オーバークロック〜change his destiny 作:ルイージ大佐
予約投稿の関係上、こちらの方が少し早いのは内緒。
では、本編どうぞ!
これは、俺が見た奇妙な夢の中身である。
俺は目覚め、布団から出た。
しかし、そこは見たことのない部屋だった。
まあ、夢の中なら仕方ないか…そう思った最中、あるひとつのことを思い出した。
今日は、勇者としての旅立ちの日。支度をして、王宮へ向かわねば。
そこまで思い出した時、ひとつの疑問が浮かぶ。
なんで知るはずもないこんなことを覚えているんだ…?
まあ、変な夢だからだろう、ということで済ます。
こんな夢でやりたいことはないし、とりあえず支度をして、王宮とやらに向かってみることにした。
支度をしていると、やはり体の感覚に違和を感じる。なんだろう。とりあえず体が重い。いや、普段の俺が身軽なだけかもしれない。実際この体、結構がっしりしていて、普段なら痛手となる攻撃にも、びくともせず耐えられそうだ。いや、ぶっちゃけただバランスがいい、てだけかも知れないが。
一通りの持ち物を持ち、家から出る。やはり見たことのない町並みが広がる。しかしこの風景…どこかでみたような…いや、そんなことはどうでもいい。
俺は王宮へ向かう。道順は覚えているはずのない体が覚えているので、迷うことはないだろう。
「はーいはーいそこの皆さーん!不思議な不思議な爆弾はいかがですかー!」
ん、なんだ、面白そうじゃないか。ちょっと寄ってみよう。
「あの〜すみません。どんな爆弾を売ってるんですか?」
「よくぞ聞いてくれたお兄さん!この爆弾は!なんと!手軽に何回でも使える爆弾なんだよ!」
「おおー」
すごいな。現実ではあり得ないな。あり得るとしたらLTGの類いになりそうだ。LTGかどうかはジョーさんに聞いてみよう。
「どうやって使うんですか?」
「いや、ホントに手軽ですよ!ちょっと魔力を込めるだけでチャージ完了!あとは投げつけたり設置したりした後に、指パッチンするだけで大爆発!」「おおー!」
欲しい。単純に欲しい。だって、爆発は男のロマンじゃないか!
…ジョーも同じこと言ってたのは黙っておこう。
うーんとお金はっと。あったあった。これか。
なんか普段俺らが使っている貨幣と同じ感じのお金だな…いやいや細かいことはもうどうでもいいんだ。
「んじゃ3つ下さい!」
「毎度あり!」
うん、いい買い物だった。
3つ買ったのはなんとなくだ。
辺りを見渡すと、中には空飛ぶじゅうたんだったり自動でついてくるふわふわ飛ぶカバンとかがある。LTGってすごい。しかしこれは夢だからホントかどうかがわからないのが残念だ。
とりあえず王宮の門の前に着いた。
「お前は何の用があってここに来た!名と用件を言え!」
門番の兵士が聞いてきたので、ちゃんと名前と用件を伝えた。
「俺の名はライラス。勇者として王様に呼ばれたので、参りました。」
「ライラスだな?話は聞いている。さあ、通れ。」
…は?
え、何ライラスって。自分で言っててビックリしたんだけど。俺の名前はリョーヘイだぞ。何自分で言い間違えてんだよ。
でも自分で言ってておかしいが、この名前、聞き覚えがある。なんだったんだかな…勇者?LTG?そこらへんが関係してくるかな?
