失踪はしないのでお許しを……。
俺はいつもの真っ黒服装で、遊園地前で春ちゃんを待っていた。ちなみに、遊園地デートは2回目だ。
ぱたぱたとやって来た春ちゃんは、黒を基調にしたワンピースに大きめの麦わら帽子に、茶色の大き目のバックの紐を肩から下げていた。流石姉妹、小咲とほぼ瓜二つである。
「お、お待たせ。蓮さん」
「おう、全然待ってないから心配するな」
「ふふ、いつもの『待ちくたびれた』じゃないんだね」
「まあな。んじゃ、行くか」
俺たちは受付で入場券を購入し、受付係に入場券を見せて遊園地内に入った。
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~遊園地、内部~
俺たちが遊園地に入ると、回りにはお子さん連れの家族、学生、カップルが賑わっていた。
と、その時、俺と春ちゃんの手が触れ合う。
「れ、蓮さん。人多い、ね」
「だなぁ。手を繋いでおくか」
春ちゃんは、「はい!」と元気良く頷く。
春ちゃんの手は暖かくて、優しさに包まれるような感覚である。
それから俺たちは、様々なアトラクションに乗った。ジェットコースターにコーヒーカップ、お化け屋敷と。
「蓮さん蓮さん。あれ食べよう」
春ちゃんが指差したあれとは、遊園地の定番?であるチュロスである。あれだ、遊園地に来たら食べて於かないといけない代物である。……いや、たぶん、知らんけど。
「いいぞ」
という事で、店へ向かう俺たち。
「すいません、チュロスを2本ください」
それからお姉さんが「お待たせしました」といって、代金と引き換えにチェロスを受け取った。ちなみに、通常版とマキアート風の種類があったので、それぞれ1本ずつである。
「蓮さんのも一口ちょうだい」
「ん、ほれ」
ベンチに座りながら、俺は隣に座る春ちゃんの口許にチュロスを持っていくと、春ちゃんは小さな口を開けて一口。それから、口をもごもごさせ飲み込んでから、
「ん、美味しいね。――じゃあ、蓮さんもどうぞ」
春ちゃんが口許に持ってきたチュロスを、一口してから咀嚼して飲み込んでから口を開く。
「うむ。美味いな」
「ふふ、そっか」
ともあれ、チュロス食べたからベンチから腰を上げ、
「それじゃあ、アトラクションの制覇に行こう!」
「いや、制覇すんの?まあいいけど」
という事なので、俺たちはアトラクションに乗る為に歩き出したのだった。
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そして日が沈み、もうすぐ閉園時間。
「楽しかった」
「まあ、制覇はできなかったけどな」
と、俺は苦笑する。
そう、この遊園地には最近できた絶叫ジェットコースターもあったのだ。それを見て、春ちゃん「あ、無理だ」と悟ったらしい。
ともあれ、最後に遊園地の名物?観覧車に乗ることになった。
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「わぁ。……すごい綺麗だね」
「まあ確かに。ザ・夕焼けって感じだな」
春ちゃんと対面に座り、俺たちは綺麗な夕焼けを眺める。
そして頂上に到着した所で、俺は春ちゃんを手招きし、隣に座ってもらい向き合う形になる。
「ん、どうしたの蓮さん?」
「いや、ちょっとこれを渡したくてな」
俺は懐に手を入れ、小さな箱を取り出し箱を開ける。
「ごめんな。まだ本物が用意できなくて」
「う、ううん。あ、ありがとう。とっても嬉しいよ」
俺は箱から銀色の指輪を取り出し、春ちゃんの左手薬指に嵌める。
ともあれ、俺は真剣な顔で、
「小野寺春さん、俺と結婚して下さい」
「ふ、不束者ですが、よろしくお願いします」
それから、ぷっ。と笑う俺たち。
「お、俺たちには似合わないな」
「だ、だね。いつも気楽な感じだもん」
春ちゃんは「そういえば」と言って、
「蓮さんは、お姉ちゃんと羽さんにもプロポーズを?」
「それっぽい事はしたと思うんだが、正式にちゃんとした方がいいのかなぁ」
「うーん。私の場合は、今ので十分なんだけど」
春ちゃんは「私の物差しで見ちゃダメだよね」と、悪戯っ子のように舌を出す。
「まあ、その時が来たら考えればいいか」
「うん、それでいいと思うよ」
それからは、学園のことや最近の事ことを話し、観覧車から降りた。
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遊園地も閉園になり、外に出た俺たちは伸びをした。
「それ、学園には嵌めてくるなよ。色々な意味でやばいと思うから」
「だいじょうぶ。学園では、ネックレス状にしていくから」
……うん、学園には持ってくるのね。まあ、バレなければ良いと思うけど。
それから俺たちは手を繋ぎ、遊園地を後にした。こうして、俺と春ちゃんのデートは終わりを告げたのだった。
指輪は、小咲と羽姉はすでに持ってます。
春ちゃんにも渡したので、全員、結婚指輪(仮)を持ってることになりましたね。
ではでは、次回もよろしくですm(__)m