Muv-Luv〜wing of white steel〜   作:lancer008

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第四十五話

明け方、旧横浜市街からは爆音が鳴り響いていた。

 

黒鉄「全機射撃止め!」

 

発砲音が消えた。

4機の機体が横一列に並び、同じ武器を構えていた。

 

黒鉄「飯にしよう。0700時にベースキャンプ前に集合」

 

ベースキャンプには4人の男達がいた。

前日に訓練のためフル装備で出撃し、休む間も無く練度向上のため訓練をしている。黒鉄以外の3人は既に限界に達していた。

 

黒鉄「どうしたお前ら?」

 

「少佐はなんで平気なんですか?」

 

黒鉄「何が?」

 

「「「(この人は一体どんな身体してんだ)」」」

 

黒鉄はこの世界に来る前も2つの世界で連日連戦をしたことがあるからだった。

だが、それは改ざんされた記憶に過ぎない。黒鉄が元いた世界は、普通の世界である。巨大なロボットがいるわけでも無く、宇宙人が攻めてきたということも無い。ただ平和な世界から来たのである。記憶の中ではやったことがあるかもしれないが実際は、この世界に来てからある程度の戦闘を行なっただけで身体は3人と同じく悲鳴を上げていた。

 

黒鉄「(と言っても俺も限界だな。少しでも運動しなきゃな)よしお前ら、もし午前の対人戦闘を1対3で俺に1発でも攻撃を加えることが出来たらそれで二日間の訓練は終了だ。どうだ、やるか?」

 

3人は顔を見合わせ、

 

「「「やります!」」」

 

黒鉄「よし、やるぞ、開始時間は今から30分後だ。5分前には搭乗して待機していろ」

 

急遽、1対3の模擬戦をやる事になり場の空気が重たくなった。装備に関しては実戦仕様で、JIVESを使っての実戦さながらの模擬戦をやることになった。

機体のエンジンが始動し、暖機が始まった。11月の半ばになり、気温も下がってきていたためだ。

 

開始10分前になり黒鉄が突然、話し始めた。

 

黒鉄「全員、作業をしながら聞け。この部隊のエンブレムが決まったぞ。この軍が設立するもっと前、俺と伊藤とで組んでいた時に呼ばれた名だ。それは"白き鋼の翼"。戦場を自由自在に飛び回り、数多の戦場を勝利に導いた名だ。これを我々ランサー隊が引き継ぎ今度は人類を勝利に導く隊となる」

 

「隊の名前もそれで?」

 

黒鉄「英名、"Wing of White Steel"、通称"WWS"だ」

 

「何故、今そんな話を?」

 

黒鉄「本当は、訓練の終盤に話す予定だったんだがな。この訓練を早く終わらせたいためだけに俺と戦うのは無駄だと思ったんでな。それだったら今の話を心に刻んで戦闘をした方がいいと思ってな。おっと、そろそろ戦闘開始だ。戦闘区域の中央に設置した機器で信号弾が打ち上がったら開始の合図だ」

2分後、信号弾が発射された。4機の機体が勢いよく飛び出していった。

 

 

 

同時刻

統合軍基地アルファ大隊第一部隊執務室

 

その部屋には、伊藤と唯依、ユウヤがいた。ユウヤは昨日の朝、日本に着き休息をとったのち今回の経緯を説明するため伊藤の部屋に訪れていた。

ある程度の情報は伊藤や唯依にも入ってきていたため状況はわかってはいたが、話をしていくうちにもっと複雑な状況がある事がわかった。それは途中、アルファ大隊の士官が持ってきた情報からだった。

 

伊藤「アメリカも結構、脅すねえ」

 

内容は、日本に亡命した。我が国(アメリカ)の軍人とその機体を即刻、送還せよ。これが受け入られない場合は軍事的行動に出ると。

 

伊藤「機体に関しては帝国の機体だと言うのに」

 

ユウヤ「すまない。こんな事になってしまって」

 