まあ、レーシアの町の宿屋には本があったから、少し調べてみるか。
そんなことを思ってるうちに、玉座の間の前の控え室に着いた。
そこには先客が二人ほどいた。あからさまに戦士の格好をしている男の人と、あからさまに僧侶の格好をしている男の人だ。
まあ、自分もあからさまに勇者とわかる格好をしているからなんとも言えないが…
赤の他人だから話しかけづらい雰囲気の中数分が経ち、もう一人の仲間とおぼしき人物が現れた。
「少し遅くなりました〜」
女性だった。ほぼ間違いなく魔法使いだろう。
なぜなら、あからさまに私は魔法使いですと言わんばかりの格好をしていたからだ。
もしこの4人でパーティーを組んで冒険するとしたら、かなりバランスの良いパーティーになるな、と思った。現実だと、今はソンチョとテッドがいるものの、基本4人だと、どうしても弱点が出てしまう。まずフェリック以外は俺含めて全員防御が薄い。あと回復は俺一人でやらなければならないからホントに忙しい。回復に集中してたらあと一押しが足りなくなり、攻撃に集中してたらしてたでパーティーが軽く崩壊するおそれがある。
その分、この4人だと、勇者、戦士、魔法使い、僧侶とまさにテンプレだけど一番安定性のあるパーティーになる。だからこの4人で冒険したら楽しそうだな。
それにしても、でかい。なにがとは言わないが、でかい。気を抜いていると、そちらに目が移ってしまいそうだ。
いやいやいや、マリーもじゅうぶんかわいいからね?小さくて、マリーに言ったら怒られるかもしれないが、たとえまな板だったもしてもだよ、マリーはじゅうぶんかわいいからね?
天使なんだからね?むしろお釣りが来るくらいだよ?
全く誰に言ってるんだと自分に突っ込みを入れておこう。
こんな下らないことを考えてたら、
「それではお集まりの皆さん、王様がお呼びなのでこちらに来てください。」
早速お呼びがかかったので、ついていった。
そういえば勇者として旅立つとか思っていたが、何を目的にして旅立つのだろうか。どこをどのようにして旅していくのか。そして他の3人はホントに仲間なのだろうか。
俺は案内について行きながらこんなことを疑問に思っていた。
まあ、王様から説明があるだろうからそれを聞いて解決させよう。
王様の目の前に来た。そのタイミングを見計らい、王様が口を開く。
「おお!勇者ライラス、戦士ガンドウ、魔法使いアリア、僧侶ヘンリー、よくぞ参った!」
ありがとうございます。
「特に勇者ライラス!」
「はい!」
ああもう面倒だ。こちらではライラスと名乗っておくことにしよう。
「今回来てもらったのは、そなたたちに重大な使命を与えるためだ!」
おお使命か。なんかかっこいい。
まさか侵略者ゼロブラスフェイムを倒してくれとかではないよな。そんな偶然の一致が起きたら笑えるのだが。
「そなたには最近世界平和を脅かしている侵略者ゼロブラスフェイムを倒してもらう!」
まじかよ。そんな偶然の一致が起きてしまったよ。まじでホントだったから笑えねえよ。
「ただ、一人で戦うのはさすがにつらい!なので仲間も集めさせてもらった!戦士ガンドウ!魔法使いアリア!僧侶ヘンリー!おまえ達は、勇者ライラスの手助けをするのだ!」
「…承知」
「わかったわ!」
「了解しました!」
薄々予想はしてたが、やはり仲間だったのか。頼もしいな。
「しかしライラス!」
はい。
「今のそなたでは侵略に立ち向かうにはあまりにも貧弱過ぎる!」
知ってた
「だからそなたにはこれを授ける!」
そう王様がいうと、側近が何かを運んできた。どうやら剣のようだ。
光と雷をイメージしたかのような、見たことのない装飾がされてあり、何か特別な雰囲気を放っている。
「さあ、その剣を手にとるがいい!」
そう王様がおっしゃったので、その剣を手にとって掲げてみた。
すると、体に力が流れ込んで来た。おそらく俺は何かの力に目覚めたのだろう。
