俺たちは家に帰り、玄関を開けるとそこにはラルス父様が仁王立ちで立っていた。
オワタ……
俺たちは父様とメーティスに連れられ、リビングのソファーに座らされた。ちなみにミクルはもちろん立たされており、座っているのは俺だけだ。母様は父様の隣に座り、俺を心配そうにみていた。
「まだ、お前は幼いがなんで父さんが怒っているか分かるかカリス?」
「はい、いくつか心当たりがあります」
「そうか」
「ですが、全てが悪いことだとは思っていません」
俺は現在の年齢よりは上だが、幼い時にまだ物心ついてない妹を残して死んだ。だから、親子と言うものが分かりはしないが俺はいつかこういうのが来たら、思っている事や自分で正しいと思うことは正直に言おう。そう思っていた、遅かれ早かれいつかは来る頃だから今は思っていることを言うことにする。
「そうか、それじゃあお前は自分がしたことで何が悪いことだと思っているんだ?」
「勝手に母様の魔法の教本を読んでしまったこと、魔法が使えることを黙っていたこと、魔獣と戦い母様と父様を心配させてしまったことです」
「そうか、一応は分かっているようだな……」
「ですが、こういうと自惚れている様に聞こえるかもしれませんが、僕が行かず討伐隊の皆さんを待っていれば、少なくとも村民の皆さんの誰かは亡くなっていました。僕は僕自身がとった行動に自信をもってボティス家に恥じぬ行為だったと言い張ります!」
「そうか、カリスお前の気持ちはよく分かった。確かにお前の行った行動に間違いは無かったのかもしれないな、だが悪いことは悪いことだ。俺はお前に罰を与える、その前に昼食を取りなさいその後、お前に罰を与える良いな」
「はい!」
俺は返事をするとメーティスが昼食を持ってきた。もちろん俺の分もある、たぶん父様がどう応えるか俺がどんな風に言うのか分かっているかのようだ。怖いといよりもうすごいとしか言うしかないような気がする。
俺は昼食を食べ終わると、父様から罰が言い渡された。それは今日はもう部屋から出てはならないという事と、夕食は抜きという事だった。覚悟していた罰より軽かったことに驚いたが、はっきり言って何か暴力を振るわれるよりかはましだな。
時はたちその夜、俺はあまりにも日まで本を読んだり勉強をしていたりと、どうにか時間を潰していた。
「あ~、暇だ~おなか減った~……」
俺はやることが無くなると、さっきからそんな事を呟いていた。魔法の練習をしようにも水を使った練習は、今手元に無いから出来ない。魔力を使えば水を作ることは出来るが、あくまでもともと魔力だから思った通りのことが出来るため、練習にもなりはしない。魔力を体外に出さないようにする練習は、今では寝ながらでも出来ている。どうしてそんなことが分かるのかと言うと、母様たちが気づいていなかったからだ。気づいていれば何か言っているだろう。
「ご、ご主人様、暇潰しは出来ませんがお腹が減っているのであれば、私の食事をどうぞ!奴隷の食事なんて見素晴らしく、ご主人様には合わないと思いますがどうぞお食べください!」
ミクルはそう言って、自分の夕食である水とパン一個を俺に差し出してきた。
「いや、それはお前の夕食だ。気持ちだけ受け取っておくよ。それに、夕食を抜きにされたくらいで奴隷から飯を奪った、なんて父様に知られたら拳骨じゃすまないよ」
俺は笑いながらミクルの話を聞いているのだった。
*
時は数時間前に遡り、昼食後のこと。
―――ラルス視点―――
俺は昼食後のコーヒーを飲みながら頭を抱えていた。
「どうかしたんですかあなた?」
「どうしたもこうしたではないさ、カリスの事だ」
そう、俺が頭を抱えているのはカリスの事だ。メーティスの報告では、カリスは二種類の魔法を使いしかも無詠唱で魔法を発動させたとのことだ。
「何をそこまで悩むことがあるの?すごいことじゃない、無詠唱で多種類の魔法が使えるなんてそうそう居るもんじゃないわ!」
マルティネスは喜々とした表情でそう言った。どう見ても、どう聞いてもカリスを魔導士にする気だ。だが俺は、俺は……
「だが俺はカリスは魔導士にする気は無い!あいつは軍属の剣士になるんだ、昔あいつが生まれる前に男なら剣士、女なら魔導士と決めたんだ俺はそれを曲げる気は無い!」
「確かにそうですけど、あの子は魔法の才能があるわ!そんな子に魔法を教えないなんて宝の持ち腐れよ!」
俺たちはにらみ合いながら、カリスを魔導士にするか剣士にするか言い争っていると、メーティスが意見を言ってきた。
「それでは、カリス様ご自身に決定権を委ねるというのはどうでしょうか?」
「「それだ!」」
俺はしばらくしたらカリスを、ここに連れてくるようにとメーティスに伝えたのだった。
時は戻り
―――カリス視点―――
俺は暇つぶしにミクルと雑談していると、コンコンとノック音が鳴りドアを開けてみるとメーティスが立っていた。用件を聞くと、父様たちが呼んでいるとの事だった。俺はメーティスに連れられてリビングルームまで行くと、ソファーに父様と母様が座っていた。俺は二人と対面するようにソファーに座った。
「それで父様と母様は僕に何か……」
俺は少々おどおどしながら切り出した。俺の部屋は二階の一角だが、正直一階で何か話をされていてもさっぱ分からない。一体何の話だろうか、やはり昼間の発言は流石に生意気な発言だったか?
