遅咲きの日本人魔法使いはホグワーツの外交官です。 作:音符と黒猫
意外と高校2年生は忙しい。もっと更新したのになぁ。
#11
9月1日。
ホグワーツの始業日がやってきた。
「レイラはホグワーツ急行に乗らんでいいのかね?」
ダンブルドアが朝食の席でレイラに聞いた。
「はい。というより、乗ってる場合じゃないので。」
レイラは苦笑いして答える。
その苦笑いの原因は、数日前まで遡る。
【回想】
数日前、レイラに一通のメールが届いた。
アニー・モンペリエ、対魔法界外交課課長からのメールだった。
『この度、レイラが対魔法界外交官に就任したので、再び外交の最前線に戻ろうと思う。
今まで私が行ってきた情報統制をレイラに任せる。
9月1日付けで対魔法界外交課ホグワーツ情報局局長に任命する。
まぁ、局長といってもレイラ以外の職員はいないのだが……。
学生生活もしながらで大変だろうから、9月1日に逆転時計を送る。
一度に最大5時間。1日15時間まで戻せる時計だ。
血による認証で、認証した血液の持ち主しか使えない仕組みだ。
レイラの輸血用の保存庫の血を使って承認しておいた。
うまく使って、7年間頑張ってくれ。』
(はぁ?何勝手なことを言ってるのよ!人手不足なのはわかってるけど、全ての情報統制を新米の17歳に任せるなんてどうかしてる!)
レイラはこれを読んだ時、マウスを握りつぶりそうになった。
マグル界の情報化に伴い、今までは対魔法界外交官最年長のアニーが国際魔法使い連盟の本部に残って情報統制を行なっていた。各国魔法省やマグルの大統領、首相に連絡したり、問い合わせに答えたり、世界中の情報をまとめて対魔法界外交官に資料として送ったりと、かなり忙しく、外交の手はずを整える重要な職だ。
それを、いくら親が仕事をする姿を見ているとはいえ、17歳の新米外交官1人に任せるとは、かなり無謀である。
確かにレイラはホグワーツから外には出ることができないので、外に出て、実際に人と会って外交をすることはできない。そういう状況を考慮すれば、この決断は人材の有効活用ということになるのかもしれないが、それにしても無謀である。
(ああ、もう!)
レイラは頭を抱えた。
【回想・完】
というわけで、レイラは今日から対魔法界外交課の情報の中枢となるのだ。のんびりホグワーツ急行に乗ることなどできない。
音もなくフクロウが飛んできて、レイラの前に小包と手紙を落としていく。
レイラは小包の方は中身が予想できるので、手紙から開封した。
『水無月 怜良 殿
ホグワーツ入学おめでとう。
対魔法界外交官である貴殿には、通常の生徒よりも早い魔法の学習を進めることを求める。
目安は、3年生時点でO.W.L.レベルの魔法を使えるようになること。
理由は数年後に数百年ぶりにある試みをするからだ。
その時にO.W.L.以上の魔法を身につけていてもらいたい。
尚、上記はあくまでも目安であり、身体を壊さない範囲で励んでもらいたい。
ホグワーツの生徒としても、職員としても活躍を期待する。
国際魔法使い連盟』
(……冗談じゃない。本当、冗談じゃない。)
レイラは自分の顔から血の気が引くのを感じる。
(仕事しながら他の子よりもプラスαで勉強しろ?ふ、ざ、け、る、な!)