唯依「いや、ユウヤは悪くない。あの機体は我が帝国の機体だ。そして、ユウヤも日本に亡命し、既に手続きは完了しているため日本帝国民だ。何も心配する事はない」

 

ユウヤ「だが………」

 

伊藤はそれを制止した。

 

伊藤「もしアメリカが軍事的行動を取るなら相手をするまでだ。統合軍アルファ大隊第1部隊が相手をしてやる」

 

ユウヤ「統合軍?」

 

伊藤「正式名称、日本帝国陸海空統合軍。略して統合軍だ」

 

唯依「私達がユーコン基地を発ってすぐに設立された部隊だ。私は違うが、黒鉄や上総も統合軍に入っているわ」

 

伊藤「まあ、あの時ユーコンに降りてきた部隊も統合軍に入っている今の指揮官は………」

 

突然、電話のベルが鳴り出した。

 

伊藤が電話に出ると統合軍作戦司令室からだった。何やら話しをしていると緊迫した空気が2人にも流れてきていた。

 

伊藤「すまない。用事ができた。ゆっくりしていってくれ」

 

唯依「何があったの?」

 

伊藤「太平洋上にアメリカ海軍の特務艦隊が展開を始めた。戦術機も多数搭載されているようだ。現在、統合軍全体に警戒態勢が敷かれた。俺はこれから作戦司令室に行ってくる」

 

伊藤が部屋を出ようとした時、ユウヤが立ち上がり、

 

ユウヤ「俺も連れてってくれ。この事態は俺が引き起こしたようなものだ。俺にも責任があるだから」

 

伊藤「わかった。2人ともついて来い」

 

 

 

 

3時間前

旧横浜市街

 

ランサー隊の模擬戦闘が開始され数分が経っていた。どの機体も被弾する事なく戦闘が継続されていた。JIVESを使っているため、射撃音は全く聞こえないがビルや地面を蹴る音が聞こえていた。時折、ビルが倒壊し砂煙がたっていた。

黒鉄以外の3人は、1人が狙撃を行いもう2人は格闘戦を挑み追い詰めようとしていた。だが黒鉄はそれを易々と避け逃げ一方の戦いをしていた。

 

黒鉄「(そろそろ仕掛けるか)」

 

黒鉄は突然、ウェイブライダー形態になり空に向かって飛び出した。狙撃をしていた者はこの好機を逃すまいとトリガーを引き続けた。ギリギリのところでかわし続けた。他の2人もウェイブライダー形態にし後ろを追った。黒鉄の機体は積乱雲の中に隠れた。だがレーダーには反応があるためそのまま追い続けた。

 

黒鉄「この辺かな。(機体)もってくれよ」

 

最高速度から減速をせずにMS形態にした。雲の中で、2機が来るのを待った。雲の中に機体が突入して来るのが感じた。ビームサーベルを構え、レーダーとニュータイプ独特の勘を頼りに2機に向かっていった。1機を仕留め、2機目を仕留めようとした時、撃墜アラームがなった。

黒鉄はいったいどこからだと思いレーダーを見るが近くに反応はない。雲を出ると地表にいると思っていた3機目がほぼ真横にいたのだ。レーダーでは地表にいるとなっていた。地表をよく見て見るとマーカーが撃たれ、囮になっていたのだ。

 

黒鉄「いつの間に、ステルス装甲を着けた?」

 

「機体を紹介されたその日に整備員に頼みました」

 

黒鉄「まさかそんな手を使って来るとは、やられたあ〜〜」

 

ステルス装甲は、オプションとして着けられるが防御力が低下するということで推奨されている装甲ではないためさらっと話した程度だった。

 

黒鉄「約束通り帰るぞ。編隊を組め。こちらランサー1より統合軍基地へ、予定を変更しこれより帰投する」

 

 

 

現在

統合軍作戦司令室

 

室内は慌ただしかった。多くの分析官がパソコンを前に手を動かしていた。

 

伊藤「遅れました。2人はそこら辺に座ってろ。状況は?」

 

