遅咲きの日本人魔法使いはホグワーツの外交官です。   作:音符と黒猫

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約1ヶ月ぶりの更新です。



#9

グルリと回転して景色が変わる。

たくさんの本と魔法道具、大きな執務机に不死鳥。騒ぐ絵画。

ホグワーツ魔法魔術学校、校長室。

普段は姿現しは禁止されているが、この時期は職員の出入りが激しいので例外的に校長室と職員室のみ使用できるようになっている。

校長室に着くと、ダンブルドアとマグゴナガルが揃ってレイラとスネイプの到着を待っていた。

「ご苦労様、セブルス。そして、ようこそホグワーツへ、レイラ。」

現れた2人にダンブルドアが声をかける。

「今から昼食じゃ。大広間へ案内しよう。ちなみにここはホグワーツの校長室じゃ。後ろの肖像画は歴代の校長たちじゃ。挨拶しておきなされ。」

騒いでいる肖像画を驚いて眺めているレイラにダンブルドアは言った。

「対魔法界外交官のレイラ・ミナヅキです。以後お見知り置きを。」

レイラは肖像画の人物と一通り目を合わせた後、言った。

「ミナヅキ!?あのミナヅキの子孫か?」

フィニアス・ナイジェラス・ブラックが叫ぶ。

「どのミナヅキです?」

「カンゲン・ミナヅキだ。」

栞玄(かんげん)は……、私の5代か6代か前の水無月家外交官ですね。」

レイラが言う。

「いやー、あいつは面白かった。穢れた血だが、面白かった。ジョークが上手くてな……。」

当時のことを思い出してか、ヒャッヒャッと笑うフィニアス。

「お気に召して良かったです。では、失礼します。」

レイラたちは校長室を出た。

 

大広間には4人分の食事が用意されていた。

どうやら今日はダンブルドア、マグゴナガル、スネイプ以外の教職員はホグワーツにはいないらしい。

「それにしても、まさかフィニアスと繋がりがあるとは……。」

大広間で昼食を囲みながらダンブルドアが言う。

「水無月家自体ものすごく古い家なんですよ。もとは魔法族のスクイブから派生していて、その関係で古くから日本国内での魔法使いと普通の人間の橋渡し役だったんです。神無月家もそうですね。両家とも18世紀に国際魔法使い連盟からマグル界と魔法界の連絡役として外交官に任命されました。」

水無月家と神無月家の歴史の長さに3人とも驚く。

「そんなに驚かなくても……。正直、対魔法界外交官になる前の水無月家も神無月家も資料がないのでよくわからないんですよ。いつから存在しているのかは不明です。」

やっぱりホグワーツの食事は美味しいですね、と言いながらレイラはミートパイを頬張る。

「カンゲン・ミナヅキはどういう人だったんですか?」

マグゴナガルがレイラに聞く。

「さぁ……。5代、6代前の人ですからね。私より先ほどの肖像画に聞いた方が良いと思いますよ。」

 

歴代の校長の話で盛り上がりながら昼食を食べていると、ふくろうが飛んできて、レイラの前に手紙を落とした。

レイラは手紙を開く。

『水無月 怜良 殿

本日午後2時に、仕事の為の荷物を届ける。

内容は以下の通り。

・魔法界対応のパソコン2台とその付属品

・魔法界対応Wi-Fi

・魔法界対応ファクス(子機付属)

・魔法界対応プリンター

・魔法界大全書全50巻

・魔法法大全書全30巻

・その他辞書類

・その他事務用品

・床保護用カーペット

事前にダンブルドア校長には部屋を確保するよう伝えてある。

その部屋が貴殿の自室となる。

この他にも必要なものがあればふくろう便にて請求すること。

国際魔法使い連盟』

レイラは手紙をダンブルドアに渡す。

「ほう、本日搬入されるものじゃな。君の部屋は4階に設けておる。通常、ホグワーツではマグル界の機械は上手く作動せぬが、魔法界対応なら大丈夫じゃろう。」

ダンブルドアはレイラに手紙を返す。

 

