prologue
俺は桐ケ谷和人。今日で10歳になる。母親の翠は俺と妹の直葉に近くのスーパーまでお使いを頼まれたので、出かけている最中だ。
いつもの通りの信号を渡るとき、俺のいる後ろを向いて直葉が言った。
「お兄ちゃん。この信号を渡り終わったスーパーまで競争しよ?」
ちょうどその時、左側から大型トラックが信号無視って突っ込んでくるのが見えた。
即座に俺は直葉を突き飛ばして俺もよけようとするが、間に合わない。
そう思うと同時に直葉が信じられないという風に大きく口を開けて俺に何かを言おうとするが、何を言っているのか聞き取る前に体に何かがぶつかる感触がして俺の意識は途絶えた。
愛娘の直葉から連絡があって、私は仰天して病院へ向かう準備を整える。願わくば和人が無事であることを祈りながら。
「和人は無事なんでしょうか?」
「彼は生きています。しかし、左半身の傷がひどく、左目が完全につぶれている。また、今も昏倒状態です。これはあくまで可能性ですが、脳に大きな衝撃を受けたため、障害が残る可能性もあります。詳しいことは意識が覚醒してからでないとわからないです。」
「そんな・・・」
そうつぶやくので精一杯だった。
ベンチで待っているように言われたので、座ろうとした時に泣いている直葉の声がやってきた。
「お母さん。ごめんなさい。私がぁ私がぁ競争しようって言ったせいでお兄ちゃんがお兄ちゃんがぁぁぁわぁぁぁん」
しかし妙だ。和人は信号無視は絶対にしないし、直葉と話しているときでも、車が突っ込んでくるときには普通に気づくはずだ。まだあの子は10才だけれども、そういう周囲に気を配ることを怠らない性格だ。
「直葉、あなたのせいじゃないから安心しなさい」
というと、しばらくの間泣いたあと、精神的に疲れがたまったのか寝てしまった。
今の私には、和人が障害が残ることがないように、祈るだけだ。
その後、和人は左目が潰れて見えないこと以外は体には異常がなく退院することになった。
それから和人は片目が見えなくなったので、剣道をやめて電子工作とプログラミングの世界に入り浸るようになった。
そんなある日のことだった。
「ねえ、お母さん。俺の本当の両親について教えて?」
直葉が寝た後、私がくつろいでいるときに唐突に聞かれた。
「え・・・なんでそのことを・・・」
あまりにも慌ててしまったので嘘をつくことすら忘れて素直に答えた。
「ちょうどいい機会だから言うわ。和人、貴女は私の姉夫婦の子供よ。3歳のあなたを連れた私の姉夫婦は山奥で出血多量で死んでしまったの。でも、私は和人のことを息子としてみてきたしこれからもそうするつもりよ」
それに対して和人の反応は、そう・・・というだけで、すぐに寝室に行ってしまった。
そして、その日から、和人が私たちとどこか距離を置くようになった。
あけましておめでとうございます。これ書いたのは、2017の4月9日です(笑)
1日1話の予定です
続き期待してね~