遅咲きの日本人魔法使いはホグワーツの外交官です。 作:音符と黒猫
8/10、ダイアゴン横丁編。
翌日。午前9時。
レイラは病室を出て一階ロビーへと向かった。
(誰が付き添うんだろ。っていうかこの大荷物どうしよう……。)
スーツケース、ショルダーバッグ、エコバッグと3つも鞄を持っていると階段を降りるのも一苦労である。
(マグル界のエレベーターが恋しい。)
そう思いながら階段を降りること49段、やっとロビーに着く。
ロビーで待っていたのは、スネイプだった。
「おはようございます、Mr.スネイプ。」
「おはよう、Ms.ミナヅキ。……大荷物だな。」
「そうですね。非常に邪魔です。」
荷物を指摘されて苦笑いするレイラ。
「レデュシオ」
スネイプが杖を振ると荷物がポケットに入るくらいの大きさまで縮む。
「これでいいだろう。」
「ありがとうございます。」
レイラはスネイプが縮めた荷物をズボンのポケットへと入れた。
付き添い姿現しでダイアゴン横丁、漏れ鍋へと移動する。
「ここが漏れ鍋だ。マグル界からのダイアゴン横丁への入り口だ。」
スネイプがレイラに言う。
「パブなんですね。」
レイラは漏れ鍋を見渡して言う。
「昼までにホグワーツに帰りたいから、早く行くぞ。」
そう言うとスネイプはレンガの壁を叩き、ダイアゴン横丁への門を開いた。
中世に遡ったかのようなダイアゴン横丁を歩くこと数分。グリンゴッツ魔法銀行へと辿り着く。
中ではゴブリンたちが忙しそうに仕事をしていた。
「ホグワーツの金庫を開けてもらいたい。」
スネイプがゴブリンに鍵を差し出して言う。
「了解しました。こちらへ。」
ゴブリンはレイラたちをトロッコへと案内した。
トロッコに乗り込むと勝手にトロッコは動き始める。
超高速で走り始めるトロッコ。
(なんだこりゃー!ジェットコースターじゃん!未だ乗ったことないけど!しかも安全バーないし!)
心の中で叫ぶレイラ。安全バーが無いのでトロッコの淵にしっかりと捕まる。
隣に座るスネイプを見ると、こちらもトロッコの淵にしっかりと捕まっていた。皆トロッコの淵には捕まるものらしい。
走ること数分、まだ止まる気配がない。
(マグル界よりも先に魔法界でジェットコースターに乗るとは……。でも、意外と楽しい。)
トロッコに慣れて余裕が出て来たレイラはそんなことを考えていた。
未だマグル界の遊園地に行ったことがないレイラはジェットコースターに乗ったことはない。が、テレビで見たジェットコースターの映像と今の状況を照らし合わせるとまさにこのトロッコは魔法界のジェットコースターと言える。そして、このトロッコも慣れてしまえば楽しいものである。
(どうりでマグル界のジェットコースターに人が並ぶわけだ。)
以前テレビで見た、遊園地のジェットコースターに並ぶ行列の謎の答えがわかったレイラだった。
「着きました。」
ジェットコースタートロッコに乗ること10分。やっとホグワーツの金庫へと辿り着く。
「かなり深いところにあるんですね。」
レイラはトロッコから降りながらゴブリンに言う。
「ホグワーツの金庫はグリンゴッツの最深部にございます。」
ゴブリンはそう言いながら何やら複雑な手順で金庫の鍵を開けていく。
「どうぞ。」
そう言ってゴブリンが扉を開ける。
中に詰まっている金貨の量にレイラは驚く。
「凄い量……。」
「ホグワーツの金庫はこれと同じようなものがあと数個ございます。入学準備であれば150ガリオンほどあれば十分かと。」
ゴブリンが言う。
レイラはスネイプに渡された袋にガリオン金貨を150枚詰める。
「では、帰りますよ。」
再びトロッコに乗って銀行入り口へと戻る。
行きと同じ速度のまま今度は上昇して行く。
(下りも上りも同じ速さで動くとは、さすが魔法界。)
重力など物理を無視した魔法界だからできることだよなぁ、とレイラは思う。
10分かけて地下の金庫から地上へ着く。
「ふぅ、意外な大冒険でしたね。」
トロッコから降りたレイラが言う。
スネイプはというと疲れた表情でトロッコから降りる。
「あのトロッコに乗って元気になる人間がいるとは思わなかった。」
スネイプがレイラに言う。
「意外と楽しかったもので。」
実際、レイラのテンションはトロッコに乗る前よりも上がっており、初対面の時よりも歳相応に見える。
「この際なので、口座作って帰ってもいいですか?」
レイラはスネイプに言う。
「構わないが。」
スネイプが言う。
「新規の口座お願いします。」
レイラはゴブリンに言う。
「了解しました。水無月怜良様、3618番金庫となります。」
ゴブリンがレイラに鍵を渡す。
「国際魔法使い連盟からの振込を許可してください。」
レイラは言った。
「了解しました。」
