Muv-Luv〜wing of white steel〜   作:lancer008

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横浜基地防衛戦
第七十九話


第七十九話

 

12月29日

 

甲21号作戦から4日後、統合軍基地ではやっと全機体の整備が終わり通常業務に戻っていた。

本来ならば先日行われた作戦の勝利を祝ってほとんどの者が休暇を取り、年末なので実家へ帰るなり、街で遊ぶなどをする筈だったが戦闘による各部隊のダメージが多く、整備員は徹夜で各機体の修理を行い、衛士はある程度の休息をとったのち新しいシミュレーションデータを使い訓練を行っていた。

 

そんな中、ある執務室で机に伏している者がいた。

 

「隊長、休んできた方がいいんじゃないんですか?」

 

黒鉄「いや、大丈夫だ。これを終わらせない事には何も出来ない。」

 

黒鉄の机には大量の書類が山となっていた。部下たちも交代で手伝っていたが減る気配もなく増えていくばかりだった。その理由は、

 

上総「黒鉄、追加の書類お願いね。」

 

上総は100枚以上もある書類を黒鉄の机の上に置き退室し入れ替わりに伊藤が入ってきた。

 

伊藤「黒鉄、どこ置けばいい?」

 

黒鉄「そこら辺に置いといてくれ。」

 

「伊藤少佐、少しは自分でやって下さいよ。」

 

伊藤「自分で出来るのはやってるよ。ただ反応弾などの特殊兵装は黒鉄の管轄だから俺には無理だよ。」

 

黒鉄「伊藤、訓練の方はどうなってる?」

 

伊藤「まずまずてところだ。まあ訓練よりも今すぐ休ませろと言いたいところだがな。」

 

黒鉄「午後から休みだろう。」

 

伊藤「どこぞのブラック企業じゃねえんだからせめて全員に2日間の休暇をくれよ。」

 

黒鉄「無理言うな。ただでさえ先日の戦闘による損失が多いんだ。俺だって出来れば休みたいよ。」

 

「まあまあ、ここで喧嘩しなくても。」

 

黒鉄「わかった。なら今から休み、これでどうだ?」

 

伊藤「いきなりどうした?」

 

黒鉄「全員のストレスもピークだろう。こんな時に訓練やっても無意味だ!」

 

伊藤「わかった。じゃあ皆に言っておくぞ。」

 

黒鉄「ただし23:00までには戻って来ること以上。」

 

伊藤「了解。」

 

伊藤はその後、放送にて休みと門限を伝達した。その数分後、統合軍基地にいたほとんどの者が外出し残っているのは事務処理に追われている一部の幹部と警備兵だけとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日付けも変わった深夜2時過ぎ、基地中にけたたましいサイレンが鳴り響いた。

 

「第一種戦闘配置、繰り返す第一種戦闘配置!」

 

基地内にて寝ていた者はすぐに飛び起き身支度を済ませたのち各自の配置場所へと向かった。

格納庫内では怒号が響き渡った。

 

「衛士は今すぐ搭乗しろ!第1から第3戦術機甲大隊は全機グランドパック装備!」

 

「準備が完了した機体から滑走路前で待機!01式輸送機も全部出せ!」

 

アクロススカイでも同じ事が起きていた。ほぼ全ての人員が基地内待機だった為、動員もさほど時間が掛からず進んだ。

 

「ナイトメアから上に上げろ!ジェスタはその後だ!」

 

「馬鹿野郎!イージスが先だ!イージス隊発艦準備急げ!」

 

「護衛機は⁉︎」

 

「イージス1機に付き2機です!各中隊から3機ずつ出ます!」

 

全衛士が搭乗し終わると、全ての部隊に対し黒鉄からの通信が入った。

 

黒鉄「時間が無いから手短に話す。先程、BETAによる大深度地下侵攻が確認された。BETAの予想出現場所は旧町田市一帯、数は不明。目標は国連軍横浜基地にある反応炉とみられる。現在、国連軍は戦術機甲2個大隊からなる防衛戦を3つ配備、横浜基地第1滑走路には砲撃支援としてMLRSが配備された。帝国軍は先の戦闘により戦力が回復していない為、MLRS部隊と連合艦隊第1戦隊からなる砲撃支援部隊を向かわせた。我々は敵の動向を確認次第、出撃する。尚、艦艇部隊については連合艦隊第1戦隊と合流、砲撃準備に入っている。質問がある者は各隊長に通してからするよう以上。」

 

黒鉄は通信が終わると機体の点検を始めた。そしてすぐに伊藤から全機に向けて通信が入った。

 

