遅咲きの日本人魔法使いはホグワーツの外交官です。 作:音符と黒猫
やっと8/9がこの話で終了します。
聖マンゴと魔法界の医療の情報が少なすぎてよくわからない……。
レイラはマグゴナガルの付き添い姿現しで聖マンゴ魔法疾患傷害病院に着いた。
今までに何度も魔法界を訪れているが、病院に行くのは今回が初めてである。
病院の外観は改装のため閉店中とされている大きなデパートで、場所はロンドンの中心部にある。
検査は予約してあったらしく、すぐにマネキンに受付され3階の診療室へと向かった。
診察室の戸を開けると、眼鏡をかけた老齢の女性癒者がいた。
「レイラ・ミナヅキさんね、お座りください。」
嗄れているが優しい声。眼鏡越しにレイラを見る目も優しい。
(なんとなく、マグル界の医者と違う。)
癒す者と書くように、どことなく癒しの雰囲気を醸し出している。
「身体年齢を巻き戻したそうですね。」
そう言いながら何かしらの魔法器具をレイラの手首に巻きつける。
(脈拍計?)
レイラは手首に巻かれた器具を見るが、魔法特有のキラキラとした光を放つ以外は普通のリストバンドのように見える。
その後も特に説明もないまま触診されたり、問診されたりする。
「身体が小さくなったことに関して特に違和感はないのね?」
「はい。」
「息苦しさとか動悸とかもないのね?」
「はい。」
「そう。うまく身体が魔法に適応したのでしょう。」
カリカリと問診票に書き込んでいく癒者。
(マグル界の先進技術が魔法界にないのはわかってるけど、こんなので検査と言えるのかしら?)
レイラは不思議そうに癒者を見ていた。
いつの間にかマグゴナガルは退席し、診療室は2人きりとなっていた。
「身体に流れる魔力も安定してますし、コントロールできてますね。呼吸と脈拍に異常が無いのならば、身体は若年齢化したことに十分適応できていると言えます。」
癒者はレイラに告げた。
「あの、さっきからこのリストバンドが気になるんですけど、これは……?」
レイラは癒者に聞いた。
「それは魔力量計です。魔力量が適正であれば今のあなたが付けているもののようにキラキラと光りますし、魔力が落ちていれば光が鈍くなります。魔力が暴走気味だと光線を発します。もうそろそろ外してもいいでしょう。」
そう言って癒者はレイラの手首から魔力量計を外した。
そして、今度はアームバンドをレイラにつける。
「これは魔力質計です。魔力の質がよければ透明になりますし、質が悪ければそのままです。」
レイラはつけられたアームバンドを見る。すでに透明でどこにつけられたのかがわからなくなっていた。
「アームバンドが透明になりましたね。良質ということです。どこにバンドが付いているかわかりますか?」
レイラは腕をなでるが何も物に触れない。
「アームバンドが消えてるんですけど……。」
レイラは癒者に告げる。
「Bravo!それは最良質の魔力ということです。他の人よりも少ない魔力で同じ魔法を行使できるということです。」
癒者が嬉しそうに言う。そして、魔法でレイラの魔力で消えていたアームバンドを取り外す。
「では、病室にお移りください。すでにMs.マグゴナガルが入院の準備をしてくださっています。眠っている間に魔力の暴走などが起こらなければ、検査入院は終了です。」
癒者に告げられ、レイラは診療室を出た。
(なんか、よくわからない診察だったな……。)
そう思いながら病室の扉を見て歩くこと数分。ついにレイラは自分の名前が書かれている扉を発見した。
「失礼します。」
声をかけて扉を開けると、癒者が言っていたようにマグゴナガルが病室内にいた。レイラのスーツケースとショルダーバッグも運び込まれている。
部屋の大きさは4畳ほどで個室のようだ。
「お疲れ様、Ms.ミナヅキ。」
マグゴナガルが言った。
「今日はこの部屋で過ごしてもらいます。もう少ししたら着替えなども届くでしょう。」
「ありがとうございます。」
