Muv-Luv〜wing of white steel〜   作:lancer008

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第六十四話

横浜基地のある一室

 

黒鉄「やり過ぎだ。他にやり方は無かったのか?」

 

伊藤「ないな」

 

上丘「仲間のことを馬鹿にされたまま引き下がれと」

 

黒鉄「そこまで言っていない。まあ、これは統合軍中佐ではなく俺、個人からだ"よくやった"」

 

伊藤「だろうな。もしお前があの場にいたら間違いなく殺してたな」

 

上丘「そうですね」

 

黒鉄「まあ、次からは気を付けろよ。今回の件に関しての処分は無しだ。ただし、明後日の模擬戦闘は相手との公平を期すため、こちらは撃震を使う」

 

伊藤「現在、改良を加えてるやつか?」

 

黒鉄「そうだ。今回は統合軍仕様で出てもらう。もう1時間程で到着する筈だ。武装に関しても従来の兵器と同じで頼む」

 

上丘「公平ではないと思いますが?」

 

黒鉄「撃震を使うとは言ったが、どこのとは言ってない」

 

伊藤「最低だな」

 

黒鉄「本当は俺が出たいところなんだがな」

 

伊藤「わかりました。伊藤以下、了解しました。トライアルまで機体調整に入ります」

 

黒鉄「頼むぞ」

 

その数時間後、機体が届き整備員とともに調整に入った。この撃震は帝国陸軍から耐用年数が1年をきったものを格安で購入している。そのため、統合軍仕様に整備し直したとしても最終的には個人の調整になるため、耐用年数は1年〜3年くらいになる。

だが、この4人の場合は全く違った。

 

伊藤「もって1日か」

 

上丘「こちらも同じく」

 

伊藤「元々は訓練兵用に購入した機体がこういう形でまた戦場に戻るとはね」

 

上丘「そうですね。伊藤少佐、飛行訓練を行いたいんですが?」

 

伊藤「そうだな。俺も乗ってみなければ分からないこともあるしな。待っててくれ掛け合ってみる」

 

伊藤は電話を掛けた。

許可が下りたらしく出撃準備に入った。

 

伊藤「セイバー1から各機へ、許可は下りたものの現在、別の部隊が演習中の為、邪魔になるなだそうだ。あまり無理な機動はできないからそのつもりで。あと全機の耐久値は約1日だ。最悪、機体を新たに要請する事になるからそのつもりで」

 

「「「了解」」」

 

出撃し演習場へと向かった。

飛び始めて数分、ブレイド2の機体がふらつき始めていた。

 

伊藤「ブレイド2、バランサーを調整しろ!すぐ落ちるぞ」

 

「くっ!」

 

上丘「減速して着地しろ!」

 

「ダメです!墜落します!」

 

ブレイド2は墜落した。

伊藤たちはすぐに機体に近づき上丘とともに機体を起こした。そして、コックピットを開けた。

ブレイド2は衝撃の際に右腕を強打していたが目立った外傷は確認できなかった。

 

「スラスターをやられましたね」

 

伊藤「一旦、格納庫に戻るぞ」

 

格納庫に戻り機体の状況を確認した。

整備員に見てもらうと大破判定を受けた。

 

伊藤「完全に駄目か?」

 

「駄目ですね。耐用年数ギリギリだったものを更にギリギリにした機体ですからね。新しいの要請した方が早いですね」

 

伊藤「わかった。ブレイド2、後で補給申請書と報告書持ってこい」

 

「わかりました」

 

伊藤「今日はこれにて解散だ。トライアルは明後日だからそれまでは何も問題を起こさないように以上解散」

 

伊藤は解散した後、黒鉄へ電話をした。

 

伊藤「撃震、追加でもう1機寄越してくれ」

 

黒鉄「どっかおかしかったか?」

 

伊藤「飛行訓練中にブレイド2が墜落して大破になった」

 

黒鉄「墜落ぐらいなら問題は無いはずだが、もしかして機体のパラメーターを過剰に調整したな?」

 

伊藤「その通りです」

 

黒鉄「はぁ〜〜。今回は大目に見て追加で送るよ。但し次は無いからな」

 

伊藤「了解しました」

 