伊藤「イージス隊から緊急連絡だ。BETA旧町田市一帯に出現。数は3万、構成は突撃級、要撃級、戦車級、要塞級、光線級だ。第1戦隊と艦艇部隊は出現と同時に砲撃を開始した。」

 

黒鉄「第1、第3戦術機甲大隊、アクロススカイ搭載MS部隊は帝国軍の応援へ。第2戦術機甲大隊、戦術航空団第1、第2部隊、 特殊任務部隊は国連軍横浜基地へ。アクロススカイは全部隊への砲撃支援が出来る場所へと移動を。」

 

「「「「了解!」」」」

 

全部隊は出撃を開始した。

 

 

 

 

 

移動中

 

伊藤「黒鉄、今回の襲撃、嫌な感じがするのは俺だけか?」

 

黒鉄「俺もだよ。最悪の場合、横浜基地内での戦闘も覚悟しておかないとな。」

 

伊藤「そう………。」

 

突然、イージス隊から全部隊に対し緊急通信が入った。

 

「イージス2より全部隊へ、BETAの一部が第2防衛戦に出現、現在交戦中!」

 

全員に衝撃が走った。BETAが囮を使っての奇襲攻撃を仕掛けてきたからだ。

 

「国連軍より緊急通信!第1、第2防衛戦を破棄、第3防衛戦にて迎え撃つとのことです。」

 

黒鉄「ランサー1からセイバー1へ、先に行って迎撃にあたれ!最悪の場合、横浜基地が陥落するぞ!」

 

伊藤「了解!」

 

戦術航空団は黒鉄達と速度を合わせて横浜基地に向かっていた。

理由は、戦術機甲大隊は全機グランドパックを装備していた為、01式MS輸送機を使い移動していたからだ。

 

倉間「イージス1から統合軍全機へ、BETAが第1滑走路に出現、機甲部隊がやられています。続けて第2滑走路にも出現!」

 

黒鉄「ランサー1からセイバー1 へ、目標到着までどのくらいだ。」

 

伊藤「もう3分、到着と同時にマイクロ・ミサイルによる面制圧を開始する。セイバー1から全機へ、攻撃用意!」

 

射程に入った。

 

伊藤「全機、発射!」

 

多数のマイクロミサイルがBETAに向かっていき命中した。

 

伊藤「全機、散開!各個に撃破せよ!」

 

「「「了解!」」」

 

遅れて黒鉄率いる特殊任務部隊と第2戦術機甲大隊が到着した。

 

黒鉄「ランサー1より国連軍横浜基地司令部へ只今、現着した。これより防衛に…………。」

 

「HQよりランサー1へ、今すぐ施設内に侵入し迎撃にあたって下さい。現在、Bゲートが突破され多数のBETAが侵入、第5、第7戦術機甲大隊がメインシャフト前で迎撃にあたっていますが既に突破され反応炉と凄乃皇に向けて侵攻中です。」

 

黒鉄「了解した。これより移動する。凄乃皇の防衛はどうなっている⁉︎」

 

「斯衛軍第19独立警備小隊隊長月詠中尉が指揮を執り90番格納庫にて交戦中です。速瀬中尉、白銀少尉、両名は反応炉確保の為、現在最下層に向けて移動中です。」

 

黒鉄「ランサー1からHQへ、シャフトCゲート付近に残存している第5、第7戦術機甲大隊を移動させろ。後、Bゲートを破壊するから今すぐシャフトCゲートに移動させろ!」

 

「HQ、了解。すぐに移動させます。」

 

黒鉄「ナイトメア第1、第2は施設外にて交戦しBETAの侵入を少しでもいいから抑えろ!ウォードック第2、スピア第1は国連軍戦術機甲大隊と合流後、攻撃を開始、Cゲートだけでも守り抜け!ランサー隊、セイバー隊、ウォードック第1は俺と共にシャフトを降下し90番格納庫に向かう!」

 

「「「「了解!」」」」

 

黒鉄「ランサー1からHQへ、これより施設内へ侵入する!」

 

黒鉄達はBゲートから侵入後、付近にいるBETAを殲滅しながらシャフトCゲート付近まで移動した。その際、Bゲートに向けて多数のビーム攻撃を行い粉砕した。

シャフトCゲートに到達すると第5、第7戦術機甲大隊の残存機合わせて14機がBETAと交戦していた。

 

黒鉄「(少ないな……。それでも)ウォードック2-1、スピア1-1頼んだぞ!」

 

緒方「了解!」

 

スピア隊隊長緒方がシャフトCゲート防衛の指揮をする事になった。

 

黒鉄「これよりメインシャフトに侵入する!全機離れるな!」

 

「「「「了解!」」」」

 

 


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