とある世界の重力掌握   作:烈火信仁

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とある暗部の掃討作戦

「くそ! 弾が当たらねえ! 」

 

「ンな馬鹿な話があるか! 」

 

「しかし、確かにいたはずの場所に撃ち込んだはずなのに手ごたえがないんですよ!? 」

 

第19学区にある寂れた工場の中で、男たちの怒声が飛び交う。

 

彼らは手に手に銃器を所持している。学園都市では建前上、警備員(アンチスキル)でもない限り銃器の使用は禁止されている。それを完全に無視する形で短機関銃(サブマシンガン)や拳銃(ピストル)を所持する男たちは何者なのか。

 

「そお、遠くには隠れられないはずだ。全員で手分けして探せ! 」

 

リーダー格の男の指示のもと、工場内に広く分散して捜索を始める男たち。その斜め上、天井近くの柱の上で一人の少年が男たちを見据えていた。

 

「ひい、ふう、みい.....二十人前後ってとこか。先に倒した5人も含めて約25人か......いったいどこからこれだけの人数が湧いて出たんだ? 」

 

首をかしげながら、少年、高杉宗兵は外にいる『仲間たち』に頭部に装着したヘッドセットを通じて連絡を取る。

 

「敵の人数は約25人。そのうち先ほど5人を倒したので、残存する敵兵力は20人前後。敵は銃器を所持しているが、学園都市外部では複数の組織で使われる者のためどこの組織かの特定ができない、まあ、事前の報告で正体は確定しつつあるが、用心に越したことはない。もう一度奇襲をかけて外に追い出すから後は頼むよ。『少女軍団』? 」

 

連絡相手の抗議の声をヘッドセットのスイッチを切り強引に無視した宗兵は懐から学園都市製の『機能性炸裂弾(クラスター弾)』発射用の小型射出器を取り出す。

 

「さあて......もうひと暴れさせてもらおうか 」

 

 

工場の外では、金髪碧眼の外国人少女が門の前に立っていた。

 

「まったく宗兵の奴は、デリカシーがないんだから! まあそれはそれとして、護くんも無茶言うわね。敵を殺さぬように各門まで誘導しろなんて 」

 

工場の敷地内には東西南北に一か所ずつ、計4か所に門が設置してある。

 

現在、そのすべての箇所を彼女たち『ウォール』が押さえていた。

 

「でも、みんなで誓ったもんね。学園都市の駒にならないように、闇の中にあっても自らの信念を貫ける組織になるって 」

 

少女、クリス・エバーフレイヤは自らの力を使い、周囲に転がる鉄骨を宙に上げる。

 

工場の中では銃声と男たちの叫びが聞こえる。宗兵が奇襲をかけたのだ。

 

「まあ、あいつの『無限移動』なら大丈夫だろうけどさ......無事でいてよ......」

 

そんなことをクリスがつぶやいた直後、男たちが工場のドアから外に転がり出てきた。

 

「!!」信じられないものを見る目でクリスを見つめる男たち。なにしろ、目の前の少女の周辺には無数の鉄骨が浮き、その先は明らかにこっちに向いている。

 

「外に出られれば、助かるなんてほどこの世は甘くできてませんよ? 」動揺する男たちの前方に次々と鉄骨が撃ち込まれ、彼らの動きをけん制する。

 

「第1班は少女に対して射撃開始! 2班と3班は左右に分散、最寄りの門から脱出しろ! 」

 

兵力の分散になることを承知の上でリーダーは指示を出した。たとえここであの少女に殺されても、最終的に部下たちが1人でも脱出できればいい。そう思っていたリーダーだったが......

 

「ここで....逃がすわけには.....いかない.....」

 

「悪いけど、ここでアンタたちを逃がすわけにはいかないのよね?」左手では男の1人が宙を舞い、右手では稲妻と共に電光が走る。

 

「リーダー! あの少女化けもんです! こちらの弾が一向に当たりません! 」

 

クリスは鉄骨をすべて投げ終わった後、今度は男達から放たれる銃弾をすべて空中で止め、逆に男たちの前方に撃ち返していた。彼女の能力『念動覇王』は念動力系最強のレベル5であり、その力は男達に絶望を与えていた。

 

「くそ! 左右に攻撃が集中しているうちに脱出する。何人か残って射撃を少女に集中させつつ、南門に向かうぞ! 」

 

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幸いなことに、目の前の少女の近くには鉄骨はもう存在しない。したがって進路をふさがれる心配はない。足音も立てず、残った男達が懸命な射撃をクリスに放っているすきを突き、男達は南門前に止めてある緊急避難用のバンに乗り込む。だが......

 

「リーダー! 門の前に学生が.....どうします!  」

 

南門の前には高校の学生服らしきもの着た少年が立っていた。ここで強行突破を図れば、学生を巻き込む可能性が高い。だが、悩んでいる時間などあるはずがない。

 

「かまわん! 必要とあらば学生の命の1つや2つ犠牲にしても脱出することを優先する! 」

 

猛スピードで南門へと疾走していくバン。その車体が容赦なく少年の体を吹き飛ばす.....はずだった。

 

しかしそうはならなかった。

 

なぜなら突入するはずのバンは護にぶつかることもなく、むなしく宙に浮かびタイヤを空回りさせていたからだ。

 

「いったい、なにが......」いまだ状況を理解できてないリーダーたちのは次の瞬間答えを知った。

 

空中に浮いていたバンが突然支えを失ったかのように落下し、その落下の衝撃に内部の人間は上にたたきつけられたり下にたたきつけられたりと散々な目にあった。

 

そんな中かろうじて軽傷ですんでいたリーダーは車体が歪んだバンの前にやってくる少年の姿を見た。

 

状況から考えて今の出来事はこの少年により引き起こされたものだろうとリーダーはようやく理解した。

 