伊藤は電話を切り食堂へと向かった。

時計は9時を回っていた。この時間だと誰もいないだろうと思い行くと2人程座って話をしていた。そこにいたのは夕呼とまりもだった。伊藤は離れた席に座ろうと思っていたが夕呼に呼ばれ相席する事になった。

 

伊藤「失礼します」

 

夕呼「結構派手にやったようね」

 

伊藤「そうですか、あれくらいで済めばいい方ですが」

 

夕呼「反省はしてないようね」

 

伊藤「仲間を馬鹿にされたんです。それ相応の対価を与えないと」

 

夕呼「ふ〜ん。それでまりも決めたの?例のことは」

 

まりも「伊藤少佐、勧誘の件、謹んでお受けします。ただトライアルが終わるまでは任官は待ってくれませんか?」

 

伊藤「理由は訓練兵の事ですか?」

 

まりも「はい。明日、訓練兵は全員任官しますが最後にもう一度彼等の戦闘を見たいと思いまして」

 

伊藤「見納めですか。わかりました。上には自分から伝えておきます」

 

伊藤は飯を食べ終わり席を立とうとしたところ、

 

夕呼「ねえ、あの機体売ってくれる?」

 

伊藤「どれですか?」

 

夕呼「空飛ぶ船についていた機銃の方」

 

伊藤「上と相談してみます」

 

伊藤は自室へと戻っていった。

伊藤は椅子に座り日本酒を飲み始めた。伊藤は何か思い詰めることがある時は1人晩酌をしている。多い時には一升瓶を開けてしまうのともある。

 

伊藤「(獅子堂、俺の中ではお前がやったことは正しいと思っている。あれだけこの国を思っていたからな。だが何故、あれほど迄に被害を出さなきゃいけなかった…………)」

 

獅子堂の元の所属は帝国陸軍本土防衛軍第1師団第2戦術機甲連隊所属である。伊藤の勧誘を最初は断ったものの上司から進められ統合軍に入隊した。現在に至るまで多数の戦闘に参戦、多くの戦果を上げている。

 

伊藤「せめて、あいつらの分まで生き残るしかないな」

 

 

 

 

 

トライアル当日

 

各部隊から一個小隊分のメンバーが選出され新OSの試験を行っていた。各地で少なからず実戦を経験した衛士が多く所属しているため始めて使うOSとはいえほぼ全ての衛士が順応していた。

 

上丘「後方基地だと思って腑抜けてる奴等ばかりだと思っていましたが日々訓練を行い練度を上げている者たちもいるということですか」

 

伊藤「そうだ。さて俺らの相手はどちらかな?」

 

「前者ですね」

 

「同じく」

 

上丘「まあ、どちらにしても潰すのみですね」

 

伊藤「次は俺たちだ行くぞ!」

 

「「「了解!」」」

 

横浜旧市街地を使っての模擬戦闘である。各チーム4機編成で行い弾種はペイント弾を使用する。装備に関しては突撃砲と短刀だけになっている。

 

「演習開始まで10秒前……………」

 

一瞬の静寂が訪れる。

 

「演習開始!」

 

スタートと同時に両チームが匍匐飛行を始める。伊藤チームは単機ずつになり、国連チームは2機1チームで動き出した。

 

映像を見ていた衛士は言葉を呑んでいた。撃震ではありえない動きをし国連チームのF-15 イーグルを次々と落としていたからだ。この映像を見るまでは国連チームの方が圧倒的だと思っていたからだ。機体別で見れば統合軍が使っている機体は第1世代戦術機で国連が使っている機体は第2世代戦術機であるからだ。たった1世代違っているだけでも性能の差は天と地ほどの差があるからだ。

だがこの撃震は伊藤達が自ら手を加えた戦術機である。中身は心神と同じ、パワーはジェスタとほとんど同等そんな機体である。統合軍から見てみればこの撃震は第2.5世代戦術機であり、勝つのは必然だった。

 

開始20秒で国連チームの2機を落とし、その10秒後にまた2機を落とし模擬戦闘は終了した。

 

伊藤「掛かり過ぎたか?」

 

上丘「そうですね。一旦、格納庫に戻りましょう」

 

伊藤「そうだな」

 

「あいつらはどうします?」

 

上丘「そのままにしておけ」

 

「了解です」

 

伊藤たちは格納庫に戻り休憩を取ろうとした時、基地全域で警報が鳴った。

 

「コード991発令!コード991発令!全衛士は出撃して下さい!繰り返します………」

 

