Muv-Luv〜wing of white steel〜 作:lancer008
「なんだこの数は⁉︎」
「くっ、被弾した!誰か援…………。」
「4-3⁉︎」
白月「こちら4-1からセイバー1へ、第2中隊被害甚大。一時帰投命令を!」
伊藤「輸送艦が出張ってきているそっちに合流しろ!第1中隊、被害状況知らせろ!」
坂井「第1小隊、損害軽微。第2小隊、撃墜1。」
伊藤「一時離脱だ!第1中隊、殿をするぞ。こちらに光線級を釘付けにしろ!」
「「「了解!」」」
佐渡島、洋上80キロ地点
輸送艦「雨霧」「霜月」
アルファ大隊の緊急発進に伴い、舞鶴港より帝国海軍所属の駆逐艦と輸送艦計4隻が緊急出港した。現在、統合軍艦隊は広島県呉港を経由し京都府舞鶴港にて補給を受けている。統合軍艦隊が到着するまでの間、洋上補給艦として留まり続けている。
「帰ってくるぞ!全員準備しろ!」
「今回は一段と少なくなりましたね。艦長。」
「それだけ攻撃が激しいのだろう。」
甲板にいた1人の船員が叫んだ。
「落ちるぞ!」
1機のナイトメアが洋上に不時着した。直ぐさま小型艇が近づき衛士を救助したが既に死んでいた。
しばらく経ってから伊藤達セイバー隊と第1中隊が輸送艦に合流し補給作業に入った。第1中隊にも相当な被害が出たらしく三分の一が戻らなかった。
伊藤「坂井、白月、乾、被害状況を確認したら俺のとこまでこい。」
「「「了解!」」」
伊藤「(まさか、あれ程とはな。)」
伊藤は自身の予想を遥かに超える光線級の数に驚いていた。加えて翼を持つ新種の対空迎撃、今まで対地戦闘を主に訓練してきたナイトメア隊にとっても今回の戦闘は熾烈を極めた。
伊藤は1人後部デッキで考えごとをしていた。
伊藤「(3つの目標の内、2つは破壊した。残るは1つ、BETA側も全力で守ってくるだろうな。今作戦はデルタの参加はほぼ無理。要だった軌道降下団は壊滅。残された選択肢は横浜の奴らに託すしかないか。)」
坂井「伊藤少佐、被害状況ですが簡単に申しますと1個中隊が全滅しました。特に酷いのは第2中隊です。原因は…。」
伊藤「原因は、攻撃地点への突撃か。」
坂井「はい。地上からの多数の光線級による攻撃、今まで類を見ない数でした。」
伊藤「白月は大丈夫か?」
坂井「今のところは何とかです。ただ作戦終了後どうなるかはわかりません。心身に部下の死を受け止めこれからも戦っていくか、精神に異常をきたすかです。念の為、自分を除いて全員を休ませています。」
伊藤「乾の方は大丈夫か?まだ中隊長になってから10時間程だ。」
坂井「白月と同様ですね。ただ注意が必要です。実戦はこれまで何度もやってきたので覚悟は出来ていると思いますが、中隊長という役に何処まで耐えられるか。」
伊藤「もしもの時は俺が何とかする。お前も休め、次の攻撃が作戦前の最後の攻撃だ。」
坂井「了解です。では後ほど。」
その場を去ろうとした時、
伊藤「坂井!必ず生きてかえるぞ。」
坂井「了解です。」
その頃、上丘は自身の戦術機を運搬する輸送艦に乗艦していた。最初は割り当てられた船室で休んでいたが眠れなかった為、デッキにて外の空気を吸っていた。
急に咳込み始め、口を手で覆った。視線を手の平に移すと血がついていた。少し考えごとをしながら眺めていると後ろから気配を感じ振り返った。そこにいたのは伊隅大尉だった。
伊隅「上丘大尉、その血は?」
上丘「貴方には話しといた方が良いかもしれないな。多分、この作戦が衛士として最後の戦いになる。」
伊隅「いつからだ?」
上丘「クーデターでの戦闘中からだ。」
伊隅「何故、その事を今まで報告しなかった?」
上丘「報告したとしても何も変わらないだろう。それに生きてる限り衛士として戦いたいからだ。死んでいった部下や仲間の分まで。」