「そろそろ、終わりにしませんか? 」

 

静かな、しかしある思いのこもった声で護は告げる。

 

「あなた方の仲間はすべて拘束しました。1人の死者も出ていません。僕たちはあなたがたを殺すつもりはない。あなた方にも帰るべき場所があるはずです。我々と協力してくだされば、あなた方を何としても国に返すよう努力します 」

 

男達は信じられない目で護たちを見る。

 

「そんな甘い話を俺たちが信じるとでも思っているのか? 」

 

あざ笑うかのように言うリーダーに護は少しため息をつきつつ告げる。

 

「信じる信じないは自由です。しかし後数分もしないうちに警備員(アンチスキル)が到着します。それらに逮捕されれば、待つのは悲劇でしかないと思いますよ。そうでしょう?なにしろあなた達は、外部機関の武装工作員ですからね。それもとびきりの大物組織。たまげたよ、まさかCIA日本支部所属員が潜入してたなんて 」

 

男達の顔に衝撃が走る。自分たちは監視されていたというのだろうか。

 

「この学園都市内にはとある無数の監視網が張り巡らされているんです。ぼくらはその情報を受け取れる一番近い立場に立っています。あなた方の情報は上からの報告でだいたい把握していました。まあ、確実に確証が取れていたわけじゃないんですが、あなた方の表情を見れば一目瞭然ですよね 」

 

愕然とする男達を見ながら護はとどめの降伏勧告を行う。

 

「さあ、どうします。これは学園都市としての意思です。抵抗する気なら我々だけではなくこの街自体を敵に回すことになること重々承知して考えてください」

 

数分後、降伏を承知した男達を工場から出てきた宗兵が自らの『無限移動』を使って男達をアレイスターが指示した建物に移動させる。今後、男達は各国における学園都市からのスパイとして生きることになる。

 

「それにしても、恐ろしいわね?。統括理事長、アイツらが侵入していたことを承知の上で行動を起こすまで潜伏させてたわけよね」

 

東門から戻ってきた黒のショートヘアの少女。その外見は、学園都市レベル5、第3位の『超電磁砲(レールガン)』御坂美琴と瓜二つである。

 

「美希、お疲れ様 だけど、こうしてみるとホントにそっくりだな、美琴に.....」

 

護の言葉にすこし頬を膨らませる美希。

 

「当り前よ、アンタが知っていたのは意外だったけど私はお姉さま(オリジナル)の遺伝子を利用した『量産能力者計画』における00000号(フルチューニング)。すなわち完全なクローンだもの。天井亜雄の目をごまかすために自我を持たない失敗作に見せかけていたけど、アイツの研究の中で唯一の成功作が私 」

 

すこし、虚ろな瞳を向ける美希。

 

「でもアンタが名前を付けてくれたときは嬉しかった。お姉さまのクローンではなく。一人の美希という女として生きていこうと思えたのは護のおかげ。感謝してる 」

 

「そう....美希だけじゃない....私も.....護に感謝してる」いつの間にか護の近くまで来ていたのは、西門を守っていた竜崎哀歌。

 

「化け物の私を....女の子として.....見てくれたのは....護が初めてだった」

 

彼女の背中を見つめる護。その背中には龍の羽根のようなものが折りたたまれている。

 

「人外の私を.....いつ暴走してもおかしくない私を.....仲間と言ってくれた.....だから私は感謝してる 」

 

「みんな.....」すこし、しんみりとした雰囲気となる資材置き場だったが、その空気は長くは持たなかった。

 

「なにが『少女軍団』よ! どんだけデリカシーがないのよあんたって奴は! 」

 

「こんな困難な作戦、冗談の1つくらい言わないとやってられないよ。文句言いたきゃ護に言えよ! 」

 

「自分のリーダーを侮辱するな! 」

 

ぎゃあぎゃあ騒ぎなら追いかけっこをする2人を見て、護はため息をつきつつ呟いた。

 

「とりあえず、アジトに戻ろう。」護の声と共に『ウォール』のメンバーは(追いかけっこをしているクリスと宗兵を除く)学園都市の闇へと消えていった

 

 

 

 

 

オリキャラ紹介

 

『高杉宗兵』

暗部組織『ウォール』の構成員で護を除けばチーム唯一の男子。父親譲りの銀髪を持ち、イギリス人の父と日本人の母を持つ。

学園都市の学生であり、長点上機学園に書類上は通っていることになっている。

所有する能力は空間移動系のレベル4『無限移動(インフィニティ)』

あらかじめ定めた座標へなら、その距離を無視して移動できる。

 

『クリス・エバーフレイヤ』

イギリス人の両親の間に生まれた金髪碧眼の少女。

暗部組織『ウォール』の構成員の1人で書類上は霧ヶ丘女学院に通っていることになっている。

能力は念動能力系のレベル5『念動妖精(サイコフェアリ)』。

 

念動系最強の能力を持つが、とある事情により書類上はレベル4とされている。

 

『御坂美希』

御坂美琴のクローン体である『妹達(シスターズ)』の1人で、『量産能力者計画(レディオノイズ)』により最初に作られた『00000号(フルチューニング)』。

オリジナルの御坂美琴に瓜二つだが、髪は黒で染めている。

能力は、オリジナルと同じレベル5の『超電磁砲』。なお銃器の扱いにも長ける。

 

『竜崎 哀歌』

なんらかの理由で人の形をしている『竜人』の少女。神話にしかほとんど出てこない存在だが、なぜ学園都市にいるかは不明。

『ウォール』の構成員であり、自らを『少女』『仲間』として見てくれた護を慕っている。

所有する能力は不明だが、学園都市のデータ上では『人外変化(ドラコニア)』という名がつけられている。

 

 

 

 

 

 

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