Muv-Luv〜wing of white steel〜   作:lancer008

64 / 91
第六十三話

クーデターが終わり統合軍基地では通常業務に戻る為の復旧作業が進められていた。基地の2割が半壊し特にスカイ隊が使用していた格納庫は使用不可になっていた。それに加えて統合軍基地に配備されている全機体の整備も行われていた。

現在、優先的に整備されているのはセイバー隊とイージス隊である。最も早く展開できる隊と最も広範囲を索敵できる隊だからである。ただし、整備員の数がもとより足りてない事もあり搭乗している衛士も加わって機体の整備をしていた。

 

そんな忙しい中、ある2つの隊の隊長が黒鉄の元に呼ばれていた。

 

伊藤「復旧作業も終わってないなか、また教導ですか⁉︎」

 

黒鉄「少し声のボリュームを落としたらどうだ」

 

上丘「まだ機体の修理も終わってないんですよ」

 

伊藤「ナイトメア隊の修理が終わらない限り出れませんよ。誰がアラート待機するんですか?」

 

黒鉄「うちの隊がする。復旧するまで毎日だ。それに機体の方は補充されてくるのを使ってくれ、調整は向こうの基地に行ってからな」

 

黒鉄以外「(行くこと決定かよ……)」

 

伊藤「なら全員に手当くらいは出せよ」

 

黒鉄「わかってるよ」

 

黒鉄は答えながらたまっている書類に目を通した。

 

 

 

次の日

 

伊藤はブレイド隊と共に国連軍横浜基地に来ていた。機体の調整を済ませ食堂で昼食をとっていると目線を感じた。伊藤は振り向きその方向を見ると4人の国連軍衛士が伊藤たちのいる方向を見ながら何かを喋っていた。よく聞いてみると先日の件の悪口を言っているようだった。

 

「あいつららしいぜ、新型をクーデター軍に流したの」

 

「マジか⁉︎」

 

「それだけじゃ無いそうだぜ!新型の兵装なども一緒にだとよ」

 

「おいおい、何であいつらは罪に問われないんだ?」

 

「大方、金でもやったんだろ」

 

笑い声が響いた。

 

伊藤達は無視し続けた。

そこから話す内容はどんどん悪くなっていった。

 

「そういえば何であいつらて新型機しか乗ってないんだ?」

 

「どうせあいつらの操縦技術は新兵程度なんだろう。だから新型に乗って自分を強く見せてるんだろうよ」

 

我慢出来なくなったブレイド3が立ち上がった。

 

上丘「抑えろ」

 

「ですが、あいつらはブレイド4の事まで」

 

上丘「今は耐えろ……」

 

「わかりました」

 

ブレイド3は国連軍衛士を睨みつけ静かに腰を下ろした。

元々、ブレイド隊は4人いた。ユーコン基地でのテロ以降、ブレイド隊は特殊任務や各国への応援として出撃する事が多々あった。ブレイド隊は欧州へ応援に向かった際、孤立した部隊を救うため戦闘をしていた。その最中、突如後方から出現した要撃級に反応が遅れ、その前腕がブレイド4のコックピットに直撃した。周りの者が気付いた時には既に手遅れだった。戦場は混乱していたため遺体の回収も出来なかったため爆破処理を行い帰還した。

 

「そういえばあいつらの中にも決起した奴らがいるそうだぜ」

 

「おいおい、マジかよ。それでどうなったんだよ?」

 

「全員死亡だってよ。たった10機の警備機に撃破されたって話だぜ。警備機にやられるようじゃ、戦場に出たら一瞬でお陀仏だぜ」

 

「いえてるな」

 

伊藤が離れた後も度々、スカイ隊は襲撃を行っていた。相手をしたのは、統合軍内で対人戦をすればランサー隊やセイバー隊に次ぐ基地直轄警備隊ガード隊である。対人戦に特化したこの隊は襲撃してくる度に撃墜を繰り返した。4度目の防衛戦で決着がついた。

獅子堂の最期の言葉を聞いたのは堂上だった。内容は全回線にオープンで伝えられた。

 

 

甲高い笑い声が聞こえた。

既に限界だった伊藤が席を立ち衛士達の元へと静かに歩いていった。それに追従しブレイド隊も後を追った。

 

伊藤「おい、今すぐ発言を撤回しろ」

 

「ああ、なんだって!」

 

伊藤「今すぐ発言を撤回しろと言っている」

 

「整備員風情が出しゃばってるんじゃねえよ!」

 

伊藤の顔を殴りつけた。

 

この時の伊藤の格好は機体の調整や整備をしていた事もあってつなぎを着ている状態であった。

伊藤は立ち上がり、

 

伊藤「あいつらにはあいつらなりの理由があって事を起こした。人や仲間が死んだんだ許されることではない。だが、お前たちが笑っていい奴らでもない!もう一度言う、今すぐ発言を撤回しろ」

 

「何言ってやがるクソ野郎が!」

 

伊藤を殴り付けた。

 

上丘「少佐……」

 

伊藤「大丈夫だ」

 

「少佐だと」

 

「こんな奴が……」

 

伊藤「名乗らせてもらおうか、日本帝国陸海空統合軍アルファ大隊第1部隊セイバー隊隊長伊藤 響少佐だ。これからお前を叩きのめす者の名前だ。覚えとけ」

 

直後、伊藤は拳を振りかぶり目の前にいたやつを殴りつけた。

 

伊藤「自衛権だ。責任は俺が取る、こいつらにお灸をすえてやれ」

 

「「「了解」」」

 

食堂で殴り合いが始まった。

最初からその場にいた者は止めようとはしなかった。自業自得だと思う者、部屋全体に充満する程の殺気を放たれ動けない者など様々だった。

殴り合いというよりも殆どが一方的だった。

 

数分したのちMPが駆けつけて取り押さえられた。

 

 

 

 

1時間後

 

黒鉄の執務室の電話が鳴った。

 

黒鉄「黒鉄です」

 

「国連軍横浜基地からです」

 

黒鉄「繋いでくれ」

 

⁇?「国連軍横浜基地司令のパウル・ラダビノッドです」

 

黒鉄「特殊任務部隊長黒鉄 達海中佐です。うちの奴らが何かやらかしましたか?」

 

ラダビノッド「我が軍の衛士と殴り合いを起こしました」

 

黒鉄「わかりました。これから伺います」

 

「隊長どうしたんですか?」

 

黒鉄「教導隊が殴り合いをおこしたんだと少し出てくるから何かあったら頼むぞ」

 

「わかりました」

 

 

 

 

黒鉄は横浜基地に到着し案内された部屋に入室した。そこには顔に傷がある4人の姿が見え、その他に相手と見られる4人とその隊の隊長だろうと思われる者とラダビノッドが座って待っていた。

 

黒鉄「統合軍の黒鉄です。状況を説明してもらえませか?」

 

黒鉄は経緯を全て聞いた。

 

そこで謝罪をしようとう席を立とうとした時、ラダビノッドが

 

「この基地で10日に新型OSのトライアルが開催されます。その際、このチームでトライアルに出てもらいたい。話を聞く限りこちらに非があるのは確かだ。だがここで片付けてしまうとまたあるかもしれない。なのでトライアルではっきりさせてもらいたい」

 

黒鉄「わかりました。あとこの部屋を少しお借りしてもよろしいですか?」

 

ラダビノッド「ええどうぞ」

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。