伊隅「家族には相談しなかったのか?」
上丘「BETAが日本に上陸した時に避難が間に合わなくてな全員死んだよ。許嫁もいたんだがな、防衛戦で乱戦になって気付いた時には既に遅かったよ。今も聞こえるんだ彼女の悲鳴が。」
伊隅「すまない、上丘大尉。」
上丘「いや、いいんだ。忘れることが1番怖いからな。その前に伊隅大尉、部下がいない時は階級抜きで話しませんか。どうも昔からお堅いのは嫌いでね。」
伊隅「わかりました。元ブレイド隊のメンバーは知ってるんですか?」
上丘「とっくの昔に知ってる。それにあいつらも俺と同じだ。長くは持たない。」
伊隅「それでは…………。」
上丘「今作戦が最後だ。これは俺たちだけに言えることじゃない。この隊でその危険性があるのは白銀だ。あいつの機動は俺たち以上だ。まだ機体のリミッターが解除されてないからいいが、もし解除された場合、良くて衛士として二度と戦えない、悪くて死だ。」
静寂な時間が流れた。
上丘「もし可能なら……………。いや、そんな気を使う必要はないな。話が出来て良かったよ。」
上丘は自室へ戻っていった。
上丘が自室に戻った頃、アルファチームは第2次攻撃の為、佐渡へと向かっていた。攻撃部隊は第1部隊、ナイトメア第1、第2である。第3は輸送艦とともに舞鶴港へと向かった。ナイトメア第1と第2は機体数が合わないため合同編成で出撃している。
伊藤「全機、海面から5m地点を飛行せよ。光線級に注意。」
「「「了解。」」」
伊藤「ナイトメア全機へ佐渡島から10000の地点で全ミサイル発射。発射後、現空域を離脱、統合軍艦隊へ。セイバー各機、ナイトメア隊のミサイル発射と同時に高高度まで急上昇その後、急降下からの攻撃で仕留める。チャンスは一度きりだ必ず仕留めるぞ。」
「「「了解!」」」
坂井「少佐、遺言とかありますか?」
伊藤「お前な縁起が悪いこと言うんじゃねえよ。」
白月「言っといた方がいいんじゃないんですか。付き合っている方もいらっしゃると聞いていますが?」
伊藤「白月、お前もか。その情報の出所は?」
白月「皆んな知ってますよ。」
伊藤は深い溜息をついた。
坂井と白月はナイトメア隊創設時からのメンバーである。伊藤がユーコンに派遣されていた頃、第2部隊に所属し伊藤たち第1部隊が戻るまでの間、本土防衛にあたってきた。
白月「佐渡島まで残り2000。」
坂井「全機攻撃準備、マスターアームスイッチオン。」
伊藤「ナイトメア全機へ、生きて会おう。」
セイバー隊は垂直に上昇を開始した。続けてナイトメア隊はミサイルを発射し、発射し終えた機体から離脱を開始した。
「高度10000に到達。」
「今のところ、光線級の攻撃は全てミサイルに向かっています。」
伊藤「光線級の数は?」
「第1次攻撃と変わらず、主に海岸部に多くいます。」
伊藤「新種は変わらずか。全機突入体勢、俺が囮になり光線級と新種の気を引きつける。その間に目標地点に向け全力攻撃せよ。」
「「「了解!」」」
突入を開始した。
伊藤は先行し光線級と新種の気を引きつけはじめた。ほぼ全ての方向から光線が飛び、微かながら光線を受けたが損傷は微々たるものだった。
伊藤「(これだけの攻撃は久し振りだな。あの大戦以来か。)」
「射程に入りました!これより………。」
伊藤「まだだ。確実に命中する距離まで待て!」
伊藤は光線級の攻撃を避けながらも度々、トリガーを引いた。伊藤は命を懸けるこの状況に心を躍らせていた。この世界に来て初めての高機動戦、今までも何度か光線級の攻撃を避けてきたが前の世界の様な機動戦は無かった。
伊藤「(初めてだな。戦闘を楽しいと思ったのは。)今だ!撃て!」
「セイバー2、FOX2。」
「セイバー3、FOX2。」
「セイバー4、FOX2。」
