回すような不埒なことを考えていた。
「ここが、セブンスミストですよ 」佐天とあった場所から20分もしないうちにセブンスミストについた。どんな建物かと思っていた護だったが。想像以上にでかい建物に圧倒されていた。
「ここって、デパート?」
「そうですよ?あれ、護さんは知らないんですか? 」
「僕は、まだここにきて4日だしねえ。それに過去にもこの街にいたらしいんだけど記憶がなくてね..... 」
後半は嘘であるが、確かに護は散策のときもここには寄らずにきたので、このデパートのことはさっぱり知らなかった。
「え?護さん。記憶喪失だったんですか?! 」
驚く佐天。だが次には怪訝そうな表情になった。
「でも、そう言えば私の名前は知ってましたよね? 」
うっと詰まる護。昨日のあの時、うっかり『佐天さん』と語りかけてしまったのを忘れていた。
「じゃあ、護さんと私ってどこかで知り合ったことがあるんでしょうか? 」
佐天の問いに即答できない護。知り合いといえば知り合いと呼べるかもしれないが、直接話すタイプの知り合いではなく、雑誌という媒体を通しての一方的な顔見知りというほうがあっている気がする。
「ううん.....記憶がないからよく分かんないけどそうかもね.......って向こうからやってくるの君が言ってた人たちじゃないの? 」
「あ、本当だ。初春?、御坂さん?こっちです!」
なんとか話をそらすことに成功した護だったが、一難去ってまた一難、おそらくこの後待っているであろう、質問タイムと電気姫(みさかみこと)のビリビリショーを予想して一段と冷え込む思いをする護だった。
その後、やはり初春と美琴からは質問攻めにされたが、電気ビリビリショーだけは免れた。(佐天が必死に説得してくれたことが大きい)
というわけで、護は現在、佐天や美琴たちとは離れて、書店に入っている。佐天たちは向かいの服屋で品定めをしている。
「ねえ、初春?なんで、ジャジメントのワッペン付けてるわけ? 」
「最近、ちょっと事件があって警戒してるからですよ 」
「ふーん....仕事熱心だねえ......でもせめてここに来た時ぐらいゆったりしなさいよ!」「ああ!佐天さん、何するんですか、ワッペン返してください!」
ほのぼのとしていていいなと感じる護だったが直前に、ふと違和感を感じた。
(まてよ.....このメンツでデパートでってなんか覚えがある場面だぞ......まてよ、たしか初春が狙われた時は『セブンスミスト』にいるとき........)
その時だった、プルルルル!と携帯の着信音が前方から聞こえてきた。ここからでは誰の携帯が鳴ったのかは分からない。だが護には確信めいたものがあった。いまこの状況でかかってくるとすれば.......それは黒子からの初春への電話だ。
「どうした。だれからの電話だったんだ。」書店から出てきた護の質問に初春は緊張した面持ちを向ける。
「落ち付いて聞いてください。実はここ最近、あちらこちらで爆発事件が起きてるんです。そして今、このアパート内に犯人がいる可能性があります。だからお客さんたちを外に避難誘導しなきゃなりません。佐合さんは外に避難を、御坂さん、護さん、誘導を手伝っていただけませんか?」
「ちょっとまってよ。せっかくだから佐天さんにも手伝ってもらおう 」
護の思わぬ言葉に3人は戸惑った表情を見せる。
「ほんとは佐天さんも初春さんの手助けしたいいんじゃないのか?自分には素直が一番だよ? 」
嬉しそうにうなずく佐天。だが初春は首を振った。
「万が一の時に、民間人である佐天さんが巻き込まれたら大変なんです。あきらめてもらうしか.....
」
「じゃあ、僕が一緒に付いているってのはどう? 僕の能力『重力掌握』ならたぶん爆発が起こっても佐天さんを守れると思うけど? 」
この言葉に初春はしばらく悩むそぶりを見せたが、けっきょく了解した。
「じゃあ、みんなで手分けしてお客さんを誘導しよう。」そういうわけであちこちで手分けしてお客さんの避難誘導を行うこと15分ほどで、大体の客は外に避難が完了した。
(しかし.....まだどこかにいるはずだ.....たしか、あのウラナリは女の子にカエルの人形を渡して、それを爆弾として利用して、初春を爆死させようとしていたはず......なら今は初春のところに向かわなきゃな.......)
今、もっとも危険なのは初春だ、なんだか上条さんも見かけなかったし(学校で補習うけていたから当たり前なのだが)やけに連続虚空爆破事件が起きるのも早い。
(僕が原作に介入したことで、少しずつ本来の話とのずれが出てきているってことか........)