昼食を食べ終えたレイラは、ダンブルドアに自室となる部屋へ案内される。

「……広くないですか?」

部屋を見てレイラは言った。

入ってすぐの部屋の広さはおよそ15畳。扉があることから考えておくにも部屋があるのだろう。1人が住むと考えるとかなり広い。

「いや、他の先生方と同じくらいの大きさの部屋じゃよ。この部屋が家でいうリビング、奥の部屋が寝室じゃ。風呂もトイレもついておる。キッチンもあるからお茶を飲んだりもできるの。」

なんてことないようにダンブルドアが言った。

「私が日本で住んでた部屋、8畳の1Kだったんですけど。」

「それは……狭くないかの?」

「いえ、日本の学生なら普通ですよ。」

(ま、確かに日本の賃貸は狭いけどね。)

レイラは苦笑いした。

 

奥の寝室に入る。

綺麗なベッドとサイドテーブル、クローゼットがあった。

レイラはスネイプに小さくしてもらってポケットに入れていた荷物を取り出した。

ダンブルドアが無言で元の大きさに戻す。

クローゼットに服を詰めると、レイラはベッドに飛び乗った。

フワッと体が弾む。ふかふかだ。

「気に入ったかの?」

ダンブルドアが聞く。

「もちろんです。敷布団からふわふわのベッドまで一気にグレードアップ!いいんですか?こんなにいいベッドで寝て。」

「それも他の先生方と同じなのじゃが……。」

レイラのあまりの喜びように、ダンブルドアはやや驚く。

その後もバス・トイレ別や2口コンロのキッチンを見て喜ぶレイラ。

(日本の住宅事情って一体……。)

ダンブルドアは不思議に思うのだった。

 

午後2時、荷物が運ばれてくる。

その数、大きな段ボール箱12箱。

「屋敷しもべ妖精たちに運んでもらいましょうか。」

マグゴナガルはそう言って屋敷しもべ妖精2人に荷物を運ぶようお願いする。

一瞬で荷物は消えた。

 

4階の部屋に着くと、段ボール箱が部屋の真ん中に鎮座していた。

「では、頑張ってください。」

マグゴナガルはそう言うと部屋から立ち去った。

(1人でやるのか……。)

段ボール箱の山を見てため息をついた後、レイラは開封作業を開始した。

 

リストに書いてあった通りのものが届いていることを確認しすると、レイラは真っ先にカーペットを敷き始めた。

タイル型のカーペットでパターンがあり、指定されたパターンに敷き詰めていく。

(なんか魔法陣みたいだな……。)

カーペットを敷き終わった床を見て、レイラは思う。

魔法陣は日本生まれの魔法だ。かなり緻密な模様なので描くのは大変で、また大掛かりなので発祥地の日本以外ではほとんど使われない。

おそらくこのカーペットも日本製だ。さぞ、魔法陣を織り込むのは大変だっただろう。

 

次にやらなければならないことは、回線の接続だ。魔法界にマグル界の回線を引っ張り込まなければならない。

ただ、その方法が問題なのである。

(これ、魔法使えること前提でしょう?)

パソコンの入っていた箱から出てきた説明書を見ると、どうやら壁に魔法で構造パターンを描かなければならないらしい。構造パターンを描くことでインターネット回線、電話回線など全ての回線が繋がるらしい。

(確かに今日、杖は買った。その杖は寝室にある。そしてクイックスペルの基礎は頭に叩き込んである。そして、描かなければならないパターンは理解できる……。)

やるしかないか、とレイラはため息をついた。部屋から杖を取ってくると、壁へと向ける。

描かなくてはならないパターンはフラクタル図形だ。

フラクタル図形は簡単に言えば「どんなに拡大しても複雑な図形」で「その図形を拡大して行くと、再び最初の図形と同じものが現れる、特殊な図形」だ。

まず始めにシェルピンスキーのギャスケットを各壁と天井の中央に描いていく。杖の先から黄色の閃光が放たれ、壁に図形が刻まれていく。

その次はシェルピンスキーのカーペットを青の閃光で各壁と天井いっぱいに描いていく。

五角形(赤)、六角形(紫)入れ子の円(桃色)、樹木曲線(緑)……、壁と天井がフラクタル図形で埋め尽くされていく。

最後の図形を描き終わると、壁に刻まれた図形は消える。

説明書には消えたら完了と描かれているため、おそらく回線は接続できただろう。

額の汗を拭い、時計を見ると3時間が経過していた。

 