レイラはマグゴナガルに礼を言う。
「Ms.ミナヅキに服を選んでもらうだけの時間がなくて、私が勝手に選んだのでMs.ミナヅキの好みかどうかはわかりませんが……。」
少しマグゴナガルが申し訳なさそうに言う。
「いえ、サイズさえ合ってればなんでも着るので気になさらないでください。」
レイラは言う。
「明日はダイアゴン横丁へ入学に必要なものを買いに行きます。まだどの先生が付き添われるかはわかりません。9時ごろには退院しますから、それまでに身の回りの準備は終わらせておいてください。」
「わかりました。」
レイラは頷いた。
「何か質問は?」
「特にありません。」
「では、失礼します。良い夜を。」
マグゴナガルはそう言うと病室を出て行った。
程なくして病室に小包が届けられた。
中に入っていたのは数着の服と小物。こざっぱりとしたシャツにチェックのスカートの組み合わせが1着。Tシャツにジーンズの組み合わせが2着。パーカーが1着。歩きやすそうなスニーカー。その他下着類も注文してくれたらしい。レイラが前髪を鬱陶しそうにしていたことを覚えていたのか、髪留めまで入っている。
マグゴナガルの細やかな気配りにレイラは感動する。
早速服をスーツケースやショルダーバッグに移す。
レイラのスーツケースの中身は黒服(スーツ)1着、着物1着、ワンピース1着、靴(黒ヒール)、草履など和装小物、最低限の下着類、ノートパソコンとその付属品である。正式な外交官でなくても子供の頃から家族ぐるみでの外交(パーティーの参加など)には参加させられるため、スーツや着物、ワンピースは欠かせない。普段着はその場その場で買い、出国時には荷物軽減のために捨てるためほとんど持っていない。日本で一人暮らししていた時の服もほとんど処分している。
ショルダーバッグの中身は箸、パーカー(飛行機内での温度調節のため)、財布、最低限の身だしなみ用品、文房具である。
スーツケース内は着物が多く場所を取っているため靴下などを入れ、ショルダーバッグとショルダーバッグに入れておいたエコバッグに服を詰める。鞄が3つになってしまったが、どうにかなるだろう。
病院食を食べ、シャワーを浴び、寝る時間となる。
(色々あったなぁ……。)
今日という日を回想してレイラは思う。
まさかの死喰い人がホグワーツに教員としていたり、対魔法界外交官として正式任命されたり、身体を小さくされたり、よくわからない診察をされたり。今までで1番動きのあった1日だったと思う
(それにしても、今後どうなるんだろう……。)
ホグワーツの生徒、ホグワーツの職員、対魔法界外交官。二足のわらじならぬ三足のわらじを履くことになった自分はどこに本籍を置けばいいのだろう、とレイラは思う。
正直、職は確保されているため、本来ならそこまで学業には精を出す必要性はない。が、生徒である以上最低限の勉強をしなければならないし、あまりにも成績が低いと魔法使い連盟が「自腹で学費を払え」とも言いかねないし、魔法界の問題対処には魔法の知識は不可欠だ。やはり、学業に精を出さざるを得ないだろう。また、対魔法界外交官としてどんな仕事を任されるのかはわからないが、こちらは本職なので手は抜けない。ホグワーツ職員としての仕事はあまり無いだろうが、何か問題が起これば対応にまわらねばならない。
(何を最優先にすべきか……。)
学業?仕事?それ以前にまずマグル界と魔法界、どちらに重きを置くかに関しても考えなければならない。対魔法界外交官なのだからマグル界を重視すべき気もするが、自身は魔女なのだから魔法界の方を重視しなければならない気もする。マグル界と魔法界の板挟み。選択を誤ればマグル界、魔法界両方から爪弾きにされる可能性もある。そうなれば自分の居場所はこの世にはない。
(お先真っ暗……。)
そう思いながら、レイラは眠りの渦に落ちていった。
次回、ダイアゴン横丁です。
これからかなり更新が不定期になることが予想されます。気長に待ってください。