伊藤「スクランブル!整備員、実弾に換装しろ!突撃砲は、一丁ずつでいい、長刀もだ」

 

「準備整いました!いつでも出せます!」

 

伊藤「行くぞ!」

 

「「「了解!」」」

 

伊藤たち戦闘区域へと急いだ。

 

伊藤「セイバー1からCPへ、状況は?」

 

「師団規模のBETA群が出現、数体の光線級が確認されています。現在、実弾装備の機体から随時、戦闘区域に向かってますが戦況は良くありません」

 

伊藤「被害状況は?」

 

「既に二個小隊が全滅しました。まだ実弾装備に換装していない部隊が次々に喰われています」

 

伊藤「その地域はどこだ!これより撤退中の味方部隊の支援に向かう」

 

「座標データ送信します。後退中の部隊にも伝えます」

 

上丘「BETA視認!要撃級多数接近、その後ろに戦車級100!」

 

伊藤「各機、格闘戦に移行。弾薬を惜しむな!あのクソ野郎どもを叩け!」

 

「「「了解」」」

 

向かってくるBETA群に向け突撃砲を放った。要撃級に吸い込まれるようにして命中した。

 

「ブレイド3よりセイバー1へ、12時方向距離3000に味方部隊を確認、後方より突撃級が迫って来ています」

 

伊藤「セイバー1了解。セイバーよりブレイド1へここを頼んだぞ」

 

上丘「ブレイド1了解」

 

伊藤は単機突撃した。

レーザー警報が出ていたが無視し空高く飛び上がり突撃級に弾丸の雨を浴びせた。撤退中の部隊から警告されたが無視した。そんな時、突如レーザーが飛んできたが難なく回避した。

 

戦闘は夕方まで続いた。

基地に被害は出なかったものの戦術機部隊には、死傷者が出た。

 

 

 

 

統合軍格納庫内

 

伊藤「一応、警戒は解除されたがあれだけの廃墟だもしかしたら小型種の2、3体どこかに潜んでいるかもしれん。統合軍独自ではあるが明日の午前8時まで警戒態勢を維持。出撃に備えろ」

 

「「「了解」」」

 

解散したが、伊藤は1人何かを装備し始めた。

 

上丘「少佐、1人で何してるんですか?」

 

伊藤「ちょっと出てくるから後は頼んだ」

 

上丘「何水臭いこと言ってるんですか。俺たちも行きますよ」

 

伊藤は後ろを見ると同じ格好をした上丘とブレイド2、3がいた。伊藤たちが装備しているのは統合軍で開発したバトルスーツを身につけていた。このバトルスーツはカーボンナノチューブを繊維状に織った素材を使用しており鋼以上の強度を持ちながら空気より少し重いぐらいの重量しかない。機能としては高機動スラスターが装備されているため通常よりも早く移動できる。また、対小型種用に近接武器やシールドが装備されている。(見た目はVANQUISHと同じです)

 

2人1組に分かれ警戒にあたった。

 

伊藤「さっきから嫌な感じがしてな。止められればいいが最悪死人が出るぞ」

 

「少佐の予想は殆ど当たりますからね」

 

上丘から緊急通信が入った。

 

上丘「兵士級を数体視認。これより攻撃する」

 

伊藤「セイバー1了解。ブレイド2行くぞ」

 

「了解」

 

伊藤はスラスターを使い現場へ急行した。

 

「ブレイド3よりセイバー1へ、1体逃しました」

 

伊藤「了解」

 

「少佐、前方に人影!2名います!」

 

伊藤「ブレイド2、あいつらを保護しろ!」

 

伊藤は装備していた銃で兵士級を撃とうと思ったが射線を確保出来なかった。

 

伊藤「クソ!射線を確保出来ない」

 

伊藤はバトルスーツに備わっている拡声器を使い大声で叫んだ。

 

伊藤「伏せろ!」

 

2名が伏せた瞬間、引き金を引いた。全弾が命中した。兵士級の後方からも上丘が弾丸を浴びせていた。数十発を浴びせると兵士級は絶命した。

伊藤はブレイド2の元へと向かった。

 

伊藤「大丈夫ですか⁉︎」

 

2人は何が何だか分からないようだったが後ろにあった兵士級の死骸を見ると現状を理解したようだった。

 

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