しかし、この感触に覚えがあるのは気のせいだろうか。しかもこの力、つい数時間前に使った気がする。
いや、気のせいだ。そう思っていたところに、王様が付け加える。
「この剣の名はスパーダ:ルーチェ。勇者の力を与える神器である!この力はゼロブラスフェイムのような闇の使徒を容易く滅ぼすことができる!」
神器か。ホントかっこいい。さすが俺の夢。俺の趣味のストライクゾーンをガンガンついてくる。
にしても勇者の力か…まさか現実の俺も持ってるあの力のことか…?まさかな。
「しかし、それに甘んじてはならない!」
え、ダメなの。いかにも伝説の剣、最強装備をもらったような気でいたのだが。
「その剣はそなたの技量にしたがい力を増す!逆を言えば勇者の力に甘んじて修行を怠れば中途半端な力しか出せなくなるぞ!」
なるほどな。分かりやすくロールプレイングゲームで例えると、俺のレベルに応じて剣の攻撃力が上がるって訳か。こりゃ夢だとしてもさぼれないな。
「ちなみにそなたはスパーダ:ルーチェに触れたことで『勇者の一撃』という技を使えるようになった。使い方は体が勝手に示してくれるだろう。」
なんだ『勇者の一撃』か。言われなくてもすぐ使えるわ。
…ってここまで現実に近づいてると逆に怖いのだが。
それだったら現実の俺が使える力と全く同質のものじゃないか。
「だが、勇者の力は他にも5つ存在する!そなたはゼロブラスフェイムを各地て撃破しながらその力を集め、平和を取り戻すのだ!」
あ、そうなの。本で確かめて本当に存在してたら試してみるか。
「噂によると、一つ目『勇者の加護』はレーシア西の洞窟で手に入るらしい!ちょうど洞窟を抜けた辺りにゼロブラスフェイムのアジトがあるとの情報もあるから制圧しがてら手にいれるのがよかろう!
これで話は全てだ!さあ!勇者ライラスとその一行よ!ゼロブラスフェイムを倒し、世界を救ってくれ!」
王様の話が終わったことだし、控え室に戻ってアリアさんやガンドウさん、ヘンリーさんに自己紹介しよう。返事の声とかしか聞いてないからいったいどんな性格だろうか。楽しみである。
しかし、王様の話を聞き終えた今、ある一つの考えに至った。
この世界、実はある意味現実の世界ではないのか…?
もっと言うとこれは過去の世界ではないのか…?
この考えに至ったのはいくつか根拠があるからだ。
はじめ、俺はライラスという名前に聞き覚えがなかった。しかし、勇者の力とか、スパーダ:ルーチェとか王様から様々なキーワードを聞くうちに、この名前が指す人物にだいたい検討がついた。
俺らの世界で伝説となっている、初めての勇者にして英雄ライラスである。
俺は昔この人のことを絵本とかで読んでいたが、とうの昔の話だったし、最近の冒険では使わない知識だったから忘れていた。
現在に戻ったら、知識だけは確かめておこう。万が一もう一度戻ってくるようなことが役にたつ可能性があるからだ。
あともう一つ気になるのは、英雄ライラスの人生をどのような形で体験しているかだ。
ただの追憶だったらまだしも、もしも俺の行動によって過去が改変されてしまうようだったら…
それはそれで面白いが、俺の肩に重大な責任がのしかかってくるからだ。万が一史実通りに事が運んでいかなかったとしたら…
世界は大変な混乱に陥ってしまうだろう。いつのまにか世界は滅んでしまいましたーとかなってしまったら洒落にならない。
気を引き締めて行動しなければと改めて思う。
しかし、追憶なのか過去の改変なのか…それを確かめる術はあるのか…
ぶつぶつ…ぶつぶつ…ぶつぶつ…
「ライラス?ライラス!おいライラス!」
「うわっはい!?」
「全く、歩いているときも椅子に座ったあともぶつぶつ言ってるとかどんな神経してるんだよ!」
どうやらもう控え室に着いていて、椅子に座ったあとも独り言をつぶやいていたようだ。
だから相変わらず目のやり場に困るんだって。
「んじゃ、自己紹介でもしていくか!
