魔法少女育成計画routeS&S~もしものそうちゃんルート~ 作:どるふべるぐ
注・まほいく二巻以降及び両原作の軽いネタバレがあります。
注2・なお主に作者の実力不足のせいで両原作の雰囲気や文体を全く再現できてませんので、文体の再現度にこだわりのある方はそっとブラウザバックしてください。
注3・世界観の違う原作同士を強引にクロスオーバーさせたので、設定の改変や独自解釈を多数しています。これが不快である方もブラウザバックをお勧めします。
注4・作者は割と二次創作だから許されるギリギリのネタをノリでぶち込みますので、「このキャラはこんな事をしない」的キャラ崩壊があります。これを受け付けない方はレッツブラウザバック。
以上、全てを了承してくださる方だけお楽しみください。
からころころり。
神様がサイコロを転がします。
ここではないどこか。はるか遠く、いえいえもしかしたら意外と近くにあるのかもしれないどこかの世界では、今日も今日とて神さまたちが
《真実》という神様がころんとサイコロを転がせば、新たな冒険者の駒が作られて盤上に置かれ、冒険に旅立ちました。
《豊穣》という神様が触手をくねらせサイコロを転がせば、そんな冒険者を迎え撃つべく盤上に大迷宮が出来上がります。
冒険者がどうなるのかは、次に《幻想》という神様が振る《宿命》と《偶然》のサイコロ次第。出目は果たしてクリティカルかはたまたファンブルか。《真実》も《豊穣》も《幻想》も他の神さま達もドキドキワクワクしながら見守り、そして出た目に皆で一喜一憂しました。
いけ、そこだ、よっしよくやった。あっちゃー、いやあ惜しかった。次はこうはいかないぞ。
わいわいと盛り上がりながら神さまたちはまたサイコロを振りだします。
ころころころり。ころころり。
次は一体どんな物語になるのだろうと胸を高鳴らせながら。
切ないラブストーリーか血沸き肉躍る英雄譚かあるいは血塗られた復讐劇か。神さまは冒険者たちが描く物語が大好きなのです。
そんなある時、「あれ?」と《幻想》の神様が首を傾げました。隣にいた《真実》もなんだなんだと《幻想》が見ている物を見て、同じく首を傾げます。
そんな二柱の様子に周りの神様たちも気づいて、今度は皆で首を傾げました。
いつの間にか盤上に、誰も知らない駒が置いてあったのです。
◇◇◇
新連載
『魔法ゴブリンスレイヤー育成計画』
◇◇◇
◇スノーホワイト
息を吸えば、充満する血と汚物の臭いが鼻腔を侵す。不快な湿り気を帯びた空気は、肌にべったりと纏わりつくようだ。
そこは暗く、深く、どろりと濁った闇に満ちていた。
おそらくは洞窟か坑道だろうざらついた岩肌が剥き出しとなったその中を、白い魔法少女──スノーホワイトは慎重に、だが決断的な足取りで進んでいた。
「──ファル。あいつの反応は分かる?」
可憐な少女の淡い唇が紡いだのは、だが冷たさすら感じるほどに鋭い声。獲物を追う狩人そのものの問いに答えるのは、彼女の肩のあたりに浮いている白黒饅頭か潰れた金魚のようなデザインの電脳妖精タイプのマスコットキャラクター──ファルだ。
「間違いないぽん。この通路の先にあいつはいるぽん」
頷くように丸いからだを揺らすと光るリンプンが散って、スノーホワイトの姿と、その横の岩肌に飛び散った血痕を照らし出す。
「でも気をつけるぽん。……ここがどこなのかは分からないけど、どう考えてもマトモな場所じゃないぽん」
重い声で呟き、見下ろした床には──赤黒い血だまりが広がっていた。それもまるで悪童が赤いペンキを滅茶苦茶にぶちまけたかのように壁まで飛び散って、悪趣味極まる前衛芸術のごとく辺り一面を染め上げている。
そしてその中に浮かぶのは、──肉の塊。
そう、塊だ。そうとしか言えぬ、男か女が大人か子供かも分からぬ、原型も留めぬほどに斬られ抉られ潰された肉片がいくつも床に壁こびりつき、噎せかえるような死臭を放っていた。
しかもそれはまだ乾ききっておらず、新しい。
おそらくは自分達がここに来る正にほんの少し前にこの惨劇が起こったのだろう。
自分達が追っている相手の仕業かとも考えたが、スノーホワイトはすぐにそれを否定した。あいつにはそこまでの力は無いし、どうしようもない性格破綻者の悪党ではあるが自分達に追われている最中にわざわざそんなことで時間を潰すほど馬鹿ではない。ならば残る可能性は、自分達の知らない第三者によるものだ。
