とある世界の重力掌握   作:烈火信仁

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とある三者の冷酷宣言

通話中の哀歌は携帯を耳に当てながら信じられない思いで護の言葉を聞いていた。

 

哀歌的な認識としては、今回の敵はあくまで人造神であって、それさえ殲滅すれば敵の実質的な戦闘力は失われるというものだった。

 

だがもし、人造神計画側に能力者が与しているとなると、事情は大きく変わってくる。敵の戦力は護達総出でも対処しきれない可能性があるからである。

 

学園都市は少なくとも20年前にはすでに能力者を生み出せる状態にあったことが知られている。

 

ということはその当時、学生として街にいた人物の中にいた能力者が幾人もいたこととなる。

 

その中に、学園都市統括理事の1人である禍島の下についている者がいてもおかしくはない。

 

「これも僕の知識として聞いてほしいんだけど............学園都市暗部組織と上をつなぐ仲介役として何人かの人間が存在するのは哀歌も知ってるよね?そのうち一人の人物は自分自身は学生ではないにも関わらず複数の心理系能力者(テレパス)を従えていたんだ。そこから考えられのは学園都市上層部配下に過去の能力者がいるという可能性........... 」

 

「なら複数の能力者と敵として戦わなきゃいけない可能性もあるってこと.......ね! 」

 

護への返答を行ないながら、こちらに向けて飛んできた椅子をはじき返す哀歌。恐らく前方から来る黒づくめの武装集団の中に念動系能力者がいるのだろう。

 

ビルの内部に置かれていただろうと思われるコピー機やら椅子やらが次から次へと哀歌に向けて飛ばされてくる。

 

それに加えてその念動力者以外の者によるだろう銃撃も加えられている。

 

だろうというあいまいな表現なのは黒づくめの武装集団の全員が銃器を所持した状態で向ってきているからである。

 

「とにかくこのビルを脱出して学園都市に戻るしかないわよね?今の状況を切り抜けたらまた連絡する!セルティと希に私の魔力を探知させておいて! 」

 

そう言って通話を切ると、哀歌はその両腕を竜人のものに変化させる。

 

元来、竜人への変化がなくても怪力を発揮する哀歌だが部分的にせよ竜人化すればその能力は格段に向上する。

 

銃撃を避けビルの一室に逃げ込んだ哀歌は、その部屋の入って左側の壁を問答無用の正拳突きで破壊し、隣の部屋へと移り、直後隣の部屋のドアを思いきり蹴りつけて吹き飛ばす。

 

当然、ドアの向こうにいた武装集団メンバーの何人かがドアと一緒に吹き飛ばされ比較的広い廊下を吹きとんで窓ガラスをぶち破って落下する。

 

ぎょっとして身を固めるメンバーに哀歌は悪魔の笑みを向けて言った。

 

「次に跳びおりたいのは誰? 」

 

なにやら悲鳴を上げながら銃を乱射するメンバー達だったが、それより早く哀歌が彼等の懐に潜り込みそのみぞうちに一発ずつ入れて黙らせる。防刃防弾チョッキに対衝撃用スーツを着ていたメンバー達だったがそれだけでは人外である哀歌の攻撃を防げはしない。

 

あっという間に20人ほどいた武装集団は半分以下の8人ほどに減らされてしまった。

 

「この程度でウォールの一員である私を倒すつもりだったの?...............片腹痛いわ 」

 

哀歌は床に転がり気を失っている武装集団メンバーの一人をスーツを無造作に掴んで掴み上げると勢いよく残りのメンバーに向けて放り投げた。

 

人が投げたとは思えないスピードですっとんだメンバーの1人は、残存8人のうちさらに2人ほどを巻き添えにして廊下の端にある壁に大きくめり込んで意識を失う。

 

明らかに逃げ腰になる武装集団だったが、その中で1人だけ。一歩も引かずこちらに顔を向けるメンバーがいた。

 

黒づくめの武装集団は全員がその顔をガスマスクのようなもので覆っているため性別は分からない。

 

だがその体つきから察して女のように見える。

 

「この状況で.........下がらないなんて........大した度胸ね? 」

 

哀歌の言葉に女だろうと思われるそのメンバーは無反応だった。

 

だが直後、哀歌の全身に不可視の力が襲い掛かった。

 

「!? 」

 

一瞬で哀歌の体は先ほどの男達とは逆側の廊下の壁に吹き飛ばされめり込んだ。

 

全身の痛みに口元を歪めながら、哀歌は体を動かして壁から抜け出、廊下の向こう端にいるメンバーを見つめる。

 

相変わらずじっと佇むそのメンバーに向けて哀歌は叫んだ。

 

「あなたはいったい何者!? 」

 

その言葉にメンバーは初めて反応を見せた。

 

ゆっくりとした動作でガスマスクを外し素顔をさらしたのだ。

 

その素顔を見た哀歌は絶句した。

 

「なに?どうしたのよ哀歌?私の名前忘れちゃった? 」

 

武装集団メンバーの1人であったその人物は哀歌の予想通り女だった。流れるような美しい金髪に青い瞳、ヨーロッパ系の顔立ちをしている美少女。

 

「なんで.............そんな.......... 」

 

「そんなに驚かなくても良いじゃない。知らない仲じゃないでしょう? 」

 