「現在、ナイトメア第2隊4機がスクランブルしました。また、応援として各地に飛んでいた機も向かっています」

 

伊藤「あれは、新人か?」

 

「はい。補充されたばかりの隊員です」

 

伊藤「最悪だ。他に出れる隊はいるか?」

 

「ブラボー大隊もいますが現在、換装作業中です」

 

伊藤「黒鉄の隊は?」

 

「帰投して現在、補給作業中です。黒鉄少佐を呼びますか?」

 

伊藤「頼む」

 

画面に黒鉄が映った。

 

黒鉄「何でしょうか?」

 

伊藤「出撃できるか?」

 

黒鉄「補給が済み次第、5分程で出撃できます」

 

伊藤「なら頼む。俺も同時に出る」

 

黒鉄「わかりました。準備します」

 

伊藤「セイバー隊とランサー隊にスクランブルをかけてくれ」

 

「了解しました」

 

放送が入り、各機体が暖機を開始した。

滑走路上には、既にセイバー隊が待機していた。その横の滑走路にランサー隊がついた。

 

「管制塔よりセイバー1、ランサー1へ、発進を許可します」

 

伊藤「セイバー1出撃する!」

 

黒鉄「ランサー1出るぞ!」

 

計8機が飛び立った。

 

現場では、ナイトメア第2隊4機が編隊を組みながら上空を飛んでいた。

 

アメリカ海軍の艦隊は空母が4隻と護衛の艦が8隻程いた。

 

「こちら日本帝国統合軍である。貴艦隊は許可なく我が国の領海に進入している。今すぐ艦を回頭させ来た道を戻ってください。繰り返しますこちらは………」

 

「何もありませんね」

 

「隊長、空母4隻から艦載機が発艦しています!」

 

「全機、攻撃を受けるまで発砲を許可しない。後ろにつかれても絶対発砲するな」

 

「「「了解」」」

 

空母から発艦した艦載機はF-18だった。計16機がナイトメア隊を囲むように飛行していた。

 

「こちらナイトメア2-10、警告射撃の許可を」

 

「こちらCP、それは許可出来ない繰り返す許可出来ない。もうすぐ援軍が到着する。それまで持ち堪えろ」

 

「こちらナイトメア2-10、了解。全機回避を優先。分隊ごとに別れろ。ブレイク!」

 

2機分隊となり別れて飛行した。

すると突然、ロックオンアラームが鳴り出し、ナイトメア2-10の右下を飛んでいたナイトメア2-18が火だるまになり海面に落ちていった。

 

「こちらナイトメア2-10よりCPへ、ナイトメア2-18が撃墜された繰り返すナイトメア2-18が撃墜された。全機へ発砲を許可する攻撃せよ」

 

空戦が開始された。機体の性能ではナイトメアの方が上だがパイロットの練度ではF-18の方が上だった。機体の数も向こうの方が上な為、各個に落とされていった。

 

「ナイトメア2-10よりCP、応援はまだかこのままでは………」

 

F-18より放たれた弾丸が直撃コースで機体に向かっていった。

 

死を覚悟した時、その弾丸は来なかった。機体の手前で、光る線が飛んでいった。

 

レーダーを確認すると8機の機体が向かって来ていた。パイロットはそのIFFを見た時、歓喜した。援軍は統合軍でも1位、2位を争う部隊だった。

 

伊藤「セイバーよりナイトメア2-10へ、帰投しろ。ここは俺たちが受け持つ」

 

「了解」

 

ナイトメアは戦域を離脱した。

 

伊藤「セイバー1から各機へ、戦闘を開始せよ。全機、ブレイク!」

 

黒鉄「全機、訓練通りだ。敵を殲滅せよ。艦は、武装だけを破壊せよ。WWSの力を見せつけろ!」

 

「「「了解」」」

 

敵機の制圧は、たった5分で終わった。

艦の方も直ぐに制圧した。

 

8機が上空で待機していると逃げるように回頭し来た道を戻っていった。

 

伊藤「セイバー1より全機へ帰投する」

 

 

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