あたしはアリア。王様が言ってた通り魔法使いだ。よろしく!」
活発な人物だな。マリーとは正反対だ。
いやだからさっきも言った通りマリーの方がかわいいんだからな。
「んじゃ、次は俺。」
そうして自己紹介を始める。
「俺は勇者ライラス。なんかチームのリーダーみたいな役割を背負ってる気がするが、俺がリーダーだからといって傲慢な態度にならず、みんなのことを尊重していきたい!だから…よろしくお願いします!」
と、自己紹介しておいた。これは実際、現在の世界でも意識していることだ。
まあそんな感じで所信を表明したあと、ガンドウが自己紹介した。
「俺はガンドウ。戦士だ。」
…怖っ。
なんか仲良くやっていけるか少し不安になっていたら、ガンドウは続けた。
「ぶっきらぼうで怖そうに見えるだろう。しかし、どうも話すのが苦手でね。必要最小限のことしか喋らないと思う。しかし俺はみんなのことは信頼しているから、どうか怖がらないで欲しい。これからどうぞよろしく。」
なんだそういうことだったのか…俺は少し安心した。これならチームをうまくまとめていけそうだ。
最後はヘンリーか。
「どうも皆さんこんにちはーヘンリーでーす。王様から聞いた通り僕は僧侶でーす。僧侶とはいってもほら、武人の国のようにハゲツルピッカになってストイックに授業をするような僧侶じゃなくて、フツーの僧侶だから安心してねー。え?そんなこと誰も心配してない?あはは!そうですよねー!あとそうそう、次に行くレーシアの町は果物が有名なんですよー。あのジュワッとジューシーな甘い果汁が口の中に広がっていくのがたまらないんですよー。そのまま生で食べてよし、ジュースにしてもよし、パンケーキとかデザートにつけあわせせてもよし、とにかく最高のフルーツだと思いませんか?そうですよね?あはははは」
「…」
「…」
「…」
…うるさい。
ここまでうんちくを披露されるとうざいと感じるんだな…
ほら、他の二人もドン引きしてるよ。人付き合いが苦手と言ってたガンドウさんですらもドン引きしてるよ。これは末期症状だな…
でも、誰かを中傷してる訳でもないし、必要な情報でなければ聞いてないフリをしたり、聞き流したりすればいいか。
では、自己紹介も終わったことだし、
「あ、あとそうそう」
「うるさい!」
「ひえー」
アリアさんがっつり言うんだ…まあいい薬になるだろう。治るかどうかは別にして。
では改めて。
「それでは、レーシアの町へ出発しよう!」
そうして、俺たちはレーシアの町へ向かった。
レーシアへの道中は例によって暇だったので、アリアさん、いやもう呼び捨てでいいかな…アリアと雑談することにした。
ヘンリーの雑学マシンガントークを聞いてもよかった気がするが、さすがにそんな気力はなかった。
「アリア、」
「なんだ?」
「アリアはどうして魔法使いになろうと思ったんだい?」
「あ、そうそう魔法使いと言えば…」
聞く気力はないと思ってたのにヘンリーはマシンガントークを始めやがったので、そのままスルーすることにした。
「あ、うん。あたしの家族は魔法使いの一家でね、魔法で炎を簡単につけたり、水を凝縮するのを見てすげーと思ってさ、私も魔法使いになったわけ。」
「ほうほう」
「とある地方では女性と関係を持ったことのないまま30歳になってしまった男性のことをこう例えることもあるそうだよ。でも…」
うん、ベタな話だな。これと同じ話マリーからも聞いた。結構魔法使いになる人物って同じような環境で育つものなのかな…というわけで次の質問をしてみた。
「んで、アリアはどんな魔法使いになろうと思ってるんだい?」
「んーとね、一言で言えば、いろんな魔法が使える魔法使いかな。」
「これがいつ頃から言われるようになったかは定かではないんだよねー」
あ、答えた。マリーは何か深い訳があるのか、この質問には答えなかったんだよな。何でだろ。いつか聞けるようになる日は来るのだろうか…
