遅咲きの日本人魔法使いはホグワーツの外交官です。 作:音符と黒猫
数分、レイラは男の様子を観察する。男はおそらく30代、土気色の肌にねっとりとした肩までの黒髪、目立つ鷲鼻、黒い瞳をしている。かなり特徴的な外見のため、当時5歳のレイラの記憶にもしっかりと刻まれている顔である。身長は目測だが185cmぐらいはありそうだ。レイラは身長161cmと日本人の女性の平均は超えているため、小さくはないのだが、これだけ身長差があると素手で急所(首)は狙いにくいだろう。
そこで登場するのが杖代わりに持って来た箸である。首はどう頑張っても鍛えられないところなので突けば相手はかなりの痛手となる。箸を使えば箸の分だけリーチが長くなるので少し有利となる。特殊警棒などを持っていると便利なのだが、残念ながらそんな物騒なものは所持できないので一見すると何の危険性もない箸を使うのだ。もちろん、箸を持って来た本来の目的は自衛ではなく食事のためと杖を振る練習のためである。決して武器として使うつもりはない。
時間が約束の9時となる。早くホグワーツの担当者と会ってダンブルドアの庇護下に入りたいのだが、まだ担当者は現れない。やきもきしていると死喰い人の方が近づいて来た。確実に視線はレイラを捉えている。
(あ、死亡フラグ立ったな……。)
そう思いながらレイラは立ち上がった。スーツケースを引きずりながら死喰い人に近づく。攻撃は正当防衛としてでないと行えないので先手は打てない。
「君が、Ms.ミナヅキかね?」
死喰い人は話しかけてきた。
(この声、あの時聞いた声ね……。)
あの時に見た死喰い人確定である。おそらく名前はスネイプのはずだ。長身で厳つい顔をした男(こちらはヤックスリーと呼ばれた)がそう呼んでいた。
「ええ。私がミナヅキです。」
レイラは答える。もちろん、警戒していることが悟られないように微笑みを浮かべて、だ。
死喰い人は満足そうに頷くと言った。
「我輩はセブルス・スネイプだ。ホグワーツで教員をしている。今日は君を魔法省まで案内する。」
(はぁ!?ちょっと待て、何で死喰い人がホグワーツにいるの?)
レイラは驚きで表情が変わりそうなのを必死で抑える。
(いや、待て。この世界にはポリジュース薬というものがある。あれは他人の変装かもしれないじゃないか。)
その可能性を思いついたレイラはスネイプにカマをかけた。
「はじめまして、Mr.スネイプ。レイラ・K・ミナヅキです。」
レイラはそう言った後、付け加えた。
「ちなみに、ミドルネームのKはカンナヅキの略です。」
この一言に込められた意味を数秒遅れでスネイプはわかったらしい。
表情が引き攣り、目には驚きが、そして、皮膚は色を失っていく。
(ギルディ、か。本人だったのね。)
その反応を見て、レイラは微笑みを無表情へと変える。
対魔法界外交官は多くの人には(特に魔法族には)知られない方が良い職業なので、ダンブルドアは他の教職員にレイラが対魔法界外交官の娘であることを知らせていないのだろう。知っていたらスネイプはミナヅキの姓だけでわかるはずだ。何しろ、死喰い人たちはアイルランドでの水無月家・神無月家虐殺事件の後も生き延びたレイラたちを執拗に狙った。水無月家が存続していることを知っているからだ。
また、レイラが対魔法界外交官の娘だということを知らなくても、ミドルネームのKがカンナヅキとわかれば、対魔法界外交官の存在を知っているスネイプならレイラが何者かわかるだろう。どちらも自分が襲撃した家の名前なのだから。しかも、どちらも珍しい名前だ。
「やはり、そうでしたか……。先ほど見かけた時からそうではないかと思ってましたよ、Mr.スネイプ。」
レイラはごくごく落ち着いた声で言った。
「君は、じゃあ……。」
掠れた声でスネイプが言う。
「対魔法界外交官、水無月家、神無月家の血を引く者です。父は水無月、母は旧姓神無月、現水無月です。ちなみに事件があった時、私は5歳。あの場所にいて、あなたたちが何をしたのか見てました。……運良く隠れることができたもので。」
スネイプは何も言えない。
レイラはスネイプの目をジッと見る。
(ふむ、罪は認めているのか。懺悔の意も見える。ホグワーツにいることからして死喰い人からは抜けたと考えていいのだろう。)
ダンブルドアは優秀で抜け目のない人物だ。人を見る目も確か。とりあえず危害を与えてくることはないだろう。スネイプには色々と言いたいことはあるが、スネイプだけに言っても仕方がないし、殺された親族もレイラはほとんど交流のない人たちで赤の他人にほど近い人たちだ。レイラには親族という事実以上の情は湧かない。……両親はどうか知らないが。
それに、相手を憎んだところで何も始まらない。過去は過去だ。また、レイラ自身もある意味人殺しである(ダンブルドアは事故だと言ったが)ため、責める立場にはない。レイラとしては、親族を殺したこと悪いと思っていれば、そして、レイラに危害を加えてこなければそれで満足だ。
「別に昔のことを掘り返す気はありません。」
レイラは微笑みを作って言った。
「今日のスケジュールがあるのでしょう?早く行かないと狂うのではないですか?」
魔法省ということは、行き先はロンドンでしょう?とレイラが言う。
スネイプはレイラの対応に「信じられない」という顔をしているが、レイラに促されて歩き始める。
2人は雑踏の中に消えて行った。
スネイプ先生初登場。
スネイプ先生なら何人か殺してるよね、ということでレイラ被害者遺族展開にしました。
レイラ本人が冷めた性格をしているので特に責めはしません。
スネイプ先生の身長は映画でスネイプ役を演じた、故アラン・リックマンさんのものです。
原作スネイプ先生はもう少し小さい(178cmくらい?)かと思われます。
これ、スネイプside書いたほうがいいのかなぁ?