「カリスお前は…」
ゴクリ……
「お前は剣士と魔導士、将来どちらになりたい?」
はい?
えっと…剣士と魔導士それに将来?えっと……
「旦那様、それでは説明が足りないかと思います。カリス様もきちんと理解できてないようですし」
「ん?ああ、そうだな。カリス、お前にはどうやら魔法の才能があるようだ。だが、俺はお前をこの魔国一の剣士にしたい!だが」
「私は、貴方を魔導士にしたいわカリス。貴方は素晴らしい才能があるんですもの、それを無下にするのはもったいないわ!」
「「ムムム!」」
二人は睨み合い火花を散らしていた。
なるほどそういうことか。周りに友人とかそういうのが居ないから、まったく分からなかったが俺には魔法の才能があるのか…ミクルは奴隷だから、常識とか知らないしメーティスにだって見せたことはないから特に分かんなかったがそうなのかーシミジミ
そうなると、将来的に考えて俺の取るべき道は、
「僕は将来…魔導士になります!」
俺はそう宣言した。俺には魔法の才能がある、ならばそれを極限まで上げることがこれからの人生で生きていくために必要なことだと思ったからだ。
俺が宣言すると、母様は両手を挙げ喜び父様は肩を落とした。当然と言えば当然だが流石に魔法だけでやっていけるほど世の中甘くはないだろう。
「ですが、僕は父様の剣術を習いたいと思っています!」
さらに続けて宣言すると、父様と母様は驚いた顔をして顔を見合わせた。
「それは良いがカリス、物事を習う際に二つ以上の物事を習うという事は片方は必ず中途半端な習得しかできないという事だ」
「分かっています。ですが、魔法だけでは将来的にやっていけないと思うんです!」
母様は顎に手を当て父様は腕を組みしかめっ面をしていた。当然といえば当然かもしれない、少し前にメーティスから聞いたことがある。軍人やギルド加入者は主に剣士と魔導士両方が主な
まずは手短に、と言うと聞こえが悪いが父様は軍で中隊長クラスの実力だそうだ。母様は魔法技術はそこまで凄い訳ではないらしいが、それでも書庫には母様のコレクションとしてかなり高価な魔導書 (コピーではあるが)が書庫にあるらしい。これらの情報ソースはメーティスからである。
「分かった、お前がそこまで言うなら俺はもうお前を止めはしない」
「そうね、私もカリスにピッタリな先生を紹介しなきゃですね」
どうやら何とかなったようだ。だが、それこそこれからだ。俺は一体どこまでできるのか、世界を変える為せめて変えられなくとも変えるきっかけを作るための存在にはなろう。俺はそう心に誓ったのだった、これから先に何があるかも分かりはしないのに希望があると信じて………
「それじゃあ剣術の訓練は明日から始めるとしよう」
「魔法の先生は心当たりがありますから、あの人だったらきっと引き受けてくれるでしょうから私に任せてもらってもいいですかカリス?」
「はい!おねがいします母様!」
こうして今日は過ぎていったのだった。
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