そしてそいつは恐らく、今もこの血と屍と汚物の臭い渦巻く闇の奥に蠢いている。
ぎゅっと、薙刀のような魔法の武器《ルーラ》を握る手に力をこめた。強く、強く握り、思う。
だとしても、もしここが地獄の入り口だというのならば上等だ。その底まで追い詰めて捕まえてやる。
自分は魔法少女狩りなのだから。
◇ファル
『クラムベリーの信望者が、担当する魔法少女選抜試験で殺し合いをさせている』
そうとある人物から通報を受けたのは、つい先日の事だった。
森の音楽家クラムベリー。恐るべき戦闘狂にしてスノーホワイトの運命を変えた希代の魔法少女のカリスマはその死後に到っても呪いのごとく現世に残り、その血塗られた思想に魅せられた者達は後を絶たない。
今回もまたその手合いで、加えてご丁寧にもその証拠と共に提供された情報によれば、なんと試験官ばかりかそのサポートとして本来ならば凶行を止めるべきマスコットキャラクターまでもグルになって犯行を行っていたというのだ。
早速その試験官達を捕まえるべく行動を開始したスノーホワイトだったが、どこからか情報が漏れていたらしく、駆けつけた時には件の試験官が今まさに異世界に通じる魔法のゲートを作り出して逃げようとしていた所だった。
間一髪で間に合い、何とか試験官を捕まえる事が出来たスノーホワイトだったが、共犯であるマスコットキャラクターは取り逃がしてしまう。
勝ち誇った笑みと共にまんまとゲートを通り異世界に逃れたマスコットを追おうとしたスノーホワイトを、ファルは止めた。
このゲートはどこに繋がっているかわからず、しかも急拵えのため不安定で間もなく消えてしまう。つまりは行ったきりの片道だ。そして向こうにこの世界に帰るための手段があるかも分からないのだ。
危険すぎると訴えるファルの言葉に、だがスノーホワイトは
「『異世界に行けば魔法少女狩りから逃れられる』そんな前例を作るわけにはいかない。目をつけられたら誰も逃げられない。それが魔法少女狩りだから」
そう言って、躊躇わずゲートに飛び込んだのだった。
その時の相棒の顔を思いだし、ファルは内心で重いため息を吐く。
この魔法少女が冷徹とも言える判断力を持つ一方で、全てを顧みない信念を──否、激情を胸に燃やしているのは知っていた。そこためならば己が命を危険にさらすことすら厭わぬことも。ならばこそブレーキ役となるのが自分であるはずなのに、出来なかった。
いや、そもそも自分が彼女を止められた事がはたして何度あったろうか……?
これまではそれでも何とかやってこれた。
それはスノーホワイトの力とファルのサポート、そして相手が同じ魔法少女だったからだ。
しかし、ここからは違う。この見知らぬ世界ではそうもいかない。
かつて歪んではいたが魔法少女という存在を愛していたキークの下で、あらゆる魔法少女に関するデータを──他の世界での活動記録にいたるまで──収集していたファルは知っている。
たしかに自分達の世界では魔法少女こそが最強の存在だった。だが異世界にはそれぞれの強者が、自分達の世界とは全く異なる環境で進化し、弱肉強食の頂点に立った『最強』がいる事を。そしてそれらは人を超越し、中には魔法少女にすら並ぶ力を持つ者達がいるのだとも。
たとえばとある世界に存在する、コトバによって生まれしケモノ。たとえば世界を蝕むバグを消すウィザード。もしくは小樽の大詩人。初対面で鎖骨を踏み潰す暴走少女。二つ名が《
そしてとある世界の《美少女》なる上位存在の中でも《
さすがにそこまでの超越存在がそうそう居るとは思わないし、そもそもいたら自分ではどうしようもないが、それ以外の脅威からならば何としてでもスノーホワイトを守ろうと思う。
彼女は確かに強く、冷静沈着ではあるが、その在り方はあまりにも危うい。
だからこそ、自分が守らねばならぬのだ。かつてスノーホワイトに救われた者として。そして――かつての主を救えなかった者として、今度こそ。
そうファルが決意を新たにした時
「GOGGBR!」
背後の闇の奥から、『奴ら』が現れた。
◇◇◇
闇の奥から、奴らはずっと可憐な侵入者を見ていた。
細く節くれだった、だが鋭い爪の生えた手で、先の犠牲者の血と肉片がべったりと付着した武器を持ち。
その白雪を思わせる柔肌を切り裂き蹂躙する想像に涎を垂らし、股ぐらをいきり立たせて。