「回復魔法は僧侶の専門だからいいとして、あたしは力を上げたり、防御を固めたり、時には相手を毒にしたりするいろいろな補助魔法や、様々な属性の攻撃魔法を覚えるよう努力してるんだ。」
「世間一般には女性と付き合った事がないイコール半人前としてみることも少なくないんだよ。半人前、すなわち子供のままでいることが30歳位まで続くってのは昔は稀だったのかな、」
そういえばマリーも結構多彩な魔法を使えるな…多くは一つの魔法をいろいろ改造したものだけど。
「攻撃魔法に関してはまだ少し覚えきれてない属性もあるけど、補助に関してはだんだん使える種類も増えてきたから、戦闘になったら見せてやるさ!」
「昔、魔法使いは得体の知れないものや何をしでかすかわからない人としてみられてたらしく、差別や偏見の対象とされてたんだよ。魔法使いという存在自体がのけ者や部外者のレッテルそのものだった、てわけ。」
「で、ライラスは何で勇者になろうと思ったの?」
知るか。今日初めてこの世界に来たんだから。
だからといってごまかすのもなんだかなと思ったので、現在の自分自身が勇者になろうと思ったいきさつを話すことにした。
「そうだな…実は今はもう死んじまった親父が実は元ゼロブラスフェイムだったんだよ」
「え?」
「その親父は母さんに熱い恋をしてしまってね。ゼロブラスフェイムからこっそり抜け出すかのように駆け落ちしたんだよ。」
「それと同じように、30歳になっても女性と付き合ったことのない男性のことも、いい年して女性と付き合ったことのない奇妙なやつ、もしくは普通の人間とは違うやつ、と見られてた、ということ。」
「おいちょっとヘンリー」
「はい?」
今の今まで変なマシンガントークを続けてたヘンリーが急にアリアによばれ、たじろいている。
「さっきからなんなの!うるさいってんだ!」
「ひえー」
女って怖い。
マリーはかわいい。
しかし、当のヘンリーは全く反省してなさそうだ。
「んで、続きよろしく」
とアリアが聞いてきたので続きを話すことにした。
「しかし、この恋心をゼロブラスフェイムの奴等は利用しやがって、俺が昔住んでた村を襲いかかったあげく、親父と母さんを殺した、てわけだ。」
「真相を知ったとき、親父を恨まなかったのかい?」
「もちろん最初は恨んださ。しかし、それ以上に、あいつらの手段は卑劣だったんだ。」
「お前もいろいろあったんだな…」
「そう、そしていろいろあって、旅に出ることにしたんだ。これ以上、あいつらに弄ばれる人々を減らすために。」
「…うう」
アリアが泣いてる…軽く喋っただけなのに感動してるのか…?
「ライラス!あたし、頑張るよ!平和のために!」
「ああ!」
その後、少し歩いた後で、俺はある提案をした。
「みんな、ここで一回弱めのモンスター相手に連携の確認をしよう。そうすれば、いつ戦闘が起きてもだいじょうぶ…」
しかしこのとき、
「おいライラス!後ろ!後ろ!」
後ろからドラゴンが近づいていたなんて知りもしなかった。「…え?」
俺は恐る恐る後ろを見た。
「ファッ?」
やっぱりドラゴンがそこにいた。
今にも火の玉を吐き出したり、噛みついて来そうだった。とにかくそのドラゴンはなぜだか知らんが俺たちに敵意を示していた。
そして、一旦冷静になり、
「とりあえずガンドウさんと俺が前に立ちます!アリアとヘンリーは後ろで援護お願いします!」
「…承知」
「わかったわ!」
「了解したけど、ねえ僕いつから呼び捨てになったの?ねえ?」
とりあえず考えてた体形を整えるよう皆に指示する。
なんかヘンリーが文句言ってた気がするが、そんなのは聞こえない。
そして、俺らはそれぞれの武器を構える。
「え、アリア、魔導書派なんだ」
「ああ、武器反撃できない代わり、魔法の威力が上がるし、集中力も上がるからな。」
なるほど、アリアはそっち派なのか。
マリーは「こっちの方がしっくりくるんですプクッ」とか言ってたなあ…
そして、敵に近づかれたら追い払うために「えいっ!やっ!もう!あっちいってください!」とか言って杖振り回してたな…かわいい。
