Muv-Luv〜wing of white steel〜 作:lancer008
第六十九話
休みも終わり通常の業務が行われる中、黒鉄は自室である者と連絡を取っていた。
黒鉄「お久しぶりです沙霧大尉」
沙霧「黒鉄中佐、今回は何の要件で?」
黒鉄「近々、ハイヴ攻略作戦がある事は各部隊長への通達でわかっていると思います。それに伴って月面基地と部隊の現状を教えてくれませんか?」
沙霧「月面基地は先日、アクロススカイ専用ドックと各艦船用ドックが完成しました。ラー・カイラム級2隻は22日に竣工予定で、28日に月面基地に配備されます。部隊に関しましては第1、第2降下団ともにいつでも出撃可能です」
沙霧はクーデター事件後、軍事裁判で極刑が確定していたが一部の軍人の働きにより秘密裏に統合軍へと入隊した。現在は統合軍軌道降下団に所属している。統合軍軌道降下団はデルタ大隊同様、大規模作戦時の強襲降下、他部隊の支援などを主な任務としている。
黒鉄「了解した。作戦発令まで衛士、機体を万全にして下さい」
沙霧「一つ報告したい事があります」
黒鉄「何だ?」
沙霧「近頃、BETAによる攻撃が頻発しています」
黒鉄「攻撃というと?」
沙霧「隕石による攻撃です。まあ、自動砲台の迎撃でことなきを得ていますが」
黒鉄は少し考え、
黒鉄「念のため、調査班を出して下さい」
沙霧「わかりました」
黒鉄は通信を切った。
黒鉄は港の方へと向かった。
そこには既に出港してる筈のアクロススカイが停泊していた。理由は物資の搬入ミスであった。今回は、月面基地への物資輸送があったが何らかの手違いでケーニッヒ用の弾薬を積んでしまっていた為である。
黒鉄「もうどのくらいで出港できる?」
「もう半日てところですかね」
黒鉄「出港は明日か」
黒鉄は基地司令室へと向かいアクロススカイの出港は明日という事を伝え、自分の部屋へ戻り書類の整理を行った。
一方、伊藤は他部隊との連携確認や艦艇部隊との打ち合わせを行っていた。
伊藤「ではアルファ大隊全機は、翔鶴に搭載します。他、空母に関しましてはブラボー大隊が乗艦します。艦隊の編成に関しては帝国海軍と調整し決めます」
「了解しました」
伊藤「アルファ大隊、全小隊長へ連絡する。全機にスーパーパックの使用を許可する。作戦発令までの間、特に新兵を中心に飛行訓練を始めろ」
坂井「わかりました。低高度ですよね?」
伊藤「勿論」
坂井「了解です」
白月「指揮官機に対してのアーマードパックは?」
伊藤「許可はするが今回は光線級の数が多い、場合によっては各自の判断に任せる。他には?」
坂井は周りを見渡し、
坂井「無し」
会議は終了した。
伊藤は座ったまま深い溜息をついた。
伊藤「(このままあいつらを出していいのか?この作戦に全員生還は有り得ない。光線吶喊もたった8機では限界がある。どうすれば)」
坂井「どうしたんですか溜息なんかついて?」
白月「隊長が作戦前にそんな顔してたら駄目ですよ」
伊藤「お前らまだいたのか?」
坂井「ええ、いましたよ」
伊藤「そうか。そんなに酷い顔だったか?」
白月「そうですね。新兵が見れば確実に士気を落としますね」
伊藤「2人とも覚悟は出来てるか?今回の作戦は…………」
坂井「言わなくても分かってます」
白月「全員覚悟は出来ています」
伊藤「そうだな」
黒鉄が執務室で書類の整理を行っていると上総が入ってきた。
黒鉄「どうした?」
上総「少し寄っただけよ」
上総は椅子に座り書類を読みだした。部屋の中にはペンで書く音と紙がめくれる音が響きわたる。
上総「黒鉄、今回の作戦の被害率はどのくらいになる見込み?」
黒鉄「……………。3分の1位だと思うよ多分な」
上総「そう」
黒鉄は時間を確認し月に向けて回線を繋げようとしたが繋がらなかった。もう一度、繋げようとしたが結果は同じだだった。
上総「どうしたの?」
黒鉄「月面基地に回線が繋がらない」
その時、基地中に警報がなった。
黒鉄と上総は作戦指令室へ急ぎ向かった。指令室内は混乱していた。
黒鉄「どうした⁉︎」
「月面基地より救援信号です。BETAの攻撃を受けてる模様!」
黒鉄「映像出せるか!」
正面の大型モニターに月面基地が映った。至る所で戦闘が発生していた。基地を守るように配置されていた砲台は跡形もなく消えていた。
「月面基地より通信です!」
「月面基地司令は戦死、既に基地の半分が占領されました。戦闘中の戦術機部隊から新種のBETAも確認されました。ラー・カイラム級は……………」
映像が途切れた。
映像を見る限り月面基地は絶望的だった。
司令「デルタ大隊に緊急出撃命令、同じく"WOWS"にも出撃命令を出す。すぐに向かってくれ」
黒鉄・上総「了解!」
司令「基地にいる全衛士に待機命令。最悪の場合に備えてアルファ大隊にも出撃の用意を」
アクロススカイ艦橋
「乗員全員揃いました」
「"WOWS"、搭載完了」
「出港準備完了。艦長いつでも行けます」
艦長「アクロススカイ、出港!微速前進」
「微速前進」
艦がゆっくりと動き出した。
艦長「大気圏離脱後、フォールド開始」
「了解」
ブリーフィングルーム
上総「全員いるわね。約一時間前、月面基地より救援要請が入ったわ。現在の状況は不明、通信も繋がらない状況だ」
進藤「BETAの規模は?」
上総「不明だ。ただし新種がいるとの報告を受けている」
狭間「それは前回の戦闘で出てきた母艦級ではなくてですか?」
黒鉄「それは無い。別の何かだ」
狭間「言い切れる理由は?」
黒鉄「月面基地からの報告で近頃、隕石による攻撃が多いという報告を受けている。その隕石に小型種が張り付いていた可能性が高い。現に映像を見る限り基地外部にはBETAが映っていない。」
進藤「中佐、自分は光線級の新種と考えているのですが」
狭間「おいおい、基地がある場所は宇宙だぞ。それは考えられないだろう」
進藤「既に俺たちはBETAに対し宇宙でも戦えるとアピールした。その対策として新種の光線級が出てきてもおかしくないと思います」
ブリーフィングをしていると館内アナウンスが鳴りフォールドを開始した。
月から約10000の距離にデフォールドした。
デフォールドと同時に全衛士は自身の機体に向かい機体の調整を始めた
黒鉄はそんな中、艦橋にいた。
前方のモニターに月面基地が映しだされていた。黒鉄はモニターを見て気になったところがあり、ズームしてみると何かが浮かんでいた。
黒鉄は厳しい顔をし元に戻してみるとさっきまでなにも無かったところに何かが映っていた。その数は一つや二つでなかった。次々と至る所ところに出現し始めた。
黒鉄や映像を見ていた全員が確信した。新種のBETAは飛んでいると。