身体を壊さない範囲で、などと書いているが、そう思うならまずこんな命令を出さないでいただきたい。
(とんでもなくブラックな連盟だな……。)
レイラは自らの身を案じた。
「……レイラ、目が死んでますけど大丈夫ですか?」
マクゴナガルが心配そうにレイラを見る。
「大丈夫ですよ、マクゴナガル先生。ご心配なく。」
レイラは乾いた笑みを浮かべる。
レイラは小包を開ける。中には逆転時計が入っていた。
(全てはコレにかかってるなぁ……。)
どれだけ逆転時計をうまく使うか、全てはこれにかかっている。
(1日39時間生活、スタート。)
レイラが腹を決めた瞬間だった。
朝のうちに全ての魔法使い連盟直属のスパイからの報告書に目を通す。
各魔法省には「破れぬ誓い」で結ばれた魔法使い連盟直属のスパイが忍び込んでおり、情報収集が行われていることがレイラに明かされた。スパイは表では役職がない下っ端として働き、そのフットワークの軽さを利用してたくさんの部署に出入りし情報を集めているのだ。もちろん、スパイたちには魔法使い連盟からも給料が入るので、下っ端でも生活には困らない。
また、屋敷しもべ妖精もスパイとして働かせているらしく、マルフォイ家などの貴族の情報も入ってくる。多くの屋敷しもべ妖精を抱えるホグワーツなど、学校の情報も筒抜けだ。
(これって要するに、私も監視されてるってことだよね。気が抜けないなぁ……。)
レイラはやれやれとため息をついた。
時は過ぎて昼の12時になる。
レイラは時間を戻し、部屋を出て図書室に向かう。
レイラ(1)は仕事をし、レイラ(2)は勉強するのだ。
魔法使い連盟はこの方法でどうにか仕事と学習を両立しろと言っているのだろう。始業前に一度どのくらい疲労するか試しておくべきだ。
再び12時になり、レイラは昼食を食べに大広間へ向かう。
「あ、クィレル先生。こんにちは。朝は会いませんでしたね。」
レイラは廊下でクィレルに声をかけた。
「こ、こんにちは。ミナヅキさん。あ、朝はち、ちょっと用事がありまして。」
クィレルはどもりながら答えた。
クィレルとは1週間前に顔合わせをした。非常に神経質でどもり症で、この先生が闇の魔術に対する防衛術で良いのだろうか、元のマグル学に戻したほうがいいのではないか、というのが第一印象だった。
その後、魔法使い連盟に保存されているクィレルの修行ルートを調べて見ると、どうやらアルバニアの森に行った後から症状が悪化したらしいことがわかった(修行のルートは魔法使い連盟に事前に連絡する。何かあった時すぐに対応できるようにするためと、著名な魔法使いに連絡を取りやすくし有意義な修行ができるようにするため)。
ちなみに、アルバニアの森は動物の変死体が年々増えており、何かしらの疫病、または魔法生物による荒らしや取り憑き、魔法使いによる実験などが原因として予想されている。
(何かしらに取り憑かれた可能性もあるなぁ。)
そう思ったレイラは、会う度にクィレルを観察している。
今のところは仕事熱心な先生、といった感じで特に問題は無いのだが。
どうやらダンブルドアやスネイプもそぶりから判断するにクィレルを警戒しているようなので、レイラも頭の片隅でいつも疑うべき相手だと認識している。
昼食を食べた後、ダンブルドアはレイラに組み分けの儀式まで広間に入らないように言った。どうやら、飾り付けをするらしい。
レイラは図書館に戻り、再び勉強する。
その後、時間を戻して自室に戻り、かかってきた国際電話の対応をする。
国際電話に関しては、時々夜間にかけてくる人がいるのが迷惑だが、まぁ、いつも世界はどこかで朝を迎えているのだ。仕方がないと割り切って対応している。
そして、新入生と監督生のリストに目を通す。とりわけ分厚いのがハリー・ポッターに関する資料で、彼が重要視されているのがよくわかる。
夕方になる。
「新入生はこちらの小部屋に案内します。レイラはその時に紛れてください。レイラが寮で寝起きしないことに関しては、こちらからうまく事情は説明しますから、宴の席では何も言わないでください。」
マクゴナガルがレイラに言った。
「わかりました。」
レイラは頷いた。