護は後ろで残っているお客がいないかの確認をしている佐天のほうに向きなおった。
「佐天さん。ちょっと気になることがあるから初春さんのところに行ってくる。そこを動かないで確認を続けてて!」
「わかりました。任せてください!」
なんだかやる気満々な佐天に安堵しながら、護は広い通路を初春がいるであろう地点へと急いだ。
「おにいちゃんがこれをお姉ちゃんにこれを渡してって。」
護が初春を見つけた時、ちょうど女の子が初春にカエル人形を渡そうとしている時だった。
「初春さん!それを受け取っちゃいけない!それが爆弾だ!」
護の叫びに驚き、人形をあわてて子供から取り上げ、放り投げる初春。その人形がゆがみ、爆発が起きようとする。
「くそ!間に合わない! 」いまからイメージしては時間が足りない。このままでは初春は爆死してしまう。
「くそお!!」
もはや、絶望か、そう思ったその時、ビュン!!という空気を切り裂く音とともにオレンジ色の光線が人形を貫き、粉々にした。
「これは.......超電磁砲(レールガン)!? 」
「危機一髪だったわね、大丈夫?初春さん 」
おかしい.....と護の本能が告げていた。これで終わるはずがない......と、本来美琴に起こるはずだったイレギュラーな事態は起きなかった。本来ならあそこで美琴はコインを落としてレールガンを撃てなかったはずなのだ。
(いったい、なにが引っかかってるんだ?)そこが分からない護はとりあえず周りを見渡してみて、そしてはっと気づいた。
(あのウラナリは風紀委員をターゲットにしてる。初春は今、風紀委員のワッペンをしていないのに狙われた。ということは奴はそとから初春をつけてたってことだ......そして女の子に人形を渡して行かせたってことは中にもいたはず......その時にもし、佐天さんが避難誘導をしているところを見て、彼女も風紀委員だと認識していたら.......)
「御坂さん。初春さんとこの子を連れてはやく外に避難してください。それから外の路地裏でぶつぶつ言いながら歩いているウラナリメガネ男を探してください。ぼくはちょっと用事があるんで失礼します! 」
「ちょっとあんた、何言って....... 」美琴が何か言う前に全力でダッシュし佐天さんのもとに向かう護。
(僕が馬鹿だった......昨日、この世界を自分の現実にすると決めておきながら、まだ元の世界の知識に頼って、完全にこちらの世界を受け入れていなかったんだ。その結果がこれだ.......絶対に佐天さんは死なせない!)決意を胸に護は通路を走っていく。
「ふう......もうさすがに逃げ遅れた人はいないよね。にしても護さん遅いなあ。自分から私を守るっていったくせに....... 」
ぶうぶう言いながらも護を待つ佐天。その前方にある非常階段から男の子がてくてくと出てきた。
「おねえちゃん。 」
前から聞こえた声に顔を上げる佐天は、こちらに大きな猫の人形を持って走り寄ってくる男の子を見つけた。
「あれ、まだ逃げ遅れた子がいたんだ......ボク、そうしたの?迷子?」
「ううん。あのねメガネのお兄ちゃんがこれをお姉ちゃんに渡してくれって 」
男の子が差し出した人形を佐天が取ろうとした瞬間だった。
「とっちゃだめだ!佐天さん!」突如響いた護の声に思わず人形から手を話す佐天。その人形はふわりと空中に浮かんだと思ったらすさまじい速度で後ろにすっ飛んで行く、その先に立ち右手で人形をつかんだのは......
「護....さん.... 」
「ごめんね、守るはずだったのがこんな目に会わせちゃって。でも大丈夫。責任は僕が負う。こいつは僕が何とかしてみる。だから佐天ははやく逃げろ。」
「いやですよ!なんですかその死亡フラグみたいな言い方は!やめてください!」
佐天は自分が死ぬことになろうともここに残るつもりだった。自分に力がないからこの事態に何も出来なくて人が死ぬなんて、佐天はいやだった。だが.........
「え?...... 」気づいた時には佐天は子供を抱いたまま非常階段のところまで流されていた。
「ほんとにごめん、佐天さん。でも僕は......君だけには傷ついてほしくなかった。そのために僕が傷ついても君だけは......じゃあ、またあとでね。」護は横に設置されているシャッターの開閉ボタンを押す。
護と、佐天を隔てる厚いシャッターは佐天の叫びもむなしく間をふさいだ。
その日、セブンスミストは爆破された。だがその効果はひとフロアだけにとどまり全壊だころか半壊にもならなかった。
救助隊により佐天は救出された、だが佐天が供述したフロアに残った少年、古門 護は発見されなかった。
護は忽然とセブンスミストより姿を消したのだった。