とある世界の重力掌握   作:烈火信仁

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とある1人の超能力者

「誰?っていうか、どうやって? 」

「私は立花、立花愛華。ここにはこっちの仲間の能力でこさせてもらったの 」

 

「拙者は真田幸奈と申す 」

 

人造神、建雷剣夜をその能力によって行動不能に追い込んだ、『原石』、剣山鞘は、突然地面から戦場に姿を現した2人の少女に首を傾げた。

 

「味方?それとも敵って聞きたいとこなんだけど 」

 

「今は少なくとも味方ってとこかしらね……あなたがウォールの関係者であるならだけれど 」

 

「それに今は、それを気にしている暇はないと推察いたす 」

 

「え? 」

 

鞘がその言葉に首を傾げた直後、空間を金色の光が奔った。

 

「! 」

 

「舐めるなよ原石! 」

 

閃光にやや遅れてとどろく雷鳴に不思議とかき消されず声を上げたのは、先ほど鞘に喉を刺し貫かれたはずの、剣夜だった。

 

「は!?ありえないんだけど! 」

 

いまだ髪剣で喉を刺し貫かれている状態にも関わらず、剣夜の口からは彼の言葉が飛び出している。

 

声帯を貫かれてしゃべり続けるなど普通はありえない。

 

だが剣夜は人造神。人の手により造られし神。科学と魔術の統合による副産物の象徴ともいうべき存在、その成功体である。

 

その喉を貫く、髪刀をむりやりへし折り、喉に先端がいまだ突き刺さったままの状態で剣夜は、明確に鞘たちを見据えた。

 

「どういう理屈かは知らないけど、とにかく原石であるあなたでも倒すのに手間取る相手ってことね……幸奈、私たちであいつを止めるわよ! 」

 

「承知! 」

 

愛華と幸奈の2人は同時に地面をけって剣夜に向かう。

 

迫ってくる2人たいして警戒し、身構える剣夜だが攻撃は思いもよらぬところからやってきた。

 

どこからともなく銃弾が極めて正確に彼の眉間目指して飛んできたのである。

 

「なに! 」

 

超人的な反射速度で間一髪迫った一撃を躱した剣夜だがそのすきを突き、迫ってきていた幸奈がその腰に凪いでいた日本刀を抜き放った。

 

刹那、幸奈が横なぎに振りぬいた日本刀と剣夜の青銅色に光る腕刀がぶつかり合い火花を散らした。

 

「その刀…….! 」

 

「気づきましたな…….いかにも、この刀は魔術の品、妖刀村正! 」

 

普通の刀なら巨大な剣夜の腕刀と激突した時点で、へし折られ吹き飛んでいるところである。だが、刀身を奇妙な黄金色の光に包まれる、彼女の言うところの妖刀村正には刃こぼれひとつない。

 

「威力が拮抗している以上勝負を決めるのは腕で御座る! 」

 

上段から村正が一気に振り下ろされる、剣夜はそれを防ぐために腕刀を上向きに構えるが、それを明らかに予想していた幸奈は振り下ろす途中でその斬撃の軌道を横なぎに変えた。

 

凄まじい激突音と共に、剣夜の身体が一気に後方に吹き飛び、無人の建物の外壁をぶち抜いて中に突っ込んだ。

 

「すご……言葉も出ないんだけど 」

 

そう言いつつ言葉を放っている自分に気づいていない鞘は、戦闘を見学する状態となっていた。

 

「でも……おかしいんだけど…… 」

 

鞘は先ほどの幸奈の斬撃を思い出していた。

 

刀身が光で包まれていた幸奈の振るう日本刀、村正。幸奈の言葉を信じるなら、あれは『魔術』と呼ばれる力を利用した攻撃を行える武器ということになる。

 

剣夜の防御姿勢を予想して、刀が剣夜に接触するギリギリのところで刀の軌道を変化させ、見事斬撃を命中させたところからは、幸奈の高い技量が覗えた。

 

だが、接触させた後、吹き飛ばしたことが鞘が理解できないところだった。

 

刀が振るわれた速度から考えて、どう考えても成人男性の平均程度の体格をしている剣夜の身体を、ああつさえ、建物の外壁をぶち抜くほどのスピードで吹き飛ばすというのは、物事の理を無視している。

 

彼女の扱う『魔術』がそれを可能にしているのだと強引に納得させることもできるが、だとするとますます理解できない点が一つあるのだ。

 

「あの幸奈って子……さっきの会話が正しいなら能力者のはず…….だとするとウォールリーダーの言っていたことと矛盾するんだけど 」

 

護の言っていたこと。それは『能力者には魔術は扱えない』という原則のことである。

 

鞘の疑問は解けぬままだが、時はそんな疑問が解かれるまで待ってはくれない。

 

壁をぶち抜いて吹き飛び行動不能になったかに見えた剣夜だったが、次の瞬間、いまだ土煙が立ち込める壁の大穴の中から飛び出してきた。

 

「うおおぉぉぉ!! 」

 

その両腕の刀を真上から振り下ろす、剣夜の斬撃を幸奈は再び村正で受け止める。

 

「なぜだ?なぜ、止められる?たとえそれが本当にかの妖刀『村正』だとしても所詮は『神代』以降の霊装のはず、武御雷を受け止められるはずがない! 」

 

「さあ、どうでござろう。知りたければ拙者を倒して求められよ! 」

 

刀を押し払い、剣夜と距離を置いた幸奈は再び斬撃の構えに入る。だが剣夜とて同じ手を二度は喰らわない。

 

「後ろが不注意だぞ! 」

 

幸奈の斬撃を上に飛びのいて躱した剣夜は、後方で先ほどから攻撃もせず、待機している愛華に向けてその腕刀を向ける。

 

刹那、突如暗雲立ち込めた空からまっすぐに複数の金色の雷が愛華に向けて降り注いだ。

 

「愛華殿! 」

 

幸奈が叫んだ時には時すでに遅く、雷は確実に愛華を飲み込む…….かと思われた。

 

だが、そうはならなかった。

 

確かに愛華めがけて降り注いだはずの雷は、愛華に到達する直前、彼女の周囲を覆うように現れた金色の光に触れた瞬間、まるで弾かれるように軌道を変え、攻撃を放った本人である剣夜の身体を飲み込んだのである。

 

「馬鹿……な 」

 

全身黒こげになり、地面に倒れ伏す剣夜を見つめた。

 

「あなたたち人造神も十分人外だけど、私たち超能力者(レベル5)も怪物なのよ。第5位である私、『完全防御(インビシブル)』さえ倒せないんじゃ、学園都市そのものなんて、潰せはしないわよ?」

 

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