親しげに哀歌に向けて歩いてくる少女の名は。

 

「あなたが私、クリス・エバーフレイヤを知らない訳がないわよね? 」

 

その瞬間、哀歌は驚愕の中、同時に疑問を抱いた。

 

護の説明によると偶然発動した大魔術『御使堕し(エンゼルフォール)』では、魔術的な結界などで身を防いだごく一部の例外を除いてほぼすべての人間の外見が入れ替わるはずである。

 

だが、目の前にいるクリスにはその変化はない。

 

「(クリスの中にあるアイルランド神話の『女神の素質』がそうさせたのか、あるいは他に理由があるのか..................)」

 

考えをめぐらす哀歌だが、そんな考えを中断させるかのようにクリスが言葉を発する。

 

「これ以上犠牲を出したくないのよ哀歌。あなたも早く捕まってくれない? 」

 

「それは無理..............だいたいなんでウォールのメンバーであるクリスが仲間を攻撃しようと...........」

 

「え?なに言ってるの? 」

 

本当に理解できないと言った表情で首を傾げたクリスは直後に哀歌にとって信じられない言葉を放った。

 

「あなたが仲間だからウォールが行っている洗脳から助けようとしてるんじゃない 」

 

哀歌はクリスの言葉を理解するのに数秒必要とした。

 

「何を言ってるの?..........あなたは護をリーダーとする暗部組織ウォールの一員で古参格の1人。護の意思に真っ先に賛同したメンバーじゃない! 」

 

「よほどひどく洗脳されてるようね.............なら実力であなたを取り戻す 」

 

刹那、哀歌は廊下沿いの窓に向ってタックルをかまして外に飛び出した。

 

それと同時に放たれた不可視の衝撃波が哀歌が直前までいた廊下や壁を粉々に吹き飛ばす。

 

落下していく哀歌に向けてどうやら通報によって駆け付けたらしい警官達が拳銃を向ける。

 

機動隊らしきものまで来ているところから見るに、事前に銃器犯罪として通報されていたのだろう。

 

そのまま一台のパトカーの上に着地し、ボンネットを大きくへこませた哀歌は一応頭を下げて近くの警官に謝りながら、全力でビル前広場から離れるため駆けだす。

 

「止まれ! 」

 

「止まらんと撃つぞ! 」

 

制止と警告の言葉を発する警官たちを無視して走る哀歌。

 

正直なところ学園都市外部の装備で身を固めた警官たちは哀歌にとってさほど脅威ではないためだ。

 

だが突如警察官たちのいる方角から明らかに異質な攻撃が放たれた。

 

聞き覚えのある轟音とともに、哀歌のやや右側の地面が大きくえぐれる。

 

嫌な予感を抱きながら後ろを振り返った哀歌はそこに、予感通りの人影を見た。

 

「まったくアンタも世話かかるわね 」

 

その黒髪の前方に火花を散らせながら手の中のパチンコ玉を転がす少女。

 

学園都市レベル5の第3位である『超電磁砲(レールガン)』、御坂美琴と瓜二つの外見を持つ少女。

 

彼女の名は。

 

「この御坂美希がアンタを止めるわ! 」

 

空中に無数のパチンコ玉を放り投げる美希。

 

それを見て慌てて哀歌が体を動かした直後、中に浮かぶ無数のパチンコ玉が凄まじい勢いで次々と連射された。

 

美希が独自に編み出した技、『超電速射(レールバルカン)』。

 

その攻撃を全て紙一重で躱しつつ哀歌は、近くに設置されている自動販売機をその怪力で片手で持ち上げ勢いよく美希に向けて放り投げる。

 

かなりの重量をもつ自販機が垂直に美希に向って飛ぶが彼女に焦りの表情はない。

 

冷静に自販機を見つめながら美希はその手から雷撃の槍を放ち自販機をはじき返す。

 

さすがに哀歌のいる場所までははじき返されなかったが、それでも哀歌の表情に焦りの色が浮かぶ。

 

哀歌の戦闘能力の全てを解放すれば、この場もろとも全てを破壊することができるだろう。

 

『破壊大剣(ディストラクション・ブレード)』を現出させる完全な竜人化させ行なってしまえばそれで済む話でもある。

 

だが他の武装集団メンバーはともかく、なぜか敵となっているクリスと美希相手に『死なせるリスク』がある術式及び技は使えない。

 

かといって今の状況では手詰まりである。

 

すでにビルから出てきたクリスが狙いをつけようとしているし、攻撃を外された美希も電気を周りに走らせながら攻撃の準備を整えている。

 

もはや敵の手から逃れるには上空からしかない。そう判断した哀歌は足に力を込めるが、直後背後から体に重く冷たい感触が伝わった。

 

「降伏しろ哀歌。この距離からじゃいくらお前でもばらばらだぜ?なまじ半竜人の状況のお前じゃな 」

 

その声にも哀歌は聞き覚えがあった。むしろ先の2人の実例があるから予想さえしていた。

 

「高杉..........あなたもなの? 」

 

「そうだよ 」

 

哀歌の背中にその得物、機能性炸裂弾射出器を突きつける銀髪に黒い瞳の少年、高杉宗兵は哀歌の問いに残酷なまでに当たり前のように答えた。

 

「今の俺達は、竜崎哀歌。お前の敵だよ 」

 

 

 

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