その姿は小さく、だが爪と牙を持ち腰に襤褸布だけを巻いた醜い生き物――
醜く不潔で、背丈、知性、力は共に子供並みしかない、この世界に数多蠢く混沌の勢力――《
強者にはへつらい、だがその実世界で最も偉いのは自分だと疑わず、弱者を蹂躙する事を悦びとする文字通りの鬼畜生。
奴らが何処から来たのかは分からない。
そしてある男の姉は――天に浮かぶ緑の月から来たと、かつてまだ幼い子供だった男に教えた。
はたしてそのどれが真実なのかは分からない。ゴブリンならざる《
だが、奴らがなぜ生きているのかと問われれば、全ての者達はたった一つの答えを断言するだろう。
『ゴブリンはただ奪い、犯し、殺すために生きているのだ』と。
ゆえに今、スノーホワイトを見つけたゴブリンたちの汚らわしい脳髄を占めるのは、仲間を守らねばという思いでも強者に挑もうという戦士の誇りでもなく、いかに彼女を蹂躙するかという鬼畜の欲望だった。
見つけた。冒険者だ。
だがこの臭いは只人でも森人でもない。何だあれは。
知るものか。どうでもいい。たとえなんであろうとあれは女だ。
ならば犯せ。犯して孕ませ仲間を増やし、最後は餌にしてしまえ。
なら最初に犯すのは俺だ。いやいや俺だ。何を言っている俺の方が偉いだろ俺に寄越せ。
ゴブリンに譲り合いの心など端から無く、同族からすら奪うことを躊躇わぬ。
ならばあいつを倒した奴が一番先だと一匹が言い、全員が――もちろんいざとなったら自分が倒したと言い張るつもりで――同意して、一斉にスノーホワイトへと襲い掛かった。
視界の届かぬ背後からの
くわえて向こうはたった一人だがこちらは三匹いる。
失敗するはずなど無かった。事実、こいつの前に侵入した冒険者もこれで容易く斃せたのだ。
冒険者というのは本当に馬鹿な奴らだ。それに引き換え自分は何と賢く運が良いのだろう。さっきの奴は男だったが今度は女、さてどのように犯して殺して喰らってやろうか。
そう穢れた脳髄を肉欲に満たしていた先頭の一匹の笑みは――スノーホワイトが振り向きざまに薙ぎ払った刃で脳髄ごと断たれた。
「GORO!?」
鼻から上を斬り飛ばされた同族。それを間抜けな奴だと嗤った二匹目は、一匹目を屠ったルーラが虚空を滑るように翻り頭頂部から股間まで真っ二つにされる。
断面を曝し、薪割りのように左右に崩れ落ちる二匹目の姿に、最後の一匹は驚き立ち止まった。
息を飲み、蛇に睨まれた蛙の如く硬直する。下りる沈黙。
白い魔法少女と目が合った。
恐怖も怒りも無く、ただ己が獲物を冷徹に狩り、その手に握る血を滴らせる刃よりもなお冷たい――氷獄のごとき瞳と。
「GOOBROーー!」
ゴブリンは逃げ出した。
心臓すらも凍るような恐怖に怯え、スノーホワイトを奇襲するために掘っていた横穴に飛び込もうとして
「GOBGO!?」
『まるでそうするのがあらかじめ分かっていたかのように』正確な軌道と無慈悲な速度で投げられたルーラに背中から貫かれ、岩肌に縫い付けられてしまった。
悪趣味な標本のようになったゴブリンは必死にもがくが体内を貫通し岩に深く突き刺さった刃から逃れる事は出来ず、むしろその動きで傷口が広がり、刃が肉を裂く痛みに絶叫する。
そんなゴブリンの下にスノーホワイトはゆっくりと近づき、
「ここで、小さな妖精を見なかった……?」
たった今凄惨な命のやり取りをしたとは思えぬ程に淡々とした表情で、問いかけた。
ゴブリンは答えない。ただ血と涙を垂れ流して悲鳴とも罵倒ともつかぬ声で喚き散らすのみ。
「答えて」
有無を言わせぬ声で言い、ルーラの柄を握って力を込めぐりぐりと動かす。
刃が肉を抉り傷口をみちみちと広げ、噴き出した血がスノーホワイトの白い頬を濡らした。
ゴブリンは更に絶叫した。
止めろ痛い動かすなやめてくれ畜生なぜこんなことをする自分は何も悪い事など何もしていないのに痛い痛い痛いくそくそ糞がッ殺してやるッ絶対にお前を死ぬまで殴って犯して孕ませ――ッ
その憎悪と獣欲の叫びが終わる前に、スノーホワイトの足が無言で振り上げられ
「GOBGRO!?」
ぐしゃりと、硬いオーバーニーブーツの底でいきり立った股間を踏み潰され――ゴブリンは死んだ。
◇スノーホワイト
「殺してよかったぽん?」
背中と股間から血を吹き出し痙攣するゴブリンの屍からルーラを抜き、虚空に振って刃についた血を払うスノーホワイトは、ファルにそう問われた。