通りすがりの屋敷しもべ妖精に頼み、執務机と椅子、本棚を運んでもらう。

用意されていた執務机はかなり大きく、L字型だった。部屋の角に沿わせて設置する。

本棚も壁に沿わせて設置する。机のある場所以外の壁は全て本棚で埋められた。

 

レイラは机の上にパソコンを置き、回線が繋がっているか確認する。

Wi-Fiやコピー機は机の下の棚に設置する。電気の代わりに魔力バッテリーで動くので、配線がないところが嬉しい。

魔力バッテリーは月光に照らされることで自動充電され、また魔法でも充電可能だ。

 

あとは本を本棚へ移し、細々とした事務用品を片付けるだけである。

重たい大全書合計80巻を収め、辞書のうち数冊を執務机の引き出しへ、それ以外を本棚へと納める。まだ本棚はスカスカの状態だが、これに教科書と今日買った専門書が加わり、今後もどんどん本が増えていく。レイラは早くも本棚の容量が心配になった。

事務用品は執務机の引き出しへと突っ込まれていく。

 

2時間後、部屋の段ボールが全て空になった。

ダンボールに入っているものを全て部屋に収め終えたレイラはパソコンの前に座り、動作を確認する。

パソコンの回線が安定したらしく、国際魔法使い連盟からメールが届く。どうやらメールアドレスは既に設定されているらしい。

 

『To:レイラ・K・ミナヅキ・ICOW

From:国際魔法使い連盟連絡送付局

件名:初期設定

パソコンの初期設定は既に設定してある。

自分のパソコンのデータを国際魔法使い連盟の仕事用のパソコン(黒い方)に移すこと。

白いパソコンはホグワーツの仕事用だ。そちらにホグワーツでの任務命令を送る。

自分のパソコンは私用として使用すること。

公私混同しないこと。このメールには返信は無用。以上。』

 

ピコンッという音がして白い方のパソコンにもメールが届く。

 

『To:レイラ・K・ミナヅキ・HW

From:国際魔法使い連盟連絡送付局

件名:任務命令

7/31、グリンゴッツ魔法銀行713金庫に強盗が入った。

そのため、現在ホグワーツに「賢者の石」がある。

ホグワーツの目的を探れ。

何か動きがあればこちらに報告書を送ること。

以上。』

 

『To:国際魔法使い連盟連絡受理局

From:レイラ・K・ミナヅキ・HW

件名:了解

了解しました。

早速任務に当たります。』

 

レイラは返事を送信すると、椅子にもたれて考え込む。

 

(なんでニコラス・フラメルの「賢者の石」がホグワーツにあるの?グリンゴッツが危険なら国際魔法使い連盟の個人金庫に預ければいいのに……。)

国際魔法使い連盟の金庫はグリンゴッツとは違い大衆に場所が知られていないしブラックホールを用いたセキュリティなので、万が一銀行強盗のような不純な目的を持った人間が侵入してもセキュリティが作動し無の空間に吸い込まれて終わりである。グリンゴッツより断然安全だ。

ダンブルドアは国際魔法使い連盟の会員なのだから専用の金庫を持っているはずだ。なぜホグワーツに持ってきたのか。今世紀最高の魔法使いであるダンブルドア本人が警備した方が安全だと考えたのだろうか?

 

首を傾げて考えていると、部屋のドアがノックされ屋敷しもべ妖精が顔を出した。

「ミナヅキ様、お食事のご用意ができております。大広間へお越しください。」

「わかった。ありがとう。」

レイラは椅子から腰を上げ、屋敷しもべ妖精に案内されて大広間へと向かった。




3/18編集
お片付け兼任務命令の回となりました。
国際魔法使い連盟についてオリジナル設定が非常に多い……。
どこかで整理しなくては。
そして、やっと賢者の石が出てきました。
さて、レイラはどう関わっていくのか……?
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