その気持ちを一瞬でもぶれさせるほど、アリアのはでかい。やばい。
「とりあえず先手必勝!」
と、いつもの調子でドラゴンに駆け出して行った。しかし、少し体が重いということを忘れてた俺は、思うような動きができず、
「うげーっ」
ドラゴンの爪の強烈な一撃をもらってしまった。
だけど予想したほど痛みは襲って来なかった。体ががっしりしてる反面、防御は硬いだろうな、という当初の俺の予想が当たった形になった。俺への攻撃が終わったところを見計らい、
「ふんっ!」
ンギャー
ガンドウさんが一撃を入れる。結構こたえたようだ。
「守りを固める!ガードアップ!」
「はいはい、ヒールっと。」
守備力を上げる魔法により、全員がさらに物理攻撃に耐えられるようになった。
なんか傷がふさがってる。何でだろ。
ドラゴンがなんかブレスを吐く構えをしている。
「ガンドウさんお願いします!」
「…任された。」
ガンドウさんが仁王の如くドラコンの前に立ちはだかり、俺たちを護る。
そしてドラコンは炎のブレスを吐き出して来た。
「…ぐっ!」
全員がもろに食らったら立て直しが難しそうな強烈なブレスだったが、ガンドウさんは何とか持ちこたえたようだ。
「おっさん大丈夫か?ヒール!」
「…有り難うな。」
「久しぶりにお礼言われた!」
あ、だからさっき傷がふさがっていたのね。できるだけ意識しないようにしてたからわからなかったわ。
「ひでぇ…」
あれ、漏れてたかな…何で聞こえてたのかな…
「おい!ライラス見て!」
そう言われたのでドラコンの方を見る。なんと、傷がふさがっている!
「まじか…」
「どうするライラス?」
こうなったら、
「よし、一気に叩く!」
俺は『勇者の一撃』の準備をする。大丈夫、やり方は同じだった。
「行け!ライラス!」
ドラコンに向かって俺は飛びかかる。そして、勇者の力と言われている光と雷のエネルギーを、スパーダ:ルーチェにまとわせる。未来で撃つより威力は高そうだ。これなら一撃で行ける!
「食らえ!『勇者のいちげ」
しかし、
「ぐはぁ!」
また同じようにドラコンからのカウンターを食らってしまった。肉体的にも精神的にも痛い。
「大丈夫か?」
「ああ、大丈夫。」
ガンドウさんはまた隙を突いて攻撃する。何でガンドウさんは当たるのかな…?
「またブレスが来てるよ!」
ヘンリーが警告する。
「何!ガンドウさんいつもすみません!」
「…気にすんな、これが戦士の役目だ。」
またガンドウさんが仁王をし、ブレスを耐えきった。
さっきと同じように、ドラゴンの傷が回復している。
「くそ、どうすればいいんだ…?」
俺は何とか打開策を考えているが、なかなか思い付かない。
「フリーズ!」
アリアが魔法で攻撃する。ダメージは与えたものの、決め手とはならない。
「ライラス、魔法はだめ。全然効いてなさそう」
じゃあ近接攻撃しかないのか。しかし、近接ではカウンターを食らい、その隙に一撃与えても、直後のブレスの後には傷がふさがる。いったいどうやって…
あ、単純なことだった。
「ガンドウさん!攻撃順変えましょう!カウンター来ますが大丈夫ですか?」
「問題ない」
まあカウンター直後は隙になるから、そこに強烈な一撃を与えればいい、ていう話だ。
「ふんぐっ」
ガンドウさんが一撃を与え、予想通りカウンターを食らう。しかし、ドラゴンは隙だらけだ。
決めるならいまだ。
「さっきやれなかった分も食らえ!『勇者の一撃』!」
ギャァァァァァ
苦戦を強いられたが、ドラゴンは地に伏し、そのまま動かなくなった。
「いやー、急でしたがうまく連携がとれましたね。」「そうだな。」
「ねーねー僕頑張ってたでしょー!」
確かに縁の下の力持ちだったが、褒めたら調子に乗りそうなのでやめておいた。
「では、こんな感じでいきましょう!」
急な戦闘があったが、無事に終えたので、またレーシアの町に向かった。
途中モンスターはいろいろ出てきたが、それほど苦戦はしなかった。
そうして少し日が傾き、空が橙に染まって来た頃、のどかな田舎町、レーシアに到着した。