その声に非難げな響きが混じっているのは気のせいではないだろう。この電脳妖精タイプのマスコットキャラクターは、名前も思い出したくも無いあいつと同じFシリーズとは思えないほどに常識的で、まさに正しく魔法少女のマスコットらしい善意と良識を持っている。
だからこそ、人間ではないとはいえ現地の生き物を半ば問答無用で殺した事を快くは思っていないのだろう。
「ここがこの生き物の縄張りだとすれば勝手に入って来たのはファルたちぽん。たとえ襲われたとしても正当防衛とは言えないぽん」
正しい言い分だと思いつつ、だが確信をもって答える。
「大丈夫。こいつらは殺していい奴らだから」
「殺していいって、いったいどんな心の声が聞こえたぽん?」
スノーホワイトの魔法『困っている心の声が聞こえるよ』は、たとえ人ではない者の心の声でも人語で聞こえる。動物は勿論、虫から魚からゆうれ――いや、何でもない。あれはたぶん絶対きっと幻聴だったのだ――まで、無機物以外のあらゆる者の困っている声を聞くことができ、それはこのゴブリンですらも例外ではなかったのだが
「知らない方がいい。私も聞いたことを後悔しているから」
「……スノーホワイトがそう言うのなら、わかったぽん」
静かな声に紛れも無い嫌悪を込めて言うと、そう納得するファル。
こんな自分を支えようとしてくれているのはありがたいが、ときどき心配性過ぎるのが玉に傷だ。
そんなことを思いつつ、ルーラの血を払い終えたスノーホワイトは再び歩き出す。
人と人ならざる者の血と屍の散乱する穴倉の向こう側、底の見えぬ闇の奥へと。
「気を付けるぽん。こいつらは弱かったけど、この先にはもっと強い奴がいるかも知れないぽん」
「分かってる。でもそこにあいつがいるのなら、私は行かなきゃ」
呟き、白い魔法少女は闇を進む。
己が獲物を狩るために、この先から微かに聞こえてくる、『死にたくない……誰か助けて……』という心の声に導かれて。
その後には、血塗られた足跡が刻まれていた。
◇◇◇
いきなり盤上に現れた謎の白い少女の駒に、神さまたちは大いに驚きました。
それは例えるのなら、チェスボードの上に何故か将棋の駒が紛れ込んだかのようなありえない事態だったのです。
なので、さてどうするかどうしようかと皆で顔を見合わせ話し合いました。
このままではゲームバランスが崩れて盤上の全てが台無しになってしまうかもしれない。けど強引に取り除けば、その歪みがどこでどう影響するかも分からない。
いっそこのまま放っておくのはどうだ。いやいや何を言っている万が一があってからでは遅い。そうだそうだ多少のリスクは覚悟してでも危険な駒は取り除こう。まてまてそれこそ危ない。強引にやったせいで却ってバランスが崩壊したら本末転倒じゃないか。ならどうしろと言うのだ。ふむどうしようか。ふむふむふむむ……。
それぞれが自分の考えを言って、けれども誰かに否定されての繰り返しです。あーでもないこーでもないと会議はくるくる踊ってされど進まず、時間だけが虚しく進んでいきました。
そんな時、白い駒が置かれているゴブリンの巣穴の中に、また新しい駒が現れました。
それは白い駒とは違って元から盤上にあった駒なのですが、《幻想》は一目見た瞬間
「げっ……」
っと、声を漏らします。
何だかとてつもないトラブルに直面したかのようなその声に、どうしたどうしたと盤上を見た他の神様たちも「げげげっ……」と顔を青くしました。
その駒は、この盤上に在ってある意味では最も神さまの手に負えない存在。
その駒は、常に考え策を練り行動し、全てを決定するはずの《宿命》と《偶然》のサイコロを決して振らせぬプレイスタイルを貫く、なんか変なの。
もちろん神さまはそんな駒でも好きですが、かつてないイレギュラーが発生している今この時だけは決して来てほしくは無かった、下手すれば事態を更なる混沌へと突入させかねない極大の危険要素。
――『彼』が、来たのです。
うるる「盛り上がってきたところだけど今回ははここまで。後編は明日に投稿するよ! みんな楽しみにしててね! ……え? 嘘じゃないかって? そそそそそんなことないよ!! うるる嘘つかないもん! ……え? じゃあウェディンと約束しろって? ついでにネフィーリアに契約書を用意させるからサインしろって? ・・・・・・・・あーそういえばプクさまによばれてるんだったはやくいかなくちゃーじゃーねー。プク様万歳!(ダッシュ)」