搭載していた全てのミサイルを発射した。伊藤も同じくミサイルを光線級と新種に向けて放った。放たれた多数のミサイルは真っ直ぐ目標に向け突き進み命中した。伊藤はこれでもかと言わんばかりに重量子ビームを放った。
伊藤「全機、散開!離脱しろ!」
「「「了解!」」」
地面すれすれで機首を引き起こしガウォーク形態で空中に一瞬停止しすぐにファイター形態になり離脱した。
伊藤「全機いるな、帰るぞ。こちらセイバー1、RTB。」
伊藤たちセイバー隊は統合軍艦隊の元へと向かった。
しばらく飛行していると先に離脱したナイトメア第1、第2中隊と遭遇した。
白月「少佐………、聞くまでもないですね。お疲れ様です。」
坂井「これでまた一緒に酒が飲めます。遺言、聞かなくて正解でしたね。」
伊藤「無事に佐渡島での作戦も終わったら全員で飲みに行こう。俺の奢りでな。」
坂井「了解です。全員聞いたな⁈」
「はい!」
そんな話をしていると乾から伊藤の元に連絡が入った。内容は重傷者の容態が急変したため、輸送艦を残し先に統合軍艦隊がいる舞鶴港へと戻るとのことだった。伊藤はそれを承諾し、伊藤らも急ぎ乾たちを追いかけた。
伊藤「(こっちは終わったぞ。次はお前らの番だ黒鉄。」
黒鉄「んなこと、分かってるわ!あいつ自分がニュータイプてことを忘れたのか⁉︎」
「デルタ1より各隊へ、アルファチームより目標は破壊。繰り返す目標は破壊、以上。」
黒鉄「全機聞いたな!これ以上、増援はこない。眼下に見えているのを殲滅すれば俺たちの勝ちだ!その前に全機、今すぐに最終防衛ラインまで移動、損傷している機体は放棄しろ。進藤、小破の機体でスラスターに損傷を負ってない機体は殿に着かせろ。それ以外は今すぐ移動だ!」
進藤「了解!葛木、そっちは戦闘が出来る機体はあるか⁉︎」
葛木「ありません!殆どの機体が中破以上です。」
進藤「ファング1-1からファング第1全機へ、部隊がある程度撤退するまで殿をする。全機、残弾を教えろ!」
「ファング1-2、残り3マグ、バルカン150、サーベル1。」
「ファング1-3、残り0マグ、バルカン80、サーベル2。」
「ファング1-4、残り1マグ、バルカン0、サーベル0。」
進藤「(きつ過ぎる。これではまともに戦闘をする事も…………。)」
黒鉄「進藤!戦闘を継続できる時間は⁉︎」
進藤「もって10分!」
黒鉄「7分で撤退だ!ランサー1からデルタ1へ今から8分後、現地点に全力攻撃を要請、アーチャー隊は撤退の援護を!」
「デルタ1、了解しました。」
上総「アーチャー1、了解。」
黒鉄「ランサー全機、奴らを止めるぞ!」
「「「了解!」」」
黒鉄の眼には真っ赤な地表が見えていた。今までの戦闘で見た事もない数の戦車級が一種の波となって黒鉄たちのもとへ迫ってきていた。ビーム兵器を使い攻撃をするがほんの少し波の力を削り落とすだけで進軍速度が落ちる事は無かった。
黒鉄「進藤!先に撤退しろ!このままだとお前たちは完全に飲み込まれる。撤退しろ!」
進藤「了解!ファング全機、全力で撤退するぞ!」
「「「了解!」」」
ファング隊は後退を開始した。デルタ1の全力攻撃まで残り2分となっていた。黒鉄はここからの戦闘をどうするか悩んでいた。ランサー2以下を今すぐ戻し換装させて再出撃させるか、少し約束を破って無理をするか。
黒鉄は部下からの通信が届く中、覚悟を決めた。
黒鉄「ランサー2以下は今すぐデルタ1に戻り、ディフェンサーbユニットを付け最終防衛ラインより攻撃を開始。俺はn_i_t_r_oを使って敵を抑え込む。」
「隊長、それは⁉︎」
黒鉄「大丈夫だ。3分ほど使うだけだ死にはしないよ。」
「わかりました。ご武運を。」
ランサー2以下の機体はウェイブライダー形態になりデルタ1に戻っていった。
黒鉄「行くぞクソ野郎ども。n_i_t_r_o起動!」
機体は蒼い炎に包まれた。