「おうおう勇者の一行さま!よくレーシアの町にいらっしゃいました!わしはこの町の長です。何ももてなしがなくて申し訳ありませんが、もう夕方ですし、ゆっくりお休みください!」
こっちの町長はお爺さんか。町長と言えばこうであるという姿を体現してるな。
村の人の案内で、宿屋へ案内された。村の様子を見ると、基本的には未来と変わらないが、少し古い建物もある。古きよき伝統というものは、いいものである。
宿屋へつくと、部屋へ案内された。アリアは個室で、俺とガンドウさんとヘンリーは合室だった。まあ当然といっちゃ当然か。
夕食も食べ、風呂に入ると、すっかり夜になっていた。
「月がきれいだなあ…」
「あ、そうそうある地方では月がきれいだ、という言葉で告白をするらしく…」
田舎の月はきれいだなあ。しかも未来でも同じ月なんだから感慨深いな、としみじみ思ってたところで毎度お馴染みマシンガントークかぶちこまれたので、雰囲気ぶち壊しである。
多分、眠りに入ったら、未来に戻っているだろうな。またこれるといいな。せっかく冒険が始まったばかりなんだし。
そして、一つ大切なことを思い出した。この体験が追想なのか過去の改変なのかどうかだ。
どうやって確かめたらいいのだろうか…そう思いつつ、俺は今朝買った男のロマンの塊を取り出す。
そしたら、なんと、
「おいおいライラス!それって」
「うん、指パッチンで爆発する、男のロマン溢れる魔法の爆弾だよ!」
「おお!」
ヘンリーが食いついてきた。またマシンガントークか…暇だしたまには聞いてみるか。
「それの正式名称はマジック・ボンバーと言って、魔法と科学技術の融合テクノロジーなんだ!そもそも何でこれが開発されたかというと、ズバリトンネルを掘るためさ。これが開発される前は、トンネルはスコップやピッケルを使って掘ってたんだけど、これが大がかりな作業でね、奴隷を使うのが当たり前の時代だったので、大勢の人が事業に参加してたんだよ。中には死亡する人もいて、大変だったらしいのよ。しかし、これを心苦しく思った心優しいとある領主が、少ない人手で手早く効率よくトンネルを掘るための道具を作ろうとしたんだ。そこで目を着けたのが魔法のエネルギーって訳。それに科学の力も集めてできたのが、マジック・ボンバー。この道具は思った以上に使いやすく、トンネルは掘りやすくなり、奴隷の必要性もへり、だんだん解放されていったんだよ。そしてあまりにも便利で手軽だったから、他の用途にも使われ始めたんだよ。例えば、込める魔力を少なくして爆竹みたいにして遊んだり。音で知らせを出したり。それこそ何度も使える爆弾として使う人もいたんだよ。」
やっぱり覚悟してたが、やはり長い。とても暇なときにしか効く気力なくすな…
しかし、次の話は、俺の悩みを解決してくれたのだ。「でも、指パッチンで爆発するとはいっても、誰の指パッチンでも爆発するんじゃないかという疑問が浮かぶと思うんだけど、それについては対策されてるんだよ。実は爆発させたいとき、頭に爆弾の位置を正確に思い浮かべないと使えないんだよ。だからわなとして使うとき、相手はむやみに解除しづらく、こちらは爆発させやすい、というととだよ。」
「ありがとうヘンリー!役にたったよ!」
「ど、どういたしまして。」
これで、一つの策が思い浮かんだ。
レーシアの町の、少し外側の場所に、ちょっと穴を掘って、マジック・ボンバーを穴の中にいれ、埋める。
これで、未来に戻った後、指パッチンで爆発させて、本当に爆発したとしたら…
俺は過去を変えていたことになる。
まあもう夜も遅くなったし、そろそろ寝るか。
明日はレーシア西の洞窟探索だ。さらわれた人々は、絶対助ける。
そう思いつつ眠りに着いたところで、夢か現実かわからないこの世界の冒険が、一旦終わりを告げた。
如何だったでしょうか。
第2話はストックがあったので早めに行けましたが、第3話はノーストックなのでかなり遅くなります。
最新話早くみたいせっかちな方はなろうの方へどうぞ。
では、次回までお楽しみに!