レイラは柱の陰にスタンバイする。
ゴンゴン、とドアがノックされ、大男、ハグリッドが現れた。
「マクゴナガル教授、イッチ年生の皆さんです。」
「ご苦労様、ハグリッド。ここから先は私が預かります。」
マクゴナガルが1年生を引き連れて歩き始める。
一瞬のアイコンタクト。
マクゴナガルからの指示を受け取り、レイラは新入生の列に紛れた。
小部屋へとたどり着く。
「皆さん、ホグワーツ入学おめでとうございます。」
マクゴナガル先生が挨拶を始める。
マクゴナガル先生は挨拶を終えると小部屋から出て行った。
(いよいよ、か……。)
レイラはネクタイを締め直す。
急に周りの生徒が息を飲んだ。
見上げると見覚えのあるゴーストたちが頭上を通過していた。
「おお、新入生か。今から組み分けか?」
気のいいゴーストは笑って生徒に話しかける。
そして、レイラを見つけるとパチリとウインクをした。
レイラもウインクを返す。
ゴーストが小部屋を抜けると、マクゴナガル先生は戻ってきた。
「行きますよ。」
ぞろぞろと大広間へ入場する。
朝とは全く違う飾り付けられた大広間に、レイラも息を呑む。
そして、スツールと組み分け帽子が置かれ、組み分けの儀式が始まった。
「アボット・ハンナ」
「ハッフルパフ!」
「ボーンズ・スーザン」
「ハッフルパフ!」
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組み分けを見ながら、レイラは顔と名前を一致させていく。
「マルフォイ・ドラコ」
「スリザリン!」
レイラの前に呼ばれた生徒は一瞬で組み分けされる。
「ミナヅキ・レイラ」
そして、レイラの番になった。
帽子をかぶってスツールに座る。
「ほう。随分と面白い生徒だ。そんな君にはこの寮が一番力となるだろう。……レイブンクロー!」
レイブンクローのテーブルから歓声が上がる。
レイラはレイブンクローの席へと移動した。
その後、ハリー・ポッターの組み分けでは皆が注目した。
かなり時間がかかったが、グリフィンドールへと組み分けされる。
(英雄には赤がお似合いよね。)
レイラは思った。
校長のよくわからない演説の後、食事となる。
「日本人?珍しいわね。」
隣に座っていたアジア系の先輩(と言っても実年齢では歳下)がレイラに声をかけてきた。
「はい。レイラと呼んでください。」
「私はチョウ・チャンよ。チョウって呼んで。」
どうやら中国をルーツに持つ先輩らしい。
「よろしくお願いします。」
レイラは言った。
宴のあと、注意事項が発表される。
やはり4階右側の廊下の立ち入り禁止が生徒たちは気になるらしく、レイブンクローテーブルではヒソヒソと憶測が飛び交っていた。
そして、不思議な校歌を歌って就寝だ。
レイラはこっそりレイブンクローの列を抜け、4階の自室へと向かう。
「あ、クィレル先生。」
立ち入り禁止の廊下の前でクィレルを見つける。
「何してるんですか?」
レイラは聞いた。
「ま、万が一は、はぐれたせ、生徒が入らないように、み、見張っているんですよ。」
クィレルは答えた。
「そうですか。じゃあ、私は部屋に帰ります。良い夜を。」
「よ、良い夜を。」
挨拶を交わして自室へと向かう。
「はぁ、なんか疲れた。」
そう言ってため息をつくが、レイラは時間を巻き戻す。
そして、仕事を終わらせていく。
昨日、キルギスがソ連から独立したので、マグル界で生活する魔法族の住所変更や、大統領や首相への魔法族に関する説明資料を作ったりと、何かと忙しいのだ。
仕事を終えるとシャワーを浴び、寝室へと移動する。
残りの数時間分の時を戻し、ベッドにダイブする。
考え事をする気力もなく、レイラは眠りについたのだった。
レイラの人生が超ハードモードになりました。
現在のブラック企業だな、国際魔法使い連盟。
魔法でどうにかすればいいってもんじゃない。
(↑お前が作った設定だろって?その通りです。はい。)
魔法省からの情報は、スパイに足で稼いでもらうことにしました。
原作で書かれている部分は描写が雑です。ごめんなさい。
皆様の想像力で補ってくださいませ。
では、また次回。