「あと、日本円って両替できます?」
「さすがにそれは……。」
ゴブリンが苦笑いする。
「ですよね。いえ、大丈夫です。ちゃんとポンドに両替して持って来ますから。」
レイラも苦笑いを返す。
「お待たせしました。行きましょう。」
レイラはスネイプに言った。
グリンゴッツを出た後、マダム・マルキンの洋装店でローブなどの制服を買い、鍋と薬瓶、望遠鏡などを買う。フローリシュ・アンド・ブロッツ書店では教科書と共に辞典など複数書籍を購入し、こちらはホグワーツに宅配してもらうことにした。
最後に残ったのは杖である。
古ぼけた小さな店、オリバンダーの店に入る。
店内は杖の箱が積み重ねられており、採光が遮られ薄暗い。
扉が閉まるとき、鈴がチリンチリンと鳴った。
「いらっしゃいませ。」
オリバンダー老人が店の奥から出て来た。
「ダンブルドアからは聞いております。レイラ・ミナヅキさん、非常に珍しいお客さんであると。」
柔らかな声が店内に響く。
「はじめまして、Mr.オリバンダー。」
レイラが言う。
「杖が騒いでおるよ、ミナヅキさん。あなたの魔力に反応してね。」
オリバンダーの月のような目がレイラを捉える。
「さて、拝見しましょうか。杖腕は?」
「右です。」
オリバンダーは巻尺をポケットから取り出し、レイラの寸法を測る。
「杖に関しての知識はお持ちかの?」
オリバンダーはレイラに尋ねる。
「ええ、一応は。杖は木材の本体と強い魔力を持つ芯材でできており、それぞれに個性があります。あなたはヴィーラの髪の毛は杖が気まぐれになるから取り扱わないとお聞きしてます。杖は忠誠を誓ったものの元で最大限の力を発揮し、魔法の行使を助けると。」
スラスラとレイラは答える。
「その通り。オリバンダーの杖には1つとして同じものはありません。さて、あなた様はどの杖に選ばれるか……。」
オリバンダーは巻尺を片付けると杖の箱を大量に持って来た。
「さて、桜と一角獣のたてがみ、25cm。しなやか。」
レイラが杖を持った途端、オリバンダーは杖をもぎ取った。
「違うようじゃ。モミの木と不死鳥の尾の羽、27cm。頑固。」
レイラが杖を持つ、がオリバンダーはすぐに取り替える。
「黒檀とドラゴンの心臓の琴線、24cm、弾力がある。」
「ライムと不死鳥の尾の羽、30cm、意志が強い。」
「マホガニーと一角獣のたてがみ28cm、忠誠心が強い。」
どんどん杖を試していくが合うものがないらしく、レイラは苦笑いする。反対にオリバンダーの顔は嬉しそうになっていく。
「絶対に合う杖を見つけてみせよう。やはり強い魔力を持つものには……。」
オリバンダーはブツブツと何か呟きながら店の奥へと消えて行った。
「……杖選びってこんなに時間がかかるんですか?」
レイラはスネイプに聞く。
「いや、今まで付き添いをした中で君が1番時間がかかっている。我輩は数本試しただけで決まった。」
「そうですか。お待たせしてすみません。」
「いや、ダンブルドアからも言われていたことだ。君の杖選びには時間がかかるだろうと。まさか20本以上試しても決まらないとは思わなかったが。」
そう、すでにレイラは店に入って1時間、20本以上の杖を振っている。ここまでして決まらないのは、やはりレイラが珍客だからだろうか。
「では、ミナヅキさん。こちらの杖をお試しください。
レイラは杖を握る。
途端に青い閃光が溢れ出し、店の中に広がった。
「その杖で決まりですな、ミナヅキさん。いや、良かった。」
オリバンダー老人が嬉しそうに言う。
レイラは自分に忠誠を誓った杖を眺めて呟く。
「これ、螺鈿細工……。」
レイラの呟きにオリバンダーが答える。
「ええ、そうです。先代オリバンダーが日本の文化に興味を持って持ち手に施したものです。槐の花が細工されているでしょう。非常に希少で美しい杖ですよ。」
オリバンダーは杖を箱に戻し、ラッピングするとレイラに手渡した。
「8ガリオンになります。」
レイラは袋からガリオン金貨を8枚出して払う。
「あなたの魔力は強い。使い方を間違わぬように。」
オリバンダーは代金を受け取る時に言った。
「わかってます。」
レイラは微笑んだ。
オリバンダーの店を出ると、時刻は12時となっていた。
「お昼になってしまいましたね。ホグワーツに行きましょうか。」
レイラが言った。
「ペットは買わなくていいのか?」
スネイプは言った。
「ええ、必要ないので。」
さらりとレイラは言う。
「そうか。」
スネイプはそう言うと、レイラを連れて姿現しをした。
ダイアゴン横丁編終了。
やはりグリンゴッツとオリバンダーの店が主になりました。
ゴブリンが妙にレイラに親切なのは、魔法使い連盟から通達が届いていたからです。
次回からホグワーツ登場です!