Muv-Luv〜wing of white steel〜   作:lancer008

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第八十二話

「敵の数、尚も増大!」

 

「ハイヴ付近から多数の光線属種が出現!」

 

「ランサー隊に伝えろ!第2次降下部隊はどうなった⁉︎」

 

「半数がやられました!」

 

艦長は拳を振り上げ椅子の手すりに振り下ろした。

 

「一体どうなっているんだ!」

 

 

 

遡ること約1時間前

 

作戦はフェイズ2へと移行し、デルタ1が率いる第1次降下作戦部隊は地球へと降下した。

だが、当初の予想よりも光線属種が多く、デルタ1は集中砲火を受けてしまった。そんな中、何とかランサー隊を出撃させることに成功し、光線属種の攻撃を減少させることにも成功した。

その後、デルタ1は高度50メートルで静止し搭載していた全部隊を出撃させ、“SW115”の確保、その防衛にあたった。

 

 

 

 

そして現在、BETAの攻撃は激しさを増し、降下中だった第2次降下作戦部隊が集中的に狙われた。この攻撃で部隊の8割が撃墜され、当初の目標だった“い号標的”の破壊は断念されデルタ1との合流を余儀無くされた。

 

デルタ1艦橋では各部隊の情報などが止まる事なく上がってきていた。

 

「艦載砲とミサイルは光線属種に対して攻撃し続けろ!デストロイド隊は対地攻撃に専念、地上部隊の援護、艦の防衛を行え!一体足りとも取り付かせるな!」

 

「アックス隊、バイパー隊、補給の為、一時帰投します。」

 

「アックス隊から補給を開始しろ!」

 

「他の隊は?」

 

「統合軍、損耗率20%。国連軍、損耗率50%を超えました。」

 

「米軍は?」

 

「損耗率、50%です。現在、補給作業中。」

 

「完了次第、国連軍と合同で防衛戦にあたらせろ!補給物資の状況は?」

 

「何とか撃墜されずに本艦後方に降下しています。現在、デストロイド隊20機が護衛中です。」

 

「総司令部から通信!フェイズ3開始です!」

 

「全連装ビーム砲、射程内にいる全要塞級に対し攻撃始め、続けて光線属種予想出撃地点に対しミサイル並びにモンスター隊による面制圧を開始しろ!」

 

「了解!」

 

デルタ1から撃たれたビームは外れる事無く要塞級に命中した。何故、このタイミングで要塞級を倒さなければならなかった訳は、要塞級は体内に光線級を搭載できる事が判明していたからだ。横浜基地防衛の際にも要塞級が光線級を運搬し光線級を使って隔壁を破壊するといった事案があったからだ。

 

 

 

「ランサー隊に此方の攻撃に巻き込まれるなと伝えろ!」

 

「了解。」

 

黒鉄「ランサー1、了解!ランサー3、隊列を乱すな!」

 

「りょ、了解!」

 

黒鉄「ランサー2、3、4。ハイヴ左側を殲滅しろ。こっちは右側をやる。」

 

「「「了解!」」」

 

光線属種の周りには多数の戦車級と要塞級がいた。

 

黒鉄「邪魔だ!!」

 

黒鉄はプロトファンネルを使い、光線属種諸共殲滅した。続けて数百メートル先にいる集団に向けてロングメガバスターを数発撃ち込んだ。

 

黒鉄「ランサー1からランサー2へ、目標殲滅をした。そっちはどうなっている⁉︎」

 

「もう終ります!レーダーコンタクト、第3次降下部隊を確認!」

 

黒鉄「ランサー各機へ、正念場だ!一体でも多くの光線属種を殲滅しろ!人類の希望を地上に降ろせ!」

 

「「「了解!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦術航空団はA-01とともに降下し、その後方から凄乃皇も続いた。

 

伊藤「全機、大気圏突破と同時に回避行動を取れ。セイバー隊は光線吶喊、ナイトメア第1は陽動部隊の支援、第2はA-01と“剣”の援護を。降下後の指揮は坂井が引き継ぐ。」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

大気圏突破から数秒後、光線属種からの攻撃が始まった。幾ら地上でランサー隊とデルタ1が光線属種の掃討を行なっていようとBETAはその掃討を掻い潜り光線属種を戦場に出現させていた。

 

伊藤「セイバー1からランサー1へ、これより光線属種への攻撃を開始する。」

 

黒鉄「駄目だ!今すぐデルタ1に行き、反応弾を搭載しろ!」

 

黒鉄は伊藤が反論をする前に続けて言った。

 

黒鉄「光線属種に関しては予想されていた数よりも多く殲滅した。だが、他の属種に関しては全然だ!地上に出現した数が予想よりも少ない!一体どれだけの数がハイヴ内に残っているか見当がつかない!」

 

伊藤「了解した。ならここは任せたぞ。」

 

黒鉄「ああ。」

 

黒鉄と伊藤は降下が始まる前、ある取り決めをしていた。もしBETAの出現数が予想よりも少ない場合は反応弾を搭載しハイヴ内部に突入すると。

普通に考えればハイヴ内部は地上と違い機体の特性を活かした高機動な戦闘が制限される。そして反応弾を搭載すれば益々機体の重量が増え機体の動きが遅くなる他、衛士に対しての負担も大きくなる。

だが、空間が限られているからこそハイヴ内部での反応弾による攻撃は地上に比べてその効果を絶大に発揮する。開けていない場所で使用する為、敵は密集しがちになり殲滅量も増える。伊藤はデメリットの方が大きいと理解しながらもその取り決めを了承した。

 

 

伊藤「セイバー1からセイバー各機へ、これよりデルタ1に着艦し反応弾を搭載する。」

 

「ですが隊長、反応弾を搭載すればハイヴ内での我々の動きは制限されます。」

 

伊藤「それは俺も分かっている。だが敵の数が予想よりも少ない。最悪の場合、ハイヴ内でBETAが津波のように襲いかかってくるぞ。」

 

「その為の反応弾ですか……、了解です。」

 

伊藤「セイバー1からデルタ1へ、反応弾搭載の為、着艦を許可を願う。」

 

「着艦を許可します。但し、攻撃の手は緩めません。」

 

伊藤「了解!全機、聞いたな。味方の攻撃に当たるなよ!」

 

「「「了解!」」」

 

セイバー隊はデルタ1に着艦し反応弾の搭載を開始した。

 

その頃、A-01と凄乃皇は無事に地上に降下し“SW115”に向けて進軍を開始した。共に降下してきた国連軍軌道降下兵団2個中隊も全機無事とはいかなかったもののA-01とともに進軍を開始した。

 

伊隅「ヴァルキリー1からデルタ1へ、状況は?」

 

「現在、地上に降下した全部隊が“SW115”周辺にて防衛線を展開、何とか死守しています。随伴予定のセイバー隊は現在、装備を換装中です。」

 

伊隅「了解しました。これより突入を開始します。」

 

「ご武運を。」

 

突入部隊は“あ号標的”に向かってハイヴ内に突入した。

 

「突入部隊、ハイヴ内に侵入を確認。」

 

「高度50メートルまで降下。降下後、負傷者の収容を開始せよ。セイバー隊は?」

 

「もうまもなく完了します。完了次第、順次発艦します。」

 

「ランサー1から緊急通信!」

 

黒鉄「BETAがハイヴ内部に戻り始めている!至急、モンスター隊による砲撃を要請する!」

 

「了解。モンスター隊に伝えます。」

 

艦長は意を決して黒鉄に言った。

 

「黒鉄中佐、此方が変形するまでの間、光線属種を誘導出来るか?」

 

黒鉄「出来ます。ですが強襲形態になった後は今よりも集中した攻撃をくらうことになります。」

 

「だが、それしか方法は無い。少しでもBETAの気を此方に引き付けるには。」

 

黒鉄「わかりました。」

 

黒鉄「ランサー1からランサー各機へ正面の光線属種に向け吶喊、他は相手にするな。」

 

「「「了解!」」」

 

黒鉄「ランサー1からアーチャー1へ、ランサー2、3、4への支援攻撃を頼む!」

 

上総「了解。但し、私しか出来ないからあんまり期待しないでよ。」

 

黒鉄「無いよりはいい。ランサー1からホワイトファング1へ、防衛線中央部に展開し電磁投射砲の発射態勢を整えろ。発射の合図は此方で出す。」

 

唯依「分かった。これより移動する。」

 

ここでデルタ1から全部隊に対し緊急通信が入った。

 

「これよりデルタ1は強襲形態に移行します。付近にいる部隊は退避して下さい。」

 

部隊の退避が終わるとデルタ1は強襲形態への移行を開始した。国連軍と米軍の中には驚きのあまりその場に止まり見惚れてしまう者もいたが各部隊長がすぐに戦闘に戻るよう怒鳴ったため、被害が出る事は無かった。

 

そしてデルタ1は、強襲形態になると主砲を構え発射態勢に入った。

 

「デルタ1からランサー隊全機へ、マクロスキャノンを発射します。今すぐ射線上より退避して下さい。」

 

「「「了解!」」」

 

「ランサー1、退避して下さい!」

 

黒鉄「了解!」

 

黒鉄はビームガトリングを使い全方向から近づいてくる戦車級に向けて撃ち射線上から退避した。

黒鉄が退避してから数秒後、マクロスキャノンが放たれ射線上にいたBETAは消し飛んだ。

 

黒鉄「ギリギリだったな。(弾薬が底をついたか。)ランサー1から各機へ、補給に戻るぞ。」

 